吉田豪 タモリとヒクソン・グレイシーの共通点を語る

吉田豪 長野美郷にヒクソン・グレイシーのサムライっぷりを語る たまむすび

(吉田豪)そうです。そうです。で、ヒクソンはこのレッスンのおかげでリング上で一切動じない男になったと。本人曰く、『リングに上がって対戦相手を前にした時、見えていたのはシマウマだった。大抵のファイターは感情を次々とぶつけてくる。それを見ていた。肉体として見ていた』っていうね。

(赤江・大吉)へー。

(吉田豪)たぶんテレビでゲストとからんでいる時のタモリさんもこんな心境だったんじゃないですか。

(赤江・大吉)(笑)

(吉田豪)ヒクソンのように『相手を分析することもなく、ただ眺めて、何をするか頭で考えるのではなく、相手の動きに感覚的に対応するのである。私がイメージするのは流水だと。少しでも隙間やくぼみがあれば、あっという間にそこに入りこんでしまう。そこに意思は全くなく、自然な動きがあるだけ』と。この姿勢でタモリさんね、多分トークしてるんじゃないかと。スッと水のように入る感じ。

(赤江珠緒)ねえ。いいともで毎日毎日ね、いろんな方が出てこられるわけで。

(博多大吉)いや、テレホンに関してはね、これそうじゃないですか?

(吉田豪)あれ、分析したらたぶん壊れますよね。しんどくて。もうなにも考えないで、ハッと入っていくような(笑)。

(博多大吉)1個1個ね、その日のゲストの勉強とかをやってらんないですよね。

(吉田豪)ちなみに作家の樋口毅宏さんが去年の7月に出した『タモリ論』っていう本がね、これがすごい売れたわけですけど。その本の中でタモリさんのことを一見、『その強さやすごさが伝わりにくい、まるで武道の達人』と表現してたんですよね。『合気道の達人のようだ』っていう。だからいま言っている話に近いと思うんですよ。そういう。ただ樋口さんもタモリさんに学んで肩の力を抜いて、あえて下調べもしないで記憶だけで原稿を書いたんですよね。この本。

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(赤江珠緒)えっ?えっ?

(吉田豪)そうなんですよ。ぼんやりした記憶で書いたから、それがこの本が売れた理由だと僕は思ってるんですね。ただその結果ちょっと、有吉佐和子さんがらみの描写でトラブルになったりもしたんですよ。

(博多大吉)トラブル?

(吉田豪)要は事実誤認というか。有吉さんがいいともで、樋口さんは曖昧な記憶であることを断りながら、途中から完全に暴走して観客を呆れさせて。要は帰らなかったっていう話を書いたんですけど、それは遺族から事実と異なると指摘を受けて、当時の映像を入手して確認したら記憶がすり替わっていた。ので、お詫びしますみたいな感じでいっていたんですが。要はそういうことなんですよ。記憶で書いているから、『それは違う!僕が思うに・・・』みたいな感じで、誰もがタモリ談義をしたくなる作りになっていたから売れたと思うんですよ。みんなが思う、俺が思うタモリを言いたくなるっていう。

(博多大吉)いいですか?有吉佐和子さんのやつって、あれですよね?ずーっと居座った・・・

(吉田豪)そうです。そうです。

(博多大吉)あれって・・・

(吉田豪)居座ったのは事実ですけど、そのへんの描写はだいぶ違ったってことですね。

(博多大吉)完全に暴走したと。観客を呆れさせたと。呆れてませんでした?僕なんか見てた・・・

(吉田豪)僕も見てました。

(博多大吉)ねえ。さんまさんが途中から出てくる・・・

(吉田豪)あれもまた筋書きがあり説とかいろいろあったりとか、ややこしいんですよ。

(博多大吉)あ、なるほど。そうなんですね。いや、おかしいっちゃおかしいですもんね。なんでこの人、いつまでもいるんだろう?みたいなね。

(赤江珠緒)84年。へー。

(博多大吉)これ、大事件でしたよ。

(吉田豪)で、ちなみにこの『ヒクソン・グレイシー 無敗の法則』が出たのが2010年だったんですけどね。この当時、『経済的には最悪な状態だった』って書いてあって。『数年前まではブラジルに農場を持ち、リオのイパネマビーチに部屋を所有し、カリフォルニアのマリブに家があった。しかし、いまは何も持っていない』っていう。

(博多大吉)だって、ファイトマネーめっちゃ高いでしょ?

