ライムスター宇多丸さんがTBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』で、AAA日高さんが出演しているイトーヨーカドーのWEBチラシCMを絶賛していました。
日本語ラップの話題で言うと、前からどっかで言及したいと思っている件がありまして。テレビCM、イトーヨーカドーですかね、いろんなタレントさんが出てくる中で、AAA・・・男女混成のアイドルグループ、皆さんご存知ですかね?今や、普通に売れて紅白なんか出たりしてますよね。で、AAAと言えばこの番組的には2回ぐらい出てもらった?日高光啓くんというラップ担当の男の子が、AAAはイトーヨーカドーのCMをずっとやってたんですけど、冬バージョンのCMで。日高くん、SKY-HIっていうソロラッパー名でも活躍されてますけど、日高くんがメインでフィーチャーされていて彼がずっと延々、白っぽい部屋の中でラップをすると。
SKY-HI日高光啓 イトーヨーカドーCM
ひたすら本当にラップをするわけですね。そのラップがものすごい早口・高速ラップで、しかもそれが今回のWEBチラシのいろんなキャンペーンのものになっていると。で、僕このCMにものすごい感銘を・・・これちょっと日本のテレビCMでですね、日本語ラップ的なものがフィーチャーされる機会ってのが、質的にいいものも悪いものも含め、いっぱいあるじゃないですか。上手く行っているものもありますし。
古くは、いとうせいこうさんのネッスルの朝ごはんなんてね、ありましたし。NTTの中井貴一さんなんてのもありましたしね。あと、最近だと真露のコマーシャル、DEV LARGEくんがラップを・・・トラックか?でもまあラップがあったりだとか。ラップ風だったらレモンガスとかウコンの力の桐谷健太さんのね。まあ、彼はフリースタイル趣味でやってるぐらいですから、ラップできるんでしょうけど。いずれにせよ、ギミック的にっていうんですかね、日本語ラップっていうのの、存在感としてのギミック感・・・みんなからみて若干の滑稽感も込みでのフィーチャー、耳に残るという意味でのフィーチャーが多かったと思うんですけど。
今回の日高くんのイトーヨーカドーのCMは、何が僕画期的だと思ったかというと、あり方としては以前、ゼロックスのCMでAFRAくん、ヒューマンビートボックスのAFRAくんが一躍注目を浴びたじゃないですか。ゼロックスのCMを見たら、ヒューマンビートボックスとはなんぞやってのが知らない人でも、「とにかくスゲエ!」ってことが分かるわけですね。つまり彼のスキル、ビートボクサーとしてのスキルに一発で説得されちゃうわけですね。ヤラレちゃうわけです。(日高くんのCMは)それと同じ事を日本語ラップでやった初めての例だと思います。
日本語ラップのギミック的な面、たとえば韻踏んでて面白いですよとか、日本人がラップすることそのものが面白いですよっていうそういうところじゃなくて、上手さですよね。技量ですよね。まあスキル・・・日本語ラップの上手さというのが、しかもそれがそのまま宣伝としての機能に直結していて、誰が見てもスゴいこと、プロにしかできない何かカッコイイことをやっているのだと分かる形で見せたという意味で、日高くんのラップのCM、画期的なことなんじゃないかなという風に思いました。
以前この番組に日高くんに来てもらった時、日本人ラッパーものまねで出てもらったんですね。俺(宇多丸)のものまねとか、あとKREVAですよ、何しろね!「KREVAの言いそうなこと」っていうものすごい高度なものまねやってくれましたけど。彼はそのぐらい日本語ラップをすごい好きじゃないと出来ないものまねだったってのも、当時のクオリティーを聴けばお分かりだと思うんですけど、日高くんっていう人はとにかく偉い人で。
