町山智浩 失神者続出のホラー映画『RAW』を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、上映中に失神者が続出しているフランスのホラー映画『RAW』を紹介。「現在のところ、今年のベストに入る」と話していました。


(町山智浩)それで、今日紹介する映画はこれ、ちょっと僕ね、今年見た映画の中でも結構ベストに入る映画でした。世界各国の映画祭で上映されるたびに失神者続出というホラー映画なんですが。『RAW』っていうタイトルの映画です。『RAW』っていうのはね、「法律(LAW)」ではなくて「生(RAW)」、生肉の「RAW」ですね。という映画なんですけども、これ、ロサンゼルスで映画が公開した時には映画館が汚れたら困るっていうことで映画館の人がゲロ袋を配ったりとか、大変な事態になっている映画なんですよ。

(カンニング竹山)えっ、そんなに?

今年のベストに入る映画

(町山智浩)ところがですね、カンヌ映画祭で上映された時には5分間におよぶスタンディングオベーションで。国際映画批評家連盟賞とか各地で映画賞もとっているんですよ。で、大絶賛されているんですが、失神者続出という映画なんですね。はい。

(カンニング竹山)どういう……画の力もすごいし、ストーリー性もすごいっていうことですか、それは?

(町山智浩)あの、画は本当に芸術的に美しい映画なんですよ。音楽も素晴らしいし。で、この映画は主人公は16才の女の子でジャスティンちゃんっていうかわいい女の子なんですね。で、優等生なんで飛び級で大学に入るんですよ。で、その大学は獣医大学なんですけど、これ、この子は勉強ができるんですけど、お父さんとお母さんにかわいがって育てられて。お父さんとお母さんがはじめて出会った獣医大学になんの意思もなく入っちゃうんですね。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)で、ものすごく過保護で育てられてきてですね、この女の子はビュッフェ形式のレストランでご飯を食べると、マッシュポテトの中からちょっと肉の破片が出てくるんですね。そうすると、お母さんがものすごく怒って。そのお店に「うちはベジタリアンなのよ! 肉がちょっと混じっているじゃないの!」ってすごい大変な抗議をするっていうように、まあ非常に甘やかされて育っている女の子なんですよ。ヒロインは。

(海保知里)うんうん。

(町山智浩)で、獣医学校に入ると、アメリカとかフランスは基本的に大学は全寮制なんですね。そうそう。うちの娘が今年の秋から大学に入るんですけど、全寮制なんでね。もう、すごく心配なんですが……(笑)。

(竹山・山里)(笑)

(町山智浩)で、寮に入ると、普通にジャスティンちゃんが寮で寝ていると、夜中にバーン!ってドアを開けて先輩が入ってくるんですよ。で、「新入生のやつら! これから新歓だ!」って言うんですよ。「新人歓迎会だ!」って言うんですね。で、それでまあ無理やりタバコを吸わされたり、お酒を飲まされたりされるんですけど。こういう文化って日本ってまだ続いてます?

(山里亮太)僕らが学生の時……僕、大学生の時、学生寮だったんですよ。ありましたよ。そういうの、まだ。

(町山智浩)僕の頃、あったですけど。最近はどうなんだろうな?って思うんですけどね。

(山里亮太)いや、僕が卒業する頃にはちょっと問題になってなくなっちゃいました。

(町山智浩)ああ、本当に? アメリカやフランスはまだやっているんですよ。アメリカはいまだに一気飲みでよく死者が出るんですけど。まあ、そういうのをやるわけですね。その獣医学校で。ただ、獣医学校なんで普通にお酒を飲ませてゲロ吐かせるだけじゃないんですよ。頭からね、動物の血をぶっかけるんですよ。バーッ!って。

(竹山・山里)ええーっ?

(海保知里)それはないよ。

(町山智浩)で、これは要するに、「君たちはいままで動物っていうのをかわいいと思っていただろうけど、これからは動物の死に直面するし。血やウンコにまみれて動物と付き合うんだから……」みたいなことなんですね。「血ぐらい怖がっているんじゃない」と。で、その後にもうひとつ、なんか変な粒みたいなものを食べさせられるんですよ。で、それがね、ウサギの腎臓なんです。生の。

(カンニング竹山)生!?

