菊地成孔さんと大谷能生さんがDOMMUNE『JAZZDOMMUNE 18』に出演。亡くなった菊地雅章さんを追悼しつつ、松本人志さんの映画『さや侍』の音楽の素晴らしさについて話していました。
(大谷能生)『Desert Moon』とかね、何聞いてもいいですからね。
(菊地成孔)何聞いてもいいよね。うん。駄盤もいいからね。
(大谷能生)駄盤も・・・まあ『Desert Moon』はほぼハズレなしかな?
(菊地成孔)『Desert Moon』はぜんぜん名盤よ。あの、トニー・ウィリアムスとロン・カーターとやっているやつとか・・・あ、それは日野さんか。
(大谷能生)まあ、なんか微妙っていうかね。これに比べたら、なんとも言いようがあるんで大丈夫なんですけど。
(菊地成孔)そうね。これがいちばん安心して。
(大谷能生)安心して提示できるっていうか。追悼に安心して出せるっていう感じの。でも、こういうのを持ってないと、大物じゃないと思うの。
(菊地成孔)そうそうそう。俺もそう思う。
(大谷能生)それで言うとね、清水靖晃さんだって、すごい駄盤作っているわけ。
(菊地成孔)いや、清水靖晃さん。
(大谷能生)持ってきたもん、俺。
(菊地成孔)『ベルリン』。
(大谷能生)『ベルリン』。これ、伝説の駄盤って・・・駄盤って言っちゃいけない。こういうものを持っていないと一流じゃないなってところを・・・
(菊地成孔)駄盤がない人はダメだよね。
(大谷能生)ダメ。このぐらいのものが作れないと、大物じゃあない。
(菊地成孔)あのね、90年代以降の日本ミュージシャンが少し細い感じがするのは、駄盤出したら恥ずかしいしネットで叩かれると思って、駄盤が出せなくなっちゃったの。あの、大振りのめちゃめちゃな駄盤出さないとダメだよ。
(大谷能生)こういうジャケットのアルバム、出さなきゃダメなんだよ。とにかく、なんだか『ベルリン』っていうアルバムなんですけどね。これ。
(菊地成孔)いやー、清水靖晃さんね、いつがすごいか?っていうとさ、いまがいちばんすごいですよ。あのね、いま、私、映画の本を書いているんですよね。映画音楽の本。
(大谷能生)わかった!ええと、松本人志のやつでしょ?あれ、本当よかったよね!
(菊地成孔)あのね、『さや侍』っていう。
(大谷能生)『さや侍』でしょ!?『さや侍』の音楽でしょ?あれ、本当すごいよね!
(菊地成孔)ひょっとしたら黒澤明の当時の佐藤勝とかよりすごいの。清水さんの音楽。
(大谷能生)そうそうそう。あれさ、最後までクレジット見て。『さや侍』が傑作じゃないですか。映画的にも。基本的に。俺はすごい推してるの。『さや侍』は。で、最後、映画を見て清水靖晃って出てきて。『じゃあ、しょうがないな』って思ったっていうか。すごいんですよ。話が合うな、やっぱり(笑)。
(菊地成孔)あのね、俺はそこではっきり書いてるんだけど、本当にね、たとえば『隠し砦の三悪人』とかね、要するに黒澤・佐藤組っていうのはもう鉄壁のあれがあったのよ。で、もうぜったいに超えられないと。オーケストレーションを使った時代劇の音楽っていうのはさ。だけど、まあ完全に超えてるのね。
(大谷能生)そう。
(菊地成孔)『さや侍』のね、音楽は本当にすごい。
(大谷能生)本当にいいよ。
(菊地成孔)『さや侍』のDVDは買わなくていいから・・・まあ、買ってもいいけど。サントラは絶対に買った方がいい。あんなオーケストレーション書ける人、いまヨーロッパにもいないと思う。たぶん。そのぐらいいいんだよね。
(大谷能生)いいんですよ。あの、音楽の力、相当あれすごいよね。
(菊地成孔)いや、すっごいよね。びっくりしちゃったもん。
(大谷能生)よかった。俺、『さや侍』の話ができる人なんていないと思っていた(笑)。
(菊地成孔)(笑)。俺、いま『コンプリート松本人志 映画監督松本人志とは誰だったのか?』っていうテーマで『大日本人』から全部の、『R100』までまとめて書いた中で、まあとにかく『さや侍』の音楽は飛び抜けてすごすぎるっていう。映画史に残りますよ、あれ。本当に。
(大谷能生)そうか。靖晃さん、これ持ってくるなら、『さや侍』の持ってくるべきだったな(笑)。
(菊地成孔)これね、駄盤持ってきちゃって。
(大谷能生)これと、『北京の秋』と『さや侍』ね。
(菊地成孔)そうね。『北京の秋』、名盤だよね。
(大谷能生)超名盤。あれは。あれ、ポストモダンの先端ですよね。
(菊地成孔)いやー、『北京の秋』からどんだけアイデアをもらったか、わかんないですよ。
(大谷能生)本当に、そっくりですよ(笑)。
(菊地成孔)そっくりですよ。
(大谷能生)ここまで引っ張っておいて、『ベルリン』の1曲目から聞いてみましょうか。
<書き起こしおわり>
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