町山智浩『ウルヴァリン:SAMURAI』を語る

町山智浩『ウルヴァリン:SAMURAI』を語る たまむすび

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』で『ウルヴァリン:SAMURAI』について紹介していました。

ウルヴァリン: SAMURAI  (字幕版)

(町山智浩)今日はね、『ウルヴァリン:SAMURAI』という映画を紹介します。ウルヴァリンっていうのはね、『X-Men』っていうアメリカのアメリカン・コミックシリーズのヒーローなんですけども。ヒュー・ジャックマンっていう人が演じてますね。『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンやった人です。

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)で、このウルヴァリンっていうのは獣みたいな男なんですよ。永井豪の漫画で、昔『ケダマン』っていう漫画がありまして、それにそっくりなんですけど。見た目が。

(赤江珠緒)ちょっと存じ上げないんですけど・・・

(山里亮太)たとえがちょっとすみません。僕らに届かなくて(笑)。

日本が舞台の映画

(町山智浩)あのね、ウルヴァリンっていう名前は『クズリ』っていう動物がいるんですよ。イタチ科の。そこから来てるんですね。で、これね、この映画ウルヴァリン:SAMURAIっていうのは日本が舞台なんですよ。だからウルヴァリンはみんなからクズリって呼ばれてるんですよ。

(赤江・山里)へー。

(町山智浩)クズリっていうのはイタチの仲間でちっちゃいんですけど、ものすごく凶暴で勇敢で。YouTube見ると、YouTubeの話ばっかりしてますが(笑)。クズリが一匹でね、狼とか熊を撃退する映像がありますよ。

(赤江珠緒)熊まで!?

(町山智浩)そう。ものすっごい凶暴なんですよ。ちっちゃいのに。で、心が強い生き物なんですね。うらやましいですね。その名前を持っている男がヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンなんですね。で、彼の武器が握り拳を握ると鈎が・・・そこに写真があると思うんですけど、鈎が3本でるんですね。

(山里亮太)カギ爪ね。

(町山智浩)はい。これ、忍者の武器でしょ?

(山里亮太)そうだ。手甲についてるね。

(町山智浩)そうそう。手甲鈎っていう武器なんですね。で、すごくウルヴァリンっていうキャラクターはX-Menの中でも日本に行ったりする話が原作でも書かれてたりして。漫画の中でね。で、今回本当に日本に行くことになるっていう話ですね。で、これ日本でずーっとロケしてたんですね。長い間、ヒュー・ジャックマンが。

(山里亮太)気付かれてないんじゃないですか?全然、日本で。

(町山智浩)いや、結構テレビとか出たり、プロモーションしてたみたいですよ。日本にいる間。

(山里亮太)あ、撮影の合間だったんだ。

(赤江珠緒)富士山登ったりとか・・・

(町山智浩)そうそうそう。いろんなことしてたみたいですよ。かなりロケ期間が長かったから。

(赤江珠緒)どうも、親日家じゃないか?っていう噂があったんですけど、撮影中だったんですか。

(町山智浩)そう。撮影中だっただけで、仕事だったんですけどね(笑)。でね、これね、ウルヴァリンっていうのは、前の映画『X-Men3』で愛する女を殺しちゃったんで、その罪悪感で山奥で暮らしてるんです。カナダの方の。で、そこに日本の大金持ちでヤシダっていう大企業の、実業家のエージェントが来まして。その使者が来まして、日本に来いって言うんですね。

(赤江・山里)ふん。

(町山智浩)ヤシダさんが死にそうだから、会いたいんだって言うんですよ。どうしてかっていうと、ウルヴァリンっていうのは死なないし、年取らないんですよ。不死身なんですよ。第二次世界大戦にも参加してて、そこで日本軍の捕虜になってですね、その時に長崎に原爆が落ちた時に、そのヤシダさんが若い兵隊だったんですが、それを原爆の炎からウルヴァリンが助けたっていうのがあるんですよ。で、命の恩人のウルヴァリンにもう一度会いたいって。ヤシダさん、もう80を過ぎて、お年でもう亡くなろうとしてるんですけど、それで会いに来るって話なんですけど。ちょっと、僕疑問に思いましたけど。こんなに最強の男を捕虜にした日本兵ってすげーな!って思いましたけど。

(山里亮太)相当強いですよね。よく捕まえられたなって。

(町山智浩)どうやったのか、よく分からないですけど(笑)。

(山里亮太)そこは描かれてないんですか?

(町山智浩)それは描かれてないですね(笑)。日本兵の方が強えじゃん!って思いましたけど(笑)。まあ、いいや。それで日本に行くとですね、ヤシダさんって人はご老人になって死にそうなんですけど、『私は死ぬことができるけど、お前、ウルヴァリン・クズリは死ぬことができないだろ?』と。ウルヴァリンっていうのは、傷がついてもピストルで撃たれても、全部傷がその場で治っちゃうっていう能力を持ってるんですよ。で、年も取らないし死なないと。それって孤独だよな・・・とか言われて。永遠の命を俺にくれないか?とかそのヤシダさんに言われるんですけども、もたもたやっているうちにヤシダさんは死んじゃうんですね。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)で、ヤシダさんに後継者として孫娘がいるんですよ。その孫娘はマリコさんっていうんですけど。まあ、『禁じられたマリコ』ってやつですけども。分からないと思いますが。そのマリコさんの命を狙うヤクザ軍団がいるんで、それからウルヴァリンがヤクザ軍団からマリコさんを守ってですね、芝の増上寺のヤシダさんのお葬式から秋葉原にとんでですね、高田馬場にとんで、上野駅にとんで、逃げまわるんですよ。

(赤江珠緒)へー!もう、ど真ん中じゃないですか。東京の。

(町山智浩)ど真ん中ですよ。だからすごい撮影してましたよ。結構。ヤクザ、追ってくるわけですよ。みんな。ドス持って。それからマリコさんを守って逃げていくわけですね。ウルヴァリンが。っていう話なんですよ。

(山里亮太)これはもう、至ってシンプルなというか・・・

(町山智浩)そう!その通り。これね、よく考えると昔の時代劇にあったね、お姫様を守って忍者とか侍が逃げていくっていう話ですね。これ、たぶん。元はね。まあ、そういう典型的な時代劇のストーリーをやってるんですけども。ただね、逃げるのが現代ですからね、新幹線で逃げたりするわけですよ。

(山里亮太)新幹線で!?

(町山智浩)新幹線で逃げたりするわけですよ(笑)。新幹線にその暗殺軍団が追ってくるわけですよ。すると、時速300キロで走っている新幹線の屋根の上でアクションになるわけですよ。

(山里亮太)えっ!?

(町山智浩)すごいですよ、そのシーンは(笑)。これね、ウルヴァリンは超人だからいいけど、それと互角に渡り合うヤクザたちの方がスゲー!と思いましたけど(笑)。

(赤江珠緒)そうでしょう!それ、無理でしょう!

(山里亮太)ちょっと海外の人、日本人めっちゃ強いと思いますよ。

(町山智浩)めちゃくちゃ強えーじゃん、お前たちっていう(笑)。

(赤江珠緒)買いかぶりすぎでしょ。

(町山智浩)そう。もう拍手出ましたよ。だから、ヤクザ偉い!と思いましたけど。で、またそこにですね、マリコを守るためにですね、戦う忍者軍団も絡んでくるというですね、三つ巴みたいになってくるんですね。

(赤江珠緒)忍者軍団?

(町山智浩)忍者軍団が出てくるんですよ。

(山里亮太)これまた別の敵として?

(町山智浩)これね、その芝の増上寺でヤシダさんのお葬式やってると、屋根の上に忍者がいるんですよ。で、我々は密かにマリコ様をお守り申し上げますとか言ってるんですけど、丸見えなんですけどね(笑)。全然忍びじゃない、忍んでねーだろ、お前!っていうね。よく分からないんですけど。で、そういう三つ巴の戦いになってくんですね。あ、四ツ巴だ。もう1つ、敵でね、マムシっていう敵が出てくるんですよ。これ、マムシってあれじゃないですよ。ババア、まだ生きてんのかよ!?っていうマムシさんじゃないですからね。

(山里亮太)毒蝮三太夫さんとウルヴァリンの戦い、見てみたいですけどね。

(町山智浩)(笑)。見てみたいですね!ウルヴァリン対毒蝮三太夫ね。そうじゃなくて、マムシっていう名前のね、ロシア系の美女なんですよ。いきなり毒蝮三太夫からロシア系の美女ですいません。

(山里亮太)これ、真逆いきましたね。

(町山智浩)ところがこのマムシがですね、ウルヴァリンの体の中にある物質を入れて、ウルヴァリンが体のどんな傷を受けても治るっていう不死の能力を奪っちゃうんですよ。で、撃たれると傷が治らなくてどんどん弱っていくんですよ。ウルヴァリンが。っていう危機に陥るという話なんですけども。こんなの、ただのマンガですね。言っててね。どう考えてもマンガなんですが。ただね、監督は大マジなんですよ。

(山里亮太)へー。

(町山智浩)ものすごく真面目で。監督、この人ね、すごく映画マニアでね。今回も小津安二郎の映画に影響を受けたとか言ってるんですよ。

(赤江珠緒)えっ?小津作品?

(町山智浩)あのね、ウルヴァリンがね、長崎まで逃げてってマリコさんと一緒にご飯を食べるシーンがあるんですよ。ちゃぶ台で。小津安二郎調に撮りましたって言ってましたよ、監督が(笑)。ローアングルにカメラを置いて・・・とか言ってましたよ。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。物静かな感じが。なるほど。

(町山智浩)物静かな感じで。で、ウルヴァリンがですね、ご飯のお茶碗に箸を刺しちゃうんですよ。そうすると、それはいけないわよってマリコさんが言うんですよ。お仏壇にお供えするときのやり方だから・・・とかね。そういうところ、ちゃんとしてますよ。

(赤江珠緒)でもそんなシーン、いるの?(笑)

(町山智浩)でもね、監督が言ってるのはね、日本人のスタッフとかキャストの人に日本人が見て変だと思うところがあったら、全部指摘してくれと。現場で。直すからって言って撮ってったらしいんですよね。

(山里亮太)なんか海外の映画って日本のシーン、変なのが多いですよね?

(町山智浩)変なのが多いですよ。だいたいね、アメリカ映画で日本が出てると、大抵ね、男の人がお風呂に入ると女の人たち、美女が来てね、体を流すっていうシーンがあるんですよ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)なんかと勘違いしてるんですね!『007は二度死ぬ』とかですね、いろんな日本を舞台にした映画が出てくるんですよ。美女が来て、『お背中をお流しします』とか、そんなのいないんですけど。実際は。あ、いるお店もありますが。

(山里亮太)それはまた別ですね(笑)。

(町山智浩)そういうシーンがある。お風呂に入りなさいって言われるシーンで、このウルヴァリンがちょっと期待するんですよ。『いや、僕はそういうのはちょっと・・・』とかなんとか言うんですけど。で、入るとですね、おばちゃんが2人いてですね、ゴシゴシ垢すりされるんですよ。

(赤江・山里)ええっ!?

(町山智浩)モップで(笑)。デッキブラシで。

(山里亮太)それ、やっぱり誤解あるじゃないですか(笑)。

(町山智浩)これも誤解あるんですけど(笑)。それでウルヴァリン、ヒーヒー言ってるんですけど。ピストルで撃たれても平気な男がね、おばちゃんに垢すりされてヒーヒー泣いてるんですけどね(笑)。よく分からないんですけど。

(山里亮太)これ、ギャグ?今回、ギャグ要素の多い感じで行ってるってことですか?

(町山智浩)まあ、ギャグ要素は基本ですからね。ハリウッド映画のね。ただね、ウチ、娘がね、すごく見たい見たいっつって。これね、女の子のマリコさん役の人とかね、スーパーモデルの人なんですね。日本人の、TAOっていう人でして。

(山里亮太)へー。

(町山智浩)で、あとね、ウルヴァリンの片腕となって戦う女忍者みたいな子が出てくるんですけど。この子もね、福島リラっていうモデルなんですよ。日本人の。で、この子は特に、福島リラちゃんの方はものすごいアクションが出来て。テコンドーやってるらしいんですけどね。しかもその、変な日本語しゃべったりしなくて、日本語も英語も完璧なんですよ。2人とも。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)すごい海外生活が長いみたいなんですけど。日本語の演技もちゃんとしてて、すごいいいんで。ウチの娘がすごく興味を持って見たい!って言ったんで連れて行ったんですけどね、大失敗でしたね!

(山里亮太)(笑)。女子には伝わらない・・・

(町山智浩)大・大失敗でしたよ。やっぱりね、これ全員が刃物で戦うでしょ?残酷なんですよ。グサーッ!とか、そんなんばっかりなんですよ。あのね、画面自体には映んないんですけど。血とかあんまり。ただね、グバーッ!とか音が・・・ビャッ!とか音がするわけですよ。だからね、ちょっと困っちゃったのとね。あとね、ちょっとエッチなんですよ。映画が。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)これね、ちょっとお子さんを連れて行く人にはね、最初から言っておきますけどちょっとエッチですからね。まずね、ウルヴァリンずっと裸です。

(山里亮太)いい体ですからねー。ヒュー・ジャックマン。

(町山智浩)すごい体でしょ?このヒュー・ジャックマンって。この人、これで44才ですよ。すごいですよ。腹筋も6つに。

(赤江珠緒)筋肉隆々で。

(町山智浩)筋肉隆々でね。なぜか、ほとんどシャツを着ないで、上半身ほとんどのシーンで裸です。

(赤江珠緒)もう、見せるぞ!と。

(町山智浩)見せるぞ!と。あの、西島(秀俊)さんとかね、日本人でもそういう人、いますけど。韓国でイ・ビョンホンさんとか。上半身裸系の人なんですよ。

(山里亮太)(笑)。そんなジャンル、あるんですか?

(町山智浩)脱ぎ系の人なんですけど。だからちょっとね、娘連れて行くような映画なのか、これ?って思ったんですけど。あとね、ウルヴァリンがマリコ姫と一緒に敵から逃げてて、ホテルの中に逃げ込むんですよ。ホテルに逃げ込むと、ラブホテルなんですよ。それが。で、部屋を選ばなきゃいけないわけですよ。パネルから。

(赤江珠緒)そんな暇、あるんですか!?

(町山智浩)いや、分かんないけど早く部屋に入らないと困るわけじゃないですか。それが、おばちゃんがね、『いま空いてるのはね、SM部屋と、お医者さんごっこの部屋と、火星探検の部屋だけだよ』って。

(山里亮太)(爆笑)

(赤江珠緒)そのへん、すごくリアルじゃないですか。研究熱心な。

(町山智浩)そう。いま、そういうのないでしょ?昔あったけど。分かんないですけど。

(山里亮太)いや、あるんじゃないですか?

(町山智浩)ちゃんと答えが返ってくるか分からないで聞きましたけど。でね、結局火星探検の部屋に入るんですけど。そうするとね、回転ベッドがあるんですけど。もう、娘と見ていて非常に困りましたね。

(山里亮太)そうか!気まずい空気、流れるわー。

(町山智浩)ねえ。いろいろ娘も13才だから、あれはなあに?とか聞かなかったから、まだよかったですけどね。マンガの映画化だと思って連れてくと、回転ベッドについていろいろ聞かれたりね、お医者さんごっこの部屋ってなにするの?とか聞かれるから気をつけた方がいいですけどね。

(山里亮太)なるほど(笑)。親御さんはご注意を。

(町山智浩)はい。そういう映画なんですけど。

(赤江珠緒)どういう映画!?真田広之さんも出てますよね。

(町山智浩)で、結構面白かったんですけど。これね、ヒュー・ジャックマンってね、いま親日家とか言われてますけど、昔『オーストラリア』っていう酷い映画出ましたね。

(山里亮太)えっ?オーストラリアっていう映画?

(町山智浩)オーストラリアって酷い映画ではね、第二次大戦中の話なんですけど。日本軍がオーストラリア本土に上陸してですね、先住民のアボリジニの人を殺すっていうシーンがあるんですよ。そんなこと、してねーよ!って。アボリジニの人殺したのは、お前らだろ!?っていうね。そういう酷い映画に出てますけど。今回はまあ、いい映画だったんでお詫びしたって感じだと思いましたけどね。

(赤江珠緒)ああそうですか。

(町山智浩)最近、こういう映画で次々と企画とか出て作られたりとかして。次に公開される映画で『47RONIN』っていう映画が来ますよ。

(山里亮太)47RONIN?

(赤江珠緒)四十七士ってことですか?

(町山智浩)47人の浪人。そう、四十七士。だから赤穂浪士がハリウッド映画になるんですよ。今度。

(赤江・山里)ええっ!?

(赤江珠緒)あれ、通じるかな?

(町山智浩)もうほとんど完成してて、公開待ちなんですけど。大石内蔵助は真田広之で。あ、真田広之はウルヴァリンにも出てますけどね。シンゲンっていう役名で。あと、吉良上野介が浅野忠信なんですよ。年齢、だいぶ違うような気がしますけど。でもね、主演がキアヌ・リーブスなんですよ。

(山里亮太)どの役で出るんですかね?

(町山智浩)キアヌ・リーブスはその四十七士を助ける男、流れ者の役なんですね。で、舞台はどこの国か全く分からなくて、日本風のお城が建っている森で。しかも、ドラゴンとか怪獣とか次々と出てくるんですよ。

(山里亮太)えっ!?もう、めちゃくちゃだ(笑)。

(町山智浩)そう。めちゃくちゃなの(笑)。それがね、47RONINっていう映画なんですけど。まあ、面白きゃいいかって思いますけどね。日本も昔、黒澤明がシェイクスピアの話を日本の戦国時代に持って来たりしてるんでね。

(赤江・山里)へー。

(町山智浩)そういうことはあってもいい。いちいち目くじらを立ててもしょうがないと思うんですけども。はい。良くないのはね、つい最近日本で公開がはじまったね、『終戦のエンペラー』っていう映画の方が良くないですよ。

(山里亮太)そうですか?

(町山智浩)あれ、良くなくてね。マッカーサーが日本に来て。第二次大戦で日本が降伏したから。で、天皇陛下ね、昭和天皇を戦争犯罪人として裁くか?っていうことを調査することになる話なんですよ。終戦のエンペラーっていうのは。で、ボナー・フェラーズっていう実在の人物が調査をするっていう話で、ボナー・フェラーズが主人公なんですけども。これね、原作が日本のノン・フィクションで非常に優れた本なんですけども。『陛下をお救いなさいまし 河井道とボナー・フェラーズ』っていうノン・フィクションがあるんですね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)これが原作です。で、これね、河井道さんっていう人は恵泉女学園っていうミッション系の女学校あるんですけど。それの創始者の人ですね。で、戦前アメリカに留学してて。クリスチャンなんで。で、日本とアメリカの戦争をなんとか防ごうとしたりですね、昭和天皇に対する神格化も危険だって、それも反対してた人なんですけども。その人にフェラーズっていう人が会いに行くんですよ。昭和天皇を戦争責任で処罰すべきか?って聞きに行くんですけど。そしたらその河井道さん、こう言うんですよ。『天皇陛下を処刑すると言うなら、私が死にます』って言うんですよ。『陛下を殺されるようなことがあったら、日本ではアメリカを許さないでしょう。大変なことになりますよ』と言われたんで、昭和天皇を処刑することを止めたんですね。マッカーサーも。

(赤江・山里)はい。

(町山智浩)っていう話が実話なんですけども。ところが、映画版の終戦のエンペラーには、この命をかけて日本を守ろうとした河井道さんは出てこないんですよ。

(赤江珠緒)あ、そうなんだ。

(町山智浩)これ、酷いですよ。原作のタイトルにもなっているのに、出てこなくて。そのフェラーズっていう男と架空の日本人女性のラブロマンスにしちゃってるんですよ。

(山里亮太)はー。で、ラブロマンスの結果、日本が救われたみたいな感じ?

(町山智浩)みたいな感じにしちゃってて。だからこれがハリウッド流の改ざんなんですね。そういうのに比べると、ウルヴァリンとかの忍者が出てきて・・・ていうのの方が、まだいいですよ。だって、忍者がいるってみんな本気で信じて見てるわけじゃないからね。

(赤江珠緒)なるほど。かわいいですよね。

(町山智浩)そうそう。だからにんじゃりばんばんの方が全然いいですね。こういう実話のように見せかけた捏造(映画『終戦のエンペラー』)よりも(映画『ウルヴァリン:samurai』の方が)全然いいなと思ってね。

(赤江珠緒)たしかに・・・

<書き起こしおわり>

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