上野友行 現代ヤクザの謝罪方法「寝下座」を語る

上野友行 現代ヤクザのSNS事情を語る dommune

漫画『闇金ウシジマくん』の取材協力などでも知られるライターの上野友行さんがDommune『スナック芸術丸』に出演。都築響一さんとヤクザ流の謝罪方法「寝下座」について話していました。

(都築響一)でも、それでじゃあいったいどんなことが(著書『ヤクザライフ』に)書いてあるのか? みなさん、Amazonでポチる前にお話いただきたいんですけども。僕は最初のエピソードからすごい掴まれたんですよね。それをちょっと教えていただけますか?

(上野友行)ああ、プロローグですか?

(都築響一)テレビのロケで行った時に……っていう。

(上野友行)ああ、そうですね。よく、自分も番組に出させてもらうこともあるんですけど。

(都築響一)どんな番組に出すんですか? 上野を。

(上野友行)いやいや、最近そんな番組増えてるじゃないですか。

(都築響一)あ、そうなの?

(上野友行)だし、芸能人が薬物で捕まったりしたら、まあ僕ですよ(笑)。

(都築響一)ああ、まあ僕ですか(笑)。

(上野友行)しゃべれるやつ、いないですからね。

(都築響一)リアリティーを知らないから。

(上野友行)そうですね。で、そういうヤクザを取材しなきゃいけないことがあって。ある土地にクルーを連れて取材に行ったら、もうテレビ番組のテレビクルーって天才的なやつらで。本当に一瞬目を離したらすぐに絡まれるんですよ(笑)。

(都築響一)絡まれがちっていうことね(笑)。

テレビの取材クルーが絡まれる

(上野友行)ほんの一瞬ですよ。そしたら、「おう、誰に断ってやってんだ?」みたいな。したら、僕が戻ってきて「おっ、絡まれている」と思って話したら、思いっきり知ったところの人間だったんですね。

(都築響一)ああ、知った組のっていう?

(上野友行)そうですね。で、そのことがあったんですけど、それはすっかり忘れていてというか。その日に、結局取材に行きましたよね。キャバクラに案内されたんですけど、そしたら若者3人組がですね、地べたに3人、こうやって伏せていてですね……

(都築響一)「気をつけ」の姿勢で(笑)。

(上野友行)「気をつけ」の姿勢で。

(都築響一)伏せしてるんだ。

(上野友行)伏せって。で、「先ほどは失礼しました!」と、みんなで言ってるんですよ(笑)。

(都築響一)でも、あれですよね? 床に顔が付いているんですよね?

(上野友行)そうです、そうです。で、結局その案内してくれたヤクザに「いったいこの人たちはなにをしてるんですか?」と言うと、「いや、これは寝下座と申します」と(笑)。

(都築響一)寝下座(笑)。

(上野友行)「土下座ではなくて、寝下座。土下座の最上級の土下座でございます」「本当ですか? でも、寝下座はいいけど、ちょっとまあやめさせてくださいよ」と。

(都築響一)恥ずかしいしね。

(上野友行)そうそう。で、「どうしたんすか?」って聞いたら、「こいつら、昼間上野さんたちに絡んだんでしょ?」と。でも、結局向こうは別に俺がいるとも知らなかったし、ヤクザとしての仕事を全うしたわけじゃなですか。

(都築響一)まあ、そうですよね(笑)。

(上野友行)「誰に断って」って、まあそういう仕事ですよね。

(都築響一)潜入者をね。

(上野友行)なんで、「ちょっとやめさせてくださいよ」って言ったらですね、思いっきりその若い衆たちの顔に落書きがしてありましてですね。左のやつのデコに「詫」。右のやつに「謝」。で、真ん中のやつに「ようこそ○○へ」って土地の名前が……(笑)。

(都築響一)(爆笑)

(上野友行)まあまあ、そういうコントですね。

(都築響一)なるほど。体を張ったコントですね。

(上野友行)そうですね。散々やってくれますからね。まあ、そういうことが日々……

(都築響一)それは、やっぱりパフォーマンスでもあるわけ?

(上野友行)パフォーマンスでもありますね。で、寝下座自体はもう3回も4回も見たことがあって。忘れもしないですね。

(都築響一)えっ、そんなのあるの?

(上野友行)あります、あります。忘れもしない、前回(Dommuneに)出る前の日、ちょっと北関東で取材をしていたんですけど。まあ、ずっぽりハマりましてですね。昼までずっと飲まされてですね。そのままここに収録に来たんですけども。

(都築響一)そうだったんだ。

(上野友行)その日がちょうど寝下座の日でしたね(笑)。

(都築響一)(笑)

(上野友行)三軒目のキャバクラくらいで。

(都築響一)そうなんだ。上野くんがしたわけじゃないよね?

