町山智浩 パリ同時多発テロとイーグルス・オブ・デスメタルを語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でフランス、パリで起きた同時多発テロについてトーク。コンサート会場を襲撃されたバンド、イーグルス・オブ・デスメタルや、アメリカ国内の反応などについて話していました。

Zipper Down
(町山智浩)ということでですね、今日はちょっと予定を変更して、パリの同時多発テロのことについてお話したいんですけど。まあ、どういうことが起こっているか?はだいたいみなさんご存知だと思うんで。まあ、80人以上が射殺されたコンサートホールでコンサートをやっていたアメリカのバンドについて、お話したいんですよ。

(赤江珠緒)ああー。はい。

(町山智浩)いったい何なんだろう?って。バンド名がですね、イーグルス・オブ・デスメタル(Eagles Of Death Metal)っていうバンド名なんですね。イーグルス・オブ・デスメタル。で、デスメタルっていうとみなさん、まあ知ってますよね?ある程度、どんな音楽か。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)すっごいノイズの、ディストーションのかかったギターでもって、ボーカルの人がすっごい地獄の底から響いてくるようなダミ声で、なに言ってるかわからないっていうのがデスメタルですけど。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)これね、ちょっとこのイーグルス・オブ・デスメタルもそういうバンドだと思っている人も多いと思うんですけど、これ、ちょっと聞いてもらえますか?1曲。



(赤江珠緒)割と爽やかですね(笑)。

(町山智浩)はい。これ、ぜんぜんデスメタルじゃないですよ。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)これ、楽しいロックンロールですよ。これね、イーグルス・オブ・デスメタルっていうバンド名はジョークなんですよ。冗談なんですよ。

(赤江珠緒)はー!?

バンド名はジョーク

(町山智浩)で、この『イーグルス(Eagles)』っていうのはイーグルスっていうバンドがあるんですね。70年代に『ホテル・カリフォルニア』で有名なバンドなんですけど。一言でいうと、のんびり爽やかバンドなんですよ。

(赤江珠緒)あ、そうなんだ?曲調がたしかに・・・

(町山智浩)そう。イーグルスの曲でいちばん有名なのは『ホテル・カリフォルニア』とあと『Take It Easy』っていう歌なんですけど。これは歌詞は『気楽にやろうよ、のんびり行こうよ、肩の力を抜こうよ』っていう歌なんですよ。

(赤江珠緒)うんうんうん。

(町山智浩)だからこう、カリフォルニアのヤシの木の下で、テキーラサンライズを飲みながら夕陽を見るみたいな感覚の曲をやっていたのがイーグルスっていうバンドなんですね。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)それとデスメタルっていう、真逆のものをくっつけたダジャレバンドなんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

(山里亮太)あ、じゃあちょっとおもしろ系のバンドなんですね?

(町山智浩)はっきり言っておもしろ系です。だから何て言うのかな?ゴールデンボンバーみたいなもんですよ。

(赤江珠緒)ああー、そっかー。へー。

(町山智浩)そう。だから、バンド名もイーグルス・オブ・デスメタルっていうのは、いちばんデスメタルと合わないバンドをくっつけているだけなんで。イーグルスっていう。だから日本だとたぶん、『ゆず・オブ・デスメタル』みたいな感じなんです。

(赤江珠緒)ああー、そういうことか(笑)。

(山里亮太)とんでもない夏色になっちゃう。

(町山智浩)そういうバンド名で。歌詞もね、すっごいもうアホみたいな歌詞ばっかりで。この人たち、パーティーバンドなんですね。で、みんなでパーティーやりながら聞くような音楽ばっかりやっているんですけども。歌詞の内容がほとんどね、飲み屋とかクラブとか居酒屋で女の子をナンパしている男がしゃべっていることをそのまま歌っているっていうのがほとんどなんですよ。

(赤江珠緒)あ、そうなんですか。じゃあちょっと、思想的なものとかはぜんぜんないんだ?

