町山智浩 ゼロ・グラビティとディカプリオがアカデミー賞を逃した理由を語る

町山智浩 ゼロ・グラビティとディカプリオがアカデミー賞を逃した理由を語る たまむすび

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。2014年アカデミー賞で作品賞と主演男優賞を逃した候補、『ゼロ・グラビティ』とレオナルド・ディカプリオについて、その理由をこのように語っていました。

(町山智浩)なんだ、その終わり方!?っていう。昔、そうですよ。結構。えーっ!?みたいな。そういう時代に大部屋俳優さんだった人たちとかは、いまも投票権を持ってるんですよ。なんと。組合員っていうのは基本的に終身会員なんで。だからどんどんどんどん、年齢上がってるんですよ。アカデミー賞って。組合を辞めない限り、死ぬまで投票権を持ってるんですよ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)だからいま、投票者の平均年齢って60才以上。

(山里亮太)じゃあそのせいで本当は面白かった映画が、よくね、そっちの世代が上の人にしかわかんないやつしか取れないって。

(町山智浩)それはあるんですよ。だから、今回ね、ゼロ・グラビティが作品賞を取らないって言われたのは、ああいう宇宙ものの映画で取ったことって1回もないんですよ。いままでアカデミー賞って。

(赤江・山里)ふーん!

(町山智浩)それはその、投票者の年齢が結構、60才以上ってことがあるんじゃないかと。宇宙とか一生行かないし、関係ねーや!っていう(笑)。

(山里亮太)(笑)

(赤江珠緒)まあ、そう言っちゃったら、たしかにね。

(町山智浩)思ってるんじゃない?宇宙、嫌いみたいなんですよ。もう。

(山里亮太)リアリティーがないし。宇宙なんて。

(町山智浩)そう。宇宙なんか知らないし。よく。興味がないからね、宇宙映画はなかなか取らないんですよ。

(山里亮太)じゃあもう、アカデミー会員向けに。年寄り向けのを撮ったりとか。

ディカプリオがアカデミー賞をとれない理由

(赤江珠緒)じゃあ、ディカプリオさんも。取らないって言われていて、今回も取らなかったじゃないですか。

(町山智浩)ディカプリオはね、本当に、一生懸命アカデミー賞取れるような映画を一生懸命、自分でプロデュースして。作ってるんですよ。で、どの映画も結構俳優としてはすごいんですけども。ぜんぜん、ノミネートもされなかったりするんですよね。

(山里亮太)なんでなんですか?

(町山智浩)わからない。嫌われてるのかもしれない。だから、俺が思うのは、見た目ではわからないから、なんか裏でディカプリオ、怒られるようなことをやってんじゃないかと思って。なんか、会員の彼女を取っちゃったりとか。

(山里亮太)それぐらいで!?

(町山智浩)いや、わからない。だって、変だもん。表面に出てこないんだもん。ディカプリオの嫌われる理由って。

(山里亮太)町山さんから見ても、演技とか出てる映画も・・・

(町山智浩)すごいですよ。

(赤江珠緒)今回もね、華麗なるギャッツビーはね。衣装デザイン賞は取ってますね。

(町山智浩)衣装デザイン賞取ってますね。彼の周りでどんどんアカデミー賞は持っていかれて。彼だけは取れないっていうのがずっと続いてますよ。で、今回は取れるんじゃないかな?と。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で。でもまあ、マシュー・マコノヒーがダラス・バイヤーズクラブでもう、鬼気迫る。体重を限界まで減らして、骨と皮になってエイズ患者を演じたんで。それに比べるとちょっとディカプリオは逆で。ウルフ・オブ・ウォールストリートっていうのは高級な食べ物を朝から晩まで食べて、コカイン吸って、女の子は見たのを全部ヤってって。楽しさの限りを尽くしてますから。それと限界まで痩せる、餓死寸前まで頑張った人と、限外まで楽しいことをしてる人と争ったら、それは楽しいことをしている人は取れないでしょう。

(赤江珠緒)それは、そうですね。

(町山智浩)どう考えても。

(山里亮太)楽しいという役をやっただけであって。めちゃくちゃ楽しんでいたか?っていうと・・・

(町山智浩)いや、わかんないけどね!でも、見た目楽しそうに見えるじゃないですか。あんななんか3時間・・・見ました?

(山里亮太)僕、まだ見れてないんですよ。

(町山智浩)とんでもないですよ。3時間、ずっと悪いことをしてるだけですよ。ディカプリオは。もう、ありとあらゆる悪いこと。殺人以外、ほとんどやってますからね。すごいことになってますよ、本当に!それを見て、『この人に賞をあげよう』と思うか?っていうと、やっぱり一生懸命食べないで頑張っている人にあげようかと思いますよ。

(山里亮太)メッセージ性も強いし。

(赤江珠緒)実際に、マシュー・マコノヒーは・・・でも賞に出てこられる時はだいぶ戻ってらっしゃいましたね。

(町山智浩)でも、まだだいぶ痩せてます。昔はもっと筋肉モリモリだった感じなんで。で、自分でインタビューとかで言ってましたけど、『昔はバカ俳優だと思われていた』と(笑)。

(山里亮太)へー!

