町山智浩『ダンケルク』を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でクリストファー・ノーラン監督が第2次大戦のダンケルク撤退作戦を描いた映画『ダンケルク』について話していました。


(町山智浩)今日はですね、一昨日アメリカで公開されて驚きの大ヒットをしている映画『ダンケルク』についてお話します。これはですね、1940年5月20日から6月4日にかけてあったダンケルク撤退作戦という戦争(第2次大戦)のはじめの時にあった有名な戦いを描いた映画なんですけども。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)いま、アメリカって夏休み映画のシーズンなんですよ。だからみんなスーパーヒーローとか怪獣物とかいろんな有名な作品の続編とか、夏休みっぽい映画ばっかりなんですね。アニメとか。だから、こんな昔の第2次大戦の映画で……一応スターはトム・ハーディっていう『マッド・マックス』の人は出ているんですけども。トム・ハーディって別にヒットメーカーじゃないんですよ。

(山里亮太)そうなんですか?

(海保知里)でも結構出ていますよね?

(町山智浩)出ているんだけど、お客さんを呼べるスターじゃないんですね。だからこれで、アメコミ物でもないし、スーパーヒーロー物でもないし。まさかヒットすると思わなかったら、もうびっくりするぐらいヒットしているんですよ。で、どういう映画か今日はお話していきます。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)これはいまのアメリカ映画とか世界的な映画の流れに逆らうような映画なんで、そこが面白いんですね。これね、ダンケルク作戦っていうのはダンケルクっていう海岸というか海水浴場があるんですよ。フランスとイギリスって向かい合っているじゃないですか。で、その英仏海峡のフランス側のところにあるダンケルク海岸というところで、そこにイギリス軍とフランス軍40万人がナチス・ドイツ軍に追い詰められて、そのままでは殺されてしまうという事態になりまして。それを、船でイギリスまで撤退させたという作戦なんですね。

(山里亮太)ふんふん。

(町山智浩)で、ダンケルク作戦っていうのは、ダンケルクの奇跡の撤退というのは世界の歴史に残る作戦だったんですが。これは最初から話しはじめますとですね、まずドイツ軍が国境を超えて隣のフランスにいきなり入ってくるんですね。で、すごく(英仏軍は)きっちりと防衛線を張っていたんですけど、そこじゃなくてドイツ軍は横を避けて入ってきたんですよ。オランダの方から。で、でも入ってきても防げると思ったら、ドイツ軍はものすごい機動力を使って。自動車と戦車と飛行機で一気にグッとフランスの内側まで入ってきちゃったんですよ。で、その時にイギリスもフランスに支援の部隊を送っていたんですけども、一気に押されちゃって、40万人がずっと海の端っこの方まで追い詰められちゃうんですね。


(山里亮太)うん。

クリストファー・ノーラン監督のこだわり

(町山智浩)で、これをどうやって脱出させるか? という話になるんですけど。まあ結果から言うと、33万8千人を救出しているんですよ。これはすごい奇跡的なことだったんですけども、それを今回クリストファー・ノーランという監督が映画化しました。はい。で、クリストファー・ノーランという監督は『バットマン』シリーズとか『インターステラー』とか『インセプション』とかで非常に人気の監督なんですけども。『インセプション』を除いては、この人はあるこだわりがある人なんですよ。

(山里亮太)何でしょう?

(町山智浩)コンピュータグラフィックス(CG)が大嫌いなんです。CGを使わないというのがこの人の主義で。『インセプション』は一応使ってはいるんですけど。たとえば『インセプション』の中で列車が普通の道路に飛び出してきてアクションになるというところは本当に列車にタイヤを付けて、普通の道路を走らせたりしていますし。『バットマン』で『ダークナイト』で有名な巨大トレーラーがシカゴの街でひっくり返るシーンがあるんですけど。あれも本当に巨大トレーラーをひっくり返しているんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)そういったことをやるのと、あともうひとつ、このクリストファー・ノーラン監督にはこだわりがあって。デジタルカメラが大嫌いなんですよ。

(海保知里)ああ、そうなんだー。

(町山智浩)いま、アメリカの映画って日本の映画もそうですけど、ほとんどデジタルカメラで撮影されてるんですよ。ところがこの人は昔ながらのフィルムで撮影することにこだわり続けているんですね。で、コンピュータグラフィックスも使わないし、デジタルカメラも使わないで戦争映画を撮るっていうのはこれ、大変なことなんですよ。

(山里亮太)そうですよね。戦闘機とかもあるし。

(海保知里)ですよ。どうするんだろう?

