町山智浩『スター・トレックBEYOND』を語る

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 745

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で『スター・トレックBEYOND』を紹介。2016年に『スター・トレック』シリーズの最新作が作られる意義やそのテーマについて紹介していました。



(赤江珠緒)この時間は映画評論家、町山智浩さんの『アメリカ流れ者』。今週もアメリカ カリフォルニア州バークレーからお電話です。町山さん?

(町山智浩)はい。町山です。あ、バークレーからじゃなくて、ハリウッドからなんですけども。今日は。

(赤江珠緒)ハリウッドからでしたからでしたか。

(町山智浩)すいません。クリント・イーストウッドの新作映画の取材に来ていまして。それで今回はその前に、またハリウッドに行って……僕ね、一昨日ぐらいまでニューヨークにいて、『スーサイド・スクワッド』の取材をしてきましたんで。

(山里亮太)あっ、見たい!

(町山智浩)はい。その話はまた、次の次ぐらいにやりますけども。いま、立て込んでまして。その前の前にハリウッドに行って取材してきた映画『スター・トレック BEYOND』について紹介します。じゃあ音楽、お願いします。



(山里亮太)『アメリカ横断ウルトラクイズ』の歌だ。

(町山智浩)はい。ウルトラクイズの音楽として有名ですけども。これは『スター・トレック』という50年前に始まったアメリカのTVシリーズの主題歌なんですけども。で、今回ご紹介するのはその『スター・トレック』シリーズの最新作の『スター・トレックBEYOND』の紹介なんですけども。これ、1966年にTVシリーズが始まってからですね、TVシリーズが5シリーズもあって。『スター・トレック』は劇場用映画も13本もあるんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、全部見ると720本以上あって、全部見ることは不可能だと言われているぐらいのすごい大河シリーズなんですね。で、今回のは2009年に若い俳優さんたちでリブートをかけてからの3作目です。で、この映画については、なぜいまこの話をしなくちゃならないか?っていう話になってきますんで。まあ、ちょっと前フリが長いんですが。まず、『スター・トレック』の説明をしますとですね……

(山里亮太)はい。

(町山智浩)僕がもう55才になろうとしているんですけど、僕ぐらいの世代はテレビで見て、みんな大好きで知っているものなんですけども。これはまず、遠い未来が舞台でですね。地球が惑星連邦という銀河系のいろんな宇宙人たちの連合国家に加盟した時代の話なんですよ。だからヨーロッパ連合のようなものなんですけど、ひとつひとつが国じゃなくて惑星なんです。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)だから地球人だけじゃなくて、バルカン星人とか、ロミュラス星人とか、クリンゴン星人とかいろんな宇宙人がいて。みんなで国連みたいにしてるんですね。で、その惑星連邦の宇宙探査船のエンタープライズ号という宇宙船の乗組員たちの冒険を描くのが『スター・トレック』シリーズです。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、その艦長はカーク艦長。カーク船長といってクリス・パインという俳優さんが今回のシリーズでは演じています。で、これがなんでアメリカだけじゃなくて全世界、日本も含めて大ヒットしたか? というと、これはね、「ダイバーシティ」というのがキーワードなんですよ。

(山里亮太)ダイバーシティ?

スター・トレックとダイバーシティ

(町山智浩)ダイバーシティっていうのはフジテレビのところにあるのが(お台場)ダイバーシティですけども(笑)。

(赤江珠緒)そうそう。聞きますけども。

(町山智浩)ダイバーシティっていうのはね、「多様性」っていう意味なんですよ。

(赤江珠緒)多様性。うん。

(町山智浩)要するに、いろんな人たちがいると。で、このエンタープライズ号で特にその当時、日本ですごい人気だった理由っていうのは、これに乗っているパイロット、操舵士がですね、日本人なんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)その頃、アメリカのテレビドラマとかアメリカのテレビ映画で、敵じゃなくて主役級の人間が日本人であることっていうのは、ほとんどなかったんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)だからもう、日本人はみんな喜んで。それだけじゃなくて、韓国や中国の人たちもアジア人がアメリカのテレビドラマの主役級のメンバーだってことで、みんなそれで感情移入して見ていたんですね。

(赤江珠緒)ああ、まあそうか。昔の映画って日本人が変な風に描かれているの、多いですもんね。

(町山智浩)ひどい時は白人が日本人を演じてるんですよ。出っ歯をつけて、目を吊り上げて。ところがこれは本当に日系人のヒカル・スールーという名前で……日系人っていうか、日本人とフィリピン人の混血という役なんですけども。ジョージ・タケイさんという本当の日系人が演じているんです。


(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、その人はエンタープライズ号のハンドルを握っているんですよ。で、それ以外にはね、すごく重要だったのは通信士官の役で、要するに連邦政府の代表者として知らない宇宙人と話をするっていう非常に大事な仕事をやっている人はアフリカ系の女性が演じているんですね。ウーラ通信士っていうんですけども。


(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)これが当時、大変画期的だったのは、キング牧師が黒人の南部における選挙権をやっと勝ち取った翌年のドラマなんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そんな時代か!

(町山智浩)それなのに、その連邦政府の代表者としての士官の役を黒人が演じて。しかも、女性なんですね。で、この1966年ごろのアメリカっていうのは女性でもまだ実社会では仕事は秘書とかタイピストとか受付、看護師、電話交換手ぐらいしかなかった時代なんですよ。まだまだ。で、その時代にもうちゃんとした士官として、非常に外交官としての役を女性にやらせたというのは、これは画期的だったんですよ。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)で、キング牧師も「『スター・トレック』はすごい」って言っているんですね。それ以外には、機関長のスコットがスコットランド人だったり、それからその頃、ソ連とアメリカは冷戦していたんですけども、それなのにエンタープライズ号の航海士はチェコフっていうロシア系なんですよ。


(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、どうしてそういう、地球上のあらゆる人種を乗せた船にしたのか?っていうと、まず、ジーン・ロッデンベリーっていうこのドラマを作った人が考えたのは、もし人類が宇宙に行くレベルになったら、もう人種とか民族とか国家っていうレベルじゃないだろうと。それは地球人でしょう。だから、ひとつの船に全ての地球人が乗っている状況っていうのが普通なんだと考えたんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、地球人の代表として他の星の人たちと付き合うんだから、そういう状況になっているだろうっていう非常に未来予測なんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)ただ、それがその当時としてはものすごい画期的だったんですね。ものすごい差別があった時代ですから。だから、この当時、要するにブルース・リーがアメリカにいて、彼はアメリカで国籍を持っているアメリカ人だったんで、なんとかハリウッドに入ろうとしているんですよ。で、ハリウッドでドラマを作ろうとかいろいろしているんですけど、結局できなかったんで香港に帰っているんですよね。

(山里亮太)ああ、そうだったんですね。

(町山智浩)そういう時代に『スター・トレック』っていうのは非常に当時画期的だったんですけど。で、すごいのがですね、今回の『BEYOND』は監督が台湾人なんですよ。台湾人で生まれたジャスティン・リンという台湾系アメリカ人。移民の監督なんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、彼は2002年に『Better Luck Tomorrow』っていう自主制作に近い低予算映画を作っていて、アジア系のアメリカ人の若者たちの青春ドラマなんですけど。それを作った時は、アジア人の俳優たちでやるアメリカ映画は全然ないんで作っているんですよ。

(赤江珠緒)ふんふん。

(町山智浩)で、そこで韓国系の若者を演じているのが今回のヒカル・スールーという日系人の航海士を演じているジョン・チョウという韓国系の俳優なんですね。だからジャスティン・リン監督としては、14年ぶりに彼のデビュー作の主演だった俳優と今回また合作しているという形なんですけども。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)で、この14年間の間にハリウッドが大きく変わっているんですよ。すごく。っていうのは、ジャスティン・リン監督はその次に撮った映画が『阿呆遊戯(ブルース・リーを探せ!?)』っていう映画だったんですよ。

(赤江珠緒)『阿呆遊戯』?

(町山智浩)それはブルース・リーの遺作の『死亡遊戯』を、ブルース・リーってアクションシーンだけ撮って他のシーンなしで死んじゃったんで。ドラマ部分をなんとか他の役者で代役を立てて映画化しようとするんですね。ハリウッドはね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)そうすると、そのオーディションにアジア人の俳優たちが殺到するっていうコメディーなんですよ。『阿呆遊戯』って。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、それがブルース・リーと似ても似つかない阿呆ばっかりなんで『阿呆遊戯』なんですけども。



(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、どうしてそれをジャスティン・リン監督が撮ったか?っていうと、その頃はとにかくアジア人が主役の映画っていうのはアメリカではほとんど存在しないから。だから、1本でも『死亡遊戯』をやるってことになったら……それは70年代の話なんですけど。『死亡遊戯』を実際に完成させたのはね。そしたら、ありとあらゆるアジア人が殺到して大変なことになると。それはハリウッドがいかにアジア人を叩き出しているか?っていうことなんだっていうことを言いたかったらしいんですよ。

