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松尾潔 R&B定番曲解説 Deniece Williams『Free』

松尾潔 R&B定番曲解説 Deniece Williams『Free』 松尾潔のメロウな夜
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松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でR&Bの定番曲、Deniece Williams『Free』を紹介。様々なカバーバージョンを聞き比べながら解説していました。

(松尾潔)続いては、いまなら間に合うスタンダードのコーナーです。2010年3月31日に始まった『松尾潔のメロウな夜』。この番組は、メロウをキーワードにして、僕の大好きなR&Bを中心に大人のための音楽をお届けしています。さて、R&Bの世界でも、ジャズやロックと同じように、スタンダードと呼びうる、時代を越えて歌い継がれてきた名曲は少なくありません。そこでこのコーナーでは、R&Bがソウル・ミュージックと呼ばれていた時代から現在に至るまでのタイムレスな名曲を厳選し、様々なバージョンを聞き比べながら、スタンダードナンバーが形成された過程を僕がわかりやすくご説明します。

第九回目となる今回は、デニース・ウィリアムス(Deniece Williams)が1976年に発表した名曲、『Free』について探ってみます。待ってました!という方も多いんじゃないでしょうか。デニース・ウィリアムスっていうのは大変な美声を誇る歌姫でございまして。時として、ミニー・リパートン(Minnie Riperton)のライバルと言われることもございます。そしてその、ミニー・リパートン。彼女はシカゴでキャリアをスタートした人なんですけども。

そのシカゴ時代に、ミニーがいたロータリーコネクション(Rotary Connection)というね、男女、そして人種混成グループがございましたけども。そのロータリーコネクションの制作を手がけていたことでも知られる、チャールズ・ステップニー(Charles Stepney)がこの『Free』の制作に携わっております。まあ、チャールズが1人でやっているわけじゃございませんで、そのプロデュースの重心は誰にあるか?と申しますと、アース・ウィンド・アンド・ファイアー(Earth, Wind & Fire)の領袖モーリス・ホワイト(Maurice White)でございます。

そうなんですよ。デニース・ウィリアムスっていうのはこの時期、アース・ファミリーの一員でしたね。アース・ウィンド・アンド・ファイアーと言いますと、前回、アース・ウィンド・アンド・ファイアーの『Can’t Hide Love』。『You Can’t Hide Love』をご紹介したばかりなんですけども。

松尾潔 R&B定番曲解説 Earth,Wind and Fire『Can’t Hide Love』
松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でR&Bの定番曲、Earth,Wind and Fire『Can't Hide Love』を紹介。様々なカバーバージョンを聞き比べながら解説していました。

ファミリーからもう1曲ということで、こちらをご紹介したいと思います。その時もちょっとお話した記憶があるんですけども、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのリーダー、モーリス・ホワイトというのは、元々はシカゴのね、ラムゼイ・ルイス(Ramsey Lewis)という有名なピアニストのトリオでドラムを叩いていた若手ミュージシャンだったんですね。で、決してボーカルが専門ではございませんで。元々、ドラマー、そしてサウンドクリエイターとして頭角を現した人なので。

まあ、本体のアース・ウィンド・アンド・ファイアーでモーリス・ホワイトが歌う時に、まあその特徴的かつファンキーな歌声ではあるんだけれども、ボーカル好きっていう見地からすると、『うーん・・・まあ、面白いシンガーだけど、上手いシンガーじゃないよね?』なんて、こういう言葉を選んでモーリス・ホワイトのことを語る人なんていうのはたくさんいるわけなんです。僕もその1人かもしれませんけれども。

ですが、別の言い方をしますと、モーリス・ホワイトのサウンドメイキングのセンス。そして何と言っても選曲眼っていうのかな?これ、最高なんですよ。彼の構築する世界っていうのはやっぱり抗いがたい魅力がございます。ですから、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのサウンドに、実力派のシンガーが歌ったら、これはもう最高なんじゃないか?と、みんなこれ、夢想してたことなんですけども。デニース・ウィリアムスがそれを体現しております。まあもちろん、エモーションズ(Emotions)とかそういう人たちも体現しているんですが。

デニース・ウィリアムスバージョンのアース・ウィンド・アンド・ファイアーサウンドサンプルということで、これはよく出てくる曲です。ピーター・バラカンさんも以前、昔そういう見立てをラジオでね、語ってらして。僕はそれにずいぶん影響を受けたものですけども。歳を重ねるごとに、なんかどんどん体感をもってね、確信に至った感じです。聞いてください。1976年にリリースされましたデニース・ウィリアムスのアルバム『This Is Niecy』に収録されていました。デニース・ウィリアムス『Free』。