(町山智浩)そう。75年も前の大昔の戦闘をフィルムとCGなしでやるってどうするか?っていうと、本物の戦闘機を使って、本物の軍艦を使って撮影するしかないんですよ。

(山里亮太)おおっ! 作るっていうことですか?

(町山智浩)そうなんですよ。で、この人は『インターステラー』でも宇宙船のシーンを普通だったらCGでやるところを実物大の宇宙船を使って撮っているんですね。で、今回は実際のその時の戦闘に参加したのはイギリス軍はスピットファイアっていう戦闘機。で、ドイツ軍はメッサーシュミットっていう戦闘機だったんですけども、これはまだいまも動くものがあるんですね。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)大事に整備されていてまだ動くのがあるんで、それをスピットファイアは2機、借りてきて。メッサーシュミットは同型のものをスペインでフランコ政権がライセンスで作っていたものを改造して当時のメッサーシュミットに似せたものを1機、借りてきて。それで撮っているんですけども。このクリストファー・ノーランがすごいなと思ったのは、これ実際はその時のダンケルクっていうのはイギリス軍が140機ぐらい。ドイツ軍は150機ぐらい撃墜されるような、それこそ全部で何百機もの戦闘機が空を飛びかう大空中戦だったわけですね。実際は。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)それをCGなしで撮るのは無理じゃないですか。

(山里亮太)そうですね。

(町山智浩)だから、その2つだけ戦闘機が借りられたから、2人のパイロットの話に絞り込んじゃったんですよ。

(山里亮太)はー! そっちを基本に考えたんだ。

(町山智浩)そう。そのトム・ハーディが演じるパイロットだけに集中しているんですよ。で、また戦争映画っていうことでここのダンケルクに至るまでのいろんなことを描いたりすると民間人とかも出てこなきゃならないし、政治家とかも出てきたりして、まあ大変なスケールになるじゃないですか。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)それも、今回はやっていないんですよ。いきなりこの映画はいちばん頭でダンケルクに兵隊たちが追い詰められている状態から始まるんです。じゃあ、いったいどうしてそうなったのか? とか一切説明がありません。どういう状況か?って全体を示すような説明も一切ないんですよ。で、とにかく一人ひとりの兵隊にカメラがものすごく近づいた状態で取り続けています。で、これは陸上で追い詰められている兵隊さんがいて、まず1人のトミーっていう名前の兵隊さんが主人公で。その彼にカメラがずっと密着して、彼がどうやってその海岸から脱出して船に乗り込んで逃げることができるのか?っていうのだけを撮り続ける陸のパートっていうのがあるんですね。歩兵さんのパートがあって。


(山里亮太)はい。

(町山智浩)それともうひとつは空軍のパートで、トム・ハーディ扮するパイロットがイギリスから飛び立ってダンケルクまでついて助けることができるかどうか?っていうパートなんですね。っていうのは、(追い詰められた)兵隊たちをドイツ軍が空からバンバン爆弾を落としたり、機銃を撃ったりしてみんな殺そうとしているんですよ。だからそこにイギリス軍が飛行機で飛んでいって、そのドイツ軍の戦闘機を倒してあげないとならないわけですね。

(山里亮太)そうですね。

(町山智浩)しかも、イギリス軍とフランス軍の兵隊たちはどんどん船に乗っていくんですけども、船に乗ると今度はそれを(ドイツ軍の)戦闘機とか潜水艦とかが沈めにかかってくるんですよ。だからそれを守るために戦闘機が飛んで行くんですけども、1時間しか戦闘機が飛べないんですよ。っていうのは、イギリスからフランスに飛んでいくと、だいたい1時間弱ぐらいらしいんですよ。


(山里亮太)うわっ、ギリギリだ!

