菊地成孔さんがTBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』で映画『アナと雪の女王』について語りました。ドラマ『Glee』との共通点などを話しています。
(菊地成孔)『アナと雪の女王』の話ってしたっけ?してないんだよね。カットされたままになってるんだよね。今回も口上にちょっと挟みましたけどね。まあ、いちばんよく言ってですね、私も行きました。で、隣にJKがいたんですけどね。もうJKの話はね、鮮度が落ちるのが早いんですよ。やっぱりJKだけに。まあ、映画泥棒って出てくるじゃないですか。
(菊地成孔)こういう顔が・・・なんだろうね?あれは。昔の動画カメラが頭になってるのかな?で、スーツ着て踊る細めのやつがいるじゃないですか。あれが出てきて映画泥棒が踊り始めた瞬間に、『あれ、中に入ってるの生瀬勝久だよね?』って言ったっていうところだけちょっと面白かったですけど(笑)。それ以外はまあ、さほど面白くなかったですね。見聞きした時は面白かったんですけどね。
まあ、それにしても映画自体の話ですけど、まだヒットしてますからね。いちばんよく言って、子どもに見せに行くっていうテイで親が喜ぶようなアニメっていうのが多いような気がするんですよ。私、見てないんですけどね。見なくてもわかるんです。ちゃんと。ちゃんと、とか言っちゃって(笑)。適当なんですけど。こう、親の方が感動しているっていうね。ただ、子どもを連れて行くっていう体面で見に行けるっていうような。まあ、最近は大人・子どもの癒着のアリバイのカルチャーがすごい発達してるんで。私としては、そこは分けてほしい。大人っていうのは臭くて気持ち悪くて、話も趣味も合わなくて、ぜんぜんダメなかわりに、そういう異物でストレンジなかわりに、だから自分のピンチの時に助けてくれるっていう存在じゃないとね。友だちみたいになっちゃったらね、子どもが苦しんだ時に行き場がないですからね。そんな真面目な話してもしょうがないですけど。
それはともかく、そういう映画じゃないっていうところが、いちばんよく言ってそうですね。アナと雪の女王っていうのはまあ・・・たとえばね、『トイ・ストーリー』っていうのがありますよね。あれは、大人の方が喜ぶっていうか、泣いちゃうと思うんですね。ああいう風に、泣いちゃう上にクオリティーがすごい高いじゃないですか。無限にクオリティー高くなっていったら、ヤバいですよね。ピクサーだって、そんな。永遠にクオリティー上げていくわけにはいかないですから。娯楽映画史っていうのはかならず1回ね、落とす時がくるんですよ。音楽と同じで。どんどんどんどん盛り上げていって、そのまま盛り上がっていくのはこの世にラヴェルの『ボレロ』しかないですからね。
(菊地成孔)あとは、上がったり下がったりするわけですよ。で、ガーン!って緩急つけなきゃならないんだけど。一本の映画の中でじゃなくて、数年間のその会社の配給の中でつけるわけ。で、アナと雪の女王がね、つまんないとは言わないの。ぜんぜん。つまんなくはないんですけど、もう連れて行った親も、子ども時分のことを思いだして泣いちゃうって。親子で大感動。どっちかって言うと親が泣いちゃって・・・っていうようなものによって、だいぶ感動のボルテージを上げちゃったんで、ちょっと子ども向けに落とした結果だと思うんですよね。その結果、主題歌がひとり歩きしてるっていうことがあっても、別になんの問題もないですけど。それがいちばん、アナと雪の女王をこんなラッパー、しかもTBSのパーソナリティーが映画の話を真面目にすると、最近ヒゲ剃ってサングラスかけると『宇多丸さんに似てる』って言われる時があってですね(笑)。シネマハスラーとごっちゃになっちゃう可能性がね、なくもないですけどね。
まあ、それはともかく、っていうか気にせず先に進むとですね。悪く、もし言った場合ね。これ、悪くじゃないんですけど。まあ、やっぱりディズニーが、あのパワーですから。世界の、地球上のエンターテイメントの王ですから。だから、なんでもやり放題ですよね。まあ、かっぱらおうと思ったら、かっぱらい放題ですよね。かっぱらいって言葉は悪いですけど、エンターテイメントっていうのはとにかくかっぱらい合いが商売ですから。ここはしょうがない。我々の記憶だと、ライオンキング騒動ね。あれがジャングル大帝じゃねーか?ってなんとかかんとか、やってましたよね。ですから、まあかっぱらうわけですけど。
いくらなんでも、Gleeからかっぱらいすぎですよね。Gleeの実質的な主題歌であるところの、Journeyの『Don’t Stop Believing』。この番組でもスピンしました。フィンが亡くなった時にね。スピンしましたが、あの曲とコード進行、リズムの作りがほぼ同じ。8ビート。ガンガンガンガンッ♪ってね。『ありのー ままにー♪』っていうのとね、『Don’t Stop Believing♪』って、ほとんど同じ情感ですから。あれ。
(菊地成孔)まあ、それはそれでいいんですが。グリークス。Gleeのマニアのことをグリークスっていうんですけど。グリークス的に言うとですね、アナの姉ちゃんの雪の女王のアメリカ版の声優。つまり本式の声優ね。各国版じゃなくて。が、なんとGleeの主人公のレイチェルの母ちゃんですよ。ほいで、アナと結ばれる主人公の男が、これまたグリークス的に言うならば、我らがマッキンリー高校。これはGleeの主人公たちの高校ですけど。マッキンリー高校、ニューダイレクションズのライバル、ヴォーカル・アドレナリンの、これライバル校のGleeクラブの名前ですけど。の、やがて顧問になるOBの嫌な野郎がやってますから。結構、主要キャストそのままぶっこ抜いてますからね。
だからまあ、結構これGlee取ったよなっていう映画だなって、2番目の感想なんですけど。えー、隣のJKが気にしていたことは、自分が深く腰掛けた時にポップコーンのラックから自分の手が遠いっていうことでしたね(笑)。『ポップコーンが遠いんですけど!』って言ってました。はい。
<書き起こしおわり>
※Gleeレイチェルとイディナ・メンゼル(エルサ)のデュエット
※Gleeレイチェルとジョナサン・ドリュー・グロフ(クリストフ)のデュエット