(赤江珠緒)あ、そうなんですか?

(町山智浩)マッチョのね。ラブコメに出ては、要するに腹筋を見せびらかして。で、やたらとシーツの下から裸で出てきて、『どう?昨日はどうだった?』みたいな感じの役ばっかりやっていた。要するに女の子のファンを集めるラブコメのハンサム役者としてやってたんですけども。やっぱり、まともな俳優と思われてなかったと。で、特に裸でボンゴを叩いてですね、警察に捕まった事件とかですね。間抜けな事件が多くて。

(山里亮太)それ、実際の生活?

(町山智浩)実際の生活。あの、ほとんど裸族なんですよ。マシュー・マコノヒーさんは。しょっちゅう全裸事件を起こしたりとか。ジョギングをする時、かならず上半身裸で走っているんで。珍しくない。ハリウッドスターって普通、珍しいじゃないですか。存在自体が。でもこの人は、ハリウッドをですね、パンツ1枚でしょっちゅうジョギングしてるんで、ぜんぜん珍しくない。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)ありがたみのあまりない人なんですけども。そういうような感じで、ちょっとみんなから笑われていた。でも、最近はすごいいい芝居ばっかりして。ガッツリ賞を取っていったっていうね。やっぱりね、40になるとね、ハンサム役者とかそうなんですけど、壁があって。そこでいい俳優になるための、すごく真面目な役っていうのをきっちりやって見せないと、その後、40を過ぎるとやっぱり・・・ハンサム役って来ないじゃない。2枚目役ってそんなに来ないですよ。もう。それは30代の人に持ってかれちゃうわけですよね。で、仕事なくなっちゃうんですよ。そういう俳優って結構いっぱいいて。ジュード・ロウとかですね、コリン・ファレルって30代はハンサム役者で、2枚目役者として人気あったんだけど、40代で失速しているのはそういう映画に出損ねたからなんですよ。

(山里亮太)あー、たしかに。ジュード・ロウって俺でも知ってる。

(町山智浩)演技派に転向しなきゃいけなかったんですよ。で、ディカプリオはそれを必死にやろうとして、演技派転向のための努力をいっぱいしてるんですけど。全然ダメだったの。それでもう、あまりにもダメなんで、何度も引退宣言をしてるんですよ。

(赤江珠緒)そうでしたね。

(山里亮太)そうそう。言ってましたね。もう辞めるって。

(町山智浩)だって、一生懸命いくらやっても、ぜんぜんノミネートされないから。もうふざけんじゃねえ!辞める!みたいなことを言ってるんですけど。今回、面白かったのはアカデミー賞のプレゼンターの最初の方で、ジム・キャリーが出てきたんですよ。で、ジム・キャリーが『みんな一生懸命やってるね。俺はアカデミー賞にノミネートされようとする努力なんて、もうやめたよ』って言ってるんですよ。

(赤江珠緒)あ、ジム・キャリーは。

(町山智浩)ジム・キャリーが。ジム・キャリーは1990年代から2000年代の初めにかけてものすごくシリアスで、渋い映画にいっぱい出てですね。『トゥルーマン・ショー』とかですね、『マン・オン・ザ・ムーン』とかですね。演技派としての地位を確立しようとしたんですけども、アカデミー賞で全く相手にされなかったんで、『もうそういう真面目な映画には出ない!』っつって、出なくなったんです。

(赤江珠緒)あ、そうなんですか!

(町山智浩)『だからもう俺はそういうのは飽きたから』って。あれはディカプリオに対するメッセージですね。『お前も俺と同じで、嫌われてるから』って。『諦めたほうがいいぞ』って。

(赤江珠緒)なるほどね。

(山里亮太)ジム・キャリーと言えば、コメディーの方ですもんね。

(町山智浩)はい。でもこのアカデミー賞でいちばん見ものだったのは、『アナと雪の女王』っていうアニメーションのテーマソングなんですけど。いま、かけてもらってるんですけども。あれをね、舞台でやったのは初めてなんですね。すごい歌で、大大大ヒットしてるんですけど。『Let It Go』っていう歌なんですけど。ものすごく難しい歌なんで。これ、歌手の人もブロードウェイの歌手なんですけど、フルコーラスを歌ったのは今回のアカデミー賞が初めてだったんです。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)っていうのはね、どんどんどんどん上がっていくんですよ。音が。

(赤江珠緒)キーが。

(町山智浩)そうそう。で、最後ものすごいキーになるんですけど、歌いきったんですね。だからね、会場全員ね、スタンディングオベーションでしたけどね。これは聞きものなんでね。はい、ということですけど。

(赤江珠緒)はい。『アナと雪の女王』ね。今日は第86回のアカデミー賞の総まとめを町山さんにしていただきました。

<書き起こしおわり>


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