(町山智浩)(片道で)30分ちょっととかかかるらしくて。だからもう、ついちゃうと燃料がほとんどないというような状態なんですよ。だから、航続時間との戦いになっていくわけですね。で、今度は駆逐艦とか軍艦が兵隊たちを乗せに来るんですけど、ダンケルクって海水浴場なんで遠浅なんですよ。だから大きい船が近づけないんです。

(山里亮太)おおっ。

(町山智浩)だから長い桟橋を作って。海の沖の方までいく桟橋を作って、そこに兵隊さんたちが歩いて、沖の方にいる船に乗らなきゃいけないんですね。長い桟橋を通って。ところが、桟橋に兵隊さんが並んでいると、そこを桟橋に沿ってドイツ軍の戦闘機が飛んできて、機銃をバーッて撃っていくんですよ。逃げ場はまったくないんですよ。桟橋の上だから、兵隊たちは。ただ撃たれるだけなんですよ。で、それをどうするのか? 要するに、大きい船は近づけないわけですね。で、イギリス中のちっちゃい漁船とかヨットとか、なんかいろんな船があるじゃないですか。観光船とか遊覧船とか。あれが全部、声をかけられた人たちがフランスに向かって助けに行ったんですよ。約700隻が行ったんですね。ポンポン船とかですよ。


(海保知里)すごい数。ええ。

(町山智浩)で、だいたいね、いま大型フェリーで行くと2時間ぐらいで着く距離なんですね。でもポンポン船だと8時間以上かかるんですよ。それで、なんとか行って兵隊たちを船に乗せて沖にいる大きい船に運ぶという、ボランティアで民間人たちがそこに参加しまして。で、それに参加した……マーク・ライランスが演じているおじいさんがポンポン船で息子と一緒にフランスを目指して船出して、果たしてたどり着けるのか?っていう話がひとつありまして。さっき言った、1人の兵隊さんが陸上にいる状態と、1時間しか飛べないパイロットがフランスに着けるのか?っていう話と、ポンポン船でバンバン戦闘機とか潜水艦が攻撃している中を突っ込んでいくポンポン船の船長の話。その3つが同時に進むというのが『ダンケルク』という話なんですね。

(海保知里)ええ。

(町山智浩)で、これ、どうしてお客さんがこの映画に殺到したんだろう?って思いますよね。これね、戦争とかそういうのに興味がない人でも、ものすごく面白くなるように映画を作っているんですよ。セリフ、この映画はほとんどないんです。

(山里亮太)えっ?

戦争映画なのに大ヒットした理由

(町山智浩)これ、兵隊さんがとにかく船に乗ろうとするんですよ。すると、(ドイツ軍の飛行機から)機関銃を撃たれて、ヒーヒー言いながら船に乗ると、今度は船が爆撃されて沈没して。で、船の中で閉じ込められて……そのまま沈んじゃったりすると死んじゃうんですけど、そこからなんとか脱出して、また海岸に戻って、もう1回別に船に乗って……っていうのを延々と繰り返すんですよ。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)1人で3回ぐらい船に乗ろうとしては沈められるっていう状況になるんですね。当時、本当にあったことの記録をもとに作っている話なんですけど。これ、本当にその場にいる感じになるんですよ。観客自身が追い詰められて水に沈められて、海の上で火がボーボーと燃えていて、周りでバンバン爆発して、みたいな感覚を観客に感じさせるように撮っているんですよ。だからその、(普通は)映画ってストーリーがあるわけじゃないですか。でもこの映画はストーリーがあって、お話があってっていう風にはなっていないんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)「あなたは1人の兵隊としてこの戦闘に参加しなさい」っていう映画になっているんですよ。だから、遊園地のライド物とかバーチャルリアリティーに近い物として作られているんです。

(山里亮太)はー! そうか!

(町山智浩)だからもう、誰でも見れるんですよ。だからこれは恐ろしい恐怖を体験する映画なんだということで、若い人も来ているんですよね。で、いま後ろでかかっている音楽がハンス・ジマーっていう人が作曲したこの『ダンケルク』の音楽なんですけど、時計に「チクチクチクチク……」っていう秒針のリズムになっているのがわかりますか?



(山里亮太)はい。

(町山智浩)これがずーっと鳴っている状態なんですよ。この映画は。

(海保知里)ええーっ、ドキドキしますよね。うん。

(町山智浩)だって空軍の飛行機が1時間しか飛べないんですから。それしかないんですよ。タイムリミットが。というね、2時間の徹底したサスペンス映画としてお客さんは行っている状態なんですよ。「戦争とかよくわかんないけどー」みたいな人たちが。で、見て結構びっくりする。「こんなことがあったのか!」っていう感じなんですね。で、このスピットファイアとかメッサーシュミットはもう骨董品でものすごい価値がある飛行機なんで、実際に落としたりはできないんですけども。撃墜したりするシーンは実物大の飛行機に似たものを作って、本当に水に落としたりして撮っているんですよ。

(海保知里)へー!

(町山智浩)で、その際はカメラも一緒に沈めたりもしているんですけど、これIMAXというものすごく大きいフィルムを使うカメラを使って撮影しているんですね。ひとつひとつのコマが70ミリも幅があるフィルムなんですけども。で、これをスピットファイアとかに載せて実際に空を飛ばして撮影していまして。全然CGを使っていなくて、本当に飛行機が飛んでいるシーンは、本当に飛んでいるんですよ。

(山里亮太)ふーん!

(町山智浩)だからこれは航空マニアで、それこそ(『この世界の片隅に』の)片渕須直監督とか、宮崎駿監督とかはもう悶絶するような映画になっていますね(笑)。飛行機マニアの人とかは。でもね、すごく若い兵隊たちが地獄のような目に遭うっていうのを見ると、結構衝撃で。みんなね、18、19の男の子なんですね。で、やっぱり自分が歳を取ってわかるんですけど、18、19の男の子たちってみんな体もできていなくて、やせっぽっちで子供みたいなんですよね。見た目が。

(海保知里)そうか。はい。

(町山智浩)それで、なにが起こっているか全然わからないんですよ。自分たちがどういう目に遭っているのかって。で、いつ船が助けに来るのか? とか。セリフなんかはないのは、話すこともないわけですよ。彼らは。悲鳴ぐらいしかセリフがないんですけど。で、船に乗ると今度はそれがどんどん沈んでいっちゃうわけですから。穴が開いて。

(海保知里)いやー……。

(町山智浩)というね、これはすごくて。まあ、暑い夏に見るとすごい映画なんですけど……日本だとね、9月9日公開でね。もうちょっと早くすればいいのにって思いますけども。でね、これを見てすごく興味を持った人たちがいろいろと調べていって。アメリカとかイギリスでこのダンケルクの戦いというのが非常に注目されてきているんですけども、これで結局イギリスが負けてヨーロッパから撤退するわけですよね。フランスと一緒に。で、ドイツはその後、ヒットラーがフランスを完全に占領しちゃうわけですよ。で、一種の負け戦なんですけども、これで兵隊たちを助けたことで、イギリスや連合軍はドイツに勝つことができたんで。勝利のための撤退作戦として非常にいま評価されているんですが。

(山里亮太)ふーん!

勝利のための撤退戦

(町山智浩)いちばん大きかったのは、民間人が船で助けたということなんですよ。救出作戦に普通の漁師さんとか遊覧船の船長とかも参加したということなんですね。それがイギリス人にとって軍と民が一体となる、国民の一体感をもたらして。「ダンケルクを忘れるな」「ダンケルク魂」っていう言葉がいわれて、そのダンケルク魂で戦争に勝っていったということがひとつ、大きいんですね。

(山里亮太)ふーん!

