古谷経衡 石丸伸二の2冊の著書から見えたコスパ重視の世界観を語る

古谷経衡 石丸伸二の2冊の著書から見えたコスパ重視の世界観を語る 大竹まことゴールデンラジオ

古谷経衡さんが2024年7月8日放送の文化放送『大竹まこと ゴールデンラジオ!』の中で東京都知事選で2位に入った石丸伸二さんについてトーク。石丸さんの2冊の著書を読み、そこから見えてきた石丸さんのコスパ重視の世界観について話していました。

(古谷経衡)今日は都知事選挙が終わりましたから。もう自由に言えるぞっていうことでですね。まあ、事故にならないように言いますが(笑)。

(大竹まこと)今日は石丸伸二氏とは何か?っていうことをお話いただけるという。

(古谷経衡)はい。都知事選挙真の勝利者、石丸伸二とは何か?っていうことで。昨日、都知事選は終わりましたけれども。残念ながら、鳥羽伏見の戦いにはならなかった。蓮舫さんは負けましたけれども。概略を振り返ってみると当然、小池百合子さんが勝ったわけですが。得票数を見ていきますと小池百合子さんが約292万票。2位がなんと石丸伸二さんで約166万票。そして3位に蓮舫さんで約128万票。4位が田母神俊雄さんで約27万。田母神俊雄については僕、『田村淳のNewsCLUB』の方で「だいたい前回、10年前が60万票取ったんで。半分、行くか行かないかなぐらいというところでしょう」という風に予想しましたので、ほぼドンピシャでしたかね。

さて、それで今回の大番狂わせはおそらく石丸伸二さんが2位になったということでしょう。下馬評では蓮舫さんが2位で、かなりの接戦を展開するんだけれども、石丸さんはちょっと伸びないんじゃないかしらと思っていたら、蓮舫さんにもかなりの差をつけてますね。40万評弱という。ですから、これは相当、台風の目というかね。びっくりだということで。「石丸伸二さんというのは何者なのか?」ということを今日のテーマにしたいわけでありますが。

で、当然、僕はその人物の考え方とかを知るためには、本を読んでいきます。石丸さんについては最近、二つの本が出ておりまして。『覚悟の論理』という、これは5月ぐらいに出た本であります。これはディスカヴァー・トゥエンティワンという会社から出ていますね。で、もうひとつは本当に都知事選挙出馬が決まって先月。ほぼ選挙中に出たようなもうな本です。『シン・日本列島改造論』という本。これはね、フローラル出版というところから出ていて。一応、今はこれだけで。来月、再来月にももう1冊ぐらい出すらしいんですけど。そっちはね、読む・読まないは自由なんですが。この二つの本を読んできました。

当然、彼は安芸高田市の前市長なわけでありますけれども。こういった形で都知事選挙に出馬したのは皆さん、ご存知の通りです。さて、どういう人か? どういう考え方を持ってるのか?っていうのがこの二つの本から見えてくるのですが……まあ、結論から言うとですね、この5月に出版して『覚悟の論理』っていう本。1800円ぐらいしたんですけれども、15分ぐらいで読める本ですね。

(大竹まこと)ああ、そうなんですか?

(古谷経衡)中身が何にもない、ペラペラのね、自己啓発本みたいな感じです。

(古谷経衡)ですから、これは政治家になる決意というか、自分が安芸高田市で4年間、やってきたことの詳細が書いてるのかと思いきや、ほとんどあまり言及がなくて。「人生を成功させるための秘訣」みたいな話ですね。

(大竹まこと)あらら、自己啓発本みたいだね。

自己啓発本のような『覚悟の論理』

(古谷経衡)いやー、僕も啓発されちゃおうかな? みたいな感じで読みましたけれども。15分で読みました。で、二つ目の『シン・日本列島改造論』ですね。こちらの方は、さっきも言いましたように先月、発売されたばかりで。だから都知事選挙の最中に発売されていて。こちらの方が若干、選挙を意識した……はっきりと「都知事選挙に出ます」って書いてあって、「それを前提に書いてます」っていうことなので。過去に安芸高田市でやってきた実績みたいなものとか、その詳細については最初の本よりも遥かに詳しく書いていますし。そこについては好感を持ちましたけれども。で、どっちかというと自己の政策実現というよりは、日本をどうするか?っていう。それはもう、安芸高田市での経験をもとにして東京をどうするか? 日本をどうするか?っていうことですけれども。まあ、こっちは僕、18分ぐらいで読めたかなっていうので。

(大竹まこと)ああ、ちょっと時間がかかった?