(町山智浩)そう。フランスに行くと……僕、はじめてフランスに行った時に朝、さわやかな気持ちで市場に出たんですね。市場が出ているんで。そしたらフランス人ってウサギを食べるんですよね。

(海保知里)ああ、ねえ。そっかー。

(町山智浩)で、さわやかなパリの街にウサギやリスや皮を剥いたカエルが並べられているんですよ。で、さわやかな気持ちが吹っ飛んだんですけど。向こうの人たちはそれを見ると「美味しそう!」っていうやつなんですけど。だから、他の子たちや獣医になろうとする新入生の子たちは平気でその腎臓をパクッて食べちゃうんですけど、この子は食べられないんですよ。ジャスティンちゃんは。ベジタリアンなんで。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)で、「先輩! 私の家はベジタリアンなんで、食べられません!」って言って泣いて騒ぐんですね。すると、「なんだ、この新入生は? ガタガタ騒ぎやがって! 誰なんだ、こいつ?」って言うと、「ああ、こいつのお姉さん、俺知ってるよ。お姉さん、呼んでこよう」っつってお姉さんが来るんですよ。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)そのお姉さんは先輩としてその大学に入っているんですね。すると、そのお姉さんは昔は優しかったんですけど、ガラッと変わっちゃって。ものすごい化粧が濃くてピアスをいっぱいして。おっぱいもお尻もおっきくて、おヘソを出しているようなお姉ちゃんになっているんですね。いわゆる、ものすごく女の匂いをプンプンさせているようなお姉ちゃんになっていてですね。で、そのウサギの腎臓を掴んで自分の妹に「食べるのよ!」って無理やり食べさせるんですよ。

(山里亮太)うわー……。

(町山智浩)すると、はじめて食べた肉で、しかも生肉なんでジャスティンちゃんはゲロを吐いちゃうんですけど……それから体がちょっとおかしくなっていくんですよ。まず、全身にジンマシンが出るんですけど、そのジンマシンをかきむしって全部かさぶたが取れた後、なぜか学食に行って肉(ハンバーグ)が置いてあると、食べたくなって食べちゃうんですね。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)肉が食べれるようになっちゃうんですよ。それだけじゃなくて、もうそれでも足りなくて、「肉が食べたい!」ってわざわざ焼肉を食べに行ったりとか。終いには冷蔵庫に入っている鳥のササミを生でガリガリかじるようになっちゃうんですよ。

(山里亮太)おおーっ、一気に変わったな!

(町山智浩)で、その次の段階として、人間の肉が食べたくなってくるっていう話なんですよ。っていうホラー映画なんですけど。で、この映画を見ていて、お客さんがみんな失神したシーンっていうのを見たんですね。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)それはね、具体的に絵柄がゲロいとかグロいとか、そういうんじゃなくてですね。「それ、食べたらアカン!」みたいなものを食べちゃうシーンがあるんですよ。

(山里亮太)ええーっ?

(町山智浩)はじめてその、人間の体の一部を食べるシーンなんですけど、どんなところを食べてもいいけど、それだけは絶対にダメ!っていうシーンがあるんですよ。

(山里亮太)失神するぐらいのインパクトがあるところですよね?

(町山智浩)そう(笑)。「食べたらアカン!」みたいなね。だから、みんな失神したみたいですけど、同時にみんな爆笑していましたね。

(海保知里)ええっ?

(町山智浩)ちょっと笑えるんですよ。コメディーみたいなんですよ、そこ。

(山里亮太)笑えて吐けるって、はじめての組み合わせだな(笑)。

(町山智浩)そう。見るとわかるんですけど。「うわっ!」っていう感じなんですけど。で、この映画、なんか聞いていると、「肉を食べると、それまで野菜を食べていた子が人肉を食べるようになっちゃうよ」って。だから、「ベジタリアンがいいよ。肉を食べるのはよくないよ」っていう映画のように聞こえるんですよね。ちょっと。でも、全くそういう映画じゃなかったんですよ。

(山里亮太)ええっ?

(町山智浩)これ、監督が女性なんですね。で、写真があると思うんですけど。この監督のが、そちらに。

(山里亮太)うわっ、きれいな方。

(町山智浩)そう。すごく美人で若くて。34才でジュリア・デュクルノーっていう、この人ははじめての長編映画なんですけども。

ジュリア・デュクルノー監督


(山里亮太)うん。

(町山智浩)この人はね、「この映画はいったいどういう映画か?っていうと、女の子が女の子になっていく話なんだ」って言っているんですよ。

(カンニング竹山)ほう。

(町山智浩)彼女、ジャスティンちゃんはそれと同時に、おっぱいが大きくなってくる頃なんですね。15、6で。で、生理とかも始まったりして。ただ、自分自身はそれが得体の知れないものなんで、ものすごく恐ろしい感じなんですね。内側からどんどん、自分が全く求めていない、別の生物に変わっていくっていう感じなんですよ。

