町山智浩 ドナルド・トランプ快進撃と共和党解党の危機を語る

町山智浩 ドナルド・トランプ快進撃と共和党解党の危機を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、アメリカ大統領選挙についてトーク。アリゾナ州で行われた共和党の予備選の模様や、ドナルド・トランプの快進撃で大混乱の共和党について話していました。

(町山智浩)今回、映画の話じゃなくてですね、昨日、アリゾナというところに行ってきて。またドナルド・トランプの演説を見に行ってきたので、ちょっとその話をさせてください。

(赤江珠緒)いや、もうトランプさんは日本でもすごくニュースになってますよ。

(山里亮太)ねえ。もう決まっちゃうんじゃないか? 共和党、トランプになるんじゃないか? ぐらいの勢いですよ。いま。

(町山智浩)そうなんですよ。それですごい大混乱が続いててですね。シカゴで3月11日にあったトランプの集会が中止になったんですね。反対派の人が押し寄せて、それでトランプ支持派の人たちと激突しそうになったんで警察が中止させたんですよ。

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(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)っていうのは、シカゴっていうのは大都会なんですけど。そういう大都会でトランプの集会が行われるっていうのは、この予備選が始まってからほとんど初めてなんですね。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)っていうのは、大都会は白人じゃない人が結構いるところなんですよ。

(赤江珠緒)ああ、なるほど!

(町山智浩)黒人であるとか、メキシコ系の人であるとか、アジア系の人とかがいっぱいいるところなんですね。都会はね。で、いままでは田舎ばっかり回っていたんですよ。トランプは。僕が行ったアイオワとかね。それは白人が9割なんですよ。どこも。だからドナルド・トランプが「外国人を追い出せ!」とか「不法入国しているメキシコ人、1100万人を全部アメリカから叩きだせ!」とか。そういうことを言ってもみんな、「イエーイ!」っていう感じだったんですね。

(赤江珠緒)排他的なことを言ってもね。なるほど。

(町山智浩)そう。「イスラム教徒を1人もアメリカに入れるな!」とか言ってもみんな、「イエーイ!イエーイ!」とか言ってたんですけど。シカゴだとイスラム教徒もすごくいますから。で、初めてそういう白人じゃない人がいっぱいいる町でやったら、やっぱりものすごくみんな反対に来てですね。まあ、警察が止めたんですね。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、たぶんこれは、これからどんどん田舎じゃなくて都会で彼は予備選を戦わなきゃならなくなるので。もっとひどいことになっていくと思いますね。

(赤江珠緒)そうですか。じゃあ、熱狂的な支持する人と、もう熱狂的に反対している人が間違いなくいるんですね。

(町山智浩)いるんですけど、いままでは支持している人たちのところでしか、やっていなかったんですよ。彼は。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)ただね、こういうちょっとテンションが上がってきたっていうのは、トランプ自身に問題があって。2月23日にラスベガスでですね、彼を支持している人の中に反対する人が野次を飛ばしていたんですね。で、その人をセキュリティーのガードマンが外に連れだしたんですけど、連れ出す時にトランプが「あんなやつ、顔をぶん殴ってやればいいんだ。担架で運ばれるべきなんだ!」って言ったんですよ。

ドナルド・トランプの「ぶん殴れ!」発言

(赤江珠緒)ほう!

(町山智浩)そしたらそのすぐ後の3月10日のノースカロライナの集会で、やはり反対していた黒人の人が野次を飛ばしていて、警備の人に連れだされたんですけど。連れ出される途中に、トランプに言われた通りにですね、78才のおじいさんが顔面をぶん殴ったんですね。その人の。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)だから、トランプが言った通りのことをみんな、しちゃうんですよ。

(赤江珠緒)えっ、78才のおじいさんがそんなことを?