(古谷経衡)はい。ちょっと時間がかかるっていう感じですね。ですから本当に興味のある方は2冊とも……2000円ぐらいする本ですけれども。興味があれば読んでみたら、石丸さんの考え方はわかるんじゃないかなと思うんですけれども。

シン・日本列島改造論
フローラル出版

(古谷経衡)まあ、要するに要約すると彼っていうのはどういう世界観を持ってるか?っていうと、極めて新自由主義的な考え方です。極めて合理主義者です。良くも悪くも。で、いわゆるコスパ。コストパフォーマンスが大好きな人ですね。損なことはやらない。得なことは徹頭徹尾やる。そして、そのやるにしてもそこが一番最速のリターンに結びつくように合理的に計画して行動することが重要であるという。

「自分は安芸高田市の市長として約4年間、何をやってきたか? 徹底的にムダを省いていった。安芸高田市、ちょっと人口が減ってきている。1年、2年先のことじゃなくて50年後、100年後のことを考えると今は痛みの伴う改革、身を切る改革が必要なんです」っていう風な、これはどこかで聞いた言葉ですけども。そういうような感じの世界観の人です。

ちなみに2冊目の本、『シン・日本列島改造論』では大阪都構想大賛成。道州制大賛成っていう形でね。「都知事選挙が終わったんで、あそこの党から国政に行くのかな?」なんていうね。そんな伏線なのかなって思っちゃいましたけども。というような人です。で、こういう人は別に珍しくはないわけでありますけれども、僕が注目したのはやっぱり今回の都知事選、出口調査の結果がだいたい出てきまして。東京都の10代の有権者、それから20代の有権者、それから30代の有権者。比較的若い世代。あるいは無党派層も含めて、石丸さんが非常に票を取ったんですね。

これはなぜか?っていうことでありますけれども。結局、石丸さんの世界観って今、比較的若い人たちに非常に金科玉条のごとく取り入れられている「コスパ」っていう。ここ1点と非常に相性がいいんです。

(大竹まこと)はい。

「コスパ」という一点で若年層と相性がいい

(古谷経衡)コスパっていうのはもちろん、それは昔は「時短」とも呼んだりしていたけれども。とにかく得をしたいんだ。損することはやりたくないっていう、そういう節約みたいなことは別に僕は否定しないけれども。じゃあ、この政治的なコスパって何だろう?ってことを考えると、結局はこれ、ひとつのところに行き着くんですよね。「緊縮」です。つまり、「これはムダでしょう」ってどんどんどんどん削っていくわけです。

(大竹まこと)緊縮財政。

(古谷経衡)安芸高田でどんどんと「こんなことに金を使う必要ない」って言って切る。「こっちはこんなにいらないよ」って言って統廃合をする。やっぱり非常に合理的……彼の中では合理的な発想。その「コスパ重視」という発想が若い人と非常に親和性があったっていう、ここがひとつ、非常に最大の理由だと思います。じゃあなぜ、比較的若い人がコスパ重視になるかということですけれども。私も若い頃は本当に大変なコスパ重視の人間で。なんとか合理的に映画とかを見て、知識を溜め込む必要があるかっていうことを研究して、ギチギチのスケジュールとかを詰めて。要するに勉強法だって何だって、そうなんですよ。同じ時間で最大の効果を生み出したいみたいなね。

そういうことを言われると、なんかいいことを言ってるような気がするし。実際、実行できたらそれはムダではないのでいいんですけれども。まあ、そういう人がやっぱり多いですね。で、歳を取ってくると「世の中はコスパだけでは割り切れない」っていうことが当然、わかってくるわけですよね。その時に「損だ」って言ってやらなかったことで大きな意味で人生で見たら「ああ、やっておけばよかった」っていうこともあるし。その時、ものすごく苦労して損を顧みずやったことが長期的に見たら自分の人生の糧になってるっていうこともわかるので。歳を取ればですね、コスパっていうものだけでは世の中は動いてないっていうことはわかるわけです。ところが、比較的若い人っていうのはとにかく、あんまり人生経験がない方が多少、いらっしゃるので。コスパが大好きなんですよね。

映画とかも2時間じゃなくて15分で見ちゃうみたいな。ファスト映画っていうやつがあったりしますけれども。これなんですよ。石丸さんの発想ってのは全て。で、石丸さんは1冊目の本でも2冊目の本でも「自分は得と思ったことを徹底的に合理的にやって、それを安芸高田市で実行しました。それを東京でもやりたい。なぜなら、自分は日本の未来っていうものに大変危機感を持っている。安芸高田市でもそうであった。人口がどんどん減っていって、産業がどんどん衰退して、税収も減っていく。こういうことを安芸高田市だけでやっていては日本全体のことには繋がらないじゃないか。だからそういった衰退していく……特に人口が減っていくということに自分は危機感を強く持っている。なので、東京都知事選挙に出る」っていう風に言っているんですね。

