都築響一と堀雅人 MCニガリ a.k.a 紅い稲妻の魅力を語る

都築響一と堀雅人 MCニガリ a.k.a 紅い稲妻の魅力を語る dommune

都築響一さんと高校生ラップ選手権の構成作家 堀雅人さんがDOMMUNE『スナック芸術丸』で第六回、第七回チャンピオンMCニガリ a.k.a 紅い稲妻の魅力や成長について話していました。

(都築響一)あの、いままでね、ずいぶんいろんなキャラが出てきましたけども。第一回、第二回から第七回までね。ただの、僕たちの思うラッパーじゃないような人たちがいろいろ出てきましたけど。結論から言っちゃって、今回の第七回で優勝を果たしたこのMCニガリくんなんか、もっともあれですよね。高校生ラップ選手権が生んだスターの1人ですよね。

(堀雅人)あの、そうですね。僕らも思い入れを持っていて。で、ご存知の方、どれぐらいいるかわかんないですけど。ニガリっていうのは第三回の大会で。2年前に初めて応募してきた時点でラップ歴3ヶ月。

(都築響一)3ヶ月!?

(堀雅人)3ヶ月ですよ。で、いまはレベルが上がってきちゃっているから、なかなか3ヶ月で本戦出るっていうのはちょっと難しいかも知れないですけど。当時はそれぐらいで出れて。で、そん時に、とにかくこいつが度肝を抜かれたのは、長野の、どこだっけな?伊那市。行ったこととか・・・?

(都築響一)あります、あります。

(堀雅人)えっ、マジっすか?僕、ないんですよ。

(都築響一)はい。あの、高遠高校でしょ?高遠はね、桜が有名なの(笑)。

(堀雅人)あ、なるほど。

(都築響一)桜の季節のみ賑わうっていう(笑)。

(堀雅人)あ、僕、永福町に住んでるんですけど、駅にその高遠までのバスツアーっていうのが貼ってあって。『あ、ニガリんところだ』と思って。

(都築響一)ニガリんところって(笑)。覚えられるっていうね。そうなんですよね。その出身ってことでしょ?

(堀雅人)で、とにかく応募してきた時に、この話も何回かしてるんですけど。とにかく電車に乗ったことがないっていうね。

(都築響一)ほほう。

(堀雅人)電車に乗ったことがなくて、ええと、なんだっけな?で、ラップっていうのも始めて3ヶ月で。その時点で、なんか友達と一緒にカラオケに行ったらしいんですよ。で、カラオケに行ったら、友達がAK69かなんかの曲をカラオケで歌っていて。『なんだそれ?かっこいいじゃん!』って言って、『ラップっていうんだ』って言われたところで、家にあったお父さんと共用のパソコンに『ラップ』って入れるところから始まってるんですよ(笑)。

(都築響一)しかも、カタカナみたいな(笑)。

(堀雅人)いろいろ出てくると思うんですよ。サランラップとかね、なんかいろいろ(笑)。で、いろいろ出てきた中で般若のPVを見て、『うわっ!?』ってなっちゃって。そっからラップにハマッて。

(都築響一)すごいですね。それはあれですね。Googleの検索上位になっていたおかげですね。般若が(笑)。

(堀雅人)っていうことですよね。で、まあ最初に般若を見て、そこから頭狂いっぱなしって今回もなんか言ってますけど。そっから始まってチャンプになるまで。とにかくその、ものすごく上手くなってますからね。かっこいいし。

(都築響一)そうですよね。あの、僕がですね、この高校生ラップ選手権で好きなもののひとつがですね、NHKのさ、高校野球のアレみたいに・・・僕は高校野球自体はあんまり見ないんですけど。見てると泣いちゃったりすると思うから(笑)。

(堀雅人)(笑)

(都築響一)あの学校紹介がいいわけじゃん。

(堀雅人)ああ、そうですね。

(都築響一)学校紹介コーナー。っていうのと同じようにこれはさ、堀さんたちは各キャラクターっていうか出場選手のさ、紹介動画をすごい上手く作っていますよね。

(堀雅人)ありがとうございます。

(都築響一)あれ、結構気合入るっていうかさ。こんなやつなんだ!っていうのがわかると思うんだよね。で、今回はですね、第三回にニガリが出た時の最初の紹介動画を僕が持ってましたので、それをまずちょっと見てもらいたいと思うんですよ。すごいですよー、ちょっと見てみましょう。

(VTRナレーション)自宅からいちばん近いコンビニまで自転車で20分かかるというド田舎の・・・

(堀雅人)どう思います、これ?