AAAっていうavexが推しているアイドルグループの一員でありながら、普通はそういう人が日本語ラップのハードコアなシーンに来たりすると、「何だテメー」ってことになっちゃうのが仕様がないわけですよ。「アイドルが来やがって!」ってのは。なんだけど、今日本のHIP HOPシーンで日高くんを見てアイドルだからどうこうっていう馬鹿は1人もいないですよ。というのは、彼はどんなハードな現場にもどんどん・・・AAAとしての活動も多忙だろうに、夜はそういうところ行って1人でマイク握って、ずーっとHIP HOPシーンにいるから。
どっちかっていうと俺たちとしては、俺たちの仲間がアイドルもやっているっていう感じに、彼は自力・努力でそこまで持っていった。なおかつ、そんだけラップ好きでずーっとやっているわけだから、ラップもどんどん上手くなっちゃって、いまやトップクラスの腕を持っているんじゃないですかね、彼は。実際その腕も評価されて、AAAの中での人気もどんどん上がってきて、で、コレですよ。このラップ大フィーチャー、AAAの日高だから出来る・・・いきなり一介のいくら(ラップが)上手いからって言って、フィーチャーされないじゃないですか。
日高にしかできない立場で、日高にしかできないスキルで、日本の文化の中における日本語ラップの位置を一個進めたな、コイツって思って。おじさん、ものすごい感動しましたっていう一件でございます。
<書き起こし終わり>
SKY-HI日高光啓が語るCM制作秘話
後日、日高さんがウィークエンド・シャッフルにゲスト出演!イトーヨーカドー高速RAP CM制作秘話をこのように語っていました。
(日高)ヨーカドーさんも、オファーくれた時になんかラップでっていう話で。
(宇多丸)あ、ラップでっていうオファーが最初に来た。
(日高)そうですね、ラップで紹介してくれって来て、「分かりやすくしましょうか?」みたいな感じで言っていたんですけど、『なんかスゲー!』みたいな感じにしてほしいんで、いろいろこう・・・「アプリ」だとか「パソコン」だとか、いろいろ言ってほしいワードを全部言ってくださいぐらいの感じで。
(宇多丸)ほう、じゃあ向こうからこういう、ちょっと振り切った感じにしてくださいっていうのがあったんだ。
(日高)そうですね、振り切ってくださいって言っていただけたんで。
(宇多丸)それ、そのSKY-HIとしてのラッパーとしての活動を、向こうさんがご存知でってことなんですかね?
(日高)そうなんですね。ヨーカドーさん、元々AAAでCMをずっとやらせていただいていたりした関係で、僕のブログとかをよくヨーカドーの役員さん、具体的に言うと常務の方がすごい見てくれていたらしくて、「じゃあ、ラップの振り切ったやつでCMやってもらおうよ。」みたいなお話をいただいたと。
(宇多丸)そうなんだ。じゃあ英断なんだ、結構。
(日高)結構そうですね。
(宇多丸)ああそう。見る目あるね!こういうやり方、企業イメージも上がるっていう、これいわゆるWIN-WINな、WIN-WINなね、関係ですよね!素晴らしいじゃないですか!本当に。じゃあこれ、好評だったらまたいろんなやり方でまたちょっとね、第二弾・第三弾とね、あるやもっていうことですよね。
(日高)なんとなく既にあのCM、それこそ今も放送されているらしいんですけど、なんか長い期間はやりたいらしいって。なんかタイミングがあったら第二弾・第三弾も・・・みたいな。
(宇多丸)ヤバイなー。AAAも普通に今となっては売れましたけど、これはSKY-HI来ちゃうのか?これ。
(日高)なんとか・・・そうなんですよ。来年の2月にツアーをSKY-HIではじめて回ったりするので、なんとなく具体的にスタートしている感が・・・
(宇多丸)スゴいね!なんか結構最初に「僕、一人でラップもやってるんですよ。」ってデモテープとかもらった時からさ、よくここまで頑張ったね!結構年月経ったもんね。あれからだって。
(日高)そうですね。5年は少なくとも経ってますね。10代だったんで、6年以上前ですね。
(宇多丸)じゃあ、その頃から足繁く現場に通って、みんなにこうやって顔売って、ちゃんと腕も上がったからいいじゃないですか。
(日高)よかったです。ありがとうございます。
(宇多丸)時は来たって感じだと思いますよ。ハイ。
<書き起こしおわり>