HIPHOPの生き字引 足立区綾瀬もつ焼き『やまざき』女将レポート

HIPHOPの生き字引 足立区綾瀬もつ焼き『やまざき』女将レポート Cwave

DJのアボカズヒロさんとラッパーの丸省さんが2015年10月にCwave『らっぷの時間。』の中で足立区綾瀬のもつ焼き屋『やまざき』の名物女将をレポート。元ディスコクイーンでヒップホップの誕生からシーンを追い続けているやまざきのママにディープな話を聞いていました。

(丸省)ちょっとね、俺たちがこの番組初のロケをしてきたんでね。足立区のヒップホップストリートニュース。よかったらみんなで見てください。行きましょう!

(ロケVTRが流れる)

(丸省)はい、どうも。丸省です。今日はね、足立区の綾瀬に来てるんですけども。なんとこの足立区にヒップホップ居酒屋があるという情報を仕入れたんで。今日はちょっと、探索しに来ました。

(アボカズヒロ)チェックしに来ました。

(丸省)行ってみましょう!

(店内に入る)

(アボカズヒロ)(乾杯)。なんか、見た感じ普通の居酒屋で。どこらへんにヒップホップ要素があるのかって、まだ、ねえ。

(丸省)ガセネタだったんですかね?

(映像にママが見切れる)

(丸省)ちょっ、ちょっと……いま見ました? 映りました、いま?

(アボカズヒロ)なんかね、いま、パブリック・エナミー(Public Enemy)の顔(のTシャツ)が見えましたよ。

(丸省)見ましたか?

(アボカズヒロ)たしかに、ありますね。ヒップホップ要素。

(丸省)これ、話しかけてみたいですけどね。なんか、注文しましょう。

(中略)

『やまざき』のママにインタビュー

(丸省)あの、ヒップホップはお好きなんですか?

(やまざきのママ)あ、大好きです。はい。

(丸省)ああ、そうですか。パブリック・エナミーの、ねえ。

(やまざきのママ)これは、パブリック・エナミーが東京に来た時に見に行きましたし……

(丸省)おおーっ!

(アボカズヒロ)ヒップホップを聞き始めたのは?

(やまざきのママ)聞き始めたのは、もう最初からです。

(丸省・アボ)最初!?

(やまざきのママ)ソウルから。70年代もちょっと、アフリカ・バンバータ(Afrika Bambaataa)みたいに。

(アボカズヒロ)アフリカ・バンバータ!

(やまざきのママ)だから本当に最初、やっぱりソウルじゃないですか。ディスコ・ミュージック。それから、ラップを初めて聞いたのが、やっぱり70年代かな? カーティス・ブロウ(Kurtis blow)とシュガーヒル・ギャング(The Sugarhill Gang)。それで六本木にウィナーズっていうレコード屋さんが。そこで私、いつも、そういうのが出ると買いに行っていたの。

(アボカズヒロ)へー! あ、順番が前後しますけど、お名前を……

(やまざきのママ)あ、山崎由紀子と申します。

(丸省)あの、ここでは何と呼ばれているんですか?

(やまざきのママ)でもみんな、「ママ」とか、「おかあさん」とか呼ばれてますね。

(丸省)ちなみに、日本語のヒップホップだったりは?

(やまざきのママ)あのね、本当にね、聞かないの。聞かないんですよ。

(アボカズヒロ)逆に海外ものっていうか、いわゆる現地のものだと、いちばん好きなのは?

(やまざきのママ)いちばん好きなのは、ノーティ・バイ・ネイチャー(Naughty By Nature)。

(丸省)ハンパじゃないな!(笑)。

(やまざきのママ)で、日本に来る、来るって言って、何度も騙されて。チケットを買って、オバケで。

(丸省)オバケ(笑)。

(やまざきのママ)いちばんは川崎のチッタまで行って、でもやってないんですよ。払い戻しみたいなのをしたくても、その会社ももうないの。

(丸省・アボ)(笑)

(やまざきのママ)それで、やっと見れたのが渋谷のオンエアーで。そこでノーティ・バイ・ネイチャーを見れたの。

(アボカズヒロ)何年ぐらいでしたっけ?

