都築響一さんがDommune『スナック芸術丸 IDOL STYLE連載30回突破記念/ヲタの細道』の中で宇川直宏さんらとアイドル・絵恋ちゃんのDIYパンク精神について話していました。
宇川さん曰く絵恋ちゃんはCRASS!!!!!!!!!! #dommune pic.twitter.com/WjT2cZBhuZ
— ?О?????? (@akhrvillalobos) 2017年2月9日
(都築響一)時間がなくなってしまったので、本当はいっぱい(動画を)見せたかったんですけども、最後にひとつだけ。竹之内さんに教えていただいたやつで、こんな風に「オタクとアイドルの両者で作る音楽なんだ」っていうのがこれですごいよくわかったので。ちょっと最後に見ていただきたいんですけども。これ、どんなアイドルさんなのか、解説してくれますか?
(竹之内大輔)これは絵恋ちゃんっていう方なんですけども。『アイドルとヲタク大研究読本』の1冊目に出ていただいているアイドルの方なんですけども。「天才」と呼ばれているぐらいの、トーク力もそうですけども、ライブの盛り上げ方もそうですし。ちょっと際立った存在ではあります。
(都築響一)なるほどね。僕も若いラッパーたちに「これを手本にしろ」と言いたい感じでね。いかにコミュニケーション能力っていうのが大事かっていうね。1人で歌っている場合じゃないっていうことがよくわかります。これ、あれですよね。先に言っちゃうと、自分の歌詞よりもオタクたちのを……。
(竹之内大輔)そうですね。オタクたちのコールの方が曲の中で多いっていう。自分の歌うパートよりもオタクたちのコールのパートの方が圧倒的に多いっていう。
(都築響一)これは要するに「コラボ」っていうことですよね。
(竹之内大輔)そうですね(笑)。
アイドルとオタクのコラボ
(都築響一)だからそうやってさ、コラボレーションからできてくる音楽だっていうのがすごくよくわかるし。こういうものだなって。
(竹之内大輔)そうですね。この共有感みたいなのがベースだったりするんですよ。
(都築響一)それはさ、ハマったら行くよね。絶対にね。
(都築響一)(動画を見ながらトーク)。ああ、これですね。
(竹之内大輔)ここのオタクの方もすっごい絵恋ちゃんのやりたいこことかもわかっていて。すごい協力的なんですよね。常に。
(都築響一)なるほどね。だって歌詞に入ってくると別にオタクたちの言うのは、作詞家が考えているんじゃないですよね? オタたちが自分で作っているわけですよね? すごいですよね。マッシュアップというか、本当に。
(動画・絵恋ちゃんトーク)「急にジャジーなところが急に楽しい感じになって。ジャジャッジャジャー♪ってなるんですよ。その時に、口上を叫びながらレジ袋を……ちょっとやりますね。(レジ袋をガサガサさせる)」。
(都築響一)(笑)
(動画・絵恋ちゃんトーク)「このように、レジ袋をすっごいカサカサさせてください。レジ袋をすっごいカサカサさせるだけというオタ芸を考えました」。
(都築響一)いや、これは見に行きたいですね。ライブ。
(竹之内大輔)面白いんですよ。本当に、毎回。
(栗田歴)オタクのコールとか、こういうのが楽しいので「あ、ちょっとあそこに行ってみたい」って。それが広まるっていうのがね。
(竹之内大輔)口コミでね。ありますよね。
(都築響一)そうか。じゃあ本当に……あ、これ?(笑)。
(竹之内大輔)で、かならず(口上を書いた)ボードを出す人が……はい。
(都築響一)これ、なにもマネジメントから「こうやってくれ」って言われてるのじゃないですよね? 勝手に作っているんですよね?
(竹之内大輔)絵恋ちゃん、自分でやられているので。まさにセルフプロデュースなので。特にオタクが協力的だったりするんですよ。
(都築響一)そうか。じゃあ本当に一緒に作っている音楽っていう感じですね。
(宇川直宏)いや、素晴らしいですね。絵恋ちゃん、実はDOMMUNEにも出てくれたことがあるんですけど。
(都築響一)ああ、そうなんだ!
