Saku Yanagawa M-1GP 3回戦・ゆかいな議事録中国いじりネタを語る

Saku Yanagawa M-1GP 3回戦・ゆかいな議事録中国いじりネタを語る Podcast

アメリカ・シカゴ在住のコメディアンSaku Yanagawaさんが2023年11月22日配信の『Saku’s Radio from Chicago』の中でM-1グランプリ3回戦でゆかいな議事録が披露した「日本人の8割が嫌いなものは中国」などの中国をいじるネタについて、話していました。

(Saku Yanagawa)今回ね、ある件に関してちょっとたくさんメールをいただきましてですね。代表して1通、ご紹介したいんですけれども。ラジオネーム「尾張のぐでたま」さん。「Sakuさん、SAEKOさん、こんにちは。さて、日本では今M-1グランプリの予選が行われているんですが、先日、3回戦に登場した『ゆかいな議事録』というコンビの漫才が話題を集めています。政治マニアのボケが中国ネタを笑いに展開していくのですが、ネタ自体もさることながら、SNS上での多くの人の反応を含め、言葉にできないモヤモヤが残ってしまいました。アメリカで活動されていて、政治ネタに触れることの多いSakuさんはこのネタをどう見るのでしょうか? 教えてください」ということで。まあ、スルーでいいか(笑)。

(SAEKO)あれ?(笑)。いやいや、取り上げてるやん(笑)。

(Saku Yanagawa)なんかさ、僕、ご意見番とかになりたないねん。先週のティモシー・シャラメの件とかもそうやけどさ。真っ当なことを言う人っていう枠、しんどいやん? もう、ヘラヘラしてたいんですよ。やし、日本の芸人さんのネタをね、アメリカでやってる立場から評価なんて、ほんまはできひんよ。偉そうに、そんなの……全く違うものやねんからさ。

(SAEKO)まあね。

(Saku Yanagawa)でもなんか、この方の他にも結構いろんな方が興味を持ってくれてはるってことなので……僕なりにいろいろと考えましたよ。で、この今から言うことに対して、もしかしたら反論とかあるかもやけど、それはそれでいいと思うねん。っていうことで、言っていきますけども。そもそも、その今話題になってる漫才っていうのがなんのこっちゃ、わからへんって人のために今一度、内容をざっと紹介すると……ゆかいな議事録さんっていうコンビやねんけど。僕、だいたい歳が一緒やねん。このお二人と。で、ボケの山本期日前さんっていう方……もう、芸名からもわかるように政治に興味があって。これまでに選挙のボランティアとかもようしてきはったみたいで。

で、ネタの冒頭でね、さっきSAEKOさんにも一緒に見てもらったけど。「韓国の政治家って、なんか国内で都合が悪いことがあると、反日に転じますよね?」って言って。それに対してツッコミが「おい、やめろ、やめろ!」って言うねん。で、その後にすかさず「あっ、内閣府のデータが出てるんですけど。日本人の8割が嫌いなものって、何でしょう?」「えっ、わかんない。虫とか?」「いいえ。中国です」「やめろ、やめろ! おいっ!」っていうツッコミが入るわけ。で、ここから怒涛の中国ネタになっていって。「言論の自由がない」だとか「汚染水に対する嫌がらせ」だとか、そういうのがどんどんと入っていくわけですよ。で、なんかこういう一連のネタに対して、ネットでは賛否両論になっていて。反対派は「ヘイトスピーチだ!」ってなってるし。で、そういう感じの「賛否両論ですよ」みたいな記事がネットニュースにも結構、出てるんですよ。

(SAEKO)うんうん。

M-1GP3回戦・ゆかいな議事録

(Saku Yanagawa)で、今って予選のネタもさ、フルでYouTubeで見られるから、僕らも見たやんか。その上で思ったことないんやけどさ。まず、そもそもその漫才の中での発言をどう見るべきなのかな?って思ったんよ。っていうのもさ、漫才っていうのは基本的にはボケとツッコミっていう2人がおって。2人合わせての発言で作品になるわけやん? だからつまりボケという異常な人がおって。その人の間違いとか、ナンセンスさをツッコミが正して、コンビとしての意見なりを表明していくわけやんか。そうなった時にたしかに「日本人の8割は中国が嫌い」ってボケの人が言うてるけど、それを「おい、やめろ!」ってツッコミが正しているわけよ。ということは、コンビとしてはボケのこの、いわゆる異常な意見をツッコミで訂正して表出してることになるわけよ。「なんちゅうことを言うてんねん!」っていう風に。で、これは漫才を見る上での、ある種のルールやん?