(町山智浩)うーん。だから基本的にね、『ヤラせて、ヤラせて』って言ってるだけの、ヤラせてくんバンドなんですけど。あの・・・(笑)。たとえばね、シングルカットされた『Silverlake』っていう歌はね、こんな歌詞なんですよ。『君ね、僕ね、実はこの店のオーナーとちょっと知り合いなんだよね』っていう歌詞なんですよ。



(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、『僕ね、シルバーレイクっていうところに住んでいるんだよね。かっこいいだろ?』って言うんですよ。シルバーレイクっていうのはね、ロスアンゼルスの北東部にあるんですけど。昔は貧乏なアーティストがいっぱい部屋をシェアして住んでいるようなところだったんですけど。だから、下北とか高円寺みたいなところだったんですね。

(赤江珠緒)ふんふんふん。

(町山智浩)ところが最近はすごく高級化しちゃって、おしゃれな場所になったんですよ。そこ。シルバーレイクって。だからこの人がね、『俺、シルバーレイクに住んでいるんだよね。おしゃれだろ?』って言ってるんですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)そうやってナンパしてるっていう歌なんですよ。このイーグルス・オブ・デスメタルの歌は。

(赤江珠緒)へー!そうやってたとえていただくと、わかりやすい。

(町山智浩)それってすっげーダサくないですか?

(赤江珠緒)わかりやすい(笑)。町山さんの。

(町山智浩)で、この歌詞ね、もっとダサいんですよ。続きが。『あのさ、こうやって話しているんだけど、俺のことわからないかな?俺ね、実はすっげーかっこいいバンドのメンバーなんだけどさ!』って言うんですよ。

[リンク]イーグルス・オブ・デスメタル『Silverlake』歌詞(Genius.com)
Jesse Hughes lives in Silver Lake, a neighbourhood in Los Angeles. It is home to a lot of clubs, with a heavy dose of hipster.

(赤江珠緒)(笑)。ほうほう。

(町山智浩)それ、自分で言ったらダメでしょ?

(山里亮太)いちばんダサいやつですよね。

(町山智浩)ねえ。芸人の人もそうですよね。気づかれなかった時に自分で言っちゃうと、もうそれダメでしょ?

(赤江珠緒)まあ、山ちゃんは気づかれない時、メガネをかけますけどね。

(山里亮太)やめて!赤江さん。だいぶデスメタルな人生よ。私も。

(町山智浩)デスメタルな人生ですね(笑)。

(赤江珠緒)『ここに山里がいます』みたいな(笑)。

(町山智浩)(笑)。このバンドは、要するにそれを本気で歌っているんじゃなくて、『ダサくてイケてなくて笑っちゃうでしょ?』っていう。なんて言うか、お笑いの歌として歌っているんですよ。

(赤江珠緒)コミックバンド的に。うん。

(町山智浩)そうそうそう。で、そっちに写真、行ってるかな?と思うんですけど。ええとね、見た目、これですからね。あの、モテる人がこういうナンパの歌を歌っていたら嫌だけど、どう見てもモテないですよね。この人たちね。


(赤江珠緒)まあ、そうですね。

(山里亮太)個性的なヒゲの感じの・・・

(町山智浩)まあね。でも、今回の大虐殺があったコンサートが始まる直前にですね、ステージ側からお客さんたちに客電を当てて撮った写真があって。いま、インターネットにあるんですけど。それを見ると、お客さんたちが本当に楽しそうなんですよ。みんな笑顔で。


(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)コンサートが始まる前ですね。だから、笑いに来てるんですよ。みんな。

(赤江珠緒)そういうことなのか。

(山里亮太)ゴールデンボンバーみたいに。

パリの観客は笑いに来ていた

(町山智浩)楽しみに来てるんですよ。でね、またその写真を見るとね、とてもおしゃれなパリとは思えないような人たちなんですけど。そっちにないかな?写真。

(赤江珠緒)その写真はないですね。ライブ中のは。

(町山智浩)ああ、そっか。ええと、もうなんて言うか、着てる服もパリコレとかとはいちばん遠いね、なんて言うか、ジーンズメイトかしまむらで買っているような人たちばっかりなんですよ。

(山里亮太)プチプラっていうか、安い、リーズナブルなやつを。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)みんなはっきり言って俺の仲間みたいな、イケてないロック好きのね、黒T着てる人たちばっかりなんですよ。お客さんが。

(赤江珠緒)(笑)。うんうん。

(町山智浩)俺の仲間ですよ。それを殺したんですよ!あいつらは。バカロック聞いて笑いに来たのに。

(山里亮太)うん。たしかにそうだよな。

(町山智浩)ねえ。でも、この人たち。ここに来た人たち、はっきり言ってバカロック聞いて笑う人たちだから、イスラム教徒とか移民に対して差別意識が高い人はいないと思うんですよ。あんまり。

