佐野元春・伊藤銀次・杉真理 大瀧詠一を語る

爆笑問題 佐野元春・伊藤銀次・杉真理に出会った話 SOUND AVENUE 905

伊藤銀次さんと杉真理さんがTBSラジオ『SOUND AVENUE 905 元春レイディオショー』に出演。佐野元春さんとともに大瀧詠一さんについて話していました。

(佐野元春)2人にね、聞いてもらいたいレコードを持ってきたんですよね。

(杉真理)はい。

(佐野元春)僕たちのまあ、指導者というか、グルでもあった大瀧詠一さんの曲を実を言うと僕ね、カヴァーしたんですよ。僕ね、あまり他の人の曲を・・・ステージでは時々やるけども。正式にカヴァー曲としてレコーディングしたのは・・・

(伊藤銀次)日本人の曲、あんまりやんないもんね。

(杉真理)いや、でもね、『風街レジェンド』。去年、佐野くん歌ったじゃない?はっぴいえんどに混じって。あれはすごかったよ。

(佐野元春)ありがとう。

(杉真理)みんな、言ってたでしょ?

『風街レジェンド』の佐野元春

(佐野元春)あの、松本隆さんアニバーサリーの一環で、はっぴいえんどのお三方に声をかけていただいてね。『大瀧さんの曲を歌ってくれ』と。

(伊藤銀次)あれ、うれしかったのはね、大瀧さんみたいに歌ってなかったのがよかった。

(佐野元春)ああ(笑)。

(杉真理)ちょうどね、でもね、大瀧さんの要素も。見たことのない佐野くんの中で、大瀧さんの要素がちゃんとあって。で、佐野元春で。ちょうど、いいところが出ていたんだよね。驚いた。

(佐野元春)あの、はっぴいえんどのお三方が『この曲を』と言って、『はいからはくち』を選んでくれて。僕はすごくうれしかったんですよね。というのは、大瀧さんもはっぴいえんどの中でも最もロッカー。ロックンローラーでしょ?まあ、ソロを聞いてもそうですし、はっぴいえんどの中でも、大瀧さんが書いている曲っていうのはロックンロールだよね。で、中でも、『はいからはくち』っというのはそういう、ブルースロック。

(伊藤銀次)そう。当時としては、日本語のかなり冒険的なロックンロールソングだよね。

(佐野元春)で、その曲を歌ってほしいということをね。僕は張り切って歌いました。

(伊藤銀次)張り切ってた(笑)。とってもよかったよ。

(佐野元春)あの、松本さんがやっぱり、3人でね、はっぴいえんどのオリジナルの3人で演奏するのがだいぶしばらくぶりだということで。リハーサルの時なんか四苦八苦してたけど。本番では見事にね、ピシッと演奏してて。

(伊藤銀次)ドラムソロとか、見事だったよ。

(杉真理)ドラムソロ、かっこよかったですね!あの。

(佐野元春)あと、僕は細野さんのベースを右に感じながら歌ったんですけども。細野さんのベースを間近に聞いて驚いたのは、アタックがすごくはっきりしているんですね。なので、すごくリズムを感じるというか。松本さんのドラムよりも、むしろ細野さんのベースが全体のビートを。

(伊藤銀次)はっぴいえんどのリズムキーパーなんだね。なるほど。

(佐野元春)それをね、実際に生で感じられたので、うれしかったね。

(伊藤銀次)いいなあ(笑)。

(佐野元春)まあ、そういうことで、ちょっと僕ね、大瀧さんのカヴァーをしてみたくなって。一緒にやっているCOYOTE BANDと『この曲をやろうよ!』ってやった曲があるんです。これははっぴいえんど曲ではないんですけども。『あつさのせい』。

(杉真理)ファーストアルバムですよ。

(佐野元春)そう(笑)。この曲もロックンロールなんだよね。

(伊藤銀次)すごくソウルフルなナンバーですよ。

(佐野元春)で、僕の解釈でカヴァーした大瀧さんのこの曲を2人に聞いてもらいたいと思って持ってきました。『あつさのせい』。

佐野元春 & THE COYOTE BAND『あつさのせい』

(佐野元春)佐野元春 & THE COYOTE BAND。大瀧詠一さんのカヴァーで曲は『あつさのせい』、聞いてもらいました。どうだった?