(赤江珠緒)ねえ。なんか面白そうですね。『阿呆遊戯』。

(町山智浩)アホですよ。はい。でもね、いまもあんまり状況は変わっていないよっていうことが最近言われているんですよ。つまり、アジア人が主役のはずのアジア人のドラマなのに、わざわざ白人にやらせるっていう状況がハリウッドでは最近、続いているんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)で、最近すごく問題になったのは、『攻殻機動隊』という日本の士郎正宗さんが描いた劇画のハリウッド映画化で、これ、ヒロインが草薙素子っていう日本人なんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)それをスカーレット・ヨハンソンに演じさせるってことになったんですよ。


(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)お母さんは桃井かおりなんですけど(笑)。

(赤江珠緒)それはちょっと、無理があるな(笑)。

(町山智浩)でしょう? 桃井かおりからスカーレット・ヨハンソンは生まれないんですけど。ただ、原作では身体がロボットなんですよ。心は草薙素子だけど形はいくらでも入れ替えられるっていう時代の、未来の話なんで。義手とか義足みたいな感じで義体っていうものがある時代の話なんですよ。男が女になったりできる時代なんで。だから、白人の身体でもおかしくはないんですけども。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)でも、原作で日本人の女性ってなっているのを、わざわざ白人に変えるっていうのはおかしいですよね?

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、それは日本人じゃダメ。東洋人じゃダメ。要するにハリウッド映画としては売れないんだっていう差別なんだと。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、これはアジア人俳優たちが怒っているわけですよ。「私たちには仕事がないのに、なんで私たちにくれないの?」って言って。で、そういうことが最近、もうひとつ起こっていて。いま、『万里の長城(The Great Wall)』っていう映画がもうすぐアメリカで公開されるんですけど。それは秦の始皇帝の頃に万里の長城を中国で作りましたよね? それなのに、主役がなぜかマット・デイモンなんですよ。


(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)(笑)。マット・デイモン、その頃の中国にいないですよ。紀元前の。ねえ。

(赤江珠緒)それは……ええ(笑)。

(町山智浩)そういう無理なことをハリウッドがすごくやっていて。それは昔、ブルース・リーが『燃えよ!カンフー』というドラマ・映画の企画をハリウッドに持ちこんだことがあるんですよ。それは、西部の時代っていうのは中国から来た人たちが鉄道を作っていたんで。西部の開拓地にね。そこにカンフー使いがまぎれていて、ガンマンたちと戦うっていう西部カンフーアクションだったんですね。ブルース・リーが考えたのは。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)ところが、それを実際にハリウッドがテレビドラマ化した時には、主演がデビッド・キャラダインっていう白人になっちゃったんですよ。

(赤江珠緒)カンフーの達人が?

(町山智浩)っていうか、中国から来たカンフーの達人なのに。で、そういうことを繰り返していて。あとね、マーベルコミックスでいま、『ドクター・ストレンジ』というベネディクト・カンバーバッチ主演の漫画の映画化が進んでいるんですけども。もうすぐ公開されますが。それはチベットに行って、チベットの仏教僧から修行をするという話なんですね。そのドクター・ストレンジという白人の科学者が。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)ところがそのチベットの高僧の役を、ティルダ・スウィントンっていう白人女性が演じるんですよ。なんか。


(赤江珠緒)えっ? リアリティーを求める方向に行ってるんじゃないんですか?

(町山智浩)行ってないんですよ。だからこれは完全にハリウッド側に「アジア人じゃダメ」っていうのがあるんですね。

(山里亮太)まだあるんだ。そんなのが。

(町山智浩)で、非常にいま、ハリウッドで行われているのは「ジョン・チョウを主役にしよう運動」っていうのがあって。ジョン・チョウってこのヒカル・スールーを演じている韓国系の俳優なんですけども。彼に全部、いろんなハリウッド映画の主役をやらせるっていうポスターを作って。「これでも別にいいじゃないか? ジェームズ・ボンドがジョン・チョウでもいいじゃないか?」っていうような運動があったりするような状況なんですよ。


(赤江珠緒)ふーん! それは、ハリウッドにいらっしゃるアジアの?

(町山智浩)アジア系の俳優たちを中心にそういう運動が起こっているんですよ。あまりにも白人化しすぎているんで。白人でもなんでもないのにね。そう考えると、『スター・トレック』の方がはるかに現在より進んでいたんですよ。1966年の段階でそういうドラマをやっていたんでね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)だからいま、この『スター・トレック』が作られ続けるっていうのはハリウッドの状況に対して非常に意味があるんだっていうことと、あと、もうひとつ今回シナリオを書いているのがサイモン・ペッグという人なんですね。この人は、この中で機関長のスコットを演じているイギリス人なんですけど、この人は『ミッション:インポッシブル』シリーズでトム・クルーズと恋愛関係にあるベンジーの役を演じているハゲた人ですけども(笑)。

町山智浩『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でトム・クルーズ主演映画『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』を紹介していました。 (町山智浩)で、今日はで...