(町山智浩)やったんですよ。まあ、「サッカーパンチ(Sucker Punch)」って言うんですけど。相手が見ていない死角から殴るっていう、非常に卑怯な殴る方をしたんですけどね。

(赤江珠緒)あらー、うん。

(町山智浩)だからトランプが「殴れ」って言っちゃったんで、みんな殴る感じになっちゃっているんですよ。「トランプに反対するやつはみんな殴れ!」ってトランプが言っちゃったもんでね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)みんな、真面目に信じる人たちなんで。で、僕が行ったのはアリゾナなんですけども。アリゾナのテンションはものすごかったんですね。っていうのは、トランプはアリゾナっていうか「アメリカとメキシコの国境に万里の長城を築け」って言ってるんですよね。

(赤江珠緒)そうですよね。はい。

(町山智浩)それは、具体的にアリゾナのことなんですよ。アリゾナの僕が行ったフェニックスっていう町の、車でわずか3時間南に下がったところはメキシコとの国境になっていまして。そこの砂漠に低い塀があるんですよ。国境の壁がね。で、そこから不法入国してくるんですね。メキシコから。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)だから、「そこに万里の長城を築け」って言っているんで。僕が行った町はフォーンテインヒルズ(Fountain Hills)っていう白人が94%もいるところだったんですけども。だから、行ったらもう3千人ぐらいいたかな? 白人の人たちがですね、「Build The Wall! Build The Wall! (壁を築け! 壁を築け!)」ってずっと繰り返しているんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)すごい状態で。しかもそこで州知事の人と地元の保安官が出てきてトランプを迎えたんですけど。その2人は、不法入国している人を追い出す州法を進めている2人組なんですね。だからもう、完全に排他集会になっちゃっているんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)でも、そこにすごく反対派の人たちが、主に若い学生さんとか、肌の色が白くない人たちが、「これは完全にレイシズムなんだ。ヒットラーなんだ。ナチなんだ。人種差別なんだ!」と言って、シュプレヒコールを上げていて。それと一触即発の状態なんですよ。現場が。だから、装甲車が出ていましたね。警察の。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、警察はもう完全武装で、SWATで入っているんですよ。どうしてか? どうして、そこまでものすごい軍隊みたいなものが入っていかないとならなかったか? って言うと、トランプを支持している人たちは、ほとんどとは言いませんが、かなりの量でですね、拳銃を持っているんですよ。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)ベルトに拳銃をつけているんですよ。「トランプ万歳! メキシコ人は追い出せ!」って言っている人は、拳銃を持っているんですよ。グロックとかの20発近く連続で発射できる拳銃を持っているんですよ。みんなじゃないですけど、かなりの量で。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)これ、アリゾナでは「Open Carry」という法律ができてですね、拳銃を持ったまま、公共の場所――公園とか、ショッピングモールとか、レストランとか、バーとか――に、行っていいことになっちゃったんですよ。

(赤江珠緒)す、すごいことですね。ええ。

(町山智浩)だから、西部劇みたいになっていますね。で、マガジンっていう弾倉を持っているんで、1人で殺そうと思えば50人ぐらい殺せる人がぞろぞろ歩いている状態です。

(赤江珠緒)で、意見が違う人たちがこんなに集まっちゃって。

(町山智浩)で、意見が違う人たちと接触しているんですよ。押し合っているんですよ。「お前、なに言ってんだ?」「お前は売国奴だ!」とか言って、拳銃を持っているんですよ。

(赤江珠緒)うわー……

(町山智浩)これは何が起こっても不思議じゃない状態だったけど、僕はその間を行ったり来たりしながら、「どこから来たんですか?」とか「何才ですか?」とか聞いて回っていたんですけどね。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)「こいつは何なんだ?」って思われていたと思いますね。僕ね、本当に(笑)。

(山里亮太)これ、いままでね、そんなに厳戒態勢……こんだけ反対の人たちが出るっていうのは、あんまりなかったことなんですか?

(町山智浩)ええと、だんだんこうなってきましたね。いままで、こんなにはっきりと「外国人を追い出せ!」とかそんなことを言う政治家はいなかったですよね。そこまでね。で、それを言っちゃうことで、アメリカの方でですね、「ドナルド・トランプの一体どこが好きでみんな応援しているの?」っていうアンケートを取ったんですね。3月10日に取っていますけども。

(赤江珠緒)うん。

トランプ支持者へのアンケート結果

(町山智浩)それで、これは『YouGov』というところが取ったんですが。トランプを応援している人の多くが、「トランプのいちばんいいところは、ポリティカリー・コレクトじゃないところだ」って言ってるんですよ。「ポリティカリー・コレクト(Politically Correct)」というのは、差別をしないことです。

(赤江珠緒)えっ?うん。

(町山智浩)「トランプのいいところは、差別をするところだ」って言ってるんですよ。トランプを応援している人の多くが。

(赤江珠緒)そこ? そこがいいと?

(町山智浩)そこなんだ! と。だから、「いままで、アメリカは差別とかを気にしすぎていたんだ。だから(トランプは気に)しないから、最高なんだ!」って言ってるんですよ。

(山里亮太)支持している層は限られていそうな……

(赤江珠緒)ねえ。

(町山智浩)ええと、トランプを支持している人の、支持している要素の中で最も多いのは39%で、「ポリティカリー・コレクトでないこと」なんですよ。

(赤江珠緒)へー! もう開き直った意見ですな。

(町山智浩)で、その次に多いのが、「ビジネスができるから・ビジネスマンとして成功しているから」と。それは22%。で、13%が「不法移民に対して厳しいから」と。でも、圧倒的な39%が「差別的だから好き」っていう。

(赤江珠緒)はー。いや、でもそれを支持している人が、それだけいるんですもんね。アメリカにね。

(町山智浩)それだけいるんですよ。これはすごいことで。共和党がそういう党になってしまったんですね。

(赤江・山里)ふーん!

(町山智浩)共和党って現在9割が白人なんですよ。で、ずっと長い間、白人の人たちの票を取るために、たとえば黒人の人たちが就職したり、学校に入る時に優遇制度があるんですね。その優遇制度を撤廃しろ! とかですね。移民の人たちが病院に行かなきゃならない時、あるんですけど、不法移民の人とかって、子供が病気になっちゃった場合に、お金がないから、そのお金はやっぱり税金が負担しなきゃならない状態になるんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)そうしないと、子供死んじゃうじゃないですか。そういうのも、撤廃しろ! とか言ってきてたんですね。ずっと共和党は。で、それによって、要するに投票しない人たちを批判することによって、票を持っている白人の票を取るという形で。はっきり言うと、憎しみを増殖させることによって票を集めるということをずーっとやってきたんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)オバマケアなんかは特にそうで。僕がインタビューして聞いた人たちがオバマケアをなぜ嫌か?っていうと、やっぱりこれは保険だから、ちゃんと払える人、たくさん払う人が少なくしか払えない人の分を負担することになるでしょ? 保険って。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)どうしても、そうなるんですね。「なんでそんなことしなきゃならないの?」って言うんですよ。

(赤江珠緒)うん。「お互い様」っていう気持ちは成立しないと?

(町山智浩)成立しないんですよ。だから彼らは、「税金っていうものを払ったら、それは自分たちの道路とか、自分たちの橋になるのであって、貧乏な人のところに行くものではない」っていう考え方なんですよ。

(赤江珠緒)うーん……

(町山智浩)だからそこの部分をすごく強く刺激することで、共和党はずっと票を集めてきていたんですけど。それを横から来たトランプが取っちゃったんですね。ただ、共和党の方はすごく困っているんで。これがいますごいことになっていて。いま、テレビコマーシャルで、トランプを降ろすためのトランプ叩きのコマーシャルを共和党が一生懸命お金を集めてやっているんですよ。

(山里亮太)共和党がやっているんですか!?

