町山智浩 水木しげる追悼特集

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、亡くなった漫画家の水木しげる先生を追悼。影響を受けた水木しげる作品などを中心に話していました。

水木サンの幸福論 (角川文庫)
(赤江珠緒)町山さん、今日ね、急遽内容を変更してということになりましたね。

(町山智浩)はい。まあ、とにかく曲を聞いてもらえますか?



(山里亮太)あれ?声が・・・僕の知っている方と違う?

(町山智浩)これね、ああ、これはたぶんですね、滝口順平さんバージョンだと思いますけども。あの、熊倉一雄さんバージョンっていうのもありますね。

(山里亮太)僕らはたぶん吉幾三さんバージョン世代だと。

(赤江珠緒)えっ、私、ここだな。

(町山智浩)あのね、最初はたしか熊倉一雄さんバージョンだったんじゃないかな?この間亡くなったんですけども。滝口順平さんも亡くなりましたから、まあ名だたる声優さんの方々が歌ってらっしゃるんですけど。まあ、とにかくこの歌は画期的ですよ。水木しげる先生が作詞してるんですけど。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)ねえ。いまだったらたいへんですよ。苦情とかガンガン来て。こういう歌を流したら。

(山里亮太)学校行かないでね。

(町山智浩)『学校行くな』とか。すぐ苦情、クレームかける人がいますからね。

(山里亮太)コンプライアンスだ。

(町山智浩)ねえ。これはもう、学校行かない、会社行かない歌ですから。

(山里亮太)グータラしてるのがいいよ、みたいな歌ですよね。

水木しげるとゲゲゲの鬼太郎に大きな影響を受けた町山智浩

(町山智浩)たいへんな影響を受けましたね。僕はね(笑)。僕はね、水木しげる先生とゲゲゲの鬼太郎にね、はっきり言ってロックとか映画よりも大きな、人生上の影響というか。道を誤った原因となったものですね。はい。

(赤江珠緒)ええっ?

(山里亮太)この歌のままに生きようと思ったんですか?

(町山智浩)そうなんですよ。だって僕、幼稚園の時にゲゲゲの鬼太郎が最初にアニメ化されて。夢中になったんですけど。まだ学校に行ってないんですよ。僕。その頃から、『お化けにゃ学校もない』って歌ってるんですからね(笑)。もう最初から行かないですよ。そりゃあ、もう(笑)。

(赤江珠緒)(笑)。そうかー!

(山里亮太)『行かないでいい』と思っちゃった。お化けじゃないのに。

(町山智浩)そう。もうヤバい人になっているんですけど。その段階で既にね。

(赤江珠緒)じゃあ町山さんの核を作った部分は水木先生?

(町山智浩)そう。どうしようもない、いま世界をウロウロとしているですね、ならず者になってしまいましたが。僕ね、いちばん衝撃を受けたのは、幼稚園の頃にゲゲゲの鬼太郎が少年マガジンっていう雑誌で連載されていて、それを読んでいたんですが。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)それと同時に水木先生が『鬼太郎夜話』という漫画を同時に連載していて。それも一緒に本になったんですね。同じ少年マガジンのシリーズの中から、後半にその『鬼太郎夜話』っていうのが出ちゃったんですよ。で、僕、小学校1年か2年の頃にたしかそれを読んだんですけども。これが完全にですね、大人向けの漫画なんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。と、言うと?

(町山智浩)実はゲゲゲの鬼太郎よりも前にそっちが書かれているんですよ。だから鬼太郎の原点はそっちなんですね。『鬼太郎夜話』の方なんですけども。それがね、まず鬼太郎はぜんぜん正義の味方ではないんです。もともと。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、妖怪退治もあまりしないし。基本的に定職もなく、いつも家でゴロゴロしている人なんですよ。

(赤江珠緒)えっ、見た目はあの鬼太郎ですか?我々がイメージする。

(町山智浩)見た目はあの鬼太郎です。完全にあの鬼太郎です。で、まあタバコをプカプカふかしてですね。

(赤江珠緒)タバコを吸ってるの?

(町山智浩)タバコを吸ってるんですよ。すっごいヘビースモーカーなんですよ。鬼太郎って。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、喫茶店でコーヒーを飲むのが大好きなんですよ。

(赤江珠緒)ちょっと待って(笑)。えっ?鬼太郎がコーヒー、喫茶店?タバコを吸いながら?