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)イチャイチャしてますよね。『ミッション:インポッシブル』シリーズでね。彼が今回、シナリオを書いているんですよ。で、彼はもともと『スター・トレック』オタクなんですけど。今回の『BEYOND』のストーリーはですね、ヨークタウンという名前の巨大な宇宙ステーションがあって。スペースコロニーみたいなね。で、ひとつの惑星ぐらい人が住める巨大な人工物が宇宙に浮かんでいるんですけども。それが惑星連邦の宇宙ステーションなんですが。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)そこがですね、謎の敵に襲われるっていう話になっているんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、「なんでヨークタウンっていう名前にしたの?」って僕がサイモン・ペッグにインタビューで聞いたんですね。それはね、ヨークタウンっていうのはアメリカが独立戦争の時にイギリスと戦ってイギリスを打ち負かした場所がヨークタウンなんですよ。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)で、そのヨークタウンっていうのはもともと『スター・トレック』のTVシリーズに出てくるんですけど。で、それは非常に『スター・トレック』っていうものの世界観が実はアメリカそのものなんだっていうことを言いたいって言ってるんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)要するに、「あらゆる人種がいる。移民がいっぱいいて、もう人種はバラバラだけども、みんな仲良くやっているんだ。それが『スター・トレック』に描かれる惑星連邦の世界なんだ」という、イギリス人側からの『スター・トレック』に対するラブコールとして今回の話を作っているんですけども。で、今回ね、襲ってくる敵がすごくね、クラールっていう敵が襲ってくるんですが。それについて、今回はミスター・スポックというバルカン星人のエンタープライズ号の副長を演じるザカリー・クイントっていう俳優にインタビューしたら、「今回のクラールっていう敵はドナルド・トランプだ」って言っていたんですよ。

(赤江・山里)ええーっ!?

敵・クラールはドナルド・トランプ

(町山智浩)で、クラールっていうのは惑星連邦がいろんな人種やいろんな民族同士が仲良くやっているのを気に食わない!って襲ってくるんですよ。

(山里亮太)はー。まさに、移民を受け入れないぞと。

(町山智浩)全くそうで。「お前らは違う異星人同士で手に手を取りあって”連合”とか言ってるけども、そんなものは理想にすぎない。人間っていうのはお互いに反発して、いがみ合って戦うものなんだ!」とか言うんですよ。敵が。で、これについてそのザカリー・クイントがインタビューしたら、「これは完全にトランプだね。だからいま、この『スター・トレック』が公開されることは非常に重要な意味がある」って言うんですね。

(赤江珠緒)すごいですね。悪役が大統領候補になっているっていうこのアメリカの現状……

(町山智浩)すごい時代なんですよ。そう。まあ、これはやっぱりでもグローバリゼーションとかでどんどん国境がなくなっていって、地球がひとつになって今度は宇宙の惑星連邦の中に入っていくのは、ひとつの未来進歩観じゃないですか。でも、それに対してひとつの土地に生まれて、その土地の中で生きていこうっていう人もいますよね?

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、これは完全にそういう人たちとグローバリゼーションっていうのはどうしても食い違っていくんですよね。

(赤江珠緒)ああー。

(町山智浩)だからそのナショナリズムとインターナショナリズムの食い違いっていうのがあって。この問題っていうのは、非常にいまアメリカで戦っている問題なんですよね。だからこの『BEYOND』っていうのは「それを超えて……」っていう話になっているんですけども。タイトルではね。

(赤江珠緒)ああ、そうか。

(町山智浩)そう。『BEYOND』は「超えていく」っていう話なんですよ。で、そのクラールに対してエンタープライズ側が反論するのは、「そうじゃないんだ。人はいがみ合うことで強くなるんじゃなくて、人は手を取り合うことで連合して強くなるんだ」って言い返すんですけど。だからこれは全くこの2つのイデオロギーの……トランプ的イデオロギーとヨーロッパ連合であるとか国連的なイデオロギーの戦いなんですね。今回の映画は。

(赤江珠緒)ふーん。うん。

(町山智浩)でね、今回もすごく重要なのは、ジョン・チョウが演じるヒカルがね、今回はゲイっていう設定に新しくなっているんですよ。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、『スター・トレック』シリーズっていろんな人がいるんだけど、ゲイだけはいなかったんですよ。だから今回、「ヒカルはゲイ」っていう設定が新しく入っているんですね。