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Deniece Williams『Free』

いやー、うっとりしますね。夜の気配が濃厚なのに、清涼な気分にもなるという、なんとも言いがたい・・・これはよくできた曲だなと思いました。デニース・ウィリアムスの『Free』を今夜は取り上げております。いまなら間に合うスタンダード、第九回目。1976年にリリースされたアルバム『This Is Niecy』なんですが。この『Niecy』というのはデニース・ウィリアムスのニックネームですね。

『Deniece』の『Niece』。そしてそこを最後、母音を引っ張りまして、『Niecy』になっておりますね。ちょっとアイドル的な売り方をされていた、そんな時期でもございます。まあ、デニース・ウィリアムスっていうのはなかなかキャリアの長い人でございまして。モーリス・ホワイトにフックアップされる前は、スティービー・ワンダー(Stevie Wonder)のね、ワンダーラブという彼のバックバンドの歌姫でもありました。本当にあの、スティービーですとかモーリス・ホワイトといったマエストロの大物アーティストの寵愛を受けるという人でございました。

私生活ではこの人は、ジェイムズ・アレクサンダー(James Alexander)の奥様だったわけでございまして。で、その間に生まれた息子が、ファロン・アレクサンダー(Phalon Alexander)でありまして。この人はいま、ジャジー・フェイ(Jazze Pha)という芸名でシアラ(Ciara)のプロデュースですとかね、存在感を発揮している人気プロデューサーですよ。本当に、音楽一家ということが言えるんじゃないですかね。デニース・ウィリアムス。で、このデニース・ウィリアムス。僕ぐらいの世代ですとね、彼女を初めて知ったのはフットルースの中の挿入歌。『Let’s Hear It For The Boy』っていう方が多いですね。

あれは本当、ポップな曲でした。日本ではもしかしたら、そちらの方が枚数は出ているかもしれませんね。ですが、まあボーカル好きが1枚となりますと、この『This Is Niecy』を挙げる方、多いんじゃないでしょうかね。僕はデニース・ウィリアムスの70年代、80年代、そして90年代ぐらいまでですかね。まあ、さすがに21世紀になってからは全て追いかけているわけではないんですけども。まあ、初期の20数年間のアルバムっていうのは全部LPで所有しているんですが。その中で、このアルバムだけが、僕の手元にございません。
なぜか?というと、僕がもう大学を卒業していたかと思うんですけど。その時、同じ学校の後輩でラップをやったりDJをやったりしているっていう男の子がいまして。その子が僕の家に遊びに来た時に、『ああー!これ、もう松尾さんのところにあったわ!前からほしかったんだよなー!』ってずーっと言って、それを見てたんですよ。『ああ、いいよね。デニースのそれ。「Free」が好きなんでしょ?』って言ったら、『そうなんすよ!』って言ってたんですが、モゾモゾしてるんで。フッと見たらね、それをね、家からね、持ち帰ろうとしてたんですね。ええ。

『ちょっとちょっとちょっと!』っていう話で。『もう、そんなに言うんだったらあげるよ!』って言って、『マジっすか!?』って言って持ち帰ったのが、いま、ライムスターで活躍しているMummy-Dなんですね(笑)。本当に、これ僕、何回かこの話をしてるんですけども。『どんなにヒットを飛ばして人気アーティストになっても、そのことは消えないぞ!』っていう風によく言ってるんですけどもね(笑)。まあけどそれが、デニース・ウィリアムスの『Free』だったら、もう花泥棒に悪人はいないっていう感じですよ。このジャケットを見ながらお話してるんですけども。

本当に花をあしらったジャケット。そのアートワークも素敵です。で、こういったイメージ戦略も奏功したのか、このデニース・ウィリアムスのカバーですとかサンプリングをする例っていうのは後をたちません。ヒップホップサイドからね、支持が強いというのがすごく面白いところで。まあ、Mummy-Dなんかもそっちの方から入ってきたんじゃないかな?っていう気がしますね。いまバックで流れておりますローズ・オブ・ジ・アンダーグラウンド(Lords of the Underground)『Faith』という曲はこのデニース・ウィリアムス本人を招聘しております。これ、94年だったかな?

そしてほぼ同時期に、西海岸。トゥインズ(Twinz)というラップデュオがいました。まあ、ウォーレン・G(Warren G)一派。ウェッサイのブームの時の人気デュオですけども。『Eastside Lb』というね、替え歌にして歌っております。

そして、もちろんカバーもございまして。日本でね、ソウルにかなり詳しい人たちの間でよく例に挙げられるのが、デブラ(Debelah)という女性の『Free』ですね。これはね、1994年に出たカバーなんですけども。このデブラっていうのは後にデブラ・モーガン(Debelah Morgan)という本名でモータウンから再デビューを飾ります。かなり、その時モータウンがプッシュしたおかげで日本でも知名度が上がりましたけども。これはデブラ・モーガンに改名する前の、まだ10代の頃にアトランティックレーベルから出した作品ですね。