(町山智浩)そう。でも、半ズボンを履いてるんですよ。半ズボンを履いたガキのくせにね、喫茶店でコーヒー飲んでタバコを吸ってるんですけど。これがね、かっこよかった!


(山里亮太)そこ?そこに憧れていた?

(町山智浩)そこに憧れていた。僕、その後もやっぱりタバコを吸ったりするようになったり、コーヒーを飲んだりするじゃないですか。大人になる感じですよね。普通、みんな不良に憧れてそういうのをやり始めるんですよね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)僕は鬼太郎に憧れてコーヒーを飲んだりタバコを吸うようになりましたからね。

(山里亮太)妖怪に憧れていたんですか?それでタバコを?

(町山智浩)そう。『ちょっと鬼太郎な感じかな?』っていいながらタバコを吸ってたんですけどね。

(山里亮太)下駄とかは履いてなかったですか?下駄、ちゃんちゃんこは?

(町山智浩)下駄は履いてないですけどね(笑)。でも、いまもね、タバコはやめたんですけど、コーヒーを飲んでいる時は鬼太郎のことを思い出すんでね。とにかく美味しそうに飲むんですよ。鬼太郎はコーヒーを。で、それは水木先生が本当にコーヒーを好きだったんですね。

(赤江珠緒)はー!

(山里亮太)こっちの鬼太郎の方がご自分に近い鬼太郎なんですかね?

(町山智浩)要するに自分のことなんですね。単にね。

(赤江珠緒)だって漫画家さんって編集の方がよくね、昔、喫茶店で・・・みたいな。

(町山智浩)あのね、水木先生は漫画の中に登場するんですよ。鬼太郎の漫画に何度も何度も登場してます。それで、たいていは喫茶店に行ってタバコを吸ってコーヒーを飲んでいるんですね。

(赤江珠緒)打ち合わせとかをするのに喫茶店を昔、使っているじゃないですか。そういうシーンが鬼太郎で、みたいな?

(町山智浩)いやいや、打ち合わせとかじゃなくて、単にタバコとコーヒーが好きなんですよ。楽しみにしているんですよ。で、水木先生、自分本人を重ねているんでしょうけど。鬼太郎はね。ただ鬼太郎ね、その『鬼太郎夜話』とかアニメになっていない鬼太郎はたいていドスケベなんですよ。

(赤江珠緒)へー。

(山里亮太)もう正義の味方、正義の象徴みたいな感じですよね?

(町山智浩)『せい』の字は『性』の方ですから。原作の方の鬼太郎は。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)たいていね、女の子にメロメロになって大失敗するっていうのを繰り返してるんですよ。

(山里亮太)そんな、ねずみ男の役目な感じがしますけどね。そっちは。

(町山智浩)ねずみ男がアニメ版だと全部そっちを背負ってますけど。原作は鬼太郎も女に弱いんですよ。で、鬼太郎はね、ベトナム戦争の真っ最中にベトナムに行ってアメリカ軍と戦ったことがあるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)鬼太郎、妖怪軍団を連れて行って。砂かけババアが砂で米軍のファントム戦闘機を落としたり、子泣きじじいが原子力潜水艦にしがみついて原子力潜水艦を沈没させたりしてるんですけど。


(山里亮太)ええー?

(町山智浩)なんで行ったか?っていうと、ベトナムのベトコン側の抵抗する農民たちの中にかわいい女の子がいたからっていうだけの理由なんですよ。実際は。

(山里亮太)えっ、これ、ギャグ漫画っすか?

(町山智浩)あ、基本的にギャグ漫画ですけどね(笑)。もちろん、はい。でね、鬼太郎って『その後の鬼太郎』っていう話も描かれていて。鬼太郎が結局最後、どうなったか?っていうと、南の島に行って、南の島のかわいい女の子と結婚して、そこでのんびり暮らしているとかいう話もあったりするんですよ。

(赤江珠緒)へー!あれ、猫娘と結ばれるとかじゃないんですか?

(町山智浩)猫ちゃんどうしたんだろう?って思っちゃうんですけどね。で、しかもその南の島に行った時に、なんと砂かけババアがセリフの中で『フリーセックスか?』って言うんですけど。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)『砂かけババアのフリーセックスってやめてくれないかな?』って思いましたけどね。それだけは勘弁してくれないか?って思いましたけど。

(山里亮太)うわっ、想像つかない!