(赤江珠緒)ああ、さらに多様性に。

(町山智浩)そうなんですよ。で、これヒカルをもともと演じていたジョージ・タケイさんっていう日系人の人が、非常に、ハリウッドの俳優では最も早くカミングアウトした人なんですよ。ゲイであることを。

(赤江珠緒)ああ、そうだったんですか。へー。

(町山智浩)そうなんですよ。で、その頃はほとんどいなかったんですよ。で、誰でも知っているそのジョージ・タケイがゲイであるっていうことで、ゲイのことを隠していて辛い思いをしている人たちに勇気を与えたいってことで、カミングアウトしたんですね。彼は。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)だから今回、ヒカルをゲイっていう設定にしたんですけども。で、その時に僕、インタビューに一緒に行った人が中国から来た、まだ30ぐらいだと思うんですけど女性でね。今回ね、制作会社のパラマウントが中国に買われるらしいってことで中国の人がいっぱい取材に来ていたんですけど。その中国の女性が一緒にインタビューをしたんですけども、そのゲイの話をしていたら、「あなたたち、知ってますか?」って話を俳優たちにし始めたんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)「BLとかやおいとか、そういうのは『スター・トレック』から始まっているんですよ」って彼女は言うんですね。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)「もともと『スター・トレック』が放送された1960年代にカーク船長とミスター・スポックがあまりにも仲がいいんで。2人は本当はデキているっていう妄想を女の子たちが抱いて。その妄想を物語として書き始めたのが、いわゆるやおいやBLの始まりなんですよ」って言い始めたんですよ。

(赤江珠緒)ここが始まりだったの!?

(町山智浩)そう。それは本当なんですよ。で、その話をしていたらカーク船長役のクリス・パインとスポック副長役のザカリー・クイントが2人で見つめあってですね。「えっ? それは妄想じゃないよねえ、スポック……」って言ったんですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)そしたらザカリー・クイントが「そうだよねえ、カーク……」って言いながら、2人でこう体を触り合ってですね。僕たちインタビュアーの目の前で。

(山里亮太)あらっ!

(町山智浩)イチャイチャイチャイチャしだしたんですよ。「ねえ、カーク……」とか「うん、スポック……」とか言いながら。見つめあって。

(山里亮太)それは……サービス的な?

(町山智浩)そう。したらその中国系の腐女子のインタビュアーは「キャーッ!」とか言って、大変でしたよ(笑)。

(山里亮太)テンション上がっちゃって。

(町山智浩)「キャーッ!」ってもう、もだえ苦しんでましたね(笑)。

(赤江珠緒)そうですか(笑)。

(山里亮太)もちろん劇中でそんなシーンはないんですよね?

(町山智浩)そういうシーンはないんですけどね。はい。でもね、サービスしてくれましたけどね。それはカメラで撮っちゃいけないインタビューだったんでね、本当惜しかったですね。もう、撮っていたらね、最高でしたよ。イケメン2人でこう……ザカリー・クイント自身は本当にゲイなんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうなんですか。スポック役の。

(町山智浩)そう。だから超リアリティーありますよ。2人でこう、唇があとね、1センチぐらいの距離で2人でこうやってやってるんでね。もう、うっとりでしたけどね。はい。なんの話だか……『スター・トレック』の話ですが(笑)。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)というのが『スター・トレック』で。ちょっとね、音楽をかけてもらえますか? ビースティ・ボーイズの『Sabotage』ですね。



(町山智浩)今回ね、なんと『スター・トレック』って宇宙の話なんですけど、今回キーになっているのはこのね、ビースティ・ボーイズの『Sabotage』なんですよ。

(赤江珠緒)うん?

(町山智浩)ハードコアパンクなんですけど。これがね、言っちゃいけないんですが、大変なものとしてね、出てきますんで。非常に、まあ『超時空要塞マクロス』のような、リン・ミンメイの歌のようなものとして出てきますんで、みんなお楽しみに。ということで、『スター・トレックBEYOND』、日本公開は10月21日からです。はい。

(山里亮太)これがかかると、なにかでっけーことが起こると。

(町山智浩)そうなんですよ。はい。

(赤江珠緒)刺激的な曲ですからね。なにが起こるんでしょうね。

(町山智浩)リン・ミンメイかと思いましたね。はい。ということで、なんだかわかる人にはわかると思います。

(赤江珠緒)はい。ありがとうございます。『スター・トレックBEYOND』、日本公開は10月21日からです。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)はい。どもでした。

<書き起こしおわり>

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする