町山智浩『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』について話していました。


(町山智浩)で、今日は2本……今月、日本で2本戦争映画が公開されるんで。それをちょっと紹介したいんですが。1本は『ハイドリヒを撃て!』というタイトルの映画です。これ、ハイドリヒという人は第二次大戦中のナチス・ドイツのナンバー3の男なんですね。指導者なんですけど。この人がユダヤ人を完全に殲滅するということを決定した男です。

(山里亮太)ほー!

(町山智浩)だからものすごい残虐な男で、あだ名が「死刑執行人」とかですね、「野獣」と言われていた男なんです。で、彼を暗殺する話なんです。『ハイドリヒを撃て!』という映画は。これ、実話です。で、これね、チェコの映画で、チェコが舞台なんですけど。チェコってナチスに脅迫されて国を渡しちゃったんですよ。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)要するに、国をナチス・ドイツにくれなければ侵略するぞと言われて、仕方なく国を引き渡しちゃったんですね。で、そこに君臨していたのがこのハイドリヒという男なんですよ。で、そんなチェコにはいられないということで、チェコからイギリスに亡命した人たちがいるんですね。で、その人たちを7人集めて、7人の決死部隊を結成します。で、この人たちはまだ20代なんですけども。いちばん年上でも29才とかなんですよ。

(山里亮太)若い!

7人の決死部隊

(町山智浩)その若者たちがイギリス政府・チャーチル首相の方針で、飛行機でパラシュートで夜中に密かに母国チェコに潜入します。で、彼らの使命はハイドリヒ暗殺なんです。ただ、暗殺方法も何も決まっていないし、自分で考えなきゃいけないんですよ。

(海保知里)2人だけっていうことなんですか?

(町山智浩)7人です。7人で、その若者たちは暗殺した後、ナチに完全に占領されたチェコからどうやって脱出するかっていう方法も何も決まっていないんですよ。だから完全に、生存可能性ゼロの決死部隊だったんですよ。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)ただ、その母国チェコをナチから救いたいという願いだけでその7人の若者がナチに支配された母国に入ったという本当の話なんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)で、暗殺しようとするんですけども、もう彼らは決死部隊なんで。レジスタンスの抵抗組織とかとも連絡を取るんですが、彼らは絶対に仲間のことを話さないということで、いつも青酸カリを持ち歩いているんですよ。ナチに捕まりそうになったらかならず死ぬという、ものすごい悲壮な映画なんですね。で、これね、1975年に一度、『暁の七人』というタイトルで映画化されているんですけど、それが本当に傑作なんですよ。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)ものすごい映画なんですけど。だからまあ、それをリメイクしようとした映画なんですが。特にクライマックス。この7人対ナチの兵士700人の戦いが展開するんですよ。7対700ですよ。これ、史実なんですよ。

(山里亮太)すごいっすよね。

(町山智浩)7人で700人と戦うってこれ、大変な勇気ですよ。これ。で、これはこの戦った場所は教会なんですけど。いまもチェコのプラハでは名所になっているんですね。花が絶えないんですけど。ただね、この『ハイドリヒを撃て!』という映画も『暁の七人』っていう映画もすごく問題があって、いま議論になっているんですよ。ずーっと議論になっている話があるんですね。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)これ、ナチ高官を1人暗殺されたナチ側はそれに対する報復として、ほとんど無差別にチェコ人を片っ端から5000人以上殺しているんですよ。

(海保知里)ええーっ……。

(町山智浩)1人殺されたからって、5000人。ほとんどランダムに殺しているんですよ。

(山里亮太)うわー……。

(町山智浩)だから、この暗殺が正しかったのかどうか、いまでも議論がずっと続いているんですよ。これは結果、こうなることは見えていたのになんでこんなことをしたんだ? と。で、でもよかったのか悪かったのかでモメている部分があって。で、この『ハイドリヒを撃て!』という映画ではそれに対しては答えをはっきりと出さないで、ただね、黙って……これはたぶん映画を見る人は気づかないと思うんで。気がついてほしいところがあって。ある本が1冊、一瞬だけ映るんですよ。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)その本はシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』という戯曲の本なんですね。それが実はこの話のいちばんのキモになっているんですよ。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)で、『ジュリアス・シーザー』っていうのはね、古代ローマで独裁者になろうとしたジュリアス・シーザーを有名なブルータスが民主主義を守るために暗殺するんですね。だから、独裁者の暗殺の話なんですよ。で、シーザーを暗殺した後に古代ローマが実際にどうなったのか?っていうのが重要なんですよ。で、それはちょっと、実際に調べてみてください。

『ジュリアス・シーザー』とシーザーの死後

塩野七生の『ローマ人の物語5 ユリウス・カエサル ルビコン以後』を読むと、史実とはちょっと違う。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)だから、たとえ悪いやつであっても、暗殺した場合はやっぱりそれなりの結果になってしまうんだということはあるんですよね。

(山里亮太)うーん……。

(町山智浩)だからこのへんはね、すごい難しい問題だなというところが『ハイドリヒを撃て!』という映画なんですが。これが史実だというのはすごいですよ。だって、自分の国が占領されたということで、たった7人だけで、なんの後ろ盾もなく戦いに行けますかね。普通、人間って。

(山里亮太)それでナチスのナンバー3を取ってこいなんて……。

(町山智浩)そうですよ。イギリス軍は味方をしないで、落下傘で落とすだけなんですよ。ひどいですけど(笑)。

(山里亮太)いや、すごいな。

(町山智浩)まあ、それが『ハイドリヒを撃て!』で、もうすぐ公開ですね。今週末かな? 東京の方で。で、もう1本はもうちょっと経ってから。8月26日に日本で公開になる映画で『戦争のはらわた』という映画なんですが……。

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<書き起こしおわり>

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