菊地成孔『ツイン・ピークス The Return』を語る

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菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中で25年ぶりに作られた続編『ツイン・ピークス The Return』について話していました。

#TwinPeaks?subway poster with updated tagline.

Twin Peaksさん(@welcometotwinpeaks)がシェアした投稿 –


(菊地成孔)ええと、メールに戻ります。(メールを読む)「……WOWOWで7月から『ツイン・ピークス』の続編の放送が始まります。すでにシーズン1の方の放送も始まっています」。『ツイン・ピークス』は「25年後に会いましょう」って終わるんだけど、ちゃんと25年後に続編が始まるという意味ではやっぱりデヴィッド・リンチってちょっと頭がヤバいなっていう感じですけども。(メールを読む)「……久しぶりに押入れの奥にしまっていたDVDボックスでシーズン1を見直しました」とまあ、いろいろと書いてあって、中略という感じですが。(メールを読む)「……劇中の精神科医、ジャコビー先生はフロイト派のようですが、菊地さんは誰がローラ・パーマーを殺したと思いますか? 私はこの作品の劇伴がとても好きです。新作にも期待しています」。

こういうメールがなんで届くかというと、私は『ツイン・ピークス』のシーズン2というか、25年後だけどね。の、旗振りをまあ、WOWOWさんにお願いされてやっているので。『ツイン・ピークス』を好きな人たちのことを「ピーカー」っていうんだよね。で、まあピーカーの中のジャズ代表っていう感じですかね(笑)。で、旗振りをやっているので、シーズン2もね、見たんですよ。そういうことがあってのピックアップだと思いますけどね。それでこういうメールが来ているんだと思います。この方もピーカーですね。

「誰がローラ・パーマーを殺したと思いますか?」。誰もローラ・パーマーは殺していないです。なぜかというと……というね、ここから先は言えないんですけども(笑)。私はこの作品の劇伴がとても好きです。シーズン2も期待しています」。これ、期待にばっちり沿いますね。有名なアンジェロ・バダラメンティの『ツイン・ピークスのテーマ』。これもすでにクラシックですよね。これはデジタル・リマスタリングされて健在のまま流れますし、ジュリー・クルーズというミューズがいたんですよね。『ツイン・ピークス』のシーズン1の方では。まあ、「シーズン1」というのは正規の言い方じゃないんだけど、まあ今様に言うとね。

ジュリー・クルーズは歌手ですけども、アンジェロ・バダラメンティの音楽に合わせて蚊の鳴くような声で歌うわけよ。これがもう本当に、リンチの好きな世界ですよね。

Twin Peaks -Falling (Julee Cruise)



で、さすがにジュリー・クルーズは出てこないの。シーズン2は25才歳をとった1の登場人物……カイル・マクラクランは出てきますね。当然ね。なんだけど、他の誰が出てくるか?っていうのもピーカー、要するにマニアの人には期待のっていうところなんですけどね。まあ、マニアではない人には全然関係がない話をしちゃいましたけども。何が言いたいか?っていうと、ジュリー・クルーズの代わりに現代のジュリー・クルーズみたいなのが出てくるの。それがね、クロマティックスっていうバンドで。これが本当に素晴らしいです。日本だともう完全にノーマークですけどね。

アメリカの人のコメントなんかを見ると「ジュリー・クルーズがついに蘇った!」みたいな感じなの。で、まあ本当にいいですね。シーズン2の主題曲は。いま、検索するともう見れると思いますね。クロマティックス。「Chromatics Twin Peaks」で見れると思います。この手のものがお好きな方にはたまらない。

Chromatics『Shadow』



で、さらに何が言いたいか?っちゅうと、25年ぶりっていうことは、私が約30ですよ。その頃に、WOWOWに入ったの。『ツイン・ピークス』とリングスが見たくてね。韻、踏んでますけどね。「ツイン・ピークス」「リングス」(笑)。前田日明さんの格闘技団体ですね。それと『ツイン・ピークス』が見たくてWOWOWに入ったのね。テレビはタダで見られるもんだと思っていたのが、まあ革命が起ったんですよね。有料で番組を買うっていうことをまず始めました。で、まあそれを見て、それから25年後に新シリーズが始まって、クロマティックスを見て思ったのは、「またスパンク・ハッピー(SPANK HAPPY)をやりたいな」っていうことですね(笑)。本当にスパンク・ハッピーをやらせる気になる音楽ですね。

いまからお聞きになる曲は2002年。15年前ですから、『ツイン・ピークス』を見た約30の私が、約40の時に……まあ、39才ですけども、その時に作った音楽です。(菊地成孔さん自身が撮った)映画的には韓東賢さんと道端でばったり会うのね。で、韓さんが(新宿)ピカデリーとバルト9を間違っていて、ピカデリーに入ろうとして「ダメダメ。ここじゃないよ、韓さん。ピカデリー、別のシネコンですよ」って言って、そっちに向かっていって30分のショートフィルムは終わるんですけど。その時の前半に2人で街を歩いている時にずーっと流れていた曲がこの2002年。まさに15年前のスパンク・ハッピーの作品ですね。『アンニュイ・エレクトリーク』という曲をお聞きいただいて今夜はお別れしたいと思います。

まあ、けものともつながっているんだよね。私がデュエット歌手として大活躍しているという意味ではスパンク・ハッピーと今回のけものの『めたもるシティ』、似ていますからね。なので、そういった、まあ好き者が少し元気がなかった……最近、音楽っていうのはとにかく上手、練習、スポーティー、アスリート、アスリーテス的な感じという風に、もうどんどんどんどん傾いているから。なんか鼻歌みたいに、ちょっとヘタクソなんだけどゾクゾクくるとかっていう文化が……あれね、景気が悪いと余裕がなくなってきて、ヘタウマがダメになってくるんですよ。ヘタウマが来た時はそこそこ景気が回復していると思っていいですよね。天気読みとしては。

で、まあいま、スパンク・ハッピーをまたやりてえなと私が思っていたり、25年後の『ツイン・ピークス』のエンディングテーマが非常に素晴らしくてジュリー・クルーズの再来と言われたりしているという状況ね。ジュリー・クルーズはもう完全なヘタウマですから。っていうのはまあまあ、アメリカも日本も少しは景気が良くなるんじゃないかな?っていう気もしていますけどね。でも、不景気ベースの中にヘタウマが来るっていうのはもう完全なデカダンですよね。ある意味。デカダンを超えたデカダンっていうか。まあ、どっちに転がるか、賽の目は誰にもわからないという感じですけども。スパンク・ハッピーの『アンニュイ・エレクトリーク』をお聞きいただいてお別れしたいと思います。お相手は菊地成孔でした。ありがとうございました。

SPANK HAPPY『アンニュイ・エレクトリーク』



<書き起こしおわり>

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