菊地成孔 デニーズ新宿中央公園店のヤバさを語る

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菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中で最近新宿でいちばんヤバいファミレス、デニーズ新宿中央公園店で起きた出来事について話していました。


(菊地成孔)はい。『菊地成孔の粋な夜電波』。ジャズミュージシャンの、そして歌舞伎町を出たとはいえ、新宿在住には変わりませんので。新宿でずっとゴロゴロゴロゴロとゴロまいているんですけども。まあ、「いま新宿でいちばんヤバいファミレスはどこですか?」っていう質問がもし来たとしますね。来そうです。まあ、この番組の最初期の頃はそれがロイヤルホスト東新宿店だったんですけど。もうあそこはね、大陸からのお客様の店ということで定着しちゃって。カルチャー的に安定しちゃったんでもう全然ヤバくないですね。もう振り切れちゃっているんで。

いまいちばんヤバいところをお教えしましょう。デニーズですね。デニーズの中央公園前店だと思います。正式な名称はわかりません。(正式名称:デニーズ新宿中央公園店)。いわゆる俗名西口公園と言われている公園が新宿にあります。マイルスが復帰ライブをやったところですよね。あれ、実は西口公園じゃなくて中央公園っていうんですけども。その公園の向かいにデニーズがありまして。1階がね、ローバージャパン。「MINI」ってでっかく書いてあります。ローバーミニの「MINI」ですね。で、2階がデニーズ。このデニーズが最近減っちゃった24時間営業のデニーズなんですけど、まあ24時間だからなのか、都庁の近くで気の流れがいいのか悪いのか……これ、別名「自己啓発デニーズ」って言われていてですね(笑)。

別名・自己啓発デニーズ

まあ、「別名、呼ばれてですね」って私が呼んでいるだけなんですけど、かならず窓際にまあ、そうだな。FXってわかりますか? 韓国のアイドルじゃなくて外貨投資のことなんだけど。FXか株か……まああるいは自己啓発の類だと思うんですけど。かならずもう、窓際の席はびっしりそれなんですよ。んで、この間行った時もまあ、背広のリーダー格の人ね。お若いファンの方のリテラシーを全部ぶっ飛ばしますけども、もうタンニングした村西とおる監督としか思えないっていう人がいらっしゃって。その方はリーダーなんですよね。で、この方の口癖が「無限」っていうね。とにかく、いろんなことが無限ですっていうことをホステスみたいな感じの女子2人。あと、ちょっとくたびれているんだけどやる気のありそうなおじさん。あと、ドラマーの「フユ」みたいなね。これ、わかんないと思いますけどね。私のソロライブに来ないと。フユみたいな感じのちょっとラテン系のBボーイね。

これを相手に全員にすっげー勢いでしゃべっているわけ。で、全員がボールペンでメモを取っているんですよね。これはヤバかったっすね。その隣もヤバかったんですけど。3ピースのおじいさん。あとね、まあ遅まきながら優勝おめでとうございますっていう感じなんですけども、白鵬関みたいな感じのおばあさんと……(笑)。おそらく、あれがマウス(ターゲット)だと思うんですけど、GUのスーツを着ている若い青年がいて。まあ、なんかすごい説明をされているんですよ。めっちゃめちゃ。で、まあ私もね、変に小器用な方でいろんな職業の人のいろんなしゃべり方がパッと真似できるんですけど、あの人たちだけは真似できないですね。

「洗剤を、売るんだよね。で、なにが環境にいい洗剤か?っていうことなんですよね」って。まあ、そこだけはメモしたから、メモを読みますけどね。「なにが環境にいい洗剤か?っていうことなんですよ、結局。気持ち悪いじゃないですか。気持ち悪いのは僕、嫌いなんで。僕ね、結局100%イエスじゃないと買えないんですよね」っていうところまではメモしたんですけど、あとは全然ダメです(笑)。あの、他の仕事だったらね、20分ぐらいバッと耳で聞いたら覚えられる……なんて言ったらいいんですかね? 「銚子のモーツァルト」っていう感じだったんですけど(笑)。

あの手の人……あのね、いま東京のカフェ、すごい素敵なところがいっぱいあります。ファミリーレストランも世界に冠たるカルチャーですよ。セブンイレブンはアジア諸国にいっぱいあるけど、ファミリーレストランはないもんね。だから、本当にね、世界に誇るべきカルチャーだと思うんですけど。そこを「ああ、素敵だな。美味しいな。こんなに安いのに美味しいんだ。カフェもいいな。結構安いからいい加減なコーヒーが出てくるんだと思ったら、本格的だ」っていうカフェが東京に腐るほどありますよね。そこを、本気っていうか、本気もへったくれもないんだけど……カフェとしてガチで利用している方々っていうのはもう日本人の人、いないです。