(宇川直宏)だから、まだメインストリームというか地上波でもてはやされる前ですね。でも、この本(『アイドルとヲタク大研究読本 イエッタイガー』)をまだ僕は読んでいないんですけど。さっきの『ロマンティック 浮かれモード』のオタ芸があったじゃないですか。あれ、ケチャ系の原点だと思うんですけど。
ビバ彦さんの功績
(宇川直宏)ビバ彦さんが爆音娘。をやられていましたよね? 2004年から5年ぐらい。あれで原型が俺、作られていると思うんですけど。「ビバ彦って誰?」って言ったら、まあモーヲタの極点みたいな人だと思うんですけど。彼が『BUBKA』とかで語っていた世界観……当時、宇多丸さんとかと連載をされていましたよね。あそこで作られたものが俺、大きいと思うんですよね。で、ビバ彦さんって何か?って言ったら、水声社の編集者だったんですよ。当時。だから秋田昌美さんの本とかを編集していて。秋田昌美さんですよ。だから、ノイズアヴァンギャルドと当時はフェティッシュシーンにも言及していた人。その人が急に、僕がサンフランシスコに行っている間にハロプロにハマリはじめて。で、爆音娘。を率いるようになったと。そこでの接続っていうのが俺、結構重要だったと思うんですよね。
(都築響一)そうやってさ、中年になってハマるほど怖いものはないってことだよね(笑)。
(宇川直宏)ビバ彦さんね、結局ハマりすぎて破綻してしまって、ハロヲタを超えたところには接続できなかったんですけど。でも彼が作ったシーンって大きいと思うんですよ。改めて語らないといけない。でも、ロマン優光さんとかどう思っているかわからないですけど、そこが俺は超重要だと思っていて。さっきのケチャの原型とかも彼らが作ったシーンだと僕は思っているんですけどね。
(都築響一)あ、それでこれがレジ袋のところになるわけですね。
(竹之内大輔)そうですね(笑)。
※動画4:10あたりから始まります
(都築響一)これ、すごいですね。この……ちゃんとこれを読んでみんなで言える。だって、全然歌詞より長いですよ、これ。
(宇川直宏)絵恋ちゃんがやっていることってやっぱりクラス(Crass)とかがね、やっていた当時のDIYパンクのシーンと近いような気がしていて。ハードコアパンクでは語れないクラスティーズな雰囲気がちゃんとありますよね。だからアンチ資本主義っていうか。そう。自分で手焼きなんですよね。
(都築響一)1人アイドルとかはね。だけどさ、最もそういういちばんみんなが下に見ているインディーズアイドルとつながっているっていうのはすごい……だからDOMMUNEでやる価値があるっていう感じがしますよね。
(宇川直宏)本当にそうなんですよね。だから僕らが杉作J太郎さんと吉田豪さんの番組で『JGO』っていうシリーズをやっているんですけども。それももう30回近くやっているんですけどね。なんで僕らがやっているか?っていったら、ちゃんと批評ができている番組だからだと思っていて。そこと、さっきから語られていたロックシーン、パンクシーンとの接続みたいな部分っていうのが「アイドル」っていう巨大資本で作られていたイメージが崩壊してしまって、もうDIYで生み出されている現実みたいなものに晒されているんですよ。それの極点が絵恋ちゃんだったりしますね。
(都築響一)ねえ。でもそれはさ、メジャーじゃなくて地下アイドルにあるっていうところが重要だと思うわけよ。なぜならさ、一方さ、この全然ロックの方はそういうのがもうなかったりするわけじゃない? それこそ、ロッキング・オンのところで……。
(栗田歴)2013年かなんかに、(ROCK IN JAPAN FESTIVALで)サイリウムが持ち込み禁止になっているんですよね。で、その代わりにNegiccoのファンはネギを持って応援したという。
(竹之内大輔)ネギを持って、サイリウムの代わりにネギを振って応援したという。
