菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中で、ソチオリンピックの開会式セレモニーを見て考えたことを語っていました。
(菊地成孔)まあ、そうですね。今日はまあ、そういった感じで。オリンピックも終わり、風邪もひき、ゆるくフランス、ポルトガルなんぞを聞いてますけどね。まあ、そんな気分の中やっぱりマオちゃん、マオちゃん、マオちゃん、マオちゃんね。日本でいちばんよく、いちばん名前が出てくるアスリートの1人。毛沢東ですけどね(笑)。『マオちゃん、マオちゃん』って。あの、私の世代だと『マオちゃん、マオちゃん』って、浅田選手じゃなくてね、どうしても頭に毛沢東(Mao Zedong)の名前が浮かんでしまうんですね。
まあ、それはともかく、浅田選手はコーチ、もしくはコリオグラファーに結構ロシア人を起用することによって、ハチャトゥリアンとかラフマニノフとかですね、ロシア音楽が流れるっていうことが比較的図式的に明白になったオリンピックだと思いますね。私、冬季オリンピック好きで。オープニングも『ロシアの歴史』ってワクワクしてね。スターリンが出てくるんじゃないかと思って(笑)。もうワクワクしてたんですけど。『スターリンです!』っていう(笑)。『あれっ?』とか言って。『右側から怖い人が出てきましたね。スターリンです!』っていう。
こう、革命ロシアの頃にかなりのアメリカナイズが実は。ほとんどサブカルチャーとしては知られてないんですけど、ジャズ史なんかにもほとんど出てこないんですけど。革命ロシアの直後のモスクワではね、結構アメリカ。アジアやヨーロッパの他の国よりもずーっとアメリカかぶれの若者がいた国だったんですよ。だからそれを描いてましたね。アメ車でビュンビュン走るところとか出てきてね。ピョートル大帝出てきましたからね。最後には、『プーチンとメドベージェフです!』って。『タンデム体制です!』なんつって。プーチンとメドベージェフ(笑)。私、メドベージェフのファンなんで。あの・・・(笑)。タンデムで。二輪車に乗ってですね、登場するってことがないかな?と思ったんですね。
まあ、そもそもね、まあプーチンのファンですよ。プーチン。プーチンはヤバいですね。プーチン・・・『角のない鬼』って呼ばれてますけどね(笑)。本当に。角さえ生やせば、鬼ですからね。プーチンね。『悪のピーター・バラカン』とも呼ばれてますけどね(笑)。プーチンさん。すごいキャラですね。やっぱりね。まあ、あるいはですね、やっぱりこう・・・私としては、エリツィンもファンなんで。エリツィンが戦車に乗って出てくるところが見たかったですね(笑)。ソチオリンピックのオープニングでは。昔、あのエリツィンってたしかゴルバチョフの後だったと思うんですけど。まあ、要するに情報公開。ペレストロイカとかの後ですよね。
で、あの後、面倒くさいことになったじゃないですか。あのあたりがね。で、エリツィン比較的戦車に乗って陣頭指揮をとることが多かったんです。私、まあ当時のガールフレンドと部屋にいて。まあまあ、イチャついていたわけですけど。まあ、イチャつきが高じてケンカになるなんていう喜びもね、40代ぐらいまでは。40代ってことはないですね。30代一杯までは、私も人並みに謳歌したんですけど。まあまあ、派手なケンカになりまして。で、まあ派手なケンカっつっても、私は女性に声を荒らげたり、手を上げたりすることは一切ないんですが。まあ、それは紳士だとか、そうじゃなくて。おっかなくてできないんですけども(笑)。
あの・・・(笑)。女性の方がものすごいブチ切れたりとかですね、物投げたり。よくされてたんですね。若い頃。いまはないですよ。ぜんぜん。いまはもう、すっからかんのね、おっさんですけども。働くおじさんですけども。当時はなんかね、物投げられたりなんかして。ほいで、そん時にね、これぐらいのシンセサイザーをね、バーン!って投げたの。その人が。したらね、バーン!って投げてね、当たったら大怪我ですよ。あれね。目かなんかに当たったら。で、バッ!とね。得意のね。逃げ足とスウェイバックには自信がありますからね。ピュッと避けたの。動体視力でシュッと避けたら、そのシンセサイザーがテレビにガーン!って当たったんですよ。したら、当時のテレビがまだこう、なんつーんでしょうね?いまみたいな感じじゃなくて。
まあまあ、いまとそんな変わんないですけど。エリツィン時代ね。で、消えてたんですけど、ガーン!ってそのシンセサイザーが当たった瞬間に、テレビのスイッチが入ったんですね。んで、バーッ!って画面がムワーンってついたの。まだムワーンってつく時代で。ムワーンってついたら、なにが映っていたか?っていうと、戦車に乗ったエリツィンが『行け!行け!』って鼓舞している画が出てきたんで。2人で笑っちゃったっていう。ちょうどケンカしてたところなんでね。『エリツィンがやれ!やれ!って言ってるよ。ほら!』とかって言って。和解したっていうね。そういうような楽しい思い出もあったんで。またあの時のエリツィンの勇姿が見たいなと思った日本人もいるんだっていうことをですね、伝えたいですね。なんらかの形でね。
<書き起こしおわり>