(都築響一)コンビニまで自転車で20分。

(VTRナレーション)しかし、一度ステージに上がると・・・

(VTR MCニガリ )イエーッ!赤い稲妻 赤コーナー・・・

(堀雅人)赤い稲妻っていって全身真っ赤で来るっていうね。

(都築響一)すごいよね(笑)。これ、しかも第一試合でしょ?最初の。

(堀雅人)これ、そうですね。一回戦の大トリで出たんです。

(都築響一)『紅い稲妻』っていう名前自体ダサいもんね(笑)。

(堀雅人)だから、どうかな?と思って。だって、こんな雪深いところですよ。これ。

(都築響一)(笑)。高遠高校ね。

(VTRナレーション)昼休み、友人と向かったのは音楽室。ここでランチをとるのが憩いの一時。

(堀雅人)これ、1年ぐらい前ですね。

(VTR MCニガリ コメント)あまり、集団の中に、やっぱり・・・身を置くっていうのは苦手なものでして・・・あまりよく、まだ馴染めてなくて・・・

(都築響一)(笑)

(堀雅人)とにかく冴えないっていうね(笑)。

(都築響一)馴染めないって、もう2年だよね。これ、たぶん。

(堀雅人)この時、高2ですね。

(都築響一)高2ですもんね。

(VTR MCニガリと同級生の女子高生コメント)えっ?あんまり知らない。なんか、彼、女子苦手だって・・・

(都築響一)ラッパーなのに、女子苦手(笑)。

(堀雅人)もう女子、ニガリのことより自分がどう映るか?ってことしか考えてないですね。基本的には。

(都築響一)(爆笑)。そうだよねー。

(VTR MCニガリの学校の先生コメント)学校ではとてもシャイな子で。人前に出て派手なパフォーマンスができるっていうイメージがあまりなかったので。勉強、がんばってほしいです。

(堀雅人)もうとにかく勉強できないらしんですよ。

(都築響一)できないの?(笑)。

(堀雅人)できないっぽいんですよ(笑)。ニガリは、こん時に教室でラーメン食べていて。で、そのラーメンのツユを流しに捨てずにそのまま教室のゴミ箱に捨てたってことでクラスの女子から総スカンを食らっているっていう状態で。

(都築響一)(爆笑)。いいなー!あ、じいちゃんねー!

(堀雅人)おじいちゃん、名物キャラです。

(都築響一)おじいちゃん、いいですねー。この人ね。

(VTR ニガリのおじいちゃんのコメント)まあ俺も、歌は好きだもんで・・・

(都築響一)いいですねー。歌扱いされてますけどね。ラップもね。

(堀雅人)この後、おじいちゃんがどんぐらい歌が好きか?っていう話が始まっちゃったんで、このへんで(笑)。で、これはちょっと10分以上ある映像なんですけど。

(都築響一)そうですね。はい。これ、あれですね。これが最初ですよね。僕たちがニガリを知った。それからいろいろ、ひと皮もふた皮むけてですね、この間卒業式があったわけじゃないですか。

(堀雅人)はい。この春にニガリは高校を卒業して。だから今回、第七回がラストチャレンジだったんですね。

(都築響一)そうですね。で、高校の卒業の時の動画っていうのが・・・

(堀雅人)はい。YouTube上であると思います。で、ニガリはいまのが第三回出て、第四回でT-Pablowっていうね、いまZeebraさんのところで2WINっていうグループやっているチャンピオンがいて。川崎のものすっごい悪い子だったんですけど。で、彼とものすごい名勝負を演じたり。まあとにかく、名勝負製造機っていうような感じで。

(都築響一)名勝負製造機。いいですねー。

(堀雅人)出るたびに話題になる。で、第六回で優勝したんですね。ようやく。去年の秋ですけど。で、それでディフェンディング・チャンピオンとして迎えたのが今回の第七回で・・・

(都築響一)この、ニガリくんに限らず、キャラがあるわけですけど。こうやって、この子なんか特に僕が面白いなと思ったのは、もちろん瞬発的な返しの面白さはすごいんだけど。やっぱさ、これまでの僕たちの思うラッパー。子どもたちでも『ラッパーはイケてる』みたいなのがあるわけじゃないですか。

(堀雅人)はいはい。

(都築響一)ぜんぜんイケてないと。イケてない、女子力ないみたいなところから出てきてっていうね。それが・・・この子さ、般若のおかげでラップに出会わなかったらさ、どういう高校生になっていたのか?っつったら、あれですよね。あのまんま、音楽室で弁当を食っていたっていう地味な子になっちゃうよね。

