町山智浩 ドナルド・トランプ勝利後のアメリカの雰囲気を語る

町山智浩 ドナルド・トランプ勝利後のアメリカの雰囲気を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でドナルド・トランプが大統領選挙で勝利した後のアメリカの雰囲気を紹介。子供投票を含む事前予想が外れまくった理由などについて話していました。

(赤江珠緒)この時間は映画評論家 町山智浩さんの『アメリカ流れ者』。先週はニューヨークからアメリカ大統領選前夜の様子をレポートしていただきましが、今日も取材中ということでロスアンゼルスにいらっしゃるということです。町山さん?

(町山智浩)はい。もしもし。町山です。

(赤江珠緒)お願いします。

(町山智浩)どうもです。本当にもう、頭来てるんですけど。ねえ。本当に。

(赤江珠緒)トランプさんが大統領ですよ!

(町山智浩)トランプ。もう、大変でしたよ。僕、ニューヨークに行っていて。ヒラリーさんがいるパーティー会場とトランプがいるパーティー会場があって。ニューヨークで、もう歩いていけるぐらいの距離にあったんですよね。そこでもう行ったり来たりして取材をしていたんですけど。ニコニコ動画のニコ生でやっていたんですが。すごいですよ。スタッフ1人。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)iPadで僕が走り回るのをついて行くだけなの。

(赤江珠緒)すごいですね(笑)。

(山里亮太)結構でも、伝説のインタビューだったっていうのを聞いていますよ。

伝説の町山智浩 ニコ生大統領選挙中継

(町山智浩)あ、見てないんですか?

(山里亮太)チラチラと拝見させていただきまして。町山さんが取材に行くところが、やっぱり他のメディアと場所が違う。町山さんは。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)ああ、はいはい。トランプ支持者が集まっているっていうところに行ったんですよ。そこはね、ウェスタン・ショービニストって彼ら自分たちのことを呼んでいる……「ウェスタン・ショービニスト」っていうのは「過激な白人主義者」とかね、そういう感じなんですよ。で、「アメリカから移民を追い出せ!」とかそういうことを言っている若者たちがいるというパーティーにアポなしで行ったんですよ。

(赤江珠緒)どうでした? 入っていって、話はしてくれるんですか?

(町山智浩)まず入っていってすごかったのは、もうトランプが勝ち始めていたんですよ。その頃。だから彼ら、みんなトランプを応援する赤い帽子をかぶって、もう興奮して、お店の前の通りで1人の男の子を6、7人でもって取り囲んでボコボコボコッてパンチしているんですよ。

(山里亮太)えっ? 男の子を?

(町山智浩)バカバカバカッて。ずっとパンチしているんですよ。で、俺がもうビビッて。「大丈夫? 警察を呼ぶか?」って言ったら他の人が「あれは違うんだ。あれは”イニシエーション”っていうやつなんだ」って僕に言うんですよ。

(山里亮太)えっ? 儀式なの?

(町山智浩)イニシエーションとは通過儀礼とか入会儀式と言われるもので。「真ん中にいる男の子は我らプラウドボーイズに入りたい誇り高い白人なんだ。で、彼がちゃんと入会できるかどうかというテストをしている。1分間殴り続けるんだけど、よく見ろ。心配するな。顔は殴らないよ」って言うんですよ。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)体だけ全員でボコボコボコッ!って袋叩きにするんですね。で、1分ぐらい耐えたらいいらしくて。で、耐えたんで、その真ん中にいた男の子は「耐えました! 今日から僕はプラウドボーイズです!」とか言って、それをみんなが泣きながら抱きしめるっていう……

(赤江珠緒)意味がわからない!(笑)。

(山里亮太)ウォーボーイズみたいな(笑)。

(町山智浩)という、非常に美しい男同士の女性差別的な、白人以外差別的な男同士の温かい友情の現場を見てビンビンでしたけども。よくわかんないですが。

(山里亮太)ビンビン(笑)。どんな興奮なんですか、それは?