(町山智浩)そういうことばっかり書いてあるのがね、水木しげるの世界ですね。だから、鬼太郎っていうのは漫画のヒーローとしてはもう画期的なダメ人間なんですよ。

(赤江珠緒)ちょっと違いますね。我々のイメージとは。

(山里亮太)優等生ですよね。僕らのイメージだと。

(町山智浩)いや、もうだから声がね、戸田恵子さんとか。アンパンマンの人が声やったりしてるじゃないですか。あと、野沢雅子さんとかね。それね、原作の感じじゃないんですよ。正義感が強すぎて。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)原作はタバコを吸いながら、偉そうにね、世間をバカにしたことを言うのが鬼太郎なんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、僕はそっちがかっこよくて。ロックとかそういうのを知らなかったですけど、『うわっ、これかっこいい!』と思ったんですよね。だから、ダメ人間になってしまいましたね。はい。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)本当に失敗したと思います。これは。

(山里亮太)墓場鬼太郎の影響を受けちゃったんだ。

悪魔くん

(町山智浩)そう。鬼太郎の影響を受けて。あとね、ヒーローらしい人はね、鬼太郎よりも水木先生のヒーローだと悪魔くんの方がね、本当の正義の味方なんですね。

(山里亮太)ああ、悪魔くん。ありましたね。

(町山智浩)これね、悪魔くんだけど悪魔くんじゃないんですよ。子供に変な名前をつけた馬鹿親がいましたけど。そうじゃなくてですね、これは普通の人間の男の子なんですよ。悪魔くんっていうのは。ただ、天才的すぎて、知能指数が異常に高すぎて、『悪魔的』って言われてるだけなんですね。

(赤江珠緒)はー、そうかそうか。

(町山智浩)で、彼はですね、何をやるか?っていうと、昔の古文書とかを調べて地獄の底にいる悪魔を呼び出して。その悪魔と契約するんですよ。悪魔くんは。で、悪魔と契約すると、『ファウスト』でもそうだったですけど、死んだ時に魂が悪魔に取られて地獄に落ちちゃうんですね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)そのかわり、ひとつ願いを叶えてくれるんですよ。悪魔は。で、その時に悪魔くんは自分の命と引き換えに悪魔にたのんだことっていうのは、『全人類を幸せにしてくれ』っていうことだったんですよ。

(赤江珠緒)うわー・・・ええっ?

(山里亮太)そんな話だったんだ。

(町山智浩)これ、イエス・キリストですよ。全人類のために自分を犠牲にしようとした男が悪魔くんなんですね。ところが、この漫画がすごくてですね。呼び出してみた悪魔は、何にもできない人間だったんですよ。

(山里亮太)えっ、何にもできない、人間!?

(町山智浩)何にもできないんですよ。で、『お前、悪魔だろ?呼び出したんだけど、何かできないのか?』って言うと、『いや、何もできない』って言うんですよ。その悪魔が。『俺にできるのは、金儲けと口がうまいことだけだな』って言うんですよ。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)『えっ!?』ってびっくりするんですよ。悪魔を呼び出したのに。せっかく。でもこれ・・・最後まで言っていいのかな?読んでない人のために。実は、その悪魔こそが本当の悪魔だったんですよ。

(赤江珠緒)はー!すごいですね。もうひねりがひねられて、ひねられて・・・みたいな感じですね。

(町山智浩)そう。あらゆる口のうまさで人を騙していって、どんどんどんどん金持ちになっていって、日本の経済界を裏から仕切って、ものすごい格差社会を作り出すんですよ。彼が。

(山里亮太)はー!メッセージがそんな濃かったんだ。悪魔くん。

(町山智浩)すごいんですよ。それで最後に、『ああ、彼こそが本当の悪魔だったんだ!悪魔っていうのはこの現代のシステムそのものだったんだ!』っていうことに気がつくという。すっごい漫画でしたね。

(山里亮太)あれ?結構ご陽気に見ていたアニメの気がするんだけどな。悪魔くん。

(町山智浩)悪魔くんはね、テレビ版とかはぜんぜん違うんですよ。原作はそういう話になっているんですよ。

(赤江珠緒)そういうことなんですね。

(山里亮太)原作の時の、そういうダークな感じっていうんは、アニメでやる時はもう水木先生はあんまりストーリーとかに関わってないってことなんですか?