だけれども、僕はこの2冊の本を読んで、読めば読むほど石丸伸二さん、そういう風に特に人口減少の危機感を持って政治をやりたいっていうんだったら、東京じゃなくてよかったんじゃないか?っていう風にいつも思うんですよね。で、そこの接続が全く書かれてないんですよ。だって東京は放っておいても年間に3%から4%、人口が増えていくわけですね。1年にだいたい30万人から40万人、人口が増えていく。2年で80万人ぐらい増えるわけですよ。転入とかがあって。そうすると2年で秋田県丸ごと分の人口が増えるんですね。

ところが石丸さんの言っていること。「人口減少で地域が立ち行かなくなる。それをなんとかしないといけない。その危機感と覚悟を持ち、そのためには最速での効果を目指す政策をやらないといけない」っていう風に彼は言うんだけど。だったらそのまま広島とかでおやりになったらいいんじゃないですか? なぜ、あなたがむしろ栄えている東京でそれをやろうと思うのか?っていう。そこについてはほとんど接続がなくて。「東京の一極集中を是正すれば日本は変わるから」って言っている。「ということは、じゃあ石丸さん、東京の人口を減らすっていう政策をなさるんですか?」とか、そういう質問を受けてましたけれども。そこについては彼、はぐらかしております。

人口減少に取り組むのになぜ、人口増加する東京都知事選に出たのか?

(古谷経衡)結局はね、僕は読者としてひとつ、見抜きましたけれども。要するにこれ、承認欲求なんでしょうね。彼は国政をやりたいんですよ。この本を読む限りにおいては。でも、都知事選挙ってやっぱり注目されるので。そこでステップアップしたいという思い。これが非常に強く出ているので。「なぜ自分が都知事選挙に出る必要があるのか?」ということはほとんど、理論的には説明されておりませんでした。

だから、なんていうかな? 僕、さっき言ったように若い人にそういった、中身があんまりないようなものなんだけれども。でも、上辺だけはよくて。それでコスパを重視して合理的なことをやっていこうっていうことに惹かれるっていうのは別にこれ、東京の若者だけじゃないとは思うんですけれども。ただし、そういったことを突き詰めていったら、その方がむしろ格差を生み、その方がむしろいろんな弱者を切り捨てることになるということがおそらくわかっていないというか。まあ、彼自身が割とやっぱりいい大学を出て、海外に赴任して。やっぱり知的エリートですよ。

だから東京の石丸さんを支持したような人も決して僕は貧困層じゃないと思うんですね、中産階級で、たとえば若い人でも留学経験がありますとか。別に悪いことしてないけれども。環境とかねSDGsとかに興味がある。だけれども、具体的なことを言うよりもなんか掛け声で「コスパ」って言った方が好きだという。こういうのを私は「意識高い系」って言うんですけれども。意識高い系っていうのは何か?っていうと、承認欲求とか自己実現力が非常に旺盛なんだけれども、現実的な知識や知性や教養が備わっていないので、漠然としたキラキラしたことを言うっていう。そういう人のことを意識高い系っていうんですけれども。

まあ、維新の音喜多さんとかもね、いい意味でそういう人だと思います。だから、そういう人を支持する一定層の若年層って、いるんですよ。だからその結果が今回、石丸さんが2位という形になっていて。逆に言うと、これが真に勝利者なんじゃないかなと思ったところですが、ちと怖い部分もあります。

(大竹まこと)この番組ではね、そのコスパとは逆。不要不急こそが一番大事なんだ。文化が大事なんだ。映画が大事なんだっていう風にね。

(古谷経衡)文化ってムダから生まれるんで。

(大竹まこと)ムダが大事なんだっていう。

(古谷経衡)そこを削ぎ落とそうとするのが石丸さんです。

(大竹まこと)ああ、そうなんですか。ずっとそういう風に言ってきたんですけど。ねえ。

(古谷経衡)それは素晴らしいです。

<書き起こしおわり>

能町みね子 石丸伸二・安芸高田市長の東京都知事選への出馬表明を語る
能町みね子さんが2024年5月17日放送のTBSラジオ『ナイツのちゃきちゃき大放送』の中で石丸伸二・安芸高田市長の東京都知事選への出馬表明したことについて話していました。
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