(赤江珠緒)たしかにね。

(山里亮太)そうですよね。

(町山智浩)やっぱりシャレのわかるゆるい人たちですよね。お客さん。で、戦争とか暴力には基本的に反対な人たちですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)バカロックですよ?だって。すっごくデスメタルとかそういうのを聞いている人だったりしないわけですから。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、あとサッカースタジアムも銃撃されましたけど。あと、やられたのはカンボジアレストランですよね。カンボジアレストランに来る人たちも、あんまり移民とかイスラム教徒を差別するタイプの人は少ないと思うんですよね。

(赤江珠緒)ねえ。

(町山智浩)やっぱり、お金が。そんなに金持ちはいないだろうし。若い人たちですからね。それよりは、ターゲットにするんだったら、彼らテロリストが。クラシックの気取ったコンサートだとか、フレンチレストランでブルゴーニュがどうしたこうした言っている客の方がイスラム国の敵は多いと思うんですよ。

(赤江珠緒)ああー。

(町山智浩)少なくとも、支配階級に近い人たちだしね。それなのに・・・こういう、なんて言うか、はっきり言ってゆるくて、普段ボーッとしながらマリファナ吸っているような人たちをこれだけ殺してね。敵ではないのにね。本来ね。まあ、ひどいですけど。そのレストランもね、アルジェリア系の人がいっぱいいて。イスラム教徒の人も殺しているんですよ。

(赤江珠緒)はー、そうか。えっ?じゃあでもね、アメリカでこのバンドがなぜ狙われたのか?みたいなことは、あんまり追跡されていないんですか?たまたまなの?

(町山智浩)これは僕が自分で追跡してわかったんですけど、9月17日に彼らね、インタビューで。イーグルス・オブ・デスメタルのメンバーがロック雑誌の『ローリングストーン』っていう雑誌でインタビューに答えていて。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)こういう風に言っているんですよ。『僕が出した新しいアルバムは中東のテロに対するメッセージだ』ってはっきり言ってるんですよ。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)『いま、中東で起こっていることはとても悲しい。だから僕らはこういう音楽を出して、世界中がもっとみんな楽しくなって、怒りを鎮めて、女性や同性愛の人へのリスペクトももっとして、みんながお互いにもっと楽しく優しくなってほしいんだ。癒やす時なんだ』って言ってるんですよ。

(山里亮太)これ、じゃあテロリストたちはそれを見て、ひょっとしてここを標的にちゃんと決めて来たっていう可能性もあるっていうことですか?

(町山智浩)可能性もあると思いますね。僕はね。っていうのは、要するに楽しくしている人たちが憎い人たちなんだろうなって思うんですよ。やった連中は。まずひとつは。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、まああととにかく、こういう本来イスラム教徒を憎んでいないような人たちを敵に回すようなことをわざとやったっていうのは、これはやっぱり、憎しみとか差別とか、ヘイトの種を蒔いて。世界を全面戦争にしようとしてるんでしょうね。

(赤江珠緒)うん。だって、どんどん巻き込んでますもんね。

シリア難民受け入れを拒否する国

(町山智浩)そう。で、いま現在、シリアからのISから逃げてきた人たち。イスラム国から逃げてきた人たちをヨーロッパが受け入れるのか?ってことになっていて。で、ポーランドとかは『受け入れない』とか言い始めているんですよね。

(赤江珠緒)ああー。

(町山智浩)ポーランドなんて、昔、国が何度もなくなって。何度も難民を出して。ヨーロッパ中に難民を散らかしていた国なのにね。

(赤江珠緒)ふんふんふん。

(町山智浩)ショパンなんか、ポーランド難民でしたからね。

(赤江珠緒)ああ、そうでしたね。うん。

(町山智浩)それがね、『難民を受け入れない』とか言ったりしていてね。そういう状況を作って、全イスラム教徒対欧米っていう図式を作りたいんでしょうね。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)世界全面戦争にしようとしてるんだと思うんですよ。だから本当は、ISを潰すためには、IS以外の全世界の人たちが手を組んで。イスラム教徒も含めて。で、ISを包囲するっていうのがいちばんISを潰すための方法なんですけど。それができないようにしてるんでしょうね。

(山里亮太)できないように?