(町山智浩)あんまり関わってないですね。はい。まあ、でもそのままやったらぜんぜん違う話になっちゃうんですけど。で、僕はそれを読んだ時にすごく感動した言葉があってですね。まあ、悪魔くんは結局これで失敗しちゃうわけですよ。世界を、全人類を幸せにしようとしたのに、とんでもない悪魔を呼び出して失敗しちゃうんだけど。『でも、誰かがやらなきゃいけないことなんだ』っていうセリフが出てくるんですね。いちばん最後のところで。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)『世界がひとつになって、国とか戦争とかがなくなって。貧乏人とか金持ちもなくなるような社会。それを作ることが人類の宿題じゃないのか?みんな、その宿題を忘れてねえか?』って言うんですよ。最後に。

(赤江珠緒)はー!子供向けの漫画ですよね?

(町山智浩)子供向けの漫画です。

(赤江珠緒)うわー・・・

(町山智浩)すごいんですよね。だから、鬼太郎はヘラヘラしてるんですけど、悪魔くんは実はそういう人じゃないんですね。でね、この水木しげる先生の世界のこの深さっていうのはすごいものがあるんですよ。だから、『河童の三平』っていう漫画があるんですけど。それは元は芥川龍之介の『河童』っていう小説がありましたよね。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)あれが元になっているようで。河童の世界っていうのはユートピアなんですよね。そこが人間の世界と並行して存在するっていう話なんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。うんうん。

水木しげる作品の妖怪たち

(町山智浩)で、妖怪っていうのは水木しげる先生の漫画の中ではそういうもので。彼自身がこういう風に説明しているんですけど。『妖怪とかは先住民みたいなものなんだ』と。要するに、昔からずっといるものなんです。人間の前から。で、そこに人間とか文明とかができてきちゃって。で、その間に立つのが鬼太郎なんですよね。

(山里亮太)うんうん。

(町山智浩)だから鬼太郎って妖怪を退治しているんじゃなくて、たいていは地下鉄を作ったり、街を開発したりね、田舎の方を開発したりしてると、そこに住んでいる妖怪が困って。で、人間たちにいたずらをすると。撃退しようとしてっていう話で。で、そこの間に鬼太郎が立って・・・っていう話なんですね。

(赤江珠緒)うん。そうですね。

(町山智浩)そう。だから妖怪っていうのは自然だったり、田舎の住民だったりするような、そういう人間社会の被害者として存在してるんですよ。で、すごい話もあって、沖縄に鬼太郎が行く話があるんですけど。そこでは沖縄にアメリカとかから外国の妖怪が攻めてくるんですよ。まあ、アメリカの妖怪ですけど。ベアードっていうね。

(山里亮太)はいはいはい。

(町山智浩)で、沖縄の島の住民たちは洞窟に逃げ込んでいるんですよ。

(赤江珠緒)まさに沖縄戦みたいな。

(町山智浩)そう。沖縄戦なんですよ。この話って。で、沖縄戦の時に日本軍は民間人まで巻き込んでね、自分たちは途中で勝手に自決しちゃって。民間人を大量に死なせることになったんですけども。

町山智浩 おすすめ戦争映画を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、おすすめの戦争映画3本を紹介。第二次大戦を描いたドイツ、ポーランド、日本の作品について話していました。 (町山智浩)今日もね、...

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)鬼太郎はその日本軍がちゃんとやらなかったことをきっちりやって、アメリカの妖怪を撃退して、島の人たちを救うんですね。だからそういう歴史的な被害者になっているようなものを救っていく話が多いんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)だからね、ベトナムにも行ってるんですよ(笑)。戦っているわけですね。鬼太郎は。で、やっぱりそれは・・・あ、そうそう。あとね、妖怪ぬらりひょんっていうのがいるんですけど。鬼太郎の中に出てくるいちばん強い敵っていうか、いちばん悪いやつってぬらりひょんなんですよ。でも、ぬらりひょんってどんな武器があると思います?

(山里亮太)えっ?なんか頭がよくて、軍団の長で。参謀みたいな感じなんでしたっけ?

