漢 a.k.a GAMIさんとSIMI LABのOMSBさんがTBSラジオ『粋な夜電波』にゲスト出演。菊地成孔さんとラッパーとしての衰えや、若手ラッパーたちの台頭について話していました。
(菊地成孔)まあ、そんなこんなでアルバムで合流できて本当に光栄に思っているわけですが、このアルバムの特集に関しては後日やるとして、まあお二人にここ最近のよもやま話というか。オムスはどうですか? 最近。
(OMSB)最近……。
(菊地成孔)忙しいでしょう? 単純に。
(OMSB)なんか忙しいですね。なんかそれが実を結んだかどうかがちょっとわかっていないんですけど。なんか忙しくなっているなっていうのはすごく感じますね。
(菊地成孔)オムスって全く……漢さんもそうなんだけど。衰えたっていうのが……まあ、オムスは年齢もあるけど。ちょっと衰えて数年動けませんでしたとかいうのとかさ、元気なんだけど何をやってもダメでっていう時を感じないよね。デビューしてからずーっとピークじゃない?
(OMSB)いやいやいや。精神的なヘコみは1人の時にドーン!って来ていて。人といると、割りとなんかワーッてできるんですけど。
(菊地成孔)でもそれって現代の若者のデフォルトなんじゃないの?
(OMSB)デフォルト。そうですよね。だからそのまんまの感じで来ちゃっているっていうか。だから、歳を行ったつもりではないんですけど。とはいえ、若い頃の感じってどうだったかな?って考えるっていう。
(菊地成孔)オムスの20代も終わりを告げるわけですからね。
(OMSB)そろそろだなっていう感じはやっぱりしてくるなと思って。
(漢 a.k.a GAMI)まあぶっちゃけ30前半まではラッパーはあんまりそこ、感じないと思うんですよ。
(OMSB)俺、なんかすげー感じちゃうんですよ。
(漢 a.k.a GAMI)俺、この2、3年、やけに感じるんだよな。
(菊地・OMSB)(笑)
(漢 a.k.a GAMI)すっごい感じる。この1年とか、本当にすごいわ。びっくりしたわ。「とうとう来た……」みたいな感じだわ。
(菊地成孔)あれは関係あるんですか? 『フリースタイルダンジョン』は。こっちは見て楽しんでいるばっかりだから。
『フリースタイルダンジョン』
(漢 a.k.a GAMI)いや、『フリースタイルダンジョン』はですね、いろんな意味で過酷ですね。やっぱりこの、ひとつは言い訳になっちゃうけど、土俵とルールが違いすぎるっていうかですね。その、あれはスポーツ的バトルなんで。で、テレビっていう時点でスポーツ前提でエンターテイメントも含めてバトルしないと意味がないんで。せっかくやるのにっていうところを考えると、やっぱりそんな器用なことはできなかったっていうのがひとつと、まああとはその、噛み合う組み合わせっていうか。相性がいいっていうか。
(菊地成孔)うん。
(漢 a.k.a GAMI)ある意味、自分タイプだったり、若い相手でも「この小僧!」って思える小僧っぷりをやってもらえるとメラッとは来るんですけど。やっぱりもう、ハナっから、やっぱりよくないことだけどスポーツ的アプローチはなかなか難しいですね。僕は。だったらサイファーとかの方が得意かなと。
(菊地成孔)まあまあ、『ヒップホップドリーム』的に言うと「チャンバラ」ですよね。
(漢 a.k.a GAMI)そうです。ただ、そのチャンバラが若いやつらのチャンバラスキルがパないです。
(菊地・OMSB)(笑)
(漢 a.k.a GAMI)年々。
(OMSB)チャンバラでさばきまくるみたいな。
(漢 a.k.a GAMI)「チャンバラでお前、いよいよ本物の刀に勝つか?」みたいな。
(菊地成孔)(笑)
(漢 a.k.a GAMI)「この真剣が避けられている上に、チャンバラを何発入れられている?」っていうぐらいで。そういう試合になりつつあるぐらい、やっぱり若いやつらが底上げしている力っていうのがですね。年上よりも年下がこう、なんでもどんな文化でも、新しい文化ってスキルはすごいじゃないですか。
(菊地成孔)すごいですね。
(漢 a.k.a GAMI)なんで、それこそ宇多丸さんも言っていたんですけど。RHYMESTERの宇多丸さんが僕らが若い頃、出てきたばっかりの頃に「ああ、もうこういう風に日本でもなってきたか」って。「そこで戦うのは自分はもうハナからしないと決めていた」と。