(SAEKO)そうやね。

(Saku Yanagawa)極端な話、たとえばさ、「おばあちゃんに電車で席譲りたいねん。優先席。これ、ちょっとやってみようか?」って始まる漫才だとするやん? で、ボケがさ、たとえば1回目でちゃんと譲れないっていうことをネタにしたらさ、そのボケのことを「モラル違反だ!」とは叩かへんやんか。

(SAEKO)そうやね。

(Saku Yanagawa)だから本来なら、こういうネタの中での発言のボケの愚かさ……そこを笑うという側面はあるはずやんか。でもなぜか今回、それがそう簡単になってないわけやん。それはなんでなのか?っていうことなんですよ。で、いろいろ考えたけど、そもそもたぶん日本はお笑いの世界に「政治をネタにすべきじゃない」っていう前提が、少なくとも芸人さんの中とか、業界の中ではあると思うねん。だからこそ、一発目のボケでも「こんな場所でなんてことを言ってるんだ?」みたい感じだったのよ。一発目のツッコミはね。だから養成所とかで一番初めに言われることでもあるらしいねん。「政治ネタはやめとけよ。ウケないから」みたいな。で、それはおそらくある程度、見に来ているお客さんの中でも共有されている話で。

しかもこの賞レースっていう大事な場面でさ、そこを前提から崩すということが彼らの芸風としての主眼のように感じたのよ。なんか「おい、やめろ、やめろ!」ってツッコミは「そういう発言やめろ」っていう文脈と「政治的なことをこんな場で言うな」っていう2つの文脈があるんちゃうかなと思ったんですよ。で、おそらくこれね、お便りくれた方も、そして僕自身も感じたある種の違和感。それがどこから来るのか?っていうと、おそらくひとつは「情報の曖昧さ」やと思うねん。そしてもうひとつ、こっちの方が大事やと思うけども。「誰が、どこで、どのように言うか?っていうことのズレ」のような気がしていて。

まず1個目、情報の曖昧さやねんけど。僕、個人的には……中国の言論の自由がないっていうことをいじる後半部のネタとかは別にいいと思うねん。「いい」っていうのは、それはヘイトスピーチではないと思うねんな。でも1個、気になったのは「内閣府のデータ」っていう。これを引用して「日本人の8割は嫌いなものなんですか? 中国」と断定してるところ。これ自体、ほんまにちゃんとそのまま、内閣府がそういうデータを出しているのか?っていうのは思ったし。で、これは2個目の要素とも繋がんねんけど。それを誰がどこでどうやって言うか?ってことやと思うねん。もし仮に、その内閣府のデータがしっかりと示されていて伝えられたとして、それを日本人の芸人さんが日本人のお客さんの前で、しかも日本という国で言うということは、なかなかにパンチがあるわけですよ。

たとえ彼らがアメリカでとか、もっと言うと中国で中国人のお客さんの前で言うっていうのとは、これは大きな違いがあるやん? それを日本でやると、いくらツッコミで「やめろ!」って言ったとしても、なかなかに意味を持つ発言になるっていうことは想像がつくんちゃうかなって思いながら、そのネットの反応を見てみたらまあ、「ヘイトだ」って言ってる人もそれは熱くなってんねんけども。実は今回、逆に賛成の立場も人もかなり熱いのよ。なんか、その賛成派のコメントの中に結構、いろいろと思うところがあるやつがいっぱいあって。今日はそっちを見ていくっていうのが私の主眼なんですけども。

(SAEKO)はい。

(Saku Yanagawa)結構、「スカッとした!」とか「こういうのを待ってたんだ!」みたいな意見があるねんけど。それは別に、人それぞれの感想だからいいねんけど。結構、目立つ擁護する意見の中にね、「いや、アメリカのスタンダップコメディだって、こういうもんじゃん」とか、「アメリカでは差別的な人種ネタがバンバンありなんだから」とか。挙句の果てにはレニー・ブルースは全方位の人種ジョークを言っていたから」みたいな意見があるねんけども。その人たち、全然わかってへんのよ(笑)。

「アメリカのスタンダップコメディもこういうもの」なのか?