(カンニング竹山)うん。

(町山智浩)だからその感覚を描いているんだという風に言っているんですね。で、「男も女もそうですけど、思春期になるとはじめて体が変わってきて、自分は人間という獣なんだということを自覚してくるようになるんだ」っていう風に監督は言っているんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)やっぱり生殖行為ができるとか、あといろんなところに毛が生えてきますよね。で、「ああ、自分たちは獣の一部なんだ」っていうことがわかってきて。それで、肉を食べたりするっていうのも、まあ子供の頃に育てられているとはっきり言って料理されたものしか食べないじゃないですか。だから最近、生肉を触れない人とか、魚をさばけない人も多いんですけど。でも、「この時に自分が動物だってことを、身体的に思春期の体の成長によって自覚すると同時に、生きるっていうことは、他の生き物を食べて生きているっていうことでもあるんだよっていうことを自覚してくることだ」って監督は言っているんですね。

(山里亮太)うんうん。

(町山智浩)これね、すごく僕、よくわかるんですよ。僕、カブスカウトっていうのに子供の頃、入っていたんですよ。

(海保知里)ボーイスカウトみたいな?

(町山智浩)そう。ボーイスカウトの年少組なんですね。で、僕はそれでね、靖国神社でいつも篝火奉仕っていうのをやってお祭りの時に立っていたんですけどね。靖国神社の火、焚いているじゃないですか。その横にボーイスカウトが立っているでしょう? あれ、僕だったんですよ。昔、子供の頃。

(山里亮太)へー!(笑)。

(カンニング竹山)もっと複数しますけどね。町山さんだけじゃないですけどね(笑)。

(山里亮太)町山少年があそこに。

(町山智浩)カブスカウトっていうのは年少組なんで、デンマっていうお姉さんがついていて。お母さんみたいなことをしてくれて、かわいがられて育てられるんですよ。そのカブスカウトの中で。ところがボーイスカウトになる時に、いきなりカブスカウトがそのままボーイスカウトにはなれないんですよ。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)これね、秘密の儀式があるんです。これ、言っちゃっていいのかどうか、わからないんですけど。たぶんほとんど、ボーイスカウトに入っている人は知っていると思うんですけど。まあ団によって違うかもしれないんですが、実はカブスカウトからボーイスカウトになるためには「イニシエーション」っていう通過儀礼を行わなきゃならないんですよ。

(海保知里)ええっ!

(町山智浩)これ、たぶんほとんど明文化されていないんで知られていないと思うし。僕たちも知らなくて、噂だけ聞いていて。「ボーイスカウトになるためには、ひとつすごい儀式があるらしいぞ」と。それは誰も言わないんで、教えてくれなかったんですよ。で、月の輪というキャンプがあるんですけど。月の輪っていうのはボーイスカウトとカブスカウトの間にあるキャンプなんですね。で、キャンプで3日、4日とずっとキャンプをしていて、その最後の日に「儀式がある」って言われて。「なんだろう?」って思ったら、ニワトリを殺すことでしたね。

(カンニング竹山)うーん。

(町山智浩)だから、昔は各村とかで行われていた豚や家畜を殺すっていう行為をさせることで、子供から大人になるっていう儀式は世界中どこにでもあったんですよ。それをまあ、カブスカウトからボーイスカウトに上がる時に、僕の団ではやっていましたね。ただ、それは完全に秘密で誰も知らないんですよ。で、はじめて「ああ、動物を殺すんだ。人間っていうのはそういう罪深い生き物で、それで生きていくんだ」っていうことを自覚するということをやらされたんですね。

(山里亮太)うんうんうん。

(町山智浩)で、面白いのはそれ、完全に秘密儀式なんです。これ、大学とかのサークルとかで行われる新歓の儀式ってほら、潰されて酔わされたり、ひどいことをされるけど、そのこと自体は秘密になっているでしょう? 大抵。

(海保知里)はい。

(町山智浩)噂だけなんですよね。ハーバード大学とか、どこでもやるし。軍隊でもやるんですけど、そういうイジメみたいな儀式って通過儀礼なんで。子供から大人にするための儀式なんで、秘密になるんですよ。大抵。秘儀になるんですけど。だからこれは面白いなと思って。全世界どこにでもあることなんですけども。この映画は、そういう話を描いているんですよ。

(山里亮太)へー!