(町山智浩)そうなんですよ。別に妖怪のくせに、なんにも妖術がないんですよ。ぬらりひょんは。口がうまいだけなんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そういうことか。ぬらりひょん。

(町山智浩)これ、怖いですよ。いちばん悪いやつなんですよ。ぬらりひょんって、金を集めていて、預金通帳に結構お金がある妖怪なんですけど。で、趣味は時々繁華街とかに行って、デパートとかに爆弾を投げ込んで面白がることなんですよ。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)怖い、すっごい怖いキャラクターなんですよ。ぬらりひょんって。でも、なんの能力も持っていないんですよ。

(山里亮太)あ、そうか。たしかになんかで戦って、大きくなったりもしないし。

(町山智浩)そう。これって悪魔くんの悪魔と一緒で、人間こそがいちばん凶悪なんだってことですよね。ぬらりひょんって人間そのものなんですよ。

(赤江珠緒)ものすごく統一性がありますね。この先生が描いている作品は。そう言われると。

(町山智浩)そうなんですよ。なんかね、すごくね、深いんですよ。水木先生の漫画っていうのはね。で、やっぱり水木先生といえばね、どうしてそういう漫画を描くか?っていうと、やっぱり戦争体験っていうことになりますよね。で、いっぱい自分の戦争体験のことを文章でも書いて、漫画でも何度も何度も何度も描いている人なんですけども。

(赤江珠緒)はい。

戦争体験

(町山智浩)まあ、パプアニューギニアの戦線に第二次大戦で行かされて。そこで自分の部隊が全滅すると。自分以外全員死ぬという事態になったわけですけどもね。で、その中で自分たちの部隊が死んで、自分が生き残って味方のところに行くと、なんて言われたか?っていうと、『なんで生きてるんだよ?』って言われたんですね。

(赤江珠緒)うーん・・・

(町山智浩)『なんでお国のために死ななかったんだよ?』って言われるんですね。で、それだけじゃなくて、『お前らは玉砕して死ぬことになっていたんだから、生き延びていちゃダメだから、死んでこい!』って言われるんですよ。

(赤江珠緒)そこまで。うん。

(町山智浩)そう。それは『総員玉砕せよ!』っていう漫画にもなっていますけども。まあ、その時のことは詳しく他の本でも書いてあるんですけど、とにかくそこに行った時の部隊の偉い人たちは『玉砕する!玉砕する!』って、そればっかり言っていたそうなんですよ。

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)戦う前から。戦争に勝つことを考えるよりも、日本軍っていうのはその時、すごい異常な状況になっていて。いかに死ぬか?っていうことばっかりみんな考えていたみたいなんですね。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、せっかく生き延びた味方兵が帰ってきても、自決するか、銃殺か、このまま敵に突入して死ぬか。その3つのうちのどれかしか選べないっていう状態だったんですよ。

(山里亮太)死ぬしかないんだ・・・

(町山智浩)でもそれ、戦いに勝つことと全く関係ないですよね?

(赤江珠緒)そうですよね。もう、本末転倒ですよね。

(町山智浩)そうなんですよ。だから、水木先生はいつも言っているのは、『こんなことやってるから負けたんだよ』っていうことなんですよ。なぜ、敵ではなく味方に殺されなきゃいけないんだ?日本軍っていうのはそういうことをやっていたんですよね。なんのための自決なのか、玉砕なのか、まったくわからないと。そういうことをやっていたってことを批判しているんですよ。すごく厳しく。

(赤江珠緒)うわー・・・

(町山智浩)で、その時に水木先生は、要するに『死ね!死ね!』って言われているところで逃げ出すわけですね。まあ、その時に腕を失いますけど。爆弾で。逃げ出して、そこの原住民の人たちと会ったんですよ。原住民の村に行ったんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)したら、みんな美味しそうにバナナを食べて。ごちそうを食べているんですよ。で、楽しく歌って踊ってゴロゴロしてるんですよ。それで、水木先生が来たら、『おお、来たか、来たか。メシ食え!』って食わせてくれて。ところが、部隊に帰ると『死ね!死ね!』って言ってるんですよ。『お国のために死ね!』って言ってるんですよ。

