町山智浩さんが2025年4月8日放送のTBSラジオ『こねくと』の中でドナルド・トランプ大統領が発表した相互関税政策についてトーク。この政策によって今後、起きるであろうことを話していました。
※この記事は町山智浩さんの許可を得た上で、町山さんの発言のみを抜粋して構成、記事化しております。
(町山智浩)今、アメリカは大変です。それは……トランプの関税です。アメリカの人はね、ほとんどが401Kという株で老後の年金を運用してるんですよ。それがもうみんな、吹っ飛びましたね。この3日間でアメリカの株価が大暴落しましたんで、みんな老後のお金が吹っ飛びました。はい、大変な事態になってます。
401Kの老後資金が吹っ飛ぶ
(町山智浩)これ、なぜこんなことが起きているのか、わからないかもしれないですけども。とにかくね、アメリカのお店に行くとわかりますけど。日本でもそうですけど。洋服から家電から家具から、ありとあらゆるものは外国製ですよね。
で、たとえば服なんてほとんどが東南アジアで作ってますよね? バングラデシュとかね。あと、靴なんかもそうですけど。カンボジアとかベトナムとか、そういうところで作っているわけですけども。そこに対しての関税を大変なことに50%ぐらい、かけるんですよ。
そうすると、もう服とかも買えないし、靴も買えないですよ。一切。で、自動車なんかはそうですけれども。部品はほとんど……以前、前タイで洪水があった時に世界中の自動車工場が動かなくなりましたけど。やっぱり東南アジアで部品を作ってたりするんで。それで自動車も作れなくなる。だから全ての商品がもうアメリカで作ってないのでね。現在は。
それこそバーボンとか、バドワイザーのビールとかしかアメリカで作ってませんから。もう何もかもが関税によって3割から4割以上の値上げになるんですよ。で、株価が下がって、貯蓄というか、老後のお金が失われた段階で物価が3割とか4割上がったらもう生活ができないですよ。大変な事態になってますけど。
資産が減り、物価は上がる
(町山智浩)トランプさんはそうやってアメリカが海外のものを買うっていう状況で貿易赤字が大きいから、それをなくしてアメリカ国内でものを作っていた時代に戻すって言っていたんですけど。アメリカは要するに洋服とかね、そういった工場で作れるようなものは外国でに出して。アメリカはITであるとか金融であるとか、そういった産業に移ったんですよ。ものを実際に作らなくなって。だから、世界中の投資がアメリカに集まって、アメリカは豊かだったし。で、世界中の貧しい国にたくさん仕事を分けて、そこにアメリカのお金を流していったんで、他の国もみんな……それまで最貧国だったような国がみんな、豊かになっていったんですよ。
だから全員がWin-Winだったんですよ。グローリゼーションっていうのは。それを全部、潰すんですよ。これでアメリカ国民が得するか?っていうと、一切得しないですよ。これ、鎖国じゃないんだけど……でも「何もいいことがない」っていうことにみんな、気がついてきて。それで結構、トランプさんにいろんな企業の人とか……それこそイーロン・マスクですら、「これは間違ってるから、やめた方がいい。世界的な大経済危機に陥るぞ」ということでトランプに言ったんだけど。でも、トランプって人に言われるとカチンと来ちゃうから、これは逆効果で。だからもう絶対にやり続けるでしょうね。これはね。
これ、大変なことになるかもしれないですよ、本当に。僕、この間、イタリアに行ってきて。あのローマ帝国ですら、崩壊したんですからね。あれが崩壊した理由っていうのは、すごく明確で。ローマ帝国の中にケルト人とかゲルマン人って言われる、ローマ人じゃない人たちが入ってきた時に彼らを差別しちゃったんですよ。で、ローマ帝国の中に入れなかったんですよ。ローマ人として認めなかったんで、彼らの方が人口が増えちゃったから崩壊したんですよ。
中国はいろんな多くの民族がいるけれども、いわゆる漢字を使う人たちをひとつ、同じ民族と考えるみたいなことをやったんでずっと大帝国になり続けたんですよね。で、モンゴルもそうでしたよね。だからね、そういう排除して切り捨てていって……要するに鎖国みたいなことをすると、それでうまくいったのって江戸時代の日本ぐらいですよ。それはね、大抵滅びるんで。だからね、もうこれはどうしようかなと思ってね。もう、絶望的な気持ちになってはいるんですが……。でもまあ、人はそんなにバカばっかりじゃないからなんとかなるかって気持ちもありますが。はい。いろいろ大変ですが。