(伊藤銀次)すばらしい!

(杉真理)いやー、佐野くんにぴったり!

(佐野元春)ありがとう(笑)。

(伊藤銀次)間奏、弾いてるの?

(佐野元春)弾きました。マンドリンとエレキで。

(伊藤銀次)マンドリンも弾いたの?

(佐野元春)マンドリンも弾いた。

(伊藤銀次)おおーっ!いや、なんかすごくね、ポーグスを聞いているみたいで。アイリッシュな匂いと。カントリーとアイリッシュと、それとR&Bみたいなのが混ざったような感じ?

(佐野元春)はい。オリジナルはどっちかって言うと南部ロック的な・・・

(杉真理)泥臭い感じ。

(佐野元春)それを、ちょっとこう、たとえばサンフランシスコのバンドが・・・たとえば、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルがカヴァーするとこんな感じかな?って言う。

(伊藤銀次)なるほど。

(杉真理)(笑)

(佐野元春)そういう想定でやりました。

(伊藤銀次)いい感じ。ぴったりだった。

(佐野元春)2人に聞いてもらえて、よかったです。

(中略)

(佐野元春)さて、ここからは杉くんのコーナーです。

(杉真理)はい。僕はね、佐野くんのようにかっこよく決められないんですよ。ここで聞いててね、かっこいいんだよね。佐野くんが。パーッ!とキューを振ってるわけでしよ。逆キューを。パーッとかかるわけですよ。ラジオはこうじゃなきゃ行けないですよね。本当にそう思いました。

(佐野元春)(笑)

(杉真理)僕はね、そんなにかっこよくはいけないんですけどもね。あの、僕、人との共作が多いんですよ。

(佐野元春)そうだね。

(杉真理)音楽はそういうことができるじゃないですか。絵とか、それから小説なんかじゃなかなかできないけども、音楽は本当にコラボ・・・いまはコラボって言いますけども、昔はそんな言葉、なかったでしたけども。で、人と共作をしたり、人と一緒に何かを作り上げるのがとっても好きなんですけども。僕は、一昨年になりますけども、出した『THIS IS POP』っていうアルバムがあって。

(佐野元春)はい。

(杉真理)そこにはいろんな人とのコラボ。EPOだったり、安部恭弘くんだったり、銀次さんだったり、松尾さんだったり。村田和人くんとやっているんですけど。その中で、坂崎幸之助くんとやった曲があるんで。それを今日は持ってきたんですけども。

(佐野元春)はい。

(杉真理)これは、坂崎くんと僕の共通点って、お互いビートルズが好きなところもあるんですけども。ビージーズもすごく好きなのね。坂崎くん、ビージーズがすっごく上手いのをリハーサルで聞いていて知っていたので。

(佐野元春)坂崎さんとは年代的には同じぐらいなんですか?

(杉真理)僕よりひとつ下です。

(佐野元春)ああー。じゃあ聞いてきた音楽は似たり寄ったりだ。

(杉真理)そう。で、ビージーズの影響を受けた曲を作ろうとして作ったんですけども。で、一緒にコラボするんだったら、歌詞も・・・っていうことで。僕と坂崎くんの共通点っていうのがあって。それは、僕はナイアガラ・トライアングルで大瀧詠一さんという尊敬する人と一緒にやることができた。先輩と。そして坂崎くんは加藤和彦さんと一緒にコラボして。そして、その2人とも先に逝ってしまったっていう共通の経験があるんで。

(佐野元春)うん。

(杉真理)そのことを歌にしよう。もう、あの人とはハモれなくなっちゃったんだって言う、ちょっと寂しさと。でも・・・っていうことを書いた曲があるんで。1回、佐野くんに送ったんだよね。出来上がって。

(佐野元春)そう。この曲ね、初めて聞いた時はね、僕は、あのね、小躍りしましたね。

(杉真理)(笑)

(佐野元春)やっぱりこうね、ビージーズラブ。ビージーズ愛に溢れたプロダクションっていうか。これが、聞く人が聞いたらね、膝を打つような小さなアイデアがいっぱい詰まっているんですよ。