(堀雅人)いや、本当に危ういところだったらしいですよ(笑)。

(都築響一)でしょ?だからそう思うと、すごく音楽との出会いって不思議だなって。

(堀雅人)で、たぶんヒップホップじゃなきゃこういう子って救えない、引っかかんないと思うんですよ。

(都築響一)そうだよね。だって、あれだよね。コミュニケーション苦手ってことはさ、バンドとかできないもんね。

(堀雅人)いや、絶対そうですし。なんて言うんですか?いま普通に世の中に流通しているロックを好きな男の子から、こういうよくわかんないやつってあんまり出てこないんじゃないかな?って感じがしちゃうんですよね(笑)。

(都築響一)そうね。やっぱさ、ロックが難しいところに来てると思うのは、まず1人じゃできないってことと、やっぱお金がかかるってことだよね。結局、楽器を買ってさ、それから練習スタジオをやらなきゃいけない。そういうのっていうのは、すごくこう、何もない子どもにとってはさ、障害となるよね。ひとつの壁っていうか。

(堀雅人)いや、そうだと思うんですよ。だって、お父さんとの共用のパソコンにカタカナで『ラップ』って入れるところから始まってるんですよ。

(都築響一)(笑)。本当だよね。般若に行くまで、どんぐらいサーチしたのか?っていう感じですね。

(堀雅人)そんで、お父さんとの共用のパソコンですから。たぶんね、いろいろエロ動画とか見てたと思うんですよね(笑)。

(都築響一)ああー、はい。

(堀雅人)で、ラップを始めたばっかの時って、部屋で見よう見まねでラップ始めているところを1回おじいちゃんに見つかって。ものすごい恥ずかしくて。ラップを辞めようかっていうところまでいったんですって(笑)。

(都築響一)ええーっ!?(笑)。おじいちゃんに見つかったから、恥ずかしかったの?女子とかじゃないのね。

(堀雅人)で、それを乗り越えて、いまチャンピオンになってますから。あ、これですね。これ、いまニガリのこの春の高校の卒業式ですね。

(都築響一)はい。じゃあこれをちょっと・・・これが2年後のニガリの。

(堀雅人)はい。この春ですよ。

(VTRナレーション)ニガリはこの日もクロックスで登校・・・

(都築響一)クロックス(笑)。

(堀雅人)もうクロックスはね。ちょっと太った・・・

(VTRナレーション)思えば1年前、印象が薄かった。しかし、卒業式を終え、帰宅しようとするニガリの元には・・・

(VTR 後輩女子高生)サインください!

(VTR MCニガリ)はい。本当っすか!?

(都築響一)おおーっ!!

(堀雅人)どうですか?どうですか、このラージな感じ?(笑)。

(都築響一)夢があるねえ!

(堀雅人)ヒップホップドリームでしょ!これ。

(都築響一)そうね(笑)。

(堀雅人)すごいですよ、これ。

(都築響一)いや、そうですよね。

(VTR 後輩女子高生)はい、チーズ!

(VTRナレーション)写真を撮られるまでに。

(堀雅人)結構ね、かわいい子がね。

(都築響一)ああ、そうだよね。

(VTRナレーション)ニガリの印象を聞いてみると・・・

(VTR 後輩女子高生)かっこいいです。かっこいいって言ってる人は結構います。

(堀雅人)おっ!

(都築響一)おおーっ!!

(VTRナレーション)高校生ラップ選手権に4回も出場したいま、学校で知らない人はいない存在までになった

(都築響一)すごいことになりましたね。これは。

(VTR 高校の先生コメント)ニガリくん、僕、見ました。YouTubeで。こんな才能があるとは思いませんでした・・・

(堀雅人)放送で見てくれ!って話なんですけど。

(都築響一)(笑)。勉強に活かせよ!みたいな感じですけどね(笑)。

(VTRナレーション)高校生ラップ選手権でのニガリの姿を見て憧れ、同じ学校に進んだ下級生の姿も・・・

(都築響一)ニガリに憧れて入ってくると!高遠高校に。

(堀雅人)だから、さっき見た、2年前のチャリンコ漕いでたやつが、いま長野にヒップホップコミュニティーを作るぐらいになっているんですよ。

(都築響一)すごいですね!だって、クルーができたってことでしょ?これ。

(堀雅人)そうです。地元に行くと、すごいんです。

(都築響一)そうですよね。ファッションセンスって、どこ?憧れるとこ?