(町山智浩)はい。でもね、すごかったのはそうやって取材しているわけですよ。彼らの気持ちはなぜトランプを支援するのか?っていうような取材をしていたら、急に突然、裸にSMの拘束衣をつけて、顔にアイスホッケーマスクをかぶった巨大な筋肉マンが出てきたんですよ。

(赤江珠緒)怖い、怖い、怖い!

(町山智浩)あの『マッドマックス2』っていう映画に出てくる核戦争後の地球を支配している暴力の王者ヒューマンガスという人が出てきたんですよ。突然、そこに。僕、トランプが勝っているからこの世の終わりかと思ったけど、そいつを見て「もう本当に終わっていたんだ、この世は!」って思いましたよ(笑)。

ヒューマンガスと出会った町山さん

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)「もうすでに核戦争後の世界だったのかよ、これ!?」って思ってびっくりしましたけどね。

(山里亮太)町山さん、その人にもインタビューされていましたよね?

(町山智浩)その人にもインタビューしましたよ。でもね、よく見るとね、結婚指輪をしているんですよ。結婚して、結婚指輪をしてカミさんの尻にしかれているヒューマンガスでしたけどね。はい。

(山里亮太)(笑)

(町山智浩)でもそれね、すごくて。ニコ生でやっていたんですけども。そっちもこっちがiPadしか持っていないから、軽い気持ちで「ウォーッ!」とかやっているわけですけど、「いま日本で何人が見ていると思う?」って俺が言うんですよ。「いや、わかんない」「いま、あんたがしゃべってバカなことをやっているのを15万人が見ているよ」って言うと、みんなびっくり(笑)。

(赤江珠緒)あっ、そうですか。

(町山智浩)もうでもね、大喜びだったけど、とにかくトランプが勝ち続けるわけですよ。オハイオとかいちばん重要な「ラストベルト」って言われている五大湖地方の工業地帯があるんですけど。そこを全部トランプが勝ったんですよ。で、もうみんな熱狂して右腕を上げて「USA!」コールで。トランプ支持者の連中はもう興奮して互いに体をぶつけ合って。すごかったですよ。

(山里亮太)これ、町山さん。ラストベルトの州をトランプが取った大きな要因って何なんですか?

(町山智浩)まずね、今回ラストベルトでヒラリーが安心していた原因っていうのは、ラストベルトって毎回毎回オバマさんが取っているところなんですよ。っていうのは工業地帯で非常に景気が悪いんですけど、オバマさん、最初に公的資金でお金をブチ込んでいるんですよ。ほら、GMとかを助けたじゃないですか。だから彼は圧倒的にその地域の労働者の人たちの人気を得ているんで。だから全然怖がっていなかったんですね。

(山里亮太)なるほど。

(町山智浩)特にロムニーなんていうのは2012年の選挙で「自動車産業なんて潰れてもかまわない」なんて発言をしていたんで、全くその地域を取れなかったんです。だから、オバマ政権がすごくそこで圧倒的な人気を取っているからヒラリーさんは大丈夫だと思ったんでしょうね。甘く見ていたんだと思います。だから、いつも民主党が取っているミシガンとかウィスコンシンとかペンシルバニアも全部トランプに持っていかれたんですよ。

(赤江珠緒)そこは大丈夫だと思っていたんだ。へー。

(町山智浩)だってね、今回出口直結っていうのをCNNがやっているんですね。今回の投票者全ての人たちの間でのオバマ大統領の支持率って57%なんですよ。トランプに投票した人も、オバマ支持は現在も続けているんですよ。

(赤江珠緒)ああ、本当だ。57%。まだ。

(町山智浩)そうなんですよ。っていうことは、絶対にこれって五大湖地方のラストベルトでオバマさんを支持していた労働者の人たちがかぶっているっていうことなんですよ。「オバマさんはOKだけど、ヒラリーはOKじゃない」っていうことなんですよ。彼らは。で、基本的には民主党支持なんだけども、トランプに投票しているんですよ。