ホラー映画が描くもの

(町山智浩)だからホラー映画としては、みんなそうなんですけど。たとえば『エクソシスト』っていう映画がありましたね。ある少女が悪魔に取り憑かれて。で、お母さんに対して汚い言葉を言ったり、お股をいじったりして大変なことになるっていう映画だったんですけども。ゲロを吐いたりね(笑)。

(山里亮太)お股って……(笑)。『エクソシスト』ってそんな紹介文で良かったでしたっけ?(笑)。

(町山智浩)いやいや(笑)。具体的に言えないんですが。ただ、あの映画ってキリスト教の神父が出てきて悪魔祓いをするんですけど、キリスト教と全く関係ない全世界で大ヒットしたんですよ。『エクソシスト』って。で、宗教と関係ない人たちもみんな見に行ったんですけど、なぜあれが当たったか?っていうことについて、スティーブン・キングというホラー小説家はこう言っているんですよ。「あれは単純に『かわいい、かわいい』と育ててきた一人娘が突然グレちゃったっていうだけの話だよ」って言っているんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)「突然、だから変なものを食べたりして。タバコ吸って、お酒飲んでゲロ吐いたり。で、エッチなことをしたり、母親に対して汚い言葉を言ったりするんだ。その恐怖は全世界共通で、どんな文化でも関係ないんだ」って言ったんですね。だから当たったんです。『エクソシスト』は。だから要するに『積木くずし』の話だったんですよ。

(山里亮太)へー! ホラーとか呪いとか、そういうんじゃなく?

(町山智浩)そう。そういうものなんだっていう風にスティーブン・キングさんは言っていてですね。で、前に『イット・フォローズ』っていう映画の紹介をしたことがあるんですよ。ホラー映画で。

(山里亮太)あ、はいはい。

(町山智浩)エッチをすると「イット(それ)」といわれる得体の知れない幽霊みたいなものが襲ってくるという話だったんですね。

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(山里亮太)はい。

(町山智浩)それ、イットの正体っていうのは監督がインタビューで言っているんですが、「あれはエッチをすることで大人になるから。自分も歳を取っていつかは死んでいくんだっていう恐怖を知ることになるっていう話なんだ」って言っているんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)「だからそのイットっていうのは、自分もいつかは死ぬという恐怖である。そこから逃れるにはどうするか? 逃れる方法はないんだ」っていう話が『イット・フォローズ』っていう話だったんですね。「ただ、そのイットの恐怖に耐えて生きていくには、愛する人と一緒にいることなんだ」というような話だったんですよ。『イット・フォローズ』って。ネタバレしてますけど(笑)。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)だから、ホラー映画って結構実は深いんですよ。で、この『RAW』っていう映画は生肉の「生」っていう映画なんですけど、このお姉さんが後半で非常に重要になってくるんですよ。で、お姉さんはそのジャスティンちゃんが人肉を食べたくなっていくと、それを助けてあげるんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)まあ、言っちゃいけないような方法で人肉の食べ方を教えていくんですよね。で、だんだんこのお姉さんの話なんだということがわかっていくんですよ。これ、監督にお姉ちゃんがいたらしいんですよね。で、反発しながらもすごく仲のいいお姉さんで、そのことを描こうとしたんだと言っているんですよ。

(海保知里)ふーん!

(町山智浩)これね、このジャスティンちゃんが眉毛とか手入れしないでボーボーなんですね。それを抜いてあげるんですよ。で、「あんた、脇毛もすごい伸びているじゃない」って言って抜いてあげるんですけど。すると、「あんた、お股の毛もこんな伸びてるじゃん」って、いわゆるワックスを塗ってお股の毛を剥がそうとするシーンがあって。この映画のなかで、ありとあらゆる残虐シーンとか人体切り刻みシーンが出てくるんですけど、そのお股の毛をワックスで剥がそうとするところがいちばん痛そうでしたね!

(一同)(笑)

(町山智浩)「ヒーッ!」って震えが出そうになりましたけどね(笑)。「やめてー!」みたいな感じで(笑)。「いや、どんなホラーよりも怖いな、このガムテ系は」って思いましたけども。

(山里亮太)想像がつきやすいからね、みなさんも(笑)。

(町山智浩)ねえ。ただね、この映画が面白いのは、食べるっていうのはいったい何なのか? 誰でも食べれるか?っていうとそうじゃなくて。やっぱり嫌いな人は食べれないんですよ。人って。気持ち悪いでしょう?

