石山蓮華『ボーはおそれている』を語る

町山智浩『ボーはおそれている』を語る こねくと

石山蓮華さんが2024年2月20日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『ボーはおそれている』について町山智浩さんと話していました。

(石山蓮華)先週はアリ・アスター監督の最新作『ボーはおそれている』をご紹介いただきました。ボーという中年男性が実家に帰る道すがらに起こる、本当にもう災難という言葉では収まりきらないような災難の数々。私は映画館で見てきまして。

(町山智浩)どうでした? 3時間の拷問は?

(石山蓮華)いやー、もういい意味で、本当につらい3時間でした。最高でしたね!

(町山智浩)最高なの?(笑)。

最高のつらい3時間

(石山蓮華)いや、もう最悪すぎて最高っていうか。もう、個人的にはそのホラーかな?って思って行ったんですけど。本当にコメディで。笑えるところがたくさんありましたし。町山さんの解説があって、すごく見やすくなったというか。自分の中で物語の筋を通しながら見られたので。なんかこう、「ああ、こういう話か」と思ったんですけど。なんか……なんですかね? 最後まで行ってみると、冒頭から「ああ、このシーンからこの人物の手のひらの中で私たち、ずっと踊ってたんだな」というか。なんか、はじめてのお使いみたいな感じだなというような。

(町山智浩)ああ、そうですね。 はじめてのお使いって、あのスタッフがカメラをバッグに入れて。子供たちを追っかけてますからね。なるほどね。

(石山蓮華)そういうところとか。あと、お風呂のシーンがあったじゃないですか。なんか上からしずくが垂れてきて。「あれ? 結露かな?」と思うと、とんでもないものが、とんでもないことになるっていうシーン。あそこがすごく私は好きです!

(町山智浩)ああ、本当に? あのね、主人公のボーくんね。ボーッとしているボーくんが「お母さんが死んだ」って教えられて、すぐにお風呂に入っちゃうでしょう? あれは、やっちゃいけないことなんですよ。

(でか美ちゃん)ああ、それもユダヤ教の?

(石山蓮華)戒律的には?

(町山智浩)そうなんです。1週間は入っちゃいけないんだよ。たしか。

(石山蓮華)そうなんですか!

(町山智浩)肉親が亡くなった後、お風呂に入るのは……「余裕あるじゃねえか、この野郎!」っていう風にみなされるらしいんですよ。

(でか美ちゃん)いろんなルールがある中で、「僕があれをやっちゃったから、こういう目に遭うんじゃないか」っていうのは先週、解説もしていただきましたけど。まあまあ序盤でがっつり、やらかしてるんですね(笑)。

(町山智浩)やらかしてるんですよ。あれ、助けてくれる夫婦がいるじゃないすか。あの夫婦はご飯を食べる時に「神様にお祈りしましょう」ってやるじゃないですか。あれ、キリスト教のお祈りだから、ユダヤ人の彼はやっちゃいけないんですよ。

(でか美ちゃん)いろんなところに、ポイントポイントで(笑)。

(石山蓮華)もうトラップ、トラップ、トラップ、全部回収する話だったんですね。

(町山智浩)あと、ほら。道端で人に刺されるじゃないですか。通り魔みたいな。

(石山蓮華)そう! もう本当にね、不条理な刺され方なんですよ。

(町山智浩)でも、あれで刺されるところが両手のひらと、脇腹なんですよ。あれはキリストが磔になった時に刺された場所ですね。

(でか美ちゃん)うわーっ! なんか、いろんなことを考えながら見と……。

(町山智浩)で、あとお母さんのために買う……偶像崇拝しちゃいけないのに、お母さんのために聖母像を買うじゃないですか。彼は、キリストになったわけだから、お母さんはマリア様なんですよ。

(石山蓮華)ああーっ! かわいそうだよーっ!

(でか美ちゃん)「かわいそうだよ」!?

(町山智浩)そう。だから最悪のキリストの話なんですよ。『ボーはおそれている』っていうのは。で、お父さんがまた、ほら。ただの種として出てくるでしょう?

(でか美ちゃん)あの、待ってもらっていいですか? 私、ちょっと怖すぎて今週末に見るつもりなんですよ。

(石山蓮華)お友達と一緒に見に行くっていう。

(でか美ちゃん)1人じゃ見れなくて。怖さがちょっと……。

(町山智浩)あんまりネタバレにならないように話すと……ユダヤ系の人たちって、母系社会なんですよ。

(石山蓮華)ああ、「母が強い」ってことですか?

ユダヤ系は女系社会

(町山智浩)というか、要するに父親から系図を作っていくじゃないですか。日本人とか韓国人とかって。でも、ユダヤ人は違って、母親で繋いでいくんですよ。だからお母さんがユダヤ系だと、生まれた子はユダヤ人なんです。で、お父さんがユダヤ人でも、お母さんがユダヤ人じゃないと、ユダヤ人としてのそのしきたりに従わなければユダヤ系とは見なされないんです。だから、母親が一番重要で。父親がは種にすぎないみたいな考え方があって。だからキリストも元々、ユダヤ人ですから、マリア様が大事で。旦那のヨセフはあんまりどうでもいいみたいな話でしょう? 神様がお父さんで……みたいな。そこがすごく重要になっていて。これ以上言うとあれなんですけど(笑)。

(でか美ちゃん)じゃあ、ちょっと楽しみに。

(町山智浩)でもユダヤ系の人のお母さんの息子に対する異常な愛情というのは、本当に大きい問題なんですよね。だからみんな、大変みたいですよ。友達とかを見てると。

<書き起こしおわり>

町山智浩『ボーはおそれている』を語る
町山智浩さんが2024年2月13日放送のTBSラジオ『こねくと』の中でアリ・アスター監督の映画『ボーはおそれている』を紹介していました。
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