(赤江珠緒)うん、うん。

(町山智浩)で、これはね、やっぱりヒラリーさんが、まずひとつは「五大湖地方を救う」っていう政策をかなり出していなかったんですね。「その地域の産業を現代的なITとかハイテク産業に転換していきたい」と言っているだけで、具体性がないですよね。それはね。遠い未来だし。で、トランプは具体的にNAFTA(北米通商条約)というカナダやメキシコに工場が持って行かれてしまっている通商条約があるんですが、それを潰すって言ったんですよ。すごい直接的ですよ。だから、「(通商条約は)あなたたちの工場を奪ったけど、カナダやメキシコにある工場で作られた製品には税金をかける。この場所に工場を戻す」という。

(赤江珠緒)具体的ですもんね。

(町山智浩)そう。すごい具体的だから、トランプはそこで票を集めたんだと思うんですよ。

(赤江珠緒)でも、町山さんが先週おっしゃっていたね、割とほとんど当たってきたという子供投票と今回、結果が逆になったじゃないですか。

なぜ子供投票は外れたのか?

(町山智浩)「どうして子供投票が外れなかったのか?」っていうのを僕、調べたんですよ。いままでずーっと当たってきた理由を。っていうのは、25才から49才までの人たちっていう幅があるんですね。25才から49才、つまり親の世代ですよ。それが、全投票者のうちで最も多いグループだったんですよ。いままで、ずっと。

(赤江珠緒)うんうんうん。

(町山智浩)それ以上の、50才以上っていうのは老人枠ですけども、そんなに多くなくて。で、それ以下の24才よりも下の人も人数的に多くなくて。ほとんど、大多数が25才から49才の人だったんですよ。投票者が。これって、子供を持つ親なんですよ。だから子供投票っていままで当たってきたんですよ。ずっと。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、2012年の選挙でも、いま言った25才から49才がいちばん投票者の中で多かったんですよ。でも、今年はじめてそこがいちばんトップじゃなくなったんですよ。今年、いちばん投票をしたのは50才以上の人たちだったんですよ。その人たち、投票者の中の45%が50才以上だったんですよ。で、そこが圧倒的にトランプ支持だったんですね。

(赤江・町山)へー!

(町山智浩)それで子供投票が外れたみたいで。高齢化が原因らしいんですよ。あと、調査が全部外れたじゃないですか。僕もやっぱり調査データを見ていて。あれは電話をかけるんですよ。投票する人たちに。で、「どこの誰に投票する?」っていう風に聞いてそれをまとめていて。だから、投票日当日でもほとんど全部がヒラリー勝利っていう風に言っているんですね。投票日当日の朝。で、いちばんすごいのはFOXニュースっていうずっと共和党を応援してきた共和党の広報の人が作った会社があるんですけども。FOXニュースですら、ヒラリーが勝つだろうという風に予想を出しているんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、じゃあこれは全ての予想が全部外れているっていうことは、その元のデータの取り方……データの取り方は全部バラバラなんですから。各社それぞれにデータを取っているわけですから。だから、バイアスは関係ないんですよ。要するに右の人たちの調査によってもヒラリーの勝ちが出ていたっていうことは。で、原因は2つあって。ひとつは実際にヒラリーが勝っていたということですね。ヒラリーさんの方が最終的な得票数はトランプよりも100万票以上多いんですよ。だから、100万票以上も多いから、普通に支持率を調べればヒラリーの支持率の方が高い結果が出ますからね。

(赤江珠緒)ああ、そうですね。

(町山智浩)まずそれが違っていて。真ん中のところのラストベルトの人たちの州で勝利すると、その州の持っている得点、選挙人数っていうのがいるんですけども。それを僅差で勝っても全部ごっそり持っていっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)総取りになりますからね。選挙制度によって変わってくると。

(町山智浩)そうなんですよ。だからミシガン州なんて1万票しか差がついてないんですけども、ミシガン州が持っている得点を全部トランプが持っていっちゃっているんですよね。で、ものすごく差がつくっていうことを計算に入れられないですよね。支持率だけを調べると。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)だから支持率はずっと絶えずヒラリーが上だったんですよ。その真ん中のラストベルトの地域の票の重さが計算に入っていなかったんですね。で、もうひとつはこれ、結構調べてCNNの出口調査でわかったんですけども、トランプに投票した人の多くが投票1週間前に決めているって言ってるんですよ。

(赤江珠緒)ああ、直前に?