(町山智浩)共和党がやっています。トランプが共和党の代表にならないようにっていうことで。もうすでに5億円ぐらいが導入されてですね。アンチ・トランプCMっていうのが続いているんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、「トランプは女性に対してなんて言っているか、知っていますか?」という、トランプが過去に言った発言をコマーシャルで流して。「こんな人に投票しないでください!」とかやっているんですね。

アンチ・トランプCM

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)ちなみになんて言ったか?っていうと、「おっぱいの小さい女は面白くないね」とか、そういうことばっかり言ってるんですけど。トランプは、いままで。「あんなブサイクな女に投票するのか?」とか。別の女性候補に対して言ったりね。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)「他の候補者たちのカミさんを見ろ。みんなブサイクじゃねーか? 俺の3人の女房の方がずっと美人だぞ!」とかそんなことを言ってるんで(笑)。

(赤江珠緒)小学生か(笑)。

(町山智浩)そういうのを拾ってですね、「こんな人には投票しないでください!」っていうのを共和党がお金を出して放送している状態なんですよ。

(山里亮太)これ、でも民主党からしたらラッキーですよね? 共和党が共和党内だけでどんどんどんどん弱っていく感じで。

(町山智浩)そうなんですよ。共和党はだからなんとか、7月7日の共和党大会にトランプを降ろして、別の人を候補にしたいんですね。で、予備選っていうのはずっと各州で行われているんですけど。点を集める方式になっていて、各州ごとにですね、代議員数という点みたいなのがあるんですよ。得点がね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、それを1237票集めたら、もう確実に共和党の大統領候補になれるんですけど。いま、トランプさんは680点しかなくて、ちょっと足りないんですよ。だからこれをなんとか阻止して、1237点にいかないまま7月の大会に入ったら、現場でもって決選投票みたいなことをやって、トランプを降ろそうという風に共和党の執行部は考えているんですね。

(山里亮太)そうか。その数字まで行かなかったら、共和党内でもう1回、決め直しができるんですか?代表を。

(町山智浩)そういう方法に持って行こうとしてるんですよ。ただ、かなりこれは許されないことで。いままでは共和党の中で、票を持っていっていちばんになった人に残りの票を全部入れて一本化するっていうやり方をしていたんで。ちょっとイレギュラーな方法でトランプ降ろしをやろうとしてるんですね。共和党は。で、そのことを僕、聞いていったんですよ。トランプの集会に集まっている人たちに。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)「いま、共和党がトランプ降ろしをやろうとしていますけども、もし、共和党がトランプを降ろした場合、あなたは共和党が立てた候補に投票しますか?」って聞いていったんですね。そしたらみんな、「絶対に嫌だ」って言ってましたね。「トランプを共和党が降ろすんだったら、私は共和党なんかに票は入れない」って言っています。

(赤江珠緒)不思議な構図になってきましたね。

(町山智浩)はい。だからこれ、もし共和党が本当にトランプに乗っ取られると嫌だから、トランプを降ろしたとしたら、票を取れないんですよ。自分たちの党員から。

(赤江珠緒)じゃあ、もう共和党のトランプじゃなくて、トランプ党みたいになっちゃっているんですね。

(町山智浩)そう。だからすごく共和党は困っていて。で、トランプは共和党が自分を妨害していることを知っているから、「俺に協力しないと、本当にお前の党はガタガタになるぞ!」って言っているんですけども。協力するわけにはいかないんですよね。共和党側は。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)だって、関係ない人だから。共和党と。もともと。

(山里亮太)そうかー。

(町山智浩)しかも、すごい共和党内部批判が激烈なんですよ。トランプは。だから僕、聞いていった時に、いまトランプの他の候補っていうのはほとんど脱落しちゃって、いま2人しか残っていないんですね。次点に来ている人はテッド・クルーズという人なんですけども。「テッド・クルーズが共和党の候補になったら、あなたはテッド・クルーズに入れますか?」って聞いていったんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)したら、「絶対に嫌だ!」なんですよ。それはトランプが、テッド・クルーズが二番手についているから、徹底的に攻撃しているから。トランプの言うことがみんな、身についちゃっているんですね。で、テッド・クルーズっていう人はキリスト教原理主義の福音派として票を集めていて、そういう人たちから票を集めているんですけど。実際の政治資金はゴールドマン・サックスとかですね、そういうところからもらっているんですよ。コーク産業っていう石油化学工業のトップとかですね。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)だから、こう言うんですよ。トランプは。「あいつは『宗教のため、神のために政治をする』って言っているけれども、金は全部ウォール街とか石油会社からもらっているぞ! 金をもらっているところのために政治をするに決まっているだろ!?」って言うんですよ。その時も言ってましたね。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)でも、そう言われちゃったらみんなテッド・クルーズなんかに投票しないですよ。で、トランプはお金をぜんぜん使ってないんですよ。選挙に。

(山里亮太)なんでですか?