(伊藤銀次)あんまり日本でビージーズのそういうの、やれる人いないよね。

(杉真理)大瀧さん、ビージーズ好きだったんですってね。後で知ったんです。

(佐野元春)じゃあまずはこの曲、聞かせてください。

(杉真理)はい。『長い休暇をもう一度』。

杉真理『長い休暇をもう一度』

(杉真理)大瀧詠一さんのことをここでね、ちょっとしゃべりたいんですよ。

(佐野元春)お願いします。

(杉真理)僕らにとってみるとやっぱり、とっても大事な人じゃないですか。で、大瀧さんは本当にいろんな面を持っていた。マニアな面とか。だけど、すっごい悪ふざけするお祭りみたいな面も持っていたじゃないですか。

(佐野元春)そうだね。はい。

(杉真理)僕はそのところをね、特に僕と銀次さんは受け継いでいるような気がしてね(笑)。

(伊藤銀次)(笑)

(佐野元春)僕もこっそり受け継いでいる(笑)。

(伊藤銀次)そうだね。佐野くんもそうなんだよね。

(杉真理)そういう、やっぱりスパイスがある人を大瀧さんは選んでくれたのかな?って。だから大瀧さんの、すごく面白いんだけど、音楽性が深くて、演奏が上手いっていう曲がいっぱいあるじゃないですか。まあ、ほとんどそうなんですけど。この曲は特に僕、好きです。大瀧詠一『こいの滝渡り』。

大瀧詠一『こいの滝渡り』

(中略)

(伊藤銀次)大瀧詠一さんで『青空のように』を聞いてもらいました。

(佐野元春)ああ、久しぶりだね。でも、この曲をどうして選んだの?大瀧さんの曲。

(伊藤銀次)あのね、大瀧さんが亡くなってね、僕ははっぴいえんどのファーストから大瀧さんのファンだったから。とにかく日本語でロックができるんだってことを教えてくれたアルバムだった。それでね、1枚目から全部聞き直したの。ずーっと聞いていってね。そうすると、だんだん変遷が変わって。いろいろリズムが入ってきたりするんだけど。ちょうど『カレンダー』のところに来て、この『青空のように』を聞いた時に、自分の音楽とシンクロするものを感じたの。

(佐野元春)ああー。

(伊藤銀次)言葉とか。僕の音楽はよくね、『ウキウキミュージック』って言われるんだよね。『ウキウキ』とか、『お昼休みはウキウキ』ってね。なんかね、大瀧さんのウキウキミュージックなの。で、これは詞が松本隆さんじゃない。大瀧さん自身の詞なの。で、大瀧さん自身の詞で、たしかに松本さんみたいにリリカルではないかもしれないけど、言葉とメロディーがピッタリと動く。洋楽のような。

(佐野元春)うん。

(伊藤銀次)これを聞いていたらね、心がすごくワクワクしてて。『そうか。僕と大瀧
さんっていうのはやっぱり接点があったんだ』と思ってね。

(佐野元春)そうだね。

(伊藤銀次)それでね、これをこの頃ね、弾き語りとかで僕は歌うようにしているの。だから僕はね、大瀧さんを継ぐことは、とても偉大な人で継げないけれども。少しでもね、僕とクロスしている、その部分を大事にしてね、大瀧さんを継いで行こうと思ってね。それで、これをかならずいつかね、カヴァーしてCDにしようと思っています。

(杉真理)やってくださいよ。

(佐野元春)それは素晴らしい話だね。うん。なんか僕、そこに参加したい感じ?

(伊藤銀次)あ、もちろん!もちろんその時にはみんなに手伝ってもらいたいなと思っています。ありがとうね。

(佐野元春)はい。新春DJトライアングル、伊藤銀次、そして杉真理をゲストに迎えての1時間。ここまで聞いてくれてどうもありがとう。杉くん、銀次、とりあえず、最初の夜でしたけども。楽しいお話をどうもありがとう。

(伊藤銀次)いや、ありがとう。楽しかった。

(杉真理)こちらこそ。

(佐野元春)みなさんとはまた来週、この同じメンバーでお会いできるのを楽しみにしています。

<書き起こしおわり>

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