(町山智浩)そう。で、ヒラリーの方の投票者はもうだいぶ前から決まっていたと。ところが、最後の調査。電話による投票意向の調査っていうのは1週間以上前が最後なんですね。だから、急にトランプに入れることにした人たちのデータは入っていないんです。予想の元となるデータに。

(山里亮太)なるほど!

(町山智浩)だからね、今回トランプが勝つっていうのは、イギリスの方ではたくさん選挙に賭けをやらせるんですよ。どっちが勝つか?っていう。それも、投票日当日のイギリスの賭けサイトのヒラリーの勝率が80%なんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)だから、今回トランプの勝利に賭けた人ってものすごく儲かったんですよ。ギャンブルで。最大ね、掛け金の20倍を取ったって。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)結構すごいですよ。20倍って。

(赤江珠緒)そうですね。いやー、まあトランプさんに決まって。でも、決まってからもデモも続いてますね。

反トランプデモの取材

(町山智浩)今日、その取材でロスアンゼルスに来たんですよ。で、デモをやっていて、「これはどういうデモなの?」って聞いたら、女の人たちの人権を守ろうというデモで。トランプは「俺は女性の性器を触ってもOKなんだ」みたいなことを言ってレイプみたいなことを容認している人が大統領になってしまってすごく悲しいというのと、1人の女の子がお父さんとお母さんがメキシコから来た不法移民で。自分自身はこっちで生まれたんでアメリカ市民なんですけども、お父さんとお母さんが強制送還されるかもしれないと。トランプが言っているから。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)それで来ている子とか。あと、人工中絶に関してアメリカは1972年に憲法が認めて合法になったんですが、共和党の人たちがまたこれを憲法で禁止をしようとしているんですね。女性の人工中絶を。で、今回トランプが大統領になると最高裁の9人いる判事のうちの1枠がいま空席になっていて、共和党が決定を拒否しているところに保守的な最高裁判事を任命するでしょう。トランプは。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)その時に、また人工中絶が違法化されるかもしれないと言われているんですよ。それで怯えている女性たちが集まってデモをしていたんですが、「主催者は誰?」って聞いたら、15才の女の子でしたよ。

(赤江珠緒)15才の女の子?

(町山智浩)15才の女の子でした。で、「どうしてこんなことできたの? 警察に許可を取らなきゃいけないし、大変でしょう?」って言ったら、「『こういうデモをしたいんです』という風にネットで書いたらいろんな人たちが警察の許可の取り方とかいろんなことを教えてくれて、集まってくれてできました」って言ってましたね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)やっぱり女の人ばっかりなんですけど、「とにかくセクハラとか差別、あとある特定の人物に対する憎しみをぶつけることが、(トランプが)大統領になることによってそれがアメリカという国の中でモラルとして認められてしまった。これからの世の中で『差別はいけない』とか『いじめはいけない』とか『女性に対する性的行為の強要はいけない』とかいうことを言いにくい世の中になってしまった」と。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)それをしたところで、別に大統領に選ばれるんだもん。ということで、すごく衝撃を受けていますね。

(赤江珠緒)うん。アメリカが掲げていたいちばんの理念が……あれっ?っていう感じですもんね。

(町山智浩)そうですよ。だから自由の女神の台座のところには、「世界中で困っている人はアメリカに送りなさい」って書いてあるんですね。「難民とか貧乏な人たちをみんな送りなさい」って書いてあるんですけど、それを否定しているんで。それでOKとなってしまったんで、やっぱりみんな……デモに参加していたお父さんの1人は泣いてましたよ。話しているうちに。もう、涙が出てきちゃって止まらなくなっちゃって。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)もうこんなに互いに憎しみ合わせて。「トランプに投票した人たち、(アメリカの)真ん中にいた人たちのこともわかる。でも、僕らは会えないじゃないか。本当は話し合ったらわかり合えたかもしれないのに、会えないで、憎しみだけをバラまかれて。真ん中の方にいる白人の労働者の人たちに都会の人たちを憎むようにトランプは教えて、憎しみが我々(ロスアンゼルスやニューヨークに住んでいる人々)に向けられた。別に憎み合っていないのに、どうしてこんなに憎み合わされなきゃいけないんだ?」って言って涙を流していましたね。そのジョンさんっていう人は。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)別に彼らのことを嫌いじゃないし、彼らもたぶん僕たちのことを嫌いじゃなかっただろう。でも、トランプは何度もそれを憎むように言って。『彼らがお前たちを貧乏にしているんだ。彼らはいい生活をしているんだ』と。それで本当は憎む必要がないのに憎まされてしまっている。なんとか話し合いができないか?」って言ってましたね。

(赤江珠緒)そうかー。アメリカはやっぱり変わっていくんですかね?