(町山智浩)徹底的に暴力をまき散らすということで。で、またね、もうフランスとかではすでにイスラム教徒排斥運動がすごく起こっていて。もともと、そういう国なんですけど。もともと、イスラム教国だったアルジェリアを支配していたんですね。占領していて。フランスって。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、60年代にアルジェリアは独立運動をして独立するんですけども。61年に独立運動に参加したアルジェリア系のフランス人たちがパリでデモをしていた時に、警視総監が彼らを逮捕して、少なくとも25人。多い場合は200人、皆殺しにしてるんですよ。

(赤江珠緒)うわー・・・

(町山智浩)61年なんですよ。それ。で、死体がね、隠滅されちゃったんで正確な殺された数はわからないんですけど。それを結構やっているんですけどね。しかも、その警視総監っていうのはその前にナチに協力してですね。ユダヤ人を1000人以上殺している人なんですけど。まあ、そういうことをやっているところなんで。国民戦線っていう右翼政党があるところなんで、非常にフランスも危険なんですけどね。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)アメリカでも、すでに共和党が支配している州議会が20州以上あるんですけど。そこが全部、シリア難民の受け入れ拒否を宣言しましたね。

(赤江珠緒)ええーっ!?

(町山智浩)これもひどい。これ、オバマさんが怒ってましたけどね。そもそも、アメリカっていうのは難民と、貧しくて逃げてきた移民と、政治とか宗教でいられなくなった難民が作った国なのに。

(赤江珠緒)そうですよ。

(町山智浩)それなのに、『キリスト教徒以外のシリア難民は受け入れない』とか言ってるんですよね。その、共和党の政治家たちが。ドナルド・トランプとか、『シリア難民はトロイの木馬で、その中にテロリストが混じっているかもしれない』って言っているんですけど。そもそも、そのテロから逃げてきた人たちなのに。シリア難民はね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、これはね、大変な問題なんですけどね。僕、昔ね、ちょっと話が長くなっちゃうんですけど、パッと言いますと、昔、シラキュースっていう街に住んでいたんですよ。1年ぐらい。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)そこはね、塩の産地だったんですけど、塩がソルトレイクに負けちゃったんで、産業がなくなってほとんど廃墟と化していたんですけど。僕が行った時にはもう、廃墟じゃなかったんですよ。その廃墟の中に、世界中の難民を受け入れてたんですよ。シラキュースっていう街が。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)警察官の人とか、カンボジア人だし。カンボジアの大虐殺から逃げてきた人で。それ以外はユーゴスラビア系の人たちがいっぱいいるんですね。ユーゴスラビアはクロアチアとセルビアが戦ったわけですけど、クロアチアとセルビアの人同士で結婚している夫婦っていうのはどっちにもいられないから、アメリカに逃げてきたんですよ。

(赤江珠緒)ふんふん。

(町山智浩)で、そういう人たちがそこでずっと、廃墟になったところで住んで。そういう人たちがもうすでに大学とかに入って、仕事とかを始めて。その街自体を復興させたんですよ。シラキュースっていう街を。で、シラキュースは今回もシリア難民を受け入れるって宣言しましたね。

(赤江珠緒)ああー。

(町山智浩)1万人受け入れるって言うんですよ。シラキュース市が。

(赤江珠緒)ああー、やっぱりそういう経緯があると。ちゃんと。

(町山智浩)そう。だからそれと比べると、まあ、南部なんですけど。共和党が支配している州っていうのは。そこはもう、アメリカっていう国自体の根底を覆すようなことを言っているんでね。とんでもないと思いますけど。特に共和党の政治家のテッド・クルーズという候補はね・・・

(赤江珠緒)それで言うとね、町山さん。IS自体を生み出したのもイラク戦争が・・・って言われてますけども。それについては?

(町山智浩)そう。ぜんぜん関係ないテロに対して、イラクを攻撃しちゃってから暴走が始まっているわけですけどね。それも共和党のブッシュがやっているんで。もう困ったもんだと思いますが。まあ、イーグルス・オブ・デスメタルのメッセージがね、『みんなで楽しく仲良くやろうよ』って言っているのに、それを攻撃するっていうのは、よっぽど友達がいなかったんだな!と思いますね。

(赤江珠緒)ああー、そういうことなんですね。そういうグループだったんですね。

(町山智浩)そこにたぶん、本当の根底の問題があると思いますよ。楽しいことをしている人を憎むなよ。

(赤江珠緒)うん。そうですね。町山智浩さんでした。ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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