それを「楽しいね。どこに行こうか? ここ、いいカフェだね」って言っているのは大陸からのお客様、半島からのお客様、東南アジア、南の方から北上してきたお客様などなどでいっぱいで。じゃあ、日本人でそれを利用している人たちはなにをやっているか?っていうと、階段の下の狭い席とかでかならず自己啓発かFXのすすめをやっているんで。日本人にとっていまカフェの舞台っていうのは商売の舞台ですよね。まあ、マウスを捕まえて1人ずつ1人ずつあげていくっていうね。まあ、ネタ事ダメですか? ええと、まあギリギリですけどね(笑)。大丈夫だと思いますけどね。はい。そんなことをハントしている。そして、もしそういうシーンを見たい場合はデニーズの中央公園前店の1階がMINIの看板が出ているローバージャパンのデニーズに行っていただければかならず見れます。時間帯によりますけどね。

といった、「最近はファミレスなんか行ってないんじゃないか?」などといったお叱りのメールなどもいただいてますからね。まだまだファミレスの話が聞きたいという方もいらっしゃるのだという需要に応えて結構ヤバめな線を踏んでみました(笑)。というわけで、そういうった風景ね。僕も、久しぶりに友達から電話がかかってきたなと思ったら「菊地、お前がんばっているよな。最近すごい名前を聞くよ。……小豆に興味ある?」って言われて(笑)。「甘く煮たのには興味あるよ」って言って切ったことありますけどね。まあまあまあ、これ以上言うとあれですけども。

そういった雰囲気。深夜の2時か3時ぐらいにその24時間のデニーズに行くと、壁際が全部それなの。で、下手をするとね、先に一仕事終わった8人組ぐらいが……あの人たち、なんなんでしょうね? 不思議ですね。知っている方、メールくださいね。ご教授ください。なぜか、旅行のツーリスト用のガラガラガラっていうバッグがかならず3つぐらい置いてあるんだよね。地方から来て引っかかっているのかしら? あ、「引っかかっている」って言っちゃった(笑)。あるいは、側が持っているのかしら? こう、お誘いしていく側の方が持っているのかわからないですけど。絶対に手ぶらとかね、普通のトートとかじゃないですよ。かならず旅行用のガラガラガラがあるのね。で、ガラガラガラっつって通路を通って、チームAに向かって帰り際に挨拶したりして。「よっ!」って。で、帰ったりするんで。同じ会社の複数のチームが使っている場合もあるね。だから、壁際全部がそうですよ。

と、まあこの話には続きがあるんですけど、この続きも含めて、その店の雰囲気をみなさん、想像してみてくださいね。想像しながら、次の曲を聞いてください。フラン・パロモは何週か前のジャズアティテュードでもかけましたけどやっぱり名盤で。1曲だけじゃもったいないなということで。前回は『La Rumba Es De Negros』をかけましたが、同じアルバムでもっといい曲があるっていうんで、そっちをかけてみたいと思います。これもスペイン語ですが、だいたいなにを言っているか、わかると思いますね。『Resolviendo』。まあ、「Resolution」のことでしょうね。『Resolviendo』という曲があります。こちらをお聞きください。スペイン人だけどキューバでキューバン・ジャズをやっているっていう人ね。

キューバは言うまでもないですよね。スペイン語圏ですよね。イベロ・アメリカンっていうことで、スペインの植民地だったわけですね。そのスペイン人がキューバとやるという複雑なエスニジズムの中から出てきた非常に文字通りネグロな、つまり黒い音楽です。制作国としてはスペイン、キューバ、カタルーニャのパーカッション作曲家のフラン・パロモがわざわざキューバに出向いていった『Black Way』というアルバムから『Resolviendo』を聞いてください。

Fran Palomo『Resolviendo』



(中略)

まあ、それはともかく、さっきのね、デニーズの話には続きがあって。窓際の席全部が、とはいえ例外はあるでしょう? で、ヤンキーの夫婦みたいなのも来るわけ。夜中だから。すると、まあお子さんがいらっしゃいますよね。で、泣くわけよ。で、その日はちょうど私、かき氷を食いたかったんで。「暑くて暑くてしょうがないな。どこでもいいから、かき氷を食おう。ああ、あそこのデニーズに行こう」って。「またあれ、見れるわ。株の。絶対に行ったらいるわ。あのタンニングしている背広着ている人が、なんか微妙に太いベルトをした、やる気のありそうな、しかし体力は減退していそうなおじさんを相手に何かをすすめているところが見れる」って思って行ったら実際にあったの。