(やまざきのママ)それね、たぶん1990……20年は絶対にたっている。

(アボカズヒロ)ブラックカルチャーにどっぷりだったんですね。

(やまざきのママ)そうですね。だから、いつも黒いの。これ、化粧なんですよ。日焼けしてるわけじゃないの。もう何十年って、ファンデーションとかを全部自分で配合して。

(アボカズヒロ)ええーっ!?

(やまざきのママ)配合して、黒い……要するに、キレイだなって思う女性がだいたい黒人の方なので。そういうのを目指して。

(アボカズヒロ)なるほど!

(やまざきのママ)それでやっぱり、ゴールドとかも絶対にやるじゃないですか。だからなるべく、1年中黒いんですよ。

(アボカズヒロ)なるほど。ディスコクイーン時代の……

(丸省)話が聞きたいですよね。

ディスコクイーン時代のママ

(やまざきのママ)ディスコクイーンの時。それはまたね、70年代だから、本当にもう、ソウルじゃないですか。で、前に『ソウル・トレイン』が全盛期の頃だからね。それで、日本でもそういう『ソウル・トレイン』みたいなダンサーのチームを作りたいって、その頃ね、ディスコ協会の会長、ドン勝本って。

(アボカズヒロ)ドン勝本さん。はいはい。

(やまざきのママ)で、ドン勝本がいて、みんな知らないんだけど、六本木に『アフロレイキ』っていうお店があって。私がそこでいて。そこがポシャったら、綾瀬に来たんですよ。綾瀬のいまの土間土間に……

(アボカズヒロ)えっ、マジで?

(やまざきのママ)そっくり。従業員から全部、来たの。それで、糸居五郎さんっていう方が毎週金曜日に……

(アボカズヒロ)はいはい。「Go Go Goes On!」っですね。

(やまざきのママ)全部ラジオでやっていて。そこに、ドン勝本さんが、結局全国のディスコで探していたらしいの。スカウトで。で、スカウトされたんですよ。

(丸省)マジですか!? ヤバい!

(やまざきのママ)女性5人、男性5人。ディスコ全国を回って。でも、ちょっとお断りしちゃったんですけどね。

(アボカズヒロ)でもやっぱり、ソウルの歌とかファンクネスとかがあると思うんですけど。そこから、ヒップホップっていう表現が出てきて。前例がないわけじゃないですか。そこから、同じブラックミュージックではあるけれども、だいぶ違ったじゃないですか。バーン!って出てきた時に、すぐに乗れたっていうか?

(やまざきのママ)乗れた乗れた。

(アボカズヒロ)どういう印象を受けました?

(やまざきのママ)いやでも、全然違和感がなかった。フッと入ってきた。なんか全然違うあれだっていう感覚はなかったね。もうすぐね、入ってきました。うちにあるのは、その本当にリアル世代の時に買ったTシャツなので。ボロボロで、もう穴あいてるけどさ。

(アボカズヒロ)結構なお宝があるんじゃないですか?

(やまざきのママ)これ、結構お宝になっているみたい。ネットで見たらね、これ、結構値段上がっていた。

(丸省・アボ)おおーっ!

(やまざきのママ)あとね、LL・クール・J(LL Cool J)のもね、結構上がっていた。

(丸省)ちなみに、何枚ぐらい?

(やまざきのママ)たぶんね、うーん。80から100ぐらい。で、劣化してダメになったのはあるけど。80から100ぐらいはあるんじゃないかな。若い人はさ、2パック(2Pac)とかが亡くなってから好きになった人とか、多いじゃない? ビギー(The Nortorious B.I.G.)とかもそうだけど。だから結構、「リアルタイムってどうだったんですか?」みたいな、そんな話も若い子と。18、9の子なんて、ほら。ねえ。

(アボカズヒロ)おおー。当時って、ネットとかがなかったじゃないですか。どうやってそういった情報を見つけたりとか?

