都築響一さんがDOMMUNEで櫛野展正さんを迎え、鞆の津ミュージアムで開催される『ヤンキー人類学』展を特集。ブチアゲ単車とコール(アクセルミュージック)について語っていました。
(都築響一)説明を聞いてもなにがなんだかわからないと思われるので、どういうものが出るかっていうのを写真で見ながらね、お話したほうがいいと思うので。さっそく見せたいんですが。これですよね。これ。ブチアゲ単車。ブチアゲにも程がありますね。
(櫛野展正)(笑)。そうなんです。
(都築響一)これ、どうしたの?
(櫛野展正)これは、最初都築さんが前、広島現代美術館のためにミスティー号っていう改造単車を借りようかなと思っていたら、輸送費だけで60万ぐらいかかるって言われて。これはもう、現役の方たちにお願いするしかないということで。まあ、ほうぼう手をつくしまして。で、福岡県の八女市というお茶の産地。あそこのいわゆる旧車會グループという。
(都築響一)元ヤンですね。
(櫛野展正)元ヤンで単車に乗ることを楽しんでいる人たちにお願いしに行ったわけなんですよ。
(都築響一)でも、旧車っぽくないですよね。
(櫛野展正)旧車っぽくないです。これ、福岡の筑後地方なんですけど。は、この高さを競うとか、いろいろ伝統がありまして。
(都築響一)そうですね。北九州仕様のカラーリングですよね。主に。
(櫛野展正)これがですね、なにがすごいかっていうと、このカラーリングがですね、実はポスカで塗ってるんですね。
(都築響一)ポスカですか!?(笑)。ちょっと見てみましょうね。これが後ろからの風景ですけど。
(櫛野展正)これがなんでこれを作ったかって本人に聞いたんですけど。『チャンプロード』っていう雑誌がありますけど。
(都築響一)ヤンキー界の聖書ですよね。
(櫛野展正)はい。その取材があるということで。一応、茨城と福岡で対決をして撮影が、取材があったらしいんです。そのために気合を入れて、誰よりも目立ちたい!ということで。
(都築響一)これは気合、入ってますよね。
(櫛野展正)これが、2ヶ月で作ってるんですよ。しかも、この後ろの・・・
(都築響一)なんて書いてあるの?これ。
(櫛野展正)『ちっご共道組合』っていう。筑後地方の。共道の道は『みち』っていう字なんですよ。で、しかもこれが不動明王の後ろの光輪のような。これ、『悪魔テール』って彼らは呼んでて。
(都築響一)悪魔テールですか!?むしろデビルマンですね(笑)。
(櫛野展正)これは、本人たちがベニヤ板で、糸鋸で切ってるんですよ。
(都築響一)糸鋸で!渋いですねー!
(櫛野展正)で、このカラーはX JAPANのHIDEの。HIDEカラーっていうのが伝統で受け継がれてまして。
(都築響一)HIDEカラーっていうんですか!この子たちですね。
(櫛野展正)で、これが高さ3メートルぐらいの高さなんですよ。このテールがですね。
(都築響一)もうだから道を走れるわけですよね。ベニヤ板だけど。まあ、構造計算はしてないと思うけど。
(櫛野展正)一応聞いたんですけどね、通常時速60キロは出るということで(笑)。
(都築響一)まあ、一応法規は守ると。
(櫛野展正)で、『捕まんないの?』って聞いたら、『一応、ケツ持ちがいるんで』って(笑)。まあ、そいつらが蛇行運転している間にサーッと行くんだと。
(都築響一)なるほどね。ブロックしてくれるわけだ。このディテールもすごいですね。
(櫛野展正)すごいです。もう、いろんなものがついてますから。
(都築響一)これ、タイヤとか塗ってますね。かわいらしく。
(櫛野展正)塗っています。手書きなんです。だからポスカで書いてるのも、マスキングしてスプレーっていうのが間に合わなかったっていうのもあって。また手書きの味っていうのがですね。かなり出てるんですよ。
(都築響一)味っていうか、アウトサイダーですね。完全に。これ、(鞆の津ミュージアムに)来るんでしょ?
(櫛野展正)これ、来るんです。あの僕、都築さんが『コールを録る人を残せ』みたいなことをDOMMUNEで前に言われてて。これは絶対コールを録らせてもらおうと思って。
(都築響一)この子たちもコールを。
(櫛野展正)これ、僕乗らせてもらったんですけど。
(都築響一)もうサイズがわかりますね。
(櫛野展正)コールをですね、録るっていうことで。福岡県八女市まで行ったんですよ。で、行ったら町中の待ち合わせ場所だと近所の人に迷惑がかかるということで。
(都築響一)いいですねー。道徳的なヤンキーですね。
(櫛野展正)かなりのヤン車に乗せられ、山の上で30分ぐらいかけて山の頂上に連れて行かされ。もうヤンキーたちがズラッと囲む中、撮影するというですね。
(都築響一)これが動画かな?コールの動画ですね。これはですね、素晴らしいですね。
(櫛野展正)かなりですね、風で揺れるんですよ。
(コールの動画を見る)
(都築響一)もういいでしょうかね?(笑)。
(櫛野展正)途中からですね、煙が出てくるんですよ。
(都築響一)あ、本当ですか?ちょっと見てみようか。
(櫛野展正)いま、ちょうど煙出てたとこなんですけど。
(都築響一)煙出てたとこ?ごめん、ちょっと見る。
(櫛野展正)途中からね、煙がふわーっと噴き出して。
(都築響一)まあね、焼けちゃうんだよね。これね。
(櫛野展正)このへん。出てますね。
(都築響一)これですね(笑)。あー、やばい感じに。エンジン、焼けちゃいますよ。これ。
(櫛野展正)撮影する時ですね、絶対口元を隠すんですね。宇川(直宏)さんの真似だと思うんですけどね(笑)。
(都築響一)(笑)。本当ですか!?だけどさ、こうして見るとさ、いまのを見ると・・・
(櫛野展正)かなりね、揺れるわけですよ。風で。
(都築響一)そうだよね。これさ、もう完璧にラメルジーとかの世界だよね。もうね。これをさ、みんなが思うヤンキーという概念からは既にもう・・・
(櫛野展正)超越してますよね。
(都築響一)してるよね。だからさ、こんなかっこいいことになってんのかっていうね。コールはさ、本当なんで日本のDJはサンプリングしないんでしょうね?あれ、コールガレージナイトをやってほしいですね。鞆の津で。僕もコールが好きで、まあよく見てたりするんですけど。外国でのレクチャーとかトークでね、めちゃくちゃウケるんだよね。暴走族のコールって。日本よりウケるね。もう、聞いたことないんだよね。外国人は。
(櫛野展正)はいはい。
(都築響一)もうヨーロッパとかびっくりするよ、みんな。これはすごい!って。なので、これを機会にですね、いま地方でDOMMUNEを見ている志の高い諸君はですね、地元のコールをハイ・デフィニションで是非録音しておいていただきたいと。なぜなら、これはさ、コールはすごいなと思うんだけど、やっぱり止まってやってるじゃない?止まってやってるコールっていうのは、ビートしかできないわけよ。
(櫛野展正)ああ、そうらしいですね。
(都築響一)リズムしか。これってさ、走りながらやるとこれに音程が加わるわけよね。するとメロディーをつけられるっていうやつなんで。前も見したと思いますけど、ちょっとメロディーのをね。僕持ってきたんで。ちょっとね、見てほしいと。これがですね、真っ暗なんですけど。あの、音は聞いていただけると。
(都築響一)まあ、日本人ならだれでも知っている水戸黄門でしたけども。
(櫛野展正)素晴らしいですね。
(都築響一)やっぱさ、これぞメタルマシーンミュージックというかですね。あの、すごいと思うんだよね。すごいのはさ、これ現場で撮ってるんだけど、真っ暗なわけじゃない?街灯すらない。つまり、警察ももうどうでもいい状態のところで。っていうことは、撮っているビデオのヤツはいるだろうけど、普段はこれ、誰もいないところなわけじゃない?たぶん山の上とかさ。だからさ、こいつはさ、誰にも聞かせてないっていうか。観客ゼロでたった1人の道をステージとして演奏してるわけよ。ね。
(櫛野展正)うんうん。
(都築響一)しかも、こういう子たちっていうのはあれだよね。ただ走る機械だと思っていた単車っていうのを、楽器になるってことを発見したヤツらだよね。だから本当にさ、30年ぐらい前にブルックリンとかブロンクスで起ったことと一緒であってさ。それまではレコードをかける機械だったターンテーブルっていうのを、スクラッチするってことを覚えて。ターンテーブルがオーディオから楽器になった瞬間だよ。それがHIPHOPを生んだわけじゃないですか。おなじようにこれはさ、走る機械だったバイクを楽器として扱えたっていうのは革命的なことだと思うんだけど。日本ではこれ、捕まるだけですね(笑)。これはね。
(櫛野展正)(笑)
(都築響一)このことは僕もいろいろ聞いてまわってるんだけど、やっぱさ、いい音を出すためにエンジンを改造するんだよね。だからもう本当に楽器の世界なんだよね。いい音、いいコールをするためにエンジンをチューンっていう。もう楽器でしかないの。なんでもっと注目されないんだろう?って思いますね。こういうのは。だから、展覧会でコールはできないでしょうけど、是非ですね、消え行く文化である暴走族のコールっていうのは、みなさんも注目していただきたいですね。これは・・・?
(櫛野展正)これはですね、パーツを外したとこなんですよ。一応、このままじゃ乗って帰れないんでってことで。それでめちゃめちゃかっこいいんですよ、これ。ベニヤ板でこれ、切れるっていうね。
(都築響一)そうだよね。でも、手でしょ?しかも、ベニヤ。
(櫛野展正)ヤバいですよね。
(都築響一)これさ、かっこいいよ。ポスカ。ベニヤ板。しかも、糸鋸。
(櫛野展正)そうなんですよ。内側を黒く塗っていて、立体感が見えるようにってことで。すごいんですよ、彼らは。
(都築響一)(笑)。なるほどねー!素晴らしいですね。これはさ、やっぱ金ばっかかけてるハーレーオヤジとかに見せたいよね。こういうのをね。こっちの方が百倍オリジナルだよね。本当。すごいですね。これが来るとは。広島県に。広島もでもね、暴走族の聖地のひとつですもんね。そうですよね。だからみなさんにも、とっても刺激にかも(笑)。
<書き起こしおわり>
鞆の津ミュージアム『ヤンキー人類学』の 北九州の ちっご共道組合のブチあげ改造単車たち。
「他より目立ちたい」という思いから生まれた自作装飾!!!走るゴシック建築!素晴らしい! pic.twitter.com/vGWCxuTgQU
— クシノターゲット (@kushinon) April 13, 2014
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