(吉田豪)億単位でね。毎回もらっていた人なんですけど。その理由は離婚して元夫人に全てを渡したせいだったっていうね。『長い間、私たちの結婚生活はうまくいってなかった。妻は私がしたことがどうしても許せないと言うようになり、私は妻と一緒にいても胸の高鳴るような幸せを感じることができなくなっていた』とか書いてあって。要は浮気がバレたってことくさいんですよね。ヒクソンが。

(赤江珠緒)(笑)。えっ、そうなんですか?

(吉田豪)たしかに、僕が取材した時も、夫人をやけに恐れていて。夫人が離れた瞬間に下ネタに付き合ってくるみたいな感じで(笑)。あれ?とは思ってたんですけどね。

(博多大吉)そんな怖い感じの夫人だった?

(吉田豪)そうなんですよ。

(赤江珠緒)そこは無我になれなかったですか?夫人の前で。

(吉田豪)ぜんぜんでしたね(笑)。で、その結果ヒクソンは『ライフスタイルを変えた。普通の車に乗り、普通の商品を買う。節約をする。クレジットカードは使わず、贅沢はやめてみた』と。『でも、心の中にはいつもくっきりとした自分のイメージがある』ということなので、ヒクソンが心の中で描いている自分のイメージについて、大吉さんちょっとこれも読んでください。

(博多大吉)まさにこれ、ヒクソンの心のイメージですね。『最高の食事をしている。誰にも負けない素晴らしい食生活だ。品質の高い有機栽培の食品に、しぼりたてのジュース。眠りの質にもこだわっている。テンピュール社のマットレスは寝心地が最高だ。もちろん、ベッドでも最高の男だ。どうがんばっても、誰もかまわないだろう。これがいまの私の気持ちだ』。

(赤江珠緒)大吉先生、『かまわない』じゃない。『かなわない』。かまわないだと、寂しいじゃないですか。

(吉田豪)(笑)。かまってくれないわけじゃないですよ。

(博多大吉)急に、ヒクソンがテンピュール社のマットレスのことを言い出したんで、ちょっと動揺してしまいました。すいません。『どうがんばっても、誰もかなわないだろう。これがいまの私の気持ちだ』。

(吉田豪)そうなんですよ。

(赤江珠緒)どういう境地に?

ベッドの上でも無敗のヒクソン

(吉田豪)急にベッド上でも無敗だっていう話をし出すんですよね。で、さらに格言っぽいことを言おうとして、おかしなことになってるんでちょっとそれも読んでください。

(博多大吉)『人生は食べること、セックスすること、仕事をすること、そういうなにもかもを合わせたもので、それらはどれも人生のよろこびなのだ。女の子を口説いて、家に連れて帰り、最高の時間を過ごすという戦略があるとしよう。それでも、状況によってはベッドに誘うのは明日にして、今日のところは「じゃあ送っていくよ」と言って静かな時間が過ごせれば、明日はもっとチャンスがあるかもしれない』。

(赤江珠緒)なにを言ってるんだ!?

(吉田豪)なんの話をしてるんですよ!?っていう。

(赤江珠緒)ちょっと待って。ヒクソンさん、あれ?

(吉田豪)ヒクソンはいつも戦略を練っている人なんですけど、こんな戦略まで練っていたっていう(笑)。

(博多大吉)ちょっとね、甘噛みしながらで申し訳なかったですけど。

(吉田豪)なぜかやたらと下ネタばっかり語りだすんですよ。

(赤江珠緒)そうですね。しかも、離婚されてからものすごくエンジョイしてるっていう感じが出てきますね(笑)。

(吉田豪)で、さらにはすごい真面目な仙人みたいなイメージが強かった人なんですが、こんなことも言い出すんですよ。『私はいつも、できるだけかっこよく、流行を取り入れ、おしゃれに見えるように心がけている。人からどう見らてれるのかを意識している。それに無関心でいるわけにはいかないからだ』。

(博多大吉)へー、ヒクソンが。

(吉田豪)『なりたい自分について、心の中にはっきりとしたイメージを持ち続ける。そして次に鏡を見ながら、「俺はいい男だ。強い、力がある」と言おう。そうすれば生まれ変われる』っていうね。だんだん僕の中でヒクソン像が崩れていくんですよ。毎日鏡を見て、『俺はいい男だ』って言っている姿を想像するだけで、好きになれるじゃないですか。ヒクソンも人間なんだなっていう。

(博多大吉)もっとね、俗世間からね、離れた人だと思ってましたよ。

(赤江珠緒)さっきの仙人っぷりはね。

(吉田豪)インタビューでも本当に仙人みたいな哲学的なことしか言わない人だったんですけど、こんなことも言ってるんですよ。『インタビューを受ける時も、私は多くを語らない方がいいと信じてきた。口にする言葉が少ないほど、人々の好奇心は増し、期待度は膨らむ。インタビュアーから質問されたことを、なんでもかんでもベラベラとしゃべってしまったら、人々が知りたいことなどなくなってしまうし、私のイメージが壊れたかもしれない。それがもし、たったひとつだけ、短い格言を引用するか、質問について最小限のことしか答えなかったらどうだろう?私の立場は守られるし、ビジョンも伏せておける』っていうね。本当、ただ幻想を作っていただけなんですよ(笑)。

(赤江珠緒)そう。しかも大事なことをしゃべっちゃうっていうのはどうなんでしょう?

(吉田豪)タネ明かしているだけなんですよ(笑)。でも、これもタモリさんに近いっていうか。タモリさんもインタビューを受けない人だし、あんまり自分語りをしないじゃないですか。

(赤江珠緒)あー、そっかそっか。そうですね。

(吉田豪)ただ結論として、ヒクソンは15年で3試合しかしてなかったのに、タモリさんは毎日お昼の顔として仕事しながら、このスタンスを守っていたっていう意味で、タモリさんの方が確実にすごいんだなって。

毎日昼の顔として仕事をし続けるタモリのすごさ

(博多大吉)いや、もう圧勝ですね、これね。タモリさん。

(吉田豪)圧勝ですよ。っていう風に思いました。

(博多大吉)へー、ヒクソンって3試合しかしてないんですか?

(吉田豪)ですよね。

(博多大吉)この15年で。で、もう引退ですよね、さすがにね。

(吉田豪)引退です。まあね、稼いだお金は奥さんが全部持って行っちゃいましたけどね。ちなみにヒクソン・グレイシー無敗の法則っていう本の最後に、ヒクソンは最近の総合格闘技についてこう書いているんですよ。『ファイターは賞金のために試合を受ける。その賞金もますます上がり続けている』って。お前が言うな!っていう(笑)。お前が上げたんだっていう。

(博多大吉)あなたがきっかけでね。この方きっかけで偉いことになって、最終的に最近あんまり見なくなりましたから。

(吉田豪)最終的に総合格闘技はやっていけなくなっちゃったんですよ。日本で。ギャラが上がりすぎて。どう考えてもペイしなくなっちゃったんで。全部この人のせいです!(笑)。

(赤江珠緒)でもいまも、素晴らしい・・・

(吉田豪)若い奥さんつかまえて、幸せに。そうみたいですね。

(博多大吉)なるほどね。でも、あると思います。タモリさん=ヒクソン説。

(赤江珠緒)ねえ。流水のようだっていうところ、なるほど!と思いましたね。

(吉田豪)あのへんはかなり近いと思うんですよ。ただ、本当にこれがあまり近いと、タモリさんも離婚する可能性が出てきちゃうから。そこは心配なんですよ。

(博多大吉)そこだけは違うように。

(吉田豪)そうそうそう(笑)。

(赤江珠緒)わかりました。

<書き起こしおわり>

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