(町山智浩)彼は放っておいてもテレビとかマスコミがガンガン騒いでくれるから、宣伝する必要がないんですよ。

(赤江珠緒)そうかー。パフォーマンス力がやっぱりあるんだな。

(町山智浩)だからトランプって、選挙スタッフが100人しかいないんですよ。たとえばヒラリーさんは800人いるんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、ヒラリーさん、その給料だけで270万ドルとか払っているんですけど。トランプなんかは42万ドルしか払っていない。で、ブッシュ大統領の弟のジェブ・ブッシュ フロリダ州知事が選挙に参加していたんですけど、脱落したんですね。途中で。ぜんぜん票が取れなくて。あの人、選挙に使ったお金って、1億1800万ドルなんですよ。

(山里亮太)うおー……

(町山智浩)それだけ使って、全く票が取れなかったんですよ。トランプはぜんぜん使ってないんですよ。トランプはいままで、全部でもって2500万ドル集めていて、それも全部使っていないんですよ。ほとんど持ち出しなんです。彼は。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)71%が自分の持ち出しなんです。トランプは。

(赤江珠緒)町山さん、でも現実的に近づいてきているでしょ? やっぱり。

(町山智浩)でも、これはすごいですよ。トランプは共和党なのに、「共和党が金権政治だ」っていうことを暴いちゃっているんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、トランプの現在の支持率がいちばん最近のデータだと、53%なんですよ。共和党内で。共和党内の53%が、「共和党内の他の政治家が全部金権政治のインチキ野郎だ!」って思っている状態になっているんですよ。現在。

(赤江珠緒)それはどういうことになるんだ?

(町山智浩)これ、共和党っていう党が解体するっていうことですよね。どう考えても。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)要するに、党員がぜんぜん心が離れちゃっているんだもん。

(赤江珠緒)うーん!

共和党解党の危機

(町山智浩)これは完全にトランプによって党が解体されるっていう事態になっているんですよ。これはすごいなと思ったですね。それで僕が思うのは、これ、日本の人もちょっと考えた方がいいのは、アメリカの政治の大きなサイクルが本当にいま、変わりつつある状態ですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)だから大きく、アメリカの政治の歴史は、40年ぐらいずつのサイクルで回ってきて。その間に10年ぐらいのブランクがあるっていうのがあるんですね。そこからちょっと説明すると、まず共和党と民主党っていうのは一体何か?っていう話をパッとしますと……南北戦争の時のリンカーンの北軍が共和党だったんですよ。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)で、南軍の、奴隷を維持していた方が民主党だったんですね。それが戦争をした後、負けて南軍の民主党の方はずっと貧乏になっていったんですけども。大恐慌でバブルが崩壊してですね、共和党の大統領が失敗したんですね。バブルの対策に。1929年にね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、ルーズベルト大統領っていう民主党の大統領が大統領になった時に、南部の貧しい人たちの党だったから。民主党は。それを拡大して、貧しい人たちを救うための一種、社会主義的な政治を始めたんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)それがニューディール政策っていうんですね。アメリカっていうのは、ずっとそれを1968年まで続いて、一種、社会民主的だったんですよ。たとえば税率なんかね、金持ちの税率は5割だったんですよ。

(赤江珠緒)おおー!