で、プロデュースを手がけていたのが、パブリック・エネミー(Public Enemy)のプロデューサーとしてお馴染みのキース・ショックリー(Keith Shocklee)。キース・ショックリー、ハンク・ショックリーっていうショックリー兄弟。もう本当に、ヒップホップ業界のビッグネームですが。その彼らの珍しき歌もの路線の1曲としても知られております。

まあ、そうですね。ヒップホップアーティスト、そしてヒップホッププロデューサーたちによってこの曲が大変価値が高められたという話なんですけれども。メロウな夜ですから、今日、ここでじっくり聞いていただきたいのは、やはり歌ものとして佇まいがメロウなもの。2バージョン選びました。まずは88年のカバーをご紹介したいと思います。これは男性シンガー、ウィル・ダウニング(Will Downing)によるカバー。

そしてもう1曲。もう1バージョン。94年にリリースされましたシャンテ・ムーア(Chanté Moore)。歌姫シャンテ・ムーアのカバーでございます。こちらの方はコモドアーズの『Sail On』という、ライオネル・リッチーが在籍していた頃のコモドアーズの『Sail On』という名曲がございますけども。そちらを上手く横糸に織り込んでおりますね。聞いていただきましょう。ウィル・ダウニング、そしてシャンテ・ムーアで『Free』。

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Will Downing『Free』

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Chanté Moore『Free~Sail On~』

今夜のいまなら間に合うスタンダード。1976年にリリースされましたデニース・ウィリアムスの『Free』。そして、その『Free』が名曲と呼ばれるまでの変遷をお届けしております。ご紹介しております。ウィル・ダウニングで『Free』。そして、シャンテ・ムーアで『Free~Sail On~』でございましたね。『~』っていう響きはあまり美しくないですね(笑)。

ウィル・ダウニングという人は1988年にこのバージョンを出しました。レコーディングした時はまだ24才。リリースされた時でもまだ25才になるかならないかという。もうずいぶん成熟した魅力を持ったアーティストでございまして。まあ、こういう声で世の中に出てきたわけですから、これから早、四半世紀以上たってますけれども、いまだに同じようなイメージをガッツリと、ガッチリとキープしておりますね。この番組でもよくご紹介しております。ウィル・ダウニング。彼のキャリアはここから始まりました。

まあ、厳密に言いますと、これの前に彼はハウスミュージックシーンなんかでも引っ張りだこでございまして。中でも有名なのは、スピルバーグの『グーニーズ』という映画がございましたね。あの中に、グーン・スクワッド(The Goon Squad)という名義で『Eight Arms』という、ちょっと胸がドキドキするようなバージョンが収められていまして。そこでリードを取っていたのがこのウィル・ダウニングでした。

さて、そしてシャンテ・ムーアなんですけどもね。これはね、僕、今回この特集をするにあたって、いろんなバージョンを聞いたんですが。デニース・ウィリアムスの魅力に肉薄してるっていう意味では、これがいちばんなんじゃないかな?『A Love Supreme』という当時のアルバム・チャート最高位11位まで上がったヒットアルバムです。

このシャンテ・ムーア。まあ、後にね、ケニー・ラティモア(Kenny Lattimore)と結婚して、夫婦デュエットアルバムを作ったことで、ソウル・ミュージック史に名を残すことになりそうですけども。まあ、またいま1人に戻ってますけども。最初1人だった時。そしてケニー・ラティモアとのデュオ時代。そして、いまのリ・シングル時代。どれも魅力あるんですけど、この最初の頃のシャンテ・ムーアの、なんて言うのかな?肉感的な天使っていうんでしょうか?ちょっといま、言いながら、エロな感じ強すぎますかね?これ。

だけどまあ、あえてそう言いたいですね。肉感的な天使っていうこの感じはシャンテ・ムーアにしか出せない。別の言い方をしますと、デニース・ウィリアムスはもっとこう、清らかな度合いが強いんですよね。シャンテ・ムーアの方がちょっと、やっぱり夜の帳が下りてからっていう感じがいたしますね。これ、ちょっとひとつだけ言っておきたいのは、これ、シャンテ・ムーアが自分でコーラスアレンジをやって、それはそれは、目の覚めるようなコーラスワークを聞かせてますね。

もう原曲へのリスペクトも感じさせるし、その後、シャンテ・ムーア節と呼ばれるような、本当、ミストシャワーのようなコーラスを聞くことができるんですが。この時にシャンテともう1人、マイクに向かった人物がおりまして、その人は誰あろう、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのフィリップ・ベイリー(Philip Bailey)でございました。気がきいてますよ、この曲。本当。エグゼクティブ・プロデューサーとして采配をふるいました、ルイル・サイラス・ジュニア(Louil Silas Jr.)という人のやり手ぶりがうかがえる、そんな1曲でもございました。

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/32677

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