鳥嶋和彦と近藤裕　頑固で負けず嫌いな鳥山明を語る

（近藤裕）ベジータあたりが途中から仲間になるわけですよ。それまで。最初は本当の敵だったんだけど、フリーザが出てきたおかげでベジータがこっち側になった。でね、そういうような、ただ単に常に誰かと戦ってるというよりも、前は敵だけれどもここでは共闘になるんだなとかっていう。そういう流れはちゃんと別個にはあったんで。「別個にあった」っていう言い方は変なんですけども。だから、ただ単に戦いだけっていう感じでもなかったかなっていう気は僕はしてるんですね。で、鳥山さんがじゃあそれを無理やりやっていたのか？っていうと、たぶんそれはないな。鳥山さんは鳥山さんちょっと面白がっていたんじゃないかな？

（鳥嶋和彦）あのね、おそらく僕はだからその『ドラゴンボール』の立て直しで悟空っていうキャラクターはどういうキャラクターか？っていうことで、修行編を経て天下一武道会で先頭の方に持っていったんだけど。鳥山くんはね、（元となった読み切り作品の）『ドラゴンボーイ』を書いた時もそうだけど、自分の書きたいものではないわけ。だけど、書いてみたらこれは意外と楽しいとかね、読者の反響があるっていうことによって、そっちの方に自分で踏み込んでいった。だからたしかに本来、彼がやりたいものはジジイとかが出てきてさ、日常的なギャグがどうこうでっていうので、面白くないわけ。だから彼に素直に書かせると本当に地味でつまらないものになる。だけど、読者っていう光を当てて反響を彼に伝えると彼はやっぱり負けず嫌いだから。そっちに踏み込んでいく。

（近藤裕）ああ、それはあるね。負けず嫌いって、ありましたね。

（鳥嶋和彦）彼はやっぱりね、負けず嫌いで頑固で好奇心があるから。だからやっぱりね、負けるのは嫌なんだよね。

（近藤裕）それはあったね。きっとね。

（鳥嶋和彦）強い。ものすごく頑固だよね。

（近藤裕）「嫌だ」って言ったら本当、嫌ですしね。「やる」って言ったら絶対やるし、みたいな。だから、何とか「やる」って言ってもらうえるようにしたいんですよ。で、言ったらやってくれるんだっていう。

（鳥嶋和彦）そう。だからね、実は桂（正和）とのやり取り。彼を紹介して、担当編集の悪口を言うように向けていって。それでストレスを発散するできるだろうって。そうしたら案の定、僕の悪口を延々と言っていたっていう、それはいいんだよ。なぜかというと、やっぱりね、実際のところは結構ひねくれてて、口が悪いんだよ。

（近藤裕）アハハハハハハハハッ！

（鳥嶋和彦）だけどやっぱりほら、社会人を経験してきて、礼儀正しい部分はあって。その方が得だと思うから、そこは出さないわけ。近藤くんが言うように。だけど、しばらく付き合うとだんだんお互いがわかってくるから。

（武田冬門）でもね、鳥嶋さん。それはね三代目の担当として見ていた僕の視点で言うと、まあ桂さんと鳥山さんの2人……僕、両方を担当したから。2人が会うと、鳥嶋さんの悪口しか言わないですよ。「あの時にこんなことされたんだ」とかね、めちゃめちゃ言うんですけど……これはね、別におためごかしで言うわけでもなんでもないんだけど。なんだろう？　すっげえその悪口を言われている鳥嶋さんっていう存在に嫉妬心を抱いちゃうんですよ。「こんなに信頼してるんだ！」みたいな。

（近藤裕）だってさ、そんなことしてないもん（笑）。

（鳥嶋和彦）アハハハハハハハハッ！

（近藤裕）してないんだから、言われないよ。そんなひどいことなんて1回もしてないもん。鳥山さんに。

（鳥嶋和彦）近藤くん、俺だってしてないよ？（笑）。

（近藤裕）いやいや、それはわかんないけど。僕らは悪口を言われるようなことはしてないんですよ。だから言われるわけがない。

（武田冬門）なんだろう？　だからものすごい愛情を感じている人が言う悪口みたいに聞こえるんですよ。僕なんか、聞いてるとね。だから本当は悪口じゃないんです。

（近藤裕）僕がやって……やっぱりなんだかんだ言って、鳥山さんを担当させてもらってはいるけれども。全部、途中の中途半端なんですよ。言い方が変なんですけども。鳥山さんが新人でジャンプに漫画を応募してきて。で、それを鳥嶋さんが見つけて。それでああでもない、こうでもないってやって『Dr.スランプ』ができあがって。

で、その後、『ドラゴンボーイ』『ドラゴンボール』っていう風に行くわけですけども。そういう、その階段を一緒には僕らは上がってきていないんですよ。僕らはもう結構、かなりの高さのステージのところにエレベーターでやってきて。「じゃあ、この上へ一緒に行きましょう」っていうだけだから。その、すごく大変な……要するに売れるようになる前からは全然、知らないんです。だから、その頃から知っている鳥山さんの鳥嶋さん評と、僕や武田みたいに途中から来て途中下車していく僕らとはやっぱり捉え方が全然違うと思っているんですよ。

だから鳥山さんとかに聞くと、信じられないことをやってるんですよ。で、鳥山さんと2人でご飯を食べて。「これから鳥山さん、東京駅に行きますよね。一緒に行きましょう」みたいなことになるし。そうすると「普通、そうですよね？」って鳥山さん、言うんです。「いや、普通そうですよね？」って言うと「でも鳥嶋さんの時は違いましたよ。訳もわかんないでご飯を食べて。六本木とかでポンって……『じゃあな』って言って帰っちゃってるんですよ？」って。

（鳥嶋和彦）フフフ（笑）。

（武田冬門）聞いた、聞いた。それは（笑）。

（近藤裕）ねえ。これ、有名な話だよね？　「ええっ!?」みたいな話ですよね（笑）。