町山智浩『ビースト』を紹介する

町山智浩『ビースト』を紹介する たまむすび

町山智浩さんが2021年10月12日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で韓国映画『ビースト』を紹介していました。

(町山智浩)次もちょっとホラーに近い感じの韓国の刑事アクション映画で『ビースト』っていう映画なんですよ。これもね、15日公開なんですけど。なんでみんな15日なんだ? 全部見れないよっていうね。で、これはまず、女子高生のバラバラ殺人事件から始まるんですよ。この『ビースト』っていう映画は。

で、2人の刑事がその捜査を始めるんですけれども。これね、この2人は過去に親友で相棒同士だったんですね。ところが今はものすごいライバル関係になって、憎み合ってるんですよ。その刑事同士が。で、1人は犯人を捕まえるためだったらどんな汚いことでもやるゴリ押し刑事のハンスという男で。で、もう1人は非常におとなしい慎重派で、証拠をきっちり固めないと動かないタイプのミンテという刑事で。2人とも全然イケメンじゃなくてですね、中年オヤジなんですけど。で、この2人がその猟奇殺人犯を追うんですが、ライバル同士の争いになって、互いに足を引っ張り合うんですよ。こういう映画も珍しいですよね。

(赤江珠緒)たしかに。

ライバル刑事が足を引っ張り合う

(町山智浩)特にそのハンスはある取引をするんですね。ある麻薬の売人の女性と取引をして。彼女は「あなたが追っている猟奇殺人犯の居場所を知ってる」と言うんですけど。その代わりに、彼女が自分が恨んでいる麻薬の売人を彼、ハンスの目の前で射殺するんですよ。しかもその射殺した時の銃はハンスから盗んだ拳銃なんですよ。で、「これを黙っていてくれたら、居場所を教えるから」って言われて、ハンスはその取引をしちゃうんですよ。ところが、その殺しに使われた拳銃はハンスのものですよね?

(赤江珠緒)そうね。バレますよね。

(町山智浩)そう。で、死体が見つかっちゃうんですよ。その女が殺した死体が。そうすると、その主体の中にある弾丸には線条痕というんですが。拳銃の中には、銃身の中に螺旋が切ってあって。弾丸がその中をすり抜けると、その拳銃にしかない指紋のように世界でひとつの傷がつくんですよ。で、その拳銃から出た弾丸は全部傷が付いていて、それは同じものは2つないんですよ。だからその殺された死体が出てきた時に、それを検死解剖して拳銃の弾が出てきたら、それが自分の拳銃と一致しちゃうわけですよ。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)それで、このハンスは要するに警察の検視官の部屋に忍び込んで、その弾丸をすり替えようとするという、めちゃくちゃな話になってくるんですよ。で、全編そんな感じでもって、この2人の刑事が互い徹底的に手を汚しながら、相手の足を引っ張っていくという。それでこの事件は解決するのかよ?っていうね。

(赤江珠緒)珍しいですね。そうですね。殺人犯はどうなったんだ?っていう。

(町山智浩)殺人犯、どうなったのか?っていう話なんですけども。殺人犯もね、「こいつが殺人犯だ」って思うと、次々と違う真犯人が出てくるというね、まあ本当に3分先が全く予想がつかない、本当に最後のギリギリまで誰がどうなるのか全然わからないというね、とんでもない韓国製のノワール映画がこの『ビースト』なんですね。で、『ビースト』っていうのは「獣」っていう意味ですけれども。最初はこの猟奇殺人犯が獣かと思って見てるんですよ。そのうちにこの2人が獣じゃないか?って。

(山里亮太)ああ、なるほど!

(町山智浩)そういう気持ちになっていくというね。

(赤江珠緒)なんか正義のために動いていたのに……。

(町山智浩)そうそうそう。「えっ、ここで殺しちゃうの?」っていうような人を殺しちゃったりね。びっくりするんですけれども。まあ、これはすごいよくできた映画でした。全然予測がつかない映画がこの『ビースト』ですね。

『ビースト』予告編

<書き起こしおわり>

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