(町山智浩)もうひとつはね、やっぱり兵器とかよりも大事なのは若者の命だっていうことなんですよ。フランスがなんでドイツにあっさり占領されてしまったか?っていうと、いちばんの理由はフランス人の人口がその時に少なかったんですよ。フランスってナポレオン戦争の時にすごく、大陸軍っていうのを使って若者たちを全部戦争に送り込んだんですね。で、その影響ってこの第2次大戦までずっと続くんですよ。フランスって。

(山里亮太)うんうん。

(町山智浩)国民の数が少ないという問題が。若者が少ないという問題が。だから、フランスってずっと少子化(対策)政策っていうのを必死にやっているんですよ。ドイツに占領されちゃっているから。それで、この『ダンケルク』は「とにかく若者を救うんだ。若者は武器なんかよりもいちばん大事な武器であって、いちばんの宝なんだ!」っていうことなんですね。これは本当にそうですよ。いちばん大事なのは若者なんですよ。で、日本もこういうことをしているんですよ。

(海保知里)そうなんですか?

(町山智浩)キスカ作戦ってご存知ですか?

(山里亮太)キスカ作戦?

(町山智浩)日本ってアメリカを占領したのはご存知ですか?

(海保知里)日本が、アメリカを?

(町山智浩)アメリカを占領したことがあるんですよ。日本は。第2次大戦が始まって、1943年に起こった作戦なんですけども。アリューシャン列島ってあるじゃないですか。アラスカからずっとロシアまで続いている。アリューシャン列島っていうのはアメリカ領なんですよね。そこのいちばん端っこにあるキスカっていう島とアッツっていう島を日本って占領しているんですよ。

(山里・海保)へー!

(町山智浩)アメリカの国土を占領した外国軍って日本ぐらいじゃないかな? と思うんですけどね。で、でもそこにものすごい軍隊をアメリカが派遣して、日本軍を潰しにかかるんですね。で、アッツ島の方は玉砕して全滅するんですよ。ところがもうひとつのキスカ島の方にいた5000人の兵士は奇跡的な救出作戦でほとんど全員、救出されるんですよ。これね、日本ってみんな「玉砕! 玉砕!」って言っていたと思っている人がすごく多いんですけど、そうじゃない時もあったんですよ。

(海保知里)ふーん!

(町山智浩)でね、この『ダンケルク』が戦争映画として非常に特殊なのは、「敵を倒す」ということを描いていないからなんですよ。

(海保知里)戦いなのに。

(町山智浩)そう。「人を殺す」ってことじゃなくて、「人を救う」戦いなんですよ。これ。だからね、見ていても全然嫌じゃないですよ、これ。あと、監督が非常に気を遣っていて、実際はイギリス兵とかも3500人ぐらい死んでいるんですけど、死体を無理に映したりしないで、カメラが避けたりしています。そういうことを見せるための映画じゃないんだっていうことなんで。

(山里亮太)『ハクソー・リッジ』を見た時にはね、バンバン出てきましたけども。

(町山智浩)はい。本当は悲惨なんですよ。みんな、溺死したりして。一隻軍艦が沈むと、そこに600人乗っていてみんな死んじゃうんですから。でもそれはあまりしつこく……そういうことじゃなくて、むしろ人は人を助けるということを描きたかった。戦争っていうのは人殺しだと思われているけど、そうじゃなくて人を助ける戦争もあるんだっていうことですよね。それで実は、勝つことができるんですよ。玉砕していったら、勝てないんですよ。

(山里亮太)うんうんうん。

(町山智浩)そう。っていうね、いろいろと考えさせられる映画でしたけども。日本だと9月9日だと思います。あ、キスカの方も映画になっていますね。『太平洋奇跡の作戦 キスカ』という映画で1965年に映画化されているんで。円谷英二監督の特撮が素晴らしいんで、ぜひご覧になってください。はい。

(山里亮太)すごい。全部CGを使ってないということは、出てくるものがね。そう思って映画を見たらね、さらに……。

(町山智浩)すごいですよ。人間がものすごい数で並んでいるところがあって。「これはCGだろう?」って思って監督にそう聞いたら、「ああ、あれはね、ボール紙だから」って言われました。

(山里亮太)ええっー!

(海保知里)そうなんだ!