(宇川直宏)ロックってすげー自由な場所のところで、そんな制限を自ら掲げてしまってかっこ悪いと思わないのか?っていうのがありましたよね。
(都築響一)あの、わざわざキャプチャーをしてきたんですよ。最後にですね、「ロックファンよ、目を覚ませ!」という感じで。これですけど、ニュースになったやつですね。「ROCK IN JAPAN FESTIVALでサイリウムやオタ芸禁止通達に現場でファンが異様な対抗策」っていうので。これさ、「ロックなのにサイリウムやペンライトなどの発光物や過度なパフォーマンス、応援の禁止」って、過度なパフォーマンスや応援を禁止するって、これがロックか? みたいな。
(一同)(笑)
(都築響一)しかも、結構アイドルを出して客を集めているわけじゃないですか。それで、やっぱりオタの方がすごいなと思ったのは、ここでさっき言ったように禁止されたんでしょうがないからネギとかを持って応援しているっていうやつですね。これがさ、やっぱりすごいですよね。
(宇川直宏)DIYですよね。だからハードコアパンクの頃の革ジャンに鋲を打ったビスジャン。あれがサイリウムに変わって。で、ビスが打てないから五寸釘を打つような感覚っていう……(笑)。
(都築響一)まあ、あれはだいぶ危険ですしね。ああいうのをやるとね。
(宇川直宏)超DIY。
(都築響一)だからさ、「サイリウム・ペンライトがダメでも一部のファンはネギやキュウリといった野菜を振って代用」っていう。こっちの方が全然ロックだよね。
(竹之内大輔)1冊目の方にNegiccoさんにもご登場いただいて、このお話をしていただいています。
(都築響一)ああ、そうですか。じゃあそのへんも含めて、まだまだ語りたいですけども。すでに後半のDJの方が怒って待っていると思いますので。このへんで締めますが。詳しいことはこの2冊を読んでいただき、そして僕の連載(『アイドルの部屋 ファンの部屋 IDOL STYLE』)もまだしばらく続きますので。『EX大衆』は毎回毎回出るとAmazonの芸能部門で1位になるんですが。多くの人はここにクリアファイルがついてくるわけよ。AKBとかの。
(栗田歴)ついてます。
(都築響一)それがほしいっていう人もいる。しかも、そのクリアファイルがA4じゃなくてB5っていう使い物にならないサイズで(笑)。
(栗田歴)領収書とか、入れてください(笑)。
(都築響一)「これ、どうするんだ?」みたいな微妙なB5クリアファイルのついてきますので。ぜひ見ていただいて。そして、さっきの絵恋ちゃんじゃないけど、結構面白いなと思ったら、どんどん(現場に)行ったらいいですね。すごいフレンドリーですよね。みんな、はじめて来る人に対してね。
(竹之内大輔)そうですね。本当にいろんな形のアイドルさんがいて、いろんな距離感とかがあるんですよね。アイドルさんがどの距離感を望んでいるか?っていうのが結構あったりすると思うので。
(都築響一)わざわざライブハウスに行かなくても、本当に新宿のタワレコとかでリリースイベントとかもいっぱいありますしね。そういうのを覗くことからでもいいですよね。たぶんどんなロックバンドとかを見るよりも身近にある音楽だと思うんですよ。こんだけいっぱいやっているんだからさ。いちばん見やすいよね。たぶん。
(竹之内大輔)そうですね。もう回数だけでは。
(都築響一)すぐ、その気になれば行けますよね?
(竹之内大輔)そうですね。無料のイベントも多いですしね。とにかく。
(都築響一)はい。そして気がついてみれば、このすごろくのコマとなっていたと思いますので、みなさん、人生の転換期をいま迎えたかもしれないので。これから、こういう本などを参考にインディーズアイドル沼へと入り込んでいただければいいと思います。今日は本当にみなさんもお忙しいところ、ありがとうございました。ゲストを交えて2時間、にぎやかにお送りしてまいりました。
<書き起こしおわり>