(カンニング竹山)うん。

(山里亮太)好きな人を食べたい?

(町山智浩)そう。だってほら、赤ちゃんとかを持った人だったらわかると思うんですけど。本当に、うちの娘はちっちゃい頃、本当にほっぺたとか食べちゃいたくなるんですよ。

(海保知里)うん。まあ、その感情はわかりますけど……。

(町山智浩)手とかちっちゃくて、口に入れたくなっちゃうんですよね。あれ、食べる一歩手前じゃないですか。

(山里亮太)愛情表現だから。

(町山智浩)でも、人間ってすごく不思議なもので、嫌いな人だと見るのも嫌なのに、好きな人だとその人のいちばん汚いところでも平気で舐めれるでしょう?

(カンニング竹山)そりゃそうですよね。

(町山智浩)だってほら、動物って赤ちゃんを舐めまくるじゃないですか。お尻の穴まで全部。あれは愛しているからじゃないとできないでしょう? パンダとか。

(カンニング竹山)気持ちですよね。

(町山智浩)だからこれは、実は食べるということと愛ということを結びつけている映画なんですよ。この映画、なんと愛についての映画でしたよ。

(山里亮太)ええっ! いや、予告編のVを見た限り、全くそれを感じなくて。「うわっ、これキツいな……」って。

(町山智浩)僕も全然わからなかったですよ(笑)。で、やっぱりほら、「食べたい」っていう気持ちと同時に、逆に好きな人がいたら、「食べられても仕方がない」っていう気持ちにもなる時あるじゃないですか。

(山里亮太)いやいやいや(笑)。

(町山智浩)いや、だって餓死しそうになって、自分の子供が飢えていたら自分の肉を切ってあげちゃうでしょう、人って。

(山里亮太)ああー。

(町山智浩)だから、「食べたい・食べられたい」っていうことが愛のメタファーとして描かれている映画でしたよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)これ以上説明できないんですけど、見ればすぐにわかる話なんですよ。

(山里亮太)1個怖いのが、「吐くかもしれない」って……。

(町山智浩)まあ、そこのところはね、そんなにグロじゃないですから。ただね、「絶対にそれ食べちゃダメ!」っていうものを食べるんで、みんな「ヒーッ!」ってなったと思うんですよ。

(山里亮太)なんなんだろう、それ!

(町山智浩)まあ、それは楽しみにっていうところで。ただね、この映画いちばんラストのいちばんラストで、この映画の正体が全部わかるシーンがあるんですね。それはね、本当に感動するんですよ。見ていて。

(カンニング竹山)どういうことなんだろうね、最後。何があるんだろう?

(町山智浩)うーん。だからね、スタンディングオベーションがあって。だから、途中で気持ち悪くなった人はいるんですけど、最後まで見た人はみんな感動して劇場を出て行くっていう映画なんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)愛についての映画でしたね。

(山里亮太)そっか。がんばって最後まで見れば、感動できるんだ。

(町山智浩)がんばって最後まで見れば(笑)。画面はそんなにグロいわけじゃないんですよ。だから、さっき言ったジンマシンが出るところも、ジンマシンが出た後に皮をめくるっていうシーンがあるんですね。それが、少女から女に脱皮していくっていうことの表現だったりとか。非常によく考えられた、素晴らしい映画でしたね。

(カンニング竹山)それを見終わった後に、全部わかるわけですね。「ああ、あのシーンが」って。

(町山智浩)そう。見終わった後、逆に逆算してわかっていくという、非常によくできた映画でした。で、感動します。本当に。

(海保知里)そうか。感動するんですね(笑)。

(山里亮太)日本では、いつ見れるんですか?

(町山智浩)日本では、まだ公開が決まってないんですよね(笑)。

(山里亮太)ああーっ。町山さん、その気にさせておいて……。

(町山智浩)早くしてほしいなと思います。今年のベストに入るぐらいの映画でした。

(海保知里)いやー、ものすごいインパクト。話を聞いているだけで、見たいという気持ちとゾゾゾッとする気持ちと、いろいろございましたが。さあ、今日はフランスのホラー映画『RAW』についてお話いただきました。町山さん、来週もよろしくお願いします。ありがとうございました。

(町山智浩)はい。よろしくお願いします。

(山里亮太)ありがとうございました。

(カンニング竹山)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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