TBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』、2014年6月21日放送分の前口上。アナと雪の女王の『ありのままで』に対して感じた素朴な疑問について触れています。
(BGMが流れる『Gato Barbieri – Girl in Black – Tango (Para Mi Negra)』)
(菊地成孔)ラジオの前の国民のみなさま。たったいま、我々の今日が終了し、昨日と名前を変えました。日付変更のお気分はいかがでしょうか?お加減の悪い方は水とトラベルミンを。よろしい方は乾杯のご用意をどうぞ。巷では、右を向いても左を見てもフットボール、フットボールのようでございまして。今夜は開催国ご自慢のカクテル、カイピリーニャでもいかがですかな?まあ乾杯、そして黄色い肌の小柄な我々には向かぬ、なかなか派手で強烈なグラスではありますが。
それにしてもまあしかし、夏の訪れの早いこと早いこと。アナと雪の女王のヒットの長いこと長いこと。このままですと、特別編でかき氷でもかいて、シロップでもかけてくれる納涼映画ってなことに相成りそうですが。それにしても、そんなに国民って『ありのままの自分』を押し殺して生きてるのかい?インターネットに好きなこと書いてるんじゃないの?えっ?もうあれもあれかい?体面や我慢が横行する社会になってんの?普通の社会みたいに?それは気の毒に・・・ってな素朴が疑問はさておきまして、お聞きの番組オープニング曲第二はイタリア人の監督がフランスで撮影し、アルゼンチンのジャズ・ミュージシャンが音楽を担当したコンチネンタル混血映画『ラスト・タンゴ・イン・パリ』。
ありのままの自分なんかさらけ出すとロクなことがないよという警告が詰まった、非常にエレガントなエログロ映画です。ガトー・バルビエリのサクソフォン、ストリングス、バンドネオンが申し上げております。『着飾りましょう、生きているうちは』と。それでは、今宵もみなさまのご自宅にエレガンスとグルーヴ、そしてストレンジとクールを954kHzでデリバリーする60分間。赤坂ニューラテンクォーター公式認定番組『菊地成孔の粋な夜電波』。シーズン7、ラウンド・ミッドナイト。金曜は夜更かしするとキレイになる。力道山刺されたる町から、東京、那覇、そして世界へ。優勝国?そんなの、どうだっていいじゃありませんか。いい気分になったやつが優勝です。それでは、ひさびさのフリースタイル。なにが飛び出しますやら。さっそくまいりましょう。
<書き起こしおわり>