(赤江珠緒)はー。それが、鬼太郎だ。

(町山智浩)どっちが利口か?ですよ。どっちが本当の文明人なの?彼の心にある妖怪っていうのは、その原住民の人たちですよね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)ねえ。そこにユートピアと人間の本当の姿があるんですよね。で、彼がずっと、水木先生がコーヒー飲んだりね、美味しいものを食べたりするっていう漫画ばっかり描いていたっていうのは、その時にひどいことがあったからですよね。生きて、美味いコーヒーを飲むってことだったんですね。彼にとって正しい人生っていうのはね。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)だから、鬼太郎も最後は南の島で暮らすんですけどね。

(山里亮太)そっかー・・・

(町山智浩)だからね、すごく実は妖怪をやっつけるだけの話じゃぜんぜんないんですよね。

(赤江珠緒)そっか。

(山里亮太)人間の味方で悪いことをする妖怪を退治するっていうのが、たぶんいまのね、みんなの鬼太郎の印象だったけど・・・

(町山智浩)ぜんぜん違うんですね。妖怪ユートピアっていう、人間の本来の生き方みたいなのがあって。で、あと93才まで長生きしましたけど。それはたぶん、若くして死んでいった人たちの分まで生きたんでしょうね。それこそ、コーヒー飲んだりタバコを吸ったり自由にできなかった人たちのために、思いっきり楽しんだんでしょうね。人生を。

(赤江珠緒)へー。そのね、いまお話をうかがうと、またゲゲゲの鬼太郎の曲も。そうか。

(町山智浩)鬼太郎はね、1回ね、日本の総理大臣にたのまれて、総理大臣を暗殺しようとしている吸血鬼を倒したことがあるんですよ。で、その時に総理大臣が『君は日本の国籍を持っていないだろうから、お礼に国籍と勲章をあげるよ』って言ったんですね。その時に鬼太郎は『国籍も勲章もいりません。僕にはコーヒー一杯があればいい』って言ったですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)超かっこいいな!と思いましたね(笑)。

(山里亮太)これ、読んでみよう。全部。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)だからいまごろ、水木先生はやっと戦友の方々に会えて、妖怪にも会えて、美味しいコーヒーを飲んでらっしゃると思いますね。

(赤江珠緒)そうですね。全部先生の体験。ご自身がされたことの中から絞りだすように生まれた。そういうことだったんですね。

(町山智浩)はい。

(山里亮太)そっか。鬼太郎、昔の仲間とかも出てきたりしてるのかな?よく漫画を見てみたら。この人のことを言ってるんだなとか。

(赤江珠緒)実はそうなのかもしれないですね。

(町山智浩)はい。あの、あんまり鬼太郎を全部読むと、鬼太郎がセックスをしてたりするんで。ちょっとね、幻滅したりするかもしれませんが。

(赤江珠緒)ええーっ!?

(町山智浩)『続ゲゲゲの鬼太郎』とか読むと、セックスしたりしてますからね。困ったもんですが。

(赤江珠緒)そうですかー。

(山里亮太)町山さんはかならず性の情報を入れちゃうからなー。最後の方に。

(赤江珠緒)(笑)。いや、でもそういうね、おおらかで。そういうことが人間らしいっていうのもね、先生の思いだったのかもしれないですね。

(町山智浩)そうですよ。美味いもん食ってね、はい(笑)。

(赤江珠緒)そうですか。いやー、いいお話、ありがとうございました。うん。なんかね、やっぱり。

(山里亮太)なんか急に悲しさが何倍にもなってきちゃったな。なんか。

(赤江珠緒)偉大な人をね、失ってしまったなという気がしますね。はい。

(山里亮太)いろんな人と、漫画を描いているのかしら?

(赤江珠緒)今日は、追悼・水木しげる先生のお話でした。

(町山智浩)まあでも、先生は帰ったんでね。先生はお帰りになったんで。

(赤江珠緒)あ、そうですね。はい。さあ、再来週は15日。スペシャルウィークになります。町山さん。スペシャルウィークはどんなお話になりますでしょうか?

(町山智浩)もう、『スターウォーズ』をやるしかないですよね。

(赤江珠緒)そうですね。はい。

(町山智浩)でも、見てないんですよ。その段階で。困ったもんだ。はい。『スターウォーズ』の見どころを勝手に解説するっていう感じでやります。

(山里亮太)なるほど。事前にね、知っておいた方が楽しみも倍になりますね。

(赤江珠緒)町山さん、今日もどうもありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

関連記事