で、最近はすごいですよね。台湾式に。昔のかき氷と違うわけよ。知っているよね? もっと細かくかいちゃって、綿菓子みたいなかき氷が多いですよね。で、食ってたの。そしたら隣にもうヤバいのが来ちゃって。ロバート・ダウニー・ジュニアっていうかね。もう、「ケンカですよね、その傷」っていう(笑)。手も顔も傷だらけの、だけど格好はね、アディダスなのよ。しかも、アディダスのいちばんいいラインを着ているわけよ。で、年齢はね、たぶんあれでも私より若いと思うの。だけど、51、2でしょうね。ただ51、2で風格があったら、もう相当風格あるからね。私がガキ面なだけですから。51、2の、もう入った時からガンたれているわけ。ロバート・ダウニー・ジュニア、わかんない方は検索してください。あるいは「アイアンマン」でもいいです。

まあ、もともと問題があった人ですよ。ドラッグをやめられなくてね。で、更生してスターになられた方ですけども。ロバート・ダウニー・ジュニアが50ぐらいかな? それはよくわかんないけど。で、まあそんな感じの目つきがヤバい、ギラギラした人で。頭も白くなっちゃっているんだけど、白いのを刈り上げて……オールバックっていうか昔のニューウェーブっていうか、ツンツンの髪型で。で、アディダスを着た人が、年の頃ならそうですね。22、3だと思うんですよね。その人……相手は女子よ。自分よりずっと若い女子を連れているのね。で、その女子はもうヤバいですよ。トゲトゲのついたリュックサックを背負っていて、着ているもんが全部真夏なのにゴムなわけよ(笑)。「ゴム!? ラバーですらない?」って思って。その人、一言もしゃべりませんでした。着席から退席まで。注文もそのおっさんがしたんで。

だから一言もしゃべんない女の子を連れたそのおっさんが隣に来たのね。したら、ガキが泣いているわけ。で、このガキがうるさいですよ。まあ、正直ね、テメーにガキがいねえ。これからも作らねえ……「作らねえ」っていうか、できないんですけど。っていうことで言うわけじゃないですよ。だけど、ガキの躾はしっかりしてほしいですよね。それは公共の場ではね。どこでもね。お父様とお母様方。お子さんがかわいいのはわかりますが。というか、かわいいのであればなおさらですが。だけど、もうビービーに泣かせてるの。で、ビービーに泣かせているんだけど、まあFXだか株だかね、あるいはもっとヤバいものかわからない人たちは、まあまあ文句を言わないのよ。「そういうのに腹を立てる人間じゃありませんよ」という自己演出がなされているから。

だけど、ロバート・ダウニー・ジュニアは全然黙っていないですよ。「なんか言うな。なんか言うな、この人」って思って。「なんか言うけど、なんて言うんだろう?」って思ったんだけど。これは聞こえると。なんでかと言うと、私の隣の卓だったからです。そしたら、「ちょっとちょっと」っつって。で、普通そうですね、私はそんなこと……「赤ちゃん、うるさいですよ」なんて言わないですけどね。「ちょっと、すいません。あの……ねえ。他のお客さんも気にされていると思いますけど、なんとか……」って。まあこれは自分が言うとしたらというのを――絶対に言わないですけど――自分が言うとしたらどうだろう?って考えたら、まあそんなもんでしょう。「ちょっとご両親にご注意していただけると、ねえ。へへへ……」かなんかだと思うんですけどね(笑)。

まあ、その人はすごかったですよ。「警察呼ぼうか?」って。「えっ?」「警察呼んでやるよ、俺が。だってあんなにガキがずっと泣きっぱなしであれ、虐待でしょ? 虐待だよ。あのガキ、死んじゃうよ!」っつって。「俺が呼んでやるから、警察呼ぼうか?」って(笑)。「すごいな!」と思って。うん、すごいわと思って。こういう方法があるんだなと思って。その間、対面の女の人は言葉をしゃべらないから何人かもわからないのよ。顔はアジア人なんだけど。一言もしゃべらないし、目も合わせないで、黙ってチョコレートブラウニーサンデーみたいなのをモグモグモグッて食っているわけ。

「警察呼ぶよ! あれ、虐待だろ? 死んじゃうよ、あれ!」って。で、「すいません、すいません!」って急いで店員さんがパッと行って、ヤンキーのママさんに「あの、あちらのお客さんがその……」って言って。で、「あ、すいません……」って事なきを得たって言うかね。まあ、見事その場を収めたわけですから、英雄ですよね。さすがアイアンマンですよね(笑)。英雄だと思いますけど。次の曲、行きましょう(笑)。

<書き起こしおわり>
菊地成孔 深夜の新宿靖国通り沿いサイゼリヤの壮絶さを語る
菊地成孔さんがTBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』の中でリスナーから届いたロイホネタのメールに対し、こんな話をされていました。 壮絶な深夜の新宿靖国通り沿いサイゼリヤ(新宿区役所...

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