(町山智浩)「カリフォルニアだけ独立しよう!」っていう人もいますよ。カリフォルニアは食料自給率が圧倒的に高い、100%以上なんで。それでアメリカって果物とか野菜ってカリフォルニア以外のところではあまり取れないんですよ。本当に一部のところでしか取れなくて、真ん中の方は野菜はゼロなんですよ。取れる量が。だから、そしたら戦争になっちゃいますよね(笑)。食料をみんなカリフォルニアから受けているから。アメリカ中の人たち。

(山里亮太)なるほど。

(町山智浩)だからアメリカはみんなで……これだけデカいのに、1個1個の州が自立できない。カリフォルニア以外の州って全く食料的にも経済的にも自立できないんで。特に、真ん中の方の州の人たちってアメリカ政府からものすごい福祉を受けているんですよ。はっきり言うと、都会に住んでいる人たちのお金は福祉のお金で田舎に回っているんですよ。だから、お互いにバラバラになることはできないだろうと。

(赤江珠緒)うーん……

(町山智浩)それを、バラバラにわけて分断することで人気を得たトランプっていうのは非常に問題があるなと。今回トランプがですね、主席補佐官に選んだスティーブン・バノンっていう人がいるんですけども。その人はブライトバードっていういわゆるネット右翼サイトの主催者なんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)で、そのサイトでいろんなマイノリティーとか、特に女性なんですけども。女性に対する憎しみをバラまいて人気を得てきたんですよ。ネットに集まる人たちの。で、それをやってた男が今回、トランプの首席補佐官になったんで。差別はまだ続くんじゃないかなっていうね、恐怖はちょっとありますね。で、今回、トランプが嫌いな人がロスアンゼルスに多いんで、ウォーク・オブ・フェームっていうチャイニーズ・シアターの前にある通りに星が埋めてあるんですけども。有名スターとかの。見たことあります?

(山里亮太)映像とかでね、見たことがありますけども。星がバーッてあって、名前が彫ってあって。

(町山智浩)俳優たちの名前がずっと埋められているんですね。で、トランプのもあって。テレビスターだったんで。で、それをトランプ嫌いの人たちが投票日の直前にハンマーで叩き割ったんですよ。

叩き割られたドナルド・トランプの星

(赤江珠緒)そうですか……

(町山智浩)で、トランプファンの人たちがいま、そこにいて。そこに板を打ち付けて。新しくその星がきれいになるまで、これ以上いたずらをさせないようにって交代交代で番をしているんですよ。トランプの星の周りで。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、そこに行ってきたんですよ。そこに行ってきたらね、ジョーっていう名前の身長2メートルの黒人の人がいまして。「トランプのためにこの星を守る!」って言って。彼はキリスト教原理主義なんですね。で、「トランプは全然キリスト教を信じてないじゃないか!」って言ったら、「知ってるよ。ただ、トランプはキリスト教原理主義の人のために法律の改正とかをしてくれるって言ったから支援しているんだ」って言ってるんですけど。で、その2メートルのジョーと僕が論争をしていたら、ジョーが「俺は”ビッグ・ジョー”と言われているんだ。本当にビッグ・ジョーなところを見せてやるぜ!」っていきなり俺、宙に持ち上げられてしまいまして。

(山里亮太)ええっ?

(町山智浩)身長2メートルの大男に。それも、ハリウッドのど真ん中で。で、俺は「ワーッ!」って言ったんですけど、そしたら周りの中国人の観光客がなにかのイベントだと思って、みんな写真を撮りまくりですよ。俺の。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)パシャパシャパシャパシャ!って。何者でもないんだけど(笑)。

(赤江珠緒)なんのパフォーマンスだと?