(やまざきのママ)昔はね、やっぱりだからDJの子たちが全部そういうのを仕入れてきて。で、「今度はこういう曲があって……」って、聞かせてもらったりしてたんだよね。それで、「うわっ、これいいな」とか。その時はネットとかじゃない。あと、雑誌みたいな、そういう専門雑誌が。

(アボカズヒロ)『ブラック・ミュージック・レビュー』とか。

(やまざきのママ)そう。そういうので私、見ていて。

(丸省)『blast』に載ってもおかしくないような対談じゃないですか、これ。まさかの(笑)。

(やまざきのママ)いえいえいえ。なんかもう、大したお話じゃないんですけどね。

(アボカズヒロ)カラオケとか、行かれます?

(やまざきのママ)カラオケ、行きますけど。

(アボカズヒロ)何を歌いますか? カラオケで。

(やまざきのママ)カラオケはね、いろいろ歌いますよ。演歌も歌えるし。声の質からすると、やっぱりAIの『Story』が結構。

(丸省)なるほど!

(やまざきのママ)それか、鈴木聖美。

(アボカズヒロ)鈴木聖美! 鈴木聖美も、ビッグシスターですからね。

(やまざきのママ)まあ、鈴木雅之をこういう世界にアレした人だから。

(丸省)なるほど!

(アボカズヒロ)ちょっとみんなで、ブラックミュージックの話をしましょう。ここで。ママと飲みながら。

(やまざきのママ)だから基本的には、金・土はちょっと忙しいので。平日だと落ち着いて私もね、こういう話ができるので。もし、よろしかったら今度。ぜひ。

(アボカズヒロ)定休日は?

(やまざきのママ)日曜、祭日はお休みになっちゃうんで。ぜひ。

(アボカズヒロ)すいません。お忙しいところ、ありがとうございます。

(丸省)ありがとうございました!

(やまざきのママ)どうもありがとうございます。

(中略)

(店を出て……)

(アボカズヒロ)噂は本当でしたね。

(丸省)この土地にも、ヒップホップはあったっすね。

(アボカズヒロ)あのオールドスクールの生の話は本当にヤバかったっすね。

(丸省)本物があった! もつ焼き『やまざき』。綾瀬の駅の高架下にあるんだけども。

(アボカズヒロ)平日とかだったら、いくらでもそういうブラックミュージックの話、してくれるっていうことをおっしゃっていたんで。ママが。

(丸省)生き字引の話が聞けるということで。この店は要チェック!

(アボカズヒロ)特に若手の方に来てほしいですね!

(スタジオトークに戻る)

(COPPU)すごいインパクトでしたね。

(太尊)御年、あれですよね。もうヒップホップが生まれた年よりは前に、この地球に生命を授かったということで。

(アボカズヒロ)いろいろ話を聞いて。ソウル時代のディスコ遊びの頃の話を聞いたら、出てくるお店の名前とかを聞くと、エンバシーとかアフロレイキっていう70年代にいちばん黒かった類の。あとゲットとか、そういう風な黒かった類のディスコの名前がバンバン出てくるんですよ。

(太尊)我々、誰も生まれてませんからね(笑)。

(アボカズヒロ)僕も31なんで全然生まれてないんですけど。その時にもう成人していたみたいなヴァイブスだったんで。たぶんね、60前後だと思うんですよね。

(COPPU)しかも、黒く見えましたけど、あれは塗っているという情報が(笑)。

(アボカズヒロ)そう。あれね、ドーランらしいんですよ。日焼けじゃなくて。普通に、しかも何年もかけて自分で色を配合したって。

(COPPU)すごいですね!

(アボカズヒロ)これがいちばん黒人の色だそうです。

(丸省)あそこのお店を通る時、あの人と目が合うと「ウウッ!」って2秒ぐらい、息が詰まって歩けなくなるんですよ。

(COPPU)(笑)

(太尊)メデューサじゃないですか。

(アボカズヒロ)ティナ・ターナー(Tina Turner)ですよ。『マッドマックス サンダードーム』に出てくるティナ・ターナーみたいな。

(太尊)すごすぎますね。自分で配合して……もうボディービルダーじゃないですか。完全に(笑)。ボディービルダーの人も塗りますからね。自分の筋肉のカットに。僕、ボディービルダーじゃないですけど、ボディービルダーの人も塗りますから。

(丸省)仁義のくだり、入っていた? なんか、ノーティ・バイ・ネイチャーのライブを昔、初来日した時に見に行った時に、「前で仁義の子たちがうるさく騒いでいたのよ」っていう。仁義一家のことを「仁義の子たち」って言っていたっすね(笑)。

