都築響一が語る 日本語ラップに惹かれる理由

都築響一が語る 日本語ラップに惹かれる理由 TOKYO FM

都築響一さんがTOKYO FM『The Lifestyle MUSEUM』に2013年5月に出演された際の模様です。日本語ラップの本を出された都築さん。ピーター・バラカンさんにその魅力について語っています。

(ピーター・バラカン)さっき、演歌の話を長くしていたんですけど。都築さんはいまのHIPHOPのレコードを持ってきてくれたんですけど。『ヒップホップの詩人たち』っていう、かなり厚みのある本を最近出してますよね。

(都築響一)本当はその話だったですね。今日は。すいません。

(ピーター・バラカン)いえいえ。

新しいゾーン、時代に入ったラップ

(都築響一)あの、ラップっていうのもいま、すごく新しいゾーンっていうか。時代に入っていると思うので。いままではね、英語のHIPHOPの方がかっこいいと言われた時代の方が長かったですけど。もう日本語独自の表現がね、ものすごくたくさん出てきてると。それから、例えばワルな世界観だけじゃないっていう。引きこもりの少年がいたり、本当にいろんな。こう、たとえばテクノロジーオタクの人がいたりとか、いろんな表現がHIPHOPに来てるっていうのが、日本語でもすごく面白いと思うし。演歌のリリックの世界観と通じるようなところもすごくあるので。僕はこう、HIPHOPの音楽的な面白さっていうよりも、リリックの面白さっていうか、リアリティーね。自分たちの生活とのね。それがすごく気になって、ここ2年ぐらいずっと見てきたことを本にしたんですね。

(ピーター・バラカン)うん。あの、HIPHOPでもやっぱりラジオから普段流れてくるような。HIPHOPというべきか、ラップ、のようなもの。

(都築響一)まあ、ポップ・ラップですよね。

(ピーター・バラカン)面白いおもしろいものは僕は感じないですけど。やっぱり、この面白いものはメディアに出てこないものですか?

(都築響一)全く出てこないと思いますね。だけど、ライブに行くと何千人っていう人がブーッ!っといたりするんですよ。

(ピーター・バラカン)そんなに?

(都築響一)だからね、おかしいですね。このギャップが僕には、いまだによく理解できない。どんな田舎に行っても、みんなすごい。しかも地元のラッパーっていうのがいま、いっぱいいて。そこでしか買えないみたいな。それぞれの土地で。そういう人たちがいっぱいいて。地元ではすごい人気だと。まあ、もちろん東京でもいるんですけど。で、みんなそれ聞いてるし。中学生でも知っているような人がいっぱいいるわけですよ。だけど、ラジオではたぶん1回もかかったことがないとか。テレビではもちろん出てこない。別に拒否しているわけじゃなくて、テレビやラジオの方が出さないっていう。なぜなら、大手のレコード会社に属してないからですね。

(ピーター・バラカン)それだけのこと?

(都築響一)それも大きいと思うし、属してないから、もうかけてもしょうがないんだ、みたいなメンタリティーをラジオやテレビの人が持っちゃってるんでしょうね。

(ピーター・バラカン)うーん。

(山内トモコ)だから都築さんの焦りとか怒りに火がつくわけですね。

(都築響一)そうなんです。それで、本当はそういうのを雑誌とかに書きたいんですけど、もういま雑誌もどんどん減っているので。僕はもう、編集者としては30年以上のキャリアがあるんですが、それでももうページが取れない。だから、もうやむを得ず、本当去年から自分の有料メールマガジンの『ROADSIDERS’ weekly』っていうのを自分で出して。お金をいただいて、そのお金でみんなの代わりに僕が取材に行って、それを情報として返すっていう、こう自給自足のメディアみたいなものにしてるんですね。

(ピーター・バラカン)いま、月の半分ぐらいは取材に出てますよね。

(都築響一)そうですね。東京にいるのは半分いないか、いるかぐらいですね。だけど、本当はそんなことしなくても、いい雑誌がいっぱいあれば全然いいんですけども。もう、ダメだからやむを得ず自分でやっているっていう感じですね。

(山内トモコ)この『ROADSIDERS’ weekly』のボリュームがものすごいんです(笑)。

(都築響一)そうですね。1通、メールで来ますから。無理やり来るところがいいと思うんですけど。ブログとかじゃなくてね。そこに飛ばなくても、メールで来ると。普通にメールを開くと、写真だけで200点ぐらい入っているわけだし。動画もあれば音もつけられるっていうので。すごく僕としては楽しいですね。いま。

(ピーター・バラカン)じゃあ、下手な雑誌よりよっぽどたぶん、中身は濃いでしょうね。

(都築響一)雑誌で言うとたぶん、200点の写真っていうことを考えただけでも、4・50ページの特集になると思うんですよね。たぶんね。それ、もらえないじゃないですか。そんなの。もうね、4ページだってもらえないのに。それを毎週好きにできるっていうのは、大変だけどすごい快感ですね。

(ピーター・バラカン)うーん。インターネットのおかげっていう感じですね。

(都築響一)本当、そうです。世界中で読んでもらえるしね。

(ピーター・バラカン)ありがとうございます。

(都築響一)いえ、とんでもないです。ありがとうございました。

(ピーター・バラカン)残念ながら時間がなくなってしまいました。

(都築響一)いえいえ。宣伝させてもらえてうれしいです。

<書き起こしおわり>
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