(上野友行)僕はしてないっすよ(笑)。まあ、向こうが。ちょっとしたパフォーマンスというか。

(都築響一)寝下座。でもさ、上野くんも取材で会うわけじゃないですか。それからクルーもいると。で、やっぱり外から来る人に対するサービスでもないけど……

(上野友行)そうですね。その通りです。やっぱり、「おもてなし」ですよね。

(都築響一)おもてなしですか?(笑)。ヤクザ流の。

(上野友行)そうそうそう(笑)。来てくれたんで、ありがとうございますと。で、やっぱり特に地方の人にはそういう傾向が強いですよね。

(都築響一)そのヤクザのおもてなしっていうのは寝下座の他に特徴は? たとえばどういうのが……

ヤクザ流おもてなし

(上野友行)いや、もう接待の基本なんで。まあ、「上から下まで」っていうやつですよね。要するに、メシを食わせて、キャバクラ行って、最終的に女をつけられるんですけど。女をつけられるのはうれしいんですが、確実に僕の性癖とか伝わっちゃうじゃないですか(笑)。

(都築響一)まあ、そりゃそうですよね。

(上野友行)その後。だから、あんまり持って帰りたくないんですよね。

(都築響一)そうですよね。なんかね、「女装したいんだけど」とか言えないですよね。それは。

(上野友行)そうですね(笑)。その後、絶対に筒抜けになっちゃうんで。「ちょっとやめてくれ」って言うんですけど。

(都築響一)ああ、いちばん下はちょっとマズいと。

(上野友行)そうですね。まあ……だいたいヤリたい気持ちはないでもないんですけど。

(都築響一)だけど、あれですよね。ちゃんとそういう……まああんまりね、サービスに乗っているのもどうかと思うんですけども。やっぱりでも、そのへんのやることによってあっちもサービス精神だろうし、上野さんの方もたとえば読んでいて思ったのは、そういう寝下座のシーンを見ることによって「この組の組長とか上の方が下にどのぐらい怖がられてるのか?」とかいろんなリアリティーがわかるっていうところもあるわけですよね?

(上野友行)そうですね。その関係性もよくわかるし。やっぱり親分はみんな調子のいいことを言いますから。でも実際に街のやつに聞いたらその組は本当にバカにされていたりとか。むちゃくちゃあるわけですよ。

(都築響一)なるほどね。

(上野友行)それはもう親分の話しか取材しない人がいままでそういうヤクザ本っていうのを作ってきたと思うんですけど。

(都築響一)実話系のやつね。

(上野友行)ここ(『ヤクザライフ』)に本当のことが書いてあるんで。

(都築響一)なるほど! だけど、親分の話だけじゃわからないっていうのは、たとえば子分の方も親分に全てを語っているわけじゃないっていうのもあるわけですよね?

(上野友行)ああ、もちろんですね。もういまは、全部隠しますから。

(都築響一)いまは全部隠す?(笑)。

(上野友行)ええ。自分が金を持っているってわかると全部組から吸い上げられるんで。なんで、もう自分がなにをやって稼いでいるとか絶対に言わないですね。

(都築響一)ああ、そうなんだ!

(上野友行)で、この中の描写で出てくるんですけど。親分の前でつける時の時計はこれ、とか。わざと安いのに変えたりとか。わざわざ、本当はベンツに乗っているのをプリウスに乗り換えて事務所に行きますから。

(都築響一)(笑)

(上野友行)「しまった! 乗り換えなきゃ」とか言って(笑)。

(都築響一)そうなんだ!

(上野友行)でも、そのぐらい本当にやります。

(都築響一)世代の断絶というか、あれですね。親子関係みたいなものはあるわけですね。

(上野友行)そうですね。なんで、親分の取材だけしてもしょうがないんですよ。何も知らないですから。

(都築響一)なるほどね。

(上野友行)でも、紹介されるのは上から紹介されるのが基本なんですけど。そうしないと面倒くさいですから。

(都築響一)うんうんうん。そういうシーンも現場で付き合っているからこそ見えるっていうことですね。

(上野友行)そうですね。率先して自分がバカなところを見せて。「ああ、こいつにならなんでも見せられるな」と(笑)。

(都築響一)バカなことを見せるって、上野くんが見せてるの??

(上野友行)まあ、いちばん酔っ払ってますからね(笑)。取材現場で。

(都築響一)(笑)。でも、それはあれですよね。酒というものがないと飛び込んでいかないですね。

(上野友行)そうですね。あんまり酒がないところで取材した記憶がない(笑)。

<書き起こしおわり>
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