(COPPU)すごい(笑)。

(アボカズヒロ)完全にね、綾瀬の(クイーン・)ラティファですよ。

(太尊)いや、すごいですね。

綾瀬のクイーン・ラティファ

(アボカズヒロ)本当に、綾瀬にこんな人がいたんだ!って。僕も超テンションが上がっちゃって。

(丸省)それで日本語ラップは聞かないって。お店に日本語ラップやってる子とかが来るらしいんですけど。「これもいいもんだから聞いてくれ」って言うと、「いや、ちょっと文化的に日本のは違うんじゃないか」って。聞いてないらしくて。食わず嫌いをしてるみたいで。だからみんなね、行ってさ。CDを持っていって聞かせればいいんじゃないですかね。

(アボカズヒロ)ただね、僕ね、まだ線はあるなと思ったことがあって。いろいろ話を聞いていて。で、どうもそれぐらいね、特に黒人系の外タレをとにかく追ってるんですよ。ずーっと追っていて。来日すると言えば、行き。しかも、ノーティ・バイ・ネイチャーなんか来日するって3回パー券買ったけど、うち2回は嘘だったっていう。

(丸省)「オバケだ」って。いま、言わないよね(笑)。

(太尊)お金だけ搾取されるシステムのやつですよね(笑)。

(アボカズヒロ)「チッタでやる」っていうからチッタまで行ったら、やってなかったって。それでもメゲずに追っている人だから。で、いるじゃないですか。いわゆるブラックの男性に抱かれたガールっていう。ブラパン的な方。で、僕ね、切り込んでみたんですよ。「そういうブラックカルチャーにどっぷりだと、そういうメイクラブ系の方はどうですか?」みたいに言ったら、「でもね、やっぱり私ね、日本人の人が好きなのよね」って。

(丸省)そっちの方は日本党。

(太尊)そっちは日本なんですね。なるほど。

(アボカズヒロ)ということがわかったんで。日本語ラップも、やっぱりない線じゃないんじゃないかな?って。KOHHとか聞いたら、食らっちゃう可能性とかなくはないですよ。

(太尊)さっき、それでKOHH聞いてたんですか?

(丸省)それは違います。気分を上げるため。

(アボカズヒロ)だから綾瀬のラティファ、やまざきのママをこの『らっぷの時間。』に呼んで、いろんな日本語ラップをプレゼンするっていう企画も……

(太尊)ああ、それいいですね。でも、たしかに。全部、いろんなジャンルの曲を聞いてもらって。日本語ラップもヤバいんだよっていうところをぜひ、提示できれば。

(アボカズヒロ)いまは進化してますからね。最前線ですから。

(太尊)全く日本語ラップは聞かないと?

(アボカズヒロ)聞かないって。で、誰かは聞けなかったんですよ。やまざきのママも忘れていたんだけど。なんかね、そこそこ売れている日本語ラップのラッパーの子たちが飲みに来たことがあるらしいと。で、その子たちに「なんで日本語聞かないんですか? 食わず嫌いですよ」ってすごい言われたらしいんですよ。で、6時間ずっとそこでバトッてたらしいですよ。

(太尊)6時間? なんか気になりますね。誰だったのか。結構売れているっていうことですよね。KICK THE CAN CREWとかですかね?

(丸省)(笑)

(アボカズヒロ)もっと、この10分の映像じゃ伝わりきらない、底知れぬものがあるので。

(太尊)ぜひ、このママの古希スペシャル。70才のお誕生日を迎える時はぜひ、ここでみたいな。

(アボカズヒロ)ちょっと掘り下げたい人物ではあるなという。やまざきのママ。

(太尊)やまざきのママ。綾瀬?

(COPPU)はい。足立区綾瀬4-6-31。駅の近くですね。

(丸省)西口のガード下ですね。

(COPPU)西口のガード下。5時から11時で、日曜、祝日が定休日ということで。ぜひ、こちらにも来ていただきたいと思います。

(太尊)じゃあママさん、ぜひ、よろしくお願いします!

<書き起こしおわり>

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