山下達郎さんが2026年10月25日放送のTOKYO FM『山下達郎のサンデー・ソングブック』の中で自身の楽曲の中からライブで演奏できない楽曲をセレクトして紹介していました。
(山下達郎)今日、10月25日。10月最終週ですけれども、また得意の聴取率週間というやつで。皆さん、頑張っております。ゲストを呼んだりですね、プレゼントをしたり。それでうちは何をやるかと言いましたら、ヤマギシくんが「『JOY 2』が出たのでライブで演奏できない曲を特集したらどうだ?」っていうですね。まあ、そういうのもありだろうということで。ディレクターの仰せに従いましてですね、ライブで演奏できない山下達郎の曲で棚からひとつかみ。長いんですけど。で、実際にライブで演奏の難易度が非常に高い曲、演奏できない曲。原因はいろいろあるんですけども。今日、お聞きをいただく曲はですね、一応ツアーやる時に練習したことがある曲です。なんですけど、様にならなくて。結局、いまだにライブで一度もやってないという、そういう曲を今日は集めました。理屈が多くてすみませんけども。あの、難しいんです。はい。
でもまあ、お聞きになると「なんでこれができないのかな?」って、そういうご意見もありますけど、できないんです。なんでできないか? それは追々。というわけで、変なあれですけどこんなもんで聴取率週間が乗り切れるのか、よくわかりませんけども、いいんです。私の責任じゃありません。日曜日の午後のひと時、本日は山下達郎のナンバーでお楽しみをいただきます。ライブで演奏できない山下達郎の曲で棚からひとつかみ。本日も最高の選曲……かはわかりません。でも音質はちゃんとしておりますので、よろしくお願いします。
で、ライブでできない筆頭はですね、98年のシングル『ヘロン』。これ、音が厚いんですね。ですので、シックスリズムで再現が非常に難しい。じゃあテープを使えばいいじゃないか?っていうことでテープを使ってやってみたんですけど、まだですね、音圧がレコードには敵いませんので。なんかちょっと改善すればできるかもしれませんけど、今のところまだ不可能な部類に入ります。今日はこれで始めます。『ヘロン』。
山下達郎『ヘロン』
(山下達郎)山下達郎がお送りいたしております。『サンデー・ソングブック』。というわけで、今日はライブで演奏できない山下達郎の曲で棚からひとつかみ。レコーディングという作業をですね、昔は本当に一発録り。オーケストラ、リズムセクション、全員が揃ってですね、歌も一発で録る。そういう時代からマルチトラックといって別々に録音して。一番最初は歌を別にしてですね。オーケストラ、カラオケですね。カラオケを別に録って。でも、だんだんバランスがもっと緻密にやりたい。全部バラバラに録る。リズムセクションを録って、ブラスを録って、ストリングスを録って、歌を録って、コーラス。だんだん細分化していく。
で、そうしますと非常に手の込んだことができるんですけども。逆にライブでの再現性というものがどんどん遠くなってくる。典型的なのはビートルズで。ビートルズ、初めはそれこそ4人でやってたのがですね、『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』というとんでもないものを作りまして。完全に再現が不可能になって。それでライブがなかなかできなくなって。あと、曲が複雑化するんですね。そういうので。来日公演でジョージ・ハリスンが『If I Needed Someone』を弾きながら歌えないとか、そういうシーンがありました。
そんなようなことでですね、年月経るうちにだんだん手が込んできますとレコーディングでは成立しても、ライブで再現がなかなか難しいという。私も80年代の後期からそういう目に遭いましてですね。そんなやつのとっかかりが今、お聴きをいただいております『踊ろよ、フィッシュ』。87年のシングルですけれども。やっぱり自己模倣っていうか、そういうものを避けるために特にアレンジに凝って色々な要素を入れますと、これをさあ、ライブでやろうとすると大変なことになるという。そういうもののとっかかりです。
山下達郎『踊ろよ、フィッシュ』
(山下達郎)で、それに加えてまだ30代ですので、声がよく出ている。レコーディングですといくらでも声が出るのでキーを高く高く設定してしまう。自分でも「高い高い病」って言ってライブでも申し上げてますけども。そうするとステージでやると高くて……なんでステージでやると高いのがきついかというと、20曲やるからです。1曲だけだったらなんとかなるんです。ですから、さっきの『ヘロン』もですね、「1曲だけやれ」っていうんだったらあれでなんとかなるんですけど、それがまあ2時間半のライブでやろうとすると大変だという。説明が長くなっておりますが。