(町山智浩)ものすごいたくさんの兵隊が海岸にバーッて並んでいるところがあるんですよ。

(海保知里)それ、予告編でも最初の方で流していたあの映像ですかね?

(町山智浩)そうなんですよ。「あれ、ボール紙だから」って言われて。だからね、この『ダンケルク』っていう映画は製作費は実は超大作の中ではものすごく安いんですよ。


(山里亮太)えっ? でも戦闘機とか使っていたりするから。CG使うよりも金がかかるんじゃないですか?

(町山智浩)いや、それはみんな借りているから。

(海保知里)レンタル代で。ええーっ!

(町山智浩)これ、製作費が1億ドル以下っていうね、夏休み大作の中で最も安いんですよ。それで素晴らしい感動と衝撃とショッキングな体験を呼んでいるという素晴らしい映画が『ダンケルク』でした。日本では9月9日公開です。

(海保知里)はい。今日はクリストファー・ノーラン監督の最新作『ダンケルク』についてうかがいました。町山さん、どうもありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

山里亮太さんとの感想トーク

『ダンケルク』日本公開後に山里亮太さんと町山智浩さんが『たまむすび』内で感想トークをしていました。

(山里亮太)いや、『ダンケルク』とか見てきて。その話とかも聞きたかったけど……。

(町山智浩)『ダンケルク』、どうでした?

(山里亮太)いや、すごかったですよ! CG一切なしでやっていて。すごい。あれ、戦闘機とかもすごいですね。

(町山智浩)全部本物ですよね。

(山里亮太)飛ばしてやっているんですよね。

(海保知里)ハリボテなんですよね。本当はね。

(町山智浩)本当はハリボテね。で、本当はあれ、100機とかでやっているんで。CGでやると100機戦闘機を飛ばせるわけですよ。CGで100機飛ばすか、実際の本物を借りて3機だけでやるか?っていうので、彼は3機の方を選んだんですよね。

(山里亮太)だから、「少ない」っていう感じには感じない。本当に……。

(町山智浩)でも、よく考えるとあれだけの戦闘で、戦闘機が3機しか飛んでないっておかしいじゃん?

(山里亮太)たしかに、そうなんですよね。ずーっと、ほぼ1対1で戦い続けるっていう。

(町山智浩)そう。そんなわけないですよ。戦争なのに。でもまあ、そこのところは見立てなんですよ。

(山里亮太)あんまりでも、いま言われて「そう言えば……」ってなっていますけど。

(町山智浩)だけど、おかしいんですよ。

(山里亮太)ずっと絶体絶命でずっとドキドキしっぱなしで。

(町山智浩)そうでしょう? でもあれ、本当は絶体絶命じゃないんですよ。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)あれはだから、あそこにいる兵隊たちはなぜ絶体絶命なの? ドイツ軍が猛攻撃してくるかもしれないからでしょう?

(海保知里)追い詰められた……。

(町山智浩)ドイツ軍は総攻撃を仕掛ける予定なんか、なかったんですよ。

(山里亮太)えっ!

(町山智浩)そう。だから絶体絶命でも、危機が迫っているわけでもないんですよ。実際は。

(海保知里)へー!

(町山智浩)ダラダラダラダラと爆撃が続いていて、ダラダラダラダラと飢餓状態になっているというだけであって、「○時○分までにここから脱出しないと、ドイツ軍の総攻撃がある!」なんていう状況はないんです。実際は。

(海保・山里)ええーっ!

(山里亮太)よかった、見てから聞いて!

(町山智浩)(笑)

(海保知里)ねえ。それはちょっとね……。

(山里亮太)あっ、見てない人!(笑)。

(海保知里)でも、まあ忘れながらもう1回。

(町山智浩)そう。忘れながらね。あれはだから、ずーっと音楽がチクチクチクチクチクチク……って秒刻みの音が聞こえるから、そういう切羽詰まった気持ちに観客がなっちゃうだけなんです。

(山里亮太)コントロールされていたんだ。

(町山智浩)そう。だから映画って恐ろしいなって思いますよね。そういう話でしたけども(笑)。

(海保知里)それも面白い!

<書き起こしおわり>

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