(町山智浩)そう。「なんだろう?」って。俺もずっと持ち上げられたままだから、手足をバタバタさせてね。まさかね、55才になってね、高い高いをされるとは思ってませんでした(笑)。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)それ、来週BS朝日で放送になりますけどね(笑)。

(赤江珠緒)そうなんですか(笑)。

(町山智浩)でもそれでもね、みんなハッピーなのは、カリフォルニアでね、完全にマリファナ(大麻)が解禁されることになりましたからね。

(赤江珠緒)マリファナが。

(町山智浩)マリファナ、完全解禁ですよ。2018年の1月から、たぶん完全解禁ですね。カリフォルニア。

(赤江珠緒)大統領選挙と同時に住民投票も行われたと。

(町山智浩)そう。市民投票でそうなったんです。だから日本から来た人たちも自由に買ったりできるんですけどね。2018年からは。で、また今日、マリファナの栽培地に取材に行ったら、「すごいやつを紹介するよ」って言われて、そこに行ったらロスアンゼルス最大のマリファナ栽培者、マリファナ育て人。マリファナ育てて48年の職人さん、匠に会いましたよ。

(赤江珠緒)匠?

(山里亮太)マリファナの匠?

(町山智浩)はい。日本人でした。

(赤江珠緒)日本人? へー!

(町山智浩)はい。菊地功さんという方で。現在67才かな? 1968年、18才の時からずーっとマリファナを育ててきて48年。その人がマリファナの王様なんです。いま、ロスアンゼルスの。

マリファナ栽培の匠 菊地功さん

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)そう。で、その人が「日本からたくさんお客さんが来るから待っているよ!」って言っていたんですけど(笑)。大変な取材にそっちもなったんですけどもね。それも来週、BS朝日で放送しますけども。

(赤江珠緒)なんか、混沌としておりますなー、アメリカ。

(町山智浩)で、すごいのはこれまでに何度も逮捕されているんですよ。その菊地さんって。「19○○年、逮捕。19××年、逮捕……」って、もう6回ぐらい逮捕されているんですけど。で、「今度、2018年にとうとうマリファナが完全に解禁になりましたね!」って言ったら、「俺の勝ちだ!」って言ってましたよ。「やつらが間違っていて、俺が正しかった!」って言ってました。はい。

(山里亮太)住民投票で決められるんだからね。

(町山智浩)菊地さんはね、「大麻のミヤギさん」って言われているんですよ。本当に。

(山里亮太)「大麻のミヤギ」?

(町山智浩)『ベスト・キッド』っていう映画で主人公に空手を教えるパット・モリタっていう老人がいるんですけども。それと同じように、いま彼はアメリカでたくさん始まっているマリファナ解禁に向けて、マリファナの育て方を知りたいっていう若者たちにマリファナ学校を開いているマリファナ師匠なんですよ。

(山里亮太)マリファナ師匠?

(町山智浩)そう。それが菊地功さんです。日本人でした。はい。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)ちょうどいま、日本でもマリファナがだいぶ話題になっていますよ。逮捕された人がいました。

(町山智浩)もうすごいことになっていましたけど。そういう取材をいっぺんに次々とやっていて、なにがなんだかもうわかりませんが。はい(笑)。

(赤江珠緒)すごいですね。改めて、日本と全然違う国だなっていうのが見えてきますね。本当にね。

(町山智浩)ねえ。日本と全然違う国ですけど、日本の職人。匠がやってますよ!

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)マリファナの匠の話で終わりました。

(町山智浩)ということで、いろいろありました。すいません(笑)。

(赤江珠緒)はい。わかりました。じゃあ、町山さんはもうロスアンゼルスの取材が終わって?

(町山智浩)はい。ちょっと取材が遅すぎたんで、飛行機に乗れなくて。飛行場の前のホテルで籠もっています。はい(笑)。

(赤江珠緒)そうですか。そうですか。いや、いろいろとお疲れ様でした。

(山里亮太)お疲れ様です、町山さん。

(赤江珠緒)ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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