(菊地成孔)なるほど。
(漢 a.k.a GAMI)「自分らが戦う部分はこういう部分だっていうのを大事にする」っていう部分で。別にそこで勝負したってキリねえやっていう。僕も、いま思います。若いやつらに。
(菊地成孔)なるほど。
(漢 a.k.a GAMI)だけど、まあね。「来たか……」っていう感じでした。今年は。高校生ラップ選手権も僕、見ているんですけど。この前の高校生ラップ選手権なんかは、すごかったです。認めざるをえないというか。これ、仕込みも含めても、エンターテイメントとしてもすごいわみたいな。高校生のくせに。なんで、そういう意味では楽しみですね。日本のヒップホップは。
(菊地成孔)いやー、それね、まあラッパー的には僕がいちばん後輩なんで。韓国語で言うと「フベ」ですけどね。先輩が「ソンベ」(笑)。いちばんフベなんですけど。ジャズも同じですもん。全く。もう20代はチャンバラなんだけど、めちゃくちゃ上手いの。
(漢 a.k.a GAMI)ああ、技術は。
ジャズの新世代の若手たち
(菊地成孔)めっちゃくちゃ上手いの。もう、なんて言うの? こっちの業界、ソンベが80代までいるんで(笑)。ジャンル的に古すぎて。骨董品だから。だから、80代までいるんだけど、もう80代のソンベは本物で真剣を持っているんだけど、もうボロボロなんですね。だけど20代がね、もうやっぱりライトセーバーのおもちゃでものすごいことをするから。もう、とてもじゃないけど。
(漢 a.k.a GAMI)ジャズの世界でも、あれですか? ニュージャンルっていうか、新しいパターンの弾き方とかを若いやつらが生み出すみたいな?
(菊地成孔)うん。もうニュースクーラーが出てきたら、前のスクーラーはダメ。一掃。一掃ですね。まあ、いまだったら単純に、オムスとか実際に会ったことがあるけど、ロバート・グラスパーみたいにできたらニュースクールよ。
(OMSB)ああ、なるほど。
(菊地成孔)で、グラスパーのところのクリス・デイヴみたいに叩けなかったら、もうオールドスクール。で、若いガキどもは全員叩けるのよ。なんだか知らないけれど。
(漢 a.k.a GAMI)それオムス、すっごい微妙なところにいるんじゃないの? それ。どっちに転ぶかわからないぐらいの。ちょうど歳も含めて。
(OMSB)怖いっすね。でもまあ、自分のあれはもうできてきていると思っているんで。案外、そこで分けられても……とは(笑)。
(漢 a.k.a GAMI)いや、分けてみたいな。見てみたいな。その、どっちにできるかを。っていうぐらいの歳だね。ちょうど。
(OMSB)そうっすね。まあ、がんばりますね(笑)。
(漢 a.k.a GAMI)できないでいてほしい。
(菊地・OMSB)(笑)
(菊地成孔)いま、ラジオ収録平均を大きく超えたオフマイクのまま見つめあってしゃべっている、この見つめあいっぷりが(笑)。半端じゃない(笑)。
(漢 a.k.a GAMI)OMSBの本気の目がヤバかったですね。本気の目、してた。
(菊地成孔)そうね(笑)。
(OMSB)ちょいちょい俺、冗談通じなくなって(笑)。
(漢 a.k.a GAMI)ねえ。びっくりした。いま。
(菊地成孔)まあ、オムスはね、社交性あるからね。
(OMSB)あります?
(菊地成孔)社交性あるよ。だって、社交性あるよ。会社員になったって、成功してる感じじゃない? なんか。オムス。
(OMSB)いや、会社員やって、もう本当に嫌だったっすね。
(菊地成孔)ああ、本当?
(OMSB)ちょっと病みました。本当に。無理だなと。
(漢 a.k.a GAMI)何の仕事やったの?
(OMSB)米軍基地の倉庫の仕事をやったんです。
(漢 a.k.a GAMI)それはまあ、大変だね。
(菊地成孔)まあ、それはでも悪い場所だよ。それこそ。
(OMSB)相当悪かったっす。本当に。
(菊地成孔)まあじゃあそんな、いま20代に別れを告げるべく……オムスが20代に別れを告げるということは同時に、あいつも同い年だよね? ケンドリック(・ラマー)。ケンドリックも同い年でしょう?
(OMSB)はい。
(菊地成孔)ケンドリックも20代が終わるわけですね。いろんな時代が来ますけども。
<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/43146