(町山智浩)だからすごい福祉国家だったんですね。それで、世界一の強い国になったんですけども。ベトナム戦争を民主党が始めちゃって。それで、党大会でもってベトナム戦争に反対する人を大統領候補に選ばないで。ベトナム戦争を継続する人を大統領候補に選ぼうとしたんで、民主党が分裂して解体したんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)全く今回と同じ状態なんですよ! 1968年に民主党が解体したのは、ベトナム戦争で党大会で党員が求める候補じゃない人を立てたために解体したんですね。民主党は。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、その後にずーっと政治の実権を握れなくなっちゃうんです。民主党は。中身が解体しちゃったから。支持者と。それと同じことが現在、起こっているんですよ。

(山里亮太)そうだ。はー。

(町山智浩)その後、南部の民主党員が離れたんですね。南部の白人民主党員が、民主党が黒人に権利を与えてしまったんで、怒って離れたのを共和党が取り込んで。南部の白人を。で、1981年からレーガン大統領によるレーガン体制。保守体制っていうのが、2008年の金融崩壊まで続くんですよ。で、その間はクリントンが民主党だけれども、大統領になりましたけども、彼も共和党の保守体制の中で政治をやったんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、それが2008年のリーマン・ショックで崩壊して、一応オバマ大統領になりましたけども。オバマ大統領は議会を共和党が支配しているため、全く改革ができないまま、8年間たっちゃったんですよ。

(赤江珠緒)ああー。

(町山智浩)一種の政治的空白みたいな形になるんですけども。でも、今回こういう形で共和党が崩壊してしまうので。もう本当に、レーガン体制が完璧に終わるんですね。という事態で、ものすごく大きな歴史が動いています。現在。

(赤江珠緒)ねえ。どうなっていくんでしょうね。ええーっ?

(町山智浩)これはわからないですね。まあ、本当にね、面白かったけど怖かったですよ。みんな拳銃持っているしね。

(赤江珠緒)いや、そうでしょう。で、やっぱり全体にくすぶっている不満みたいなのをどんどんどんどん吸い込んで大きくなっていっているじゃないですか。トランプさんは。

(町山智浩)そう。だから憎しみがね、原動力になっているんですよ。トランプの場合には。それがすごく危険なことだと思います。

(赤江珠緒)どうなるのかしら?と思ってね。怖いですね。

(町山智浩)あの、オバマ大統領が出てきてね、「Hope(希望)」っていうことで、みんなを惹きつけたんですね。ところが、トランプの場合は圧倒的に「憎しみ」なんですよ。原動力が。それはちょっと、非常に危険なことだと思いますね。

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)で、トランプ自身はそれをまた本気であんまり信じていないところが、また怖いんですよ。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)ウケるから言っているだけなんですよ。

(赤江珠緒)あ、そうなの?

(町山智浩)そう。そういう人って、左翼にも右翼にもいて。たとえば、原発問題とかあると、原発にあんまり興味ないのに、それを言うと人気が出るから言う人とか、いるんですよ。

(赤江珠緒)はー! その場の空気とかを読んで。

(町山智浩)トランプは完全にそうなんで。それに乗せられちゃう人たちも本当に怖いんですけど。でももう、ものすごい状況になっていましたね。行ってみて。

(山里亮太)これ、だから共和党が解体しちゃうかもしれないんだ。

(町山智浩)その後ね、メキシコ料理屋に食べに行ったんですけど。関係ないですけど。隣に座っている人が、拳銃を腰に入れていて。触りそうで、むちゃくちゃ怖かったですね。

(赤江珠緒)怖いよ、アメリカ……

(町山智浩)ちょっと抜いてやろうか? と思いましたよ。俺(笑)。

(赤江珠緒)いやいやいや!(笑)。

(町山智浩)というね、アリゾナは怖かったっていう話ですけど。まあちょっとね、いまのを踏まえて見ていると、面白いなと思いますよ。

(赤江珠緒)そうですね。ちょっとまだまだ大統領選はね、これからも続きますから。また町山さん、刻々と伝えて下さい。

(町山智浩)はい。現場行って伝えます。

(赤江珠緒)ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

(赤江珠緒)今日はアメリカ大統領選挙のお話をうかがいました。

<書き起こしおわり>
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