町山智浩 映画『Riceboy ライスボーイ』を語る

町山智浩 映画『Riceboy ライスボーイ』を語る こねくと

町山智浩さんが2026年3月31日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『Riceboy ライスボーイ』を紹介していました。

※この記事は町山智浩さんの許可を得た上で、町山さんの発言のみを抜粋して構成、記事化しております。

(町山智浩)で、もう1本はこれね、韓国系カナダ人による韓国・カナダ合作映画の『Riceboy ライスボーイ』という映画です。これも同じく今週、4月3日公開なんですけれども。これ、『Riceboy ライスボーイ』っていうのは「お米少年」って意味ですね。で、これは1990年代に韓国からカナダに移住したシングルマザーとその息子の話なんですよ。

で、これは監督がアンソニー・シム監督という人でその人自身の体験を元にしてるそうです。で、韓国でこのお母さんは20代、結婚前に妊娠しちゃうんですけども。お父さんが結婚前に亡くなってしまったので。で、その当時の韓国の田舎だったんで非常に生きづらくて。それでカナダに仕事と息子の未来を求めて移住してきたということになってます。

ただね、監督自身の体験なんで男の子、最初は幼い8歳の男の子だった彼の目から見た世界になってるんですけれども。この映画がね、また撮影がすごく凝ってまして。16ミリフィルムで撮影してるんですよ。これ、16ミリっていうのは35ミリっていうのが今の普通の映画のフィルムなんですね。それの半分なわけですけれども。そうすると粒子がすごく粗くなるんですけど、すごくいい感じに粗くなるんですよ。だから思い出の中のような画面に見えます。淡い感じで。

これは監督自身の子供の頃の思い出だから、くっきりと映ったらちょっと変だなってことで16ミリにしたそうなんですけれども。ただ、その映画自体はスタンダードサイズと言われる昔のテレビのブラウン管に近い、横が短くて真四角に近い縦横比なんですよ。だから狭苦しいんです。

窮屈な感じなんですよ。これはやっぱりカナダに行ったんですけどその当時、アジア人がほとんど住んでない田舎の方……なんかすごい森の奥なんですよ。この子たちが住むところは。で、アジア人を見たことない人の中ですごく肩身が狭く暮らしていった感じを画面で見せてるんですね。

タイトルの意味

(町山智浩)で、『Riceboy ライスボーイ』って言われるのは小学校のお弁当に韓国料理を持っていくわけですよ。すると周りの子たちは全然、そんなものを見たことないわけですよ。ほら、にんにく入ってるじゃん? それで「臭い」って言われるんですよ。白人の子たちに。で、まあいじめを受けますね。あとね、キンパって海苔じゃない? 1990年の段階だと黒い海苔を外側に巻いた海苔巻きはアメリカでは白人は食べなかった。

カリフォルニアロールって海苔を内側に巻くじゃないですか。あれは外側に巻くと黒くて白人が食べられなかったからなんです。僕がこっちに来た時、1997年だったんですけど娘のお弁当におにぎりとかを持っていくと真っ黒いから、他の子たちが「一体何、それ?」って言って。だから僕は食べて見せたりしましたよ。「おいしいよ」って。

あと、この子は最初、英語できないしね。で、ライスボーイ(米野郎)って言われていじめらるんですけど。この映画、もう一つ全てのシーンがワンカット、ワンショットで撮られてるんですよ。1本の映画がってことじゃないです。全てのシーン、それぞれのシーンが。一つのシーンになると、一つの場面は全部一つの演技で一つながりに撮ってます。

これ、子役の子がうまいからできるんだなと思いましたね。これ、大変なんですよ。1回、失敗したらもうパーで。しかもこれ、フィルムで撮ってるしね。全部パーになりますから。大人でも嫌ですよね。はい(笑)。だからこれはね、それが非常に美しい撮影で。常にカメラが移動しながら、しかも最初の方はこの韓国人の親子は画面の隅っこにしかいないんですよ。肩身狭く暮らしてるから。

それがだんだん、この子が15歳になっていくと表に出てきて。画面のこっち側、前の方に出てくるっていう形で。でもね、この親子、頑張るんですけど言えないんですが、大変なことになっていくんですよ。ここまで不幸が続いていいのかよと。もうこれはちょっときつすぎない?っていう展開に後半、なっていくんですけど。で、男の子は15歳になってね、やっぱりなんていうか、自分のあまりにも不幸な状況にいら立って暴れるんですよ。で、出口がないじゃないですか。この話。でも、ちゃんと出口があるんです。

でね、このずっと閉塞感があった画面が一気に後半、広がります。パーン! と横に。で、素晴らしいことになっていくんですよ。解放されていくんですよ。それは、ちょっと言えないです。で、さっき言った『落下音』もものすごい女性たちが本当に押しつぶされてる世界なんですけれども。最後にちゃんと解放があるんですよ。両方とも結構、きついことはきついんですが、ちゃんと解き放たれますんで。主人公たちは。という映画『落下音』と『Riceboy ライスボーイ』、どちらも今週公開です。

町山智浩 映画『落下音』を語る
町山智浩さんが2026年3月31日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『落下音』を紹介していました。

『Riceboy ライスボーイ』予告

アメリカ流れ者『Riceboy ライスボーイ』

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