菊地成孔さんがTBSラジオ『荻上チキSession22』の中のニュースコーナーで、大阪の秘密の隠れ家バーが食べログに情報を掲載されて損害を受けたニュースを取り上げました。
(南部広美)ではその前に、ニュースリミックスです。今日のニュースと最新のニュースをまとめてお送りしましょう。(略)『先週末の記録的大雪で、依然として一部の集落が孤立しています。関東の1都5県ではおよそ2500世帯が孤立状態になっています』。(略)『秘密の隠れ家を売りにした大阪市内のバーが食べログに写真などを掲載され、損害を受けたとしてサイトを運営する価格コムに掲載情報の削除と、損害賠償などを求める訴えを起こしました』。
(荻上チキ)さて、菊地成孔さん。今日気になったニュースは?
(菊地成孔)まあ、2か7ですかね。
(荻上チキ)2か7。雪の話か・・・
(菊地成孔)7の話をすると怒ってしまいそうです。
(荻上チキ)食べログですか?
(荻上チキ)2にしたいですかね。
(荻上チキ)食べログはなぜ怒るんですか?
(菊地成孔)食べログは、あんまり好きじゃないんです(笑)。
(荻上チキ)食べログは好きじゃない?
(菊地成孔)あの、食べログのユーザーの方はどうのこうのじゃなくて、ただ・・・そうですね。まああんまり好きじゃないですね。これ、取り消してあげればいいのに。表現の自由って、投稿する人の表現ってことでしょ?
(荻上チキ)投稿する人が消してくれれば、それで一件落着っていうような取られ方なんでしょうかね。
(菊地成孔)あの、僕のいきつけのビストロがあって。それでとてもいいメートル(給仕)の方がいて。まあ、ギャルソンですね。ギャルソンの方がいて。パリ風のギャルソンっていうか。パリの実際の本場のギャルソンって、ものすごい愛想悪いんですよ。『あ、来たの?食えば?』感じ。
(荻上チキ)(笑)
(菊地成孔)『座れば?』っていう態度を取るんですね。結構クラシックスタイルのギャルソンが・・・ビストロが好きな日本人の方には愛されている方だったんですけど。食べログでなにも知らない人が行って、横柄だ!ってボロカスに書かれてクビになっちゃったの。
(南部広美)えーっ!?
(菊地成孔)それを店長が読んで、呼び出されて。その人、ダンディーな人だから『自分のスタイルは崩さない』っつって。僕、すごい仲良くして、いい思いしてたんで。ある日、急に『辞めました』って言うんで、『どうしてですか?』っつったら、食べログに書かれて。食べログに態度が悪いとか・・・(笑)。そりゃそうだよ!そういうこともあるよ、世の中には!っていう感じなんですけど。とにかく相当、なんて言うんですか?ファストフードみたいにニコニコしてホスピタリティをふりまかないと書かれちゃうっていうのは、ああいうダンディーな人には息苦しいのかな?っていう。
(荻上チキ)っていうか、お約束みたいなものなわけでしょ?それはだって。それでツンツンされるのが。その店では。
(菊地成孔)その店ではっていうか、その方の。まあ、もちろんものすごくベタ付きでホスピタリティの高いギャルソンもいますよ。だけど、まあそういうのもあるんだっていうことですよね。食べログって結局、お客さんが相当ホスピタリティ良くされないと、悪く書かれちゃうじゃないですか。
(荻上チキ)良くないと、『最悪!』みたいなね。
(菊地成孔)そうそうそう。なんで、それで結構魔女狩りっていうか、血祭りにあげられて。辞めちゃったという苦い思い出があり、あんまり好きじゃないんですね。その件に関しては。
(荻上チキ)今回もね、隠れ家を売りにしたバーということですけども。これだけ報道されれば、どの隠れ家だっていうことでね。
(南部広美)もう隠れ家じゃなくなっちゃう。
(荻上チキ)殺到する可能性もありますけれども。
(菊地成孔)まあ、一種のダーティーっていう方じゃないけど、ジャーナリズムになっちゃってますよね。みんなカメラ持って、取材して、発表するんだから。で、『表現の自由』って言われちゃったら、ジャーナリズムなんで、もう1億総ジャーナリスト時代っていうね。いまさら言っても詮無いですけど。
(荻上チキ)でもお約束がこうやって崩れちゃうということで、なかなか特定少数だけをターゲットにするって、ネットはそもそも向かないメディアじゃないですか。だからまあ、そういうことになるんですね。組み合わさると。
(菊地成孔)どうかな?と思いますね。食べログ、面白いですけどね。『食べログがこう書いてるってことは、このぐらいの店だろう』って当たりをつけていくのが好きなんですよ。
(荻上チキ)当たります?
(菊地成孔)当たりますね。
(荻上チキ)つまり、食べログの言うことを信じないで、そのいろんなことを・・・
(菊地成孔)基本、私誰の言うことも信じないんで(笑)。『こう言ってるってことは、こういうことだな?』っていうのが、まあ全てじゃないですか。だから、食べログがこう扱っているっていうことは多分そうだろうっていう想定で行くと、だいたい当たるんで。参考にはさせていただいてるんです。たまにね。いつもじゃないけど。
(荻上チキ)その、隠れ家ってあるんですか?
(菊地成孔)ぜんぜんないですよ。隠れ家なんか。
(南部広美)ありそうですけど?
(菊地成孔)いやいや。隠れ家ぐらい作っておけっていう話ですけど。行った店が美味しいと、うれしくなっちゃってブログみたいなのでどんどん宣伝するんで。ちょっと熱狂的なファンの方にね、ちょっとこじらせた方に待ちぶせされたりして困っちゃったなっていうことの方が多いですね。だから、気をつけてます。
(荻上チキ)なるほど。なるほど。
(菊地成孔)ただ、基本的にはみなさん、ファンの方は品よくやってくださっているので。私が紹介して行きましたって、お店側にも喜ばれることが多いですよ。まあ、どういう世界にもね。
(荻上チキ)遊び上手だから菊地さん、いいですけどね。僕なんか、バーとかほしいですよ。隠れ家とか。
(菊地成孔)ありそうじゃないですか?
(荻上チキ)いや、ないですよ。
(菊地成孔)チキBAR。
(荻上チキ)チキBAR(笑)。だいたい仕事終わるの3時なんで。そもそもやっているバーが少ないんですよ。
(菊地成孔)ありますよ。3時からやっているバー、いくらでも。探せばありますよ。要するに、レイトでやっているところに行けばいいわけですよね。
(荻上チキ)そうなんですね。僕、あのネット世代だから、それこそ結構食べログで検索しちゃうんで。なんかね、それこそ先輩とか菊地さんとかね、なんか知っている人に『ここいいよ!』って、口コミで連れて行かれるの、やってみたいですね。
(菊地成孔)食べログ、手っ取り早いじゃないですか。3時以降やっているバーっつって、ガーッと出てくるじゃない?
(荻上チキ)そうですね。『赤坂で』みたいな。でもなんか、俺も微妙にそこを信用しきれないんですよ。
(菊地成孔)(笑)。そうなんですか。
(南部広美)調べてはみるものの。
(荻上チキ)そうそう。やっぱりなんか、『この子ね』みたいな感じで最初にマスターと会話に乗せて、みたいな。ちょっと誘導してくれるようなスタイルがいい感じですね。
(菊地成孔)ああ、ああ。
(南部広美)先輩がほしい系ですよ。
(荻上チキ)そうそう。
(菊地成孔)なるほど。なるほど。『この子ね』ってそういうことね。
(荻上チキ)そうそう。孤独感がハンパないんで。1人で戦っている感がハンパないんで。
(菊地成孔)スタジオみる限り、孤独っていったらバチ当たりますよ。
(荻上・南部)(笑)
(菊地成孔)私、1人でやってるんですから!たった1人です。たった1人!たった1人でやってるんですよ。こんな、南部さんが対面にいて、作家の方もいらっしゃって。そんな、私もいてね。家族じゃないですか。家族(笑)。
(荻上チキ)群衆の中の孤独、じゃないですけどね。
(菊地成孔)いやいや、そんな群衆の中の孤独とか、仮面鬱とか、上等ですよ!本当に。
<書き起こしおわり>