(堀雅人)これね、ちょっといま後輩にディスられたんですよ。軽く。で、将来はラップでやるっていう決意をね。いま。ってな感じの高校卒業式だったという感じですかね。

(都築響一)素晴らしいですね。これはまさにヒップホップドリームを体現しましたね。この後が大変でしょうけど。でもさ、この後どれぐらい売れるか?よりさ、友達いなかった高校生活がこれで一変した。女子からサインを求められるまでになったっていうのは、人生最大のジャンプだよね。これね。

(堀雅人)本当にそう思う。ニガリはとにかく、まあみんな高校生はラップ好きで来るんですけど。ラップ以外のものがないっていう感じの・・・

(都築響一)素晴らしいですね。素晴らしいのかなんだかわかんないですけど(笑)。困ったことかもしれませんけど。

(堀雅人)とにかくその切迫感というか、切実な感じっていうのがやっぱり段違いっていう感じがね、しますね。

(都築響一)ああ、そう。他さ、そういうことをいま、あんまわかんないもんね。だってさ、ファッションでそういうことがあるか?っていうとさ、そうじゃないじゃない。もうさ、洋服命みたいなやつはあんまりいないわけだしさ。

(堀雅人)そうですね。

(都築響一)アニメとか、そういうことになると思うけど。やっぱ、ラップもこう、それしかないところにすがりついていくことで、なんか開けていくっていうのはすごいありますね。

(堀雅人)そうですね。

(都築響一)だって、電車にも乗ったことがなかった子でしょ?

(堀雅人)(笑)。そうですね。何回も言いますけど、本当なんですよ、これ。

(都築響一)本当だよ。最寄りのコンビニまでチャリで20分の子でしょ?

(堀雅人)本当ですよ。しかも、ええとね、最寄りのコンビニまで20分かけて行って、ミニストップ的なちょっといまいちなやつなんですよ(笑)。

(都築響一)(笑)。ああ、そうなんだ。

(堀雅人)はい。セブンイレブンとかじゃねーんだっていう感じの(笑)。

(都築響一)ああ、メジャーじゃなかったみたいな。そうか!それがね、みんながね、ニガリくんがいるからここ学校に入りたい!っていう感じになって。

(堀雅人)本当ですよ。だから、毎回その高校生ラップ選手権の前にオーディションをやるんですね。東京と大阪でやって。

(都築響一)すごい来るんでしょ?だって。

(堀雅人)来ます、来ます。で、いままで東京1日、大阪1日で済んでたんですけど。第七回は東京2日やらないと収まらなくて。

(都築響一)何人ぐらい来るの?

(堀雅人)総勢で400以上500弱ぐらい?

(都築響一)すごいですね。

(堀雅人)まあ、ふるいに落としたり、来なかったりするんですけど。

(都築響一)来なかったり(笑)。

(堀雅人)そう。高校生ですからね(笑)。そのへん、気まぐれは多いんですけど。

(都築響一)ああ、親から怒られるかもしれないしね。

(堀雅人)そうそうそう。お金かかるし。でも、確実に300人くらい生で、これぐらいの距離でラップを聞くんですけど。そういう中で、ニガリの背中を見て始めたっていう長野の子は結構多い。

(都築響一)そうなんだ!すごいね。

(堀雅人)で、長野グループみたいなのが来て。そのオーディションでバトルをしてもらうんですけど、長野同士が当たったりするんですよ。そうすると、その場でバトルをし始めるんですけど、『俺の方がニガリさんのことを好きだ!』みたいな(笑)。

(都築響一)(爆笑)。熱いっすね!

(堀雅人)『俺はニガリさんに認められた』みたいなことで。なんか、知らねえわ、それ!っていうような(笑)。バトルを目の前でものすごい熱量でやるっていう。

(都築響一)男組ですね。それ。ああそう。でもさ、そういう風になってきちゃったっていうのは面白いね。

(堀雅人)なんか面白いです。はい。

(都築響一)要するに大人のラッパーたちの間ではないわけじゃない。そんなものはさ。もちろんさ、同じ地域の仲良しはいっぱいいるけど。ぜんぜん違うものね。そういうものとね。

(堀雅人)こいつがゼロから作っているっていうのがすごいですよね。それなりに先輩がいてっていう中で、あるものだと思うんですけど。ヒップホップのコミュニティーって、それぞれ。

(都築響一)だって、あれでしょ?カラオケボックスで初体験したわけでしょ、ヒップホップ。すごいよねー。お父さんのパソコンで。

(堀雅人)本当です。

(都築響一)すごいですよね。まあ、ニガリの話ばっかりしててもしょうがないんですけども(笑)。

<書き起こしおわり>

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