そんなようなものがいろいろな理由でライブで演奏できない曲というのが何曲もあります。今日はそれを中心にお聴きをいただいて。だからどうしたという世界ですけれども。ですので、80年後期からそういう曲が増えてきます。で、70年代から82年。『FOR YOU』ぐらいまででしたらほとんど再現可能なんですけども。『POCKET MUSIC』あたりからそういうものが出てきます。この曲も『POCKET MUSIC』に入っておりますが。これ、自分は気に入ってるんですけどなかなか……これ、リハで練習してるんですけど、なかなか形にならないという。そのうちになんとかなるんじゃないかという。またトライしてはみたいと思いますが、現時点では演奏不可能な1986年アルバム『POCKET MUSIC』の『メロディー、君のために』。
山下達郎『メロディー、君のために』
(山下達郎)86年のアルバム『POCKET MUSIC』から『メロディー、君のために』。とにかく音が厚いんです。なのでライブのシックスリズムではとても再現が間に合わない。で、そういうパターンがたくさんあります。そうするとライブでどうするか?って、人数を増やしていくんですね。ピンクフロイド。この間、お聴きをいただいたあの時代ですと4人で純粋にライブをやっても再現はある程度、できるんですけども。もうあの『The Wall』とか、ああいうのになると全く不可能なので。何人も総出でやります。
ビーチボーイズもそうですね。15人ぐらいでやっています。あとはサザンオールスターズもそうですね。そういう感じでなっていくんですけど僕、そういうのがダメなので。なるべくシックスリズムで貫徹したいという。するとなかなか演奏難しい曲が……今なんか、もう典型です。次の曲もそんな感じで練習してるんですけど、なかなか再現性があれなので。もうちょっと頑張ってみようと思いますが。2001年のシングル『君の声に恋してる』。
山下達郎『君の声に恋してる』
(山下達郎)2001年のシングル『君の声に恋してる』。音が厚いんですよ、この頃は。なんで厚いかというとですね、デジタルレコーディングが……何て言いましょうかね? アナログの頃のように厚みが出ないんですね。いわゆる楽器をたくさん入れないと厚みが出ない。それでレコーディングをやってると、どんどんどんどん要するに楽器が多くなってくるという、そういう時代で。さっきの『ヘロン』とか全部、そういう時代に作られたものなので。で、不思議なことにですね、2010年前後からライブを再開しまして。その頃になるとデジタルがだいぶ良くなってきてですね。薄い音でも割と音圧が出るようになってきたので、その後のたとえば『ずっと一緒さ』とかですね、『僕らの夏の夢』とか、割と薄いオケで成立してるんでライブで再現性が高くなってきているので最近の曲の方がライブで使ってるという。そういうので今、聞いてて「なるほどな」って自分で納得したりしておりますが。
でも、やっぱり曲の持ってる構成とかそういうものがですね、ライブに合わないっていう。そういう曲がやっぱり少なからずあって。それは練習してもどうもうまくいかないというですね、そういう曲があります。で、好きな曲なのにそういうものがありますが。これもそういう1曲で、1980年のアルバム『RIDE ON TIME』に入っております。『雲のゆくえに』という。これ、元々吉田美奈子さんに書き下ろしたやつのセルフカバーなんですけども。これも何回も練習しているんですが、なかなかうまいこといかないという。『雲のゆくえに』。
山下達郎『雲のゆくえに』
(山下達郎)1980年のアルバム『RIDE ON TIME』に入っております『雲のゆくえに』でございました。リズムパターンを聴くとなんか楽勝でできそうな感じするんですけど。これがなかなか様にならないですね。なかなか人生、難しい。
(中略)
(山下達郎)で、この曲もですね、おなじみですけども。これは一度、二度、ライブでやりましたけど。なかなかやっぱり思い通りの音になりません。96年年のシングルおなじみ『DREAMING GIRL』。NHKで(朝ドラ『ひまわり』)再放送してます。
山下達郎『DREAMING GIRL』
いろいろな事情でライブでやってもうまくいかない曲というものが存在するんですね。なかなか難しい!