(Saku Yanagawa)まず、「アメリカのスタンダップコメディって、こうじゃん」っていう人が言っている「アメリカのスタンダップコメディ」っていうのは、いつの時代のやつを指しているのか?っていう。レニー・ブルースっていう人は今から60年以上前の人よ? そこを引き合いに出されても……やし。人種ネタって今もあるけど、文脈は全然違うなっていうのを感じて。

(SAEKO)変わってきているよね。

(Saku Yanagawa)まず前提としてさ、アメリカ社会では今もこの制度的な不平等というか。とりわけ「人種間の不平等がある」と考えられている前提があるわけよ。で、白人がいまだに特権を有していて、マイノリティが苦しい。そういう状況とかでマイノリティが白人をいじったりとか、もしくは自分と同じ属性をいじることっていうのは、よくあるわけですよ。ヒスパニック系がヒスパニック系をいじったり、自虐したり。あとは黒人が黒人を……とか、ユダヤ系がユダヤ系を……とか。それから、黒人が白人をとか。そういうのは今でもたしかに多いやんか。ただ、そういう意味でいくと、白人のコメディアンが今、舞台上がってきてさ、「みんな、アメリカの国民の80%が嫌っているものはなにか、わかるかい? 中国なんだよ!」はさすがにないよ。その文脈だったら、すぐに今、キャンセルになるわけですよ。

だから「誰がどこでどのように言うか?」にそのギリのアウトかセーフかのラインがあるっていうことを理解せなあかんなと思うわけで。だから今、そのX(旧Twitter)の賛成意見でよく見かけたのが、「村本やぜんじろうのネタが許されてるんだったら、ゆかいな議事録だっていいだろ?」という意見があって。まあ、たしかに村本さんもぜんじろうさんも日本語でスタンダップコメディをやる際、結構政治ネタ、やらはるもんなっていうことなんだけど。でもここで言う、彼らのネタっていうものが具体的に何を指してるのか?っていう、この人の意図は僕はわからないけどさ。もし、それが政権批判ネタのことを言ってるんだったら、そことヘイトは分けて考えなあかんよなと思うねん。

だから僕、今からね、おそらく人生で最初で最後にぜんじろうさんのことを擁護しますけど。ぜんじろうさんがXで批判されていたネタってどういうのがあるか?っていうと、「安倍首相と森喜朗と麻生太郎が乗った飛行機が墜落しました。助かったのは誰でしょう? はい、日本国民」というのがあるねんって。で、それを引き合いに出して「いや、このネタはいいのに、中国いじりはダメなのはなんでなんだ?」みたいに言われてんねんけど。まあ、ぜんじろうさんは特定の政治家をいじってるのに対して、その「日本の人の8割が中国が嫌い」っていう風に日本で日本人を前にして断言するっていうのはまあ、意味合い違うでしょうって思うわけ。政権批判とヘイトは分けなあかんのかなと思うねんけど。

その上でよ? その上で、あとはもうクリエイティブな視点でそのネタ自体が面白くて、笑えるかどうかってのは人それぞれやし。そこは僕はジャッジできるところじゃないから。どっちかって言ったら、うーん。僕はその感覚はおそらくXにいる方と同じですよ。でも、おそらくそのXで言うてはる方は、いわゆるたぶん保守の意見を持ってはる方で、リベラルっていうか、左寄りのスタンダップコメディアンが何かと取り沙汰される中で、「ようやく自分たちの声を少しでも代弁してくれる、溜飲を下げさせてくれるような芸人さんが出てきてくれた!」みたいに思ったんやろうな。

でもそもそも、スタンダップコメディアンとして思うことやねんけど。特にこの日本のスタンダップコメディファンに思うことやねんけど。溜飲を下げされてくれるコメディを求めすぎやねん。別に僕らは街の声を代弁するためとか、あなたの思想を代弁するために舞台に立ってへんわけ。「そうだ、そうだ!」がほしいコメディアンなんて、ただの活動家やんか。あくまでも、コメディアンやから「笑い」が一番ほしいねん。もう、そこに尽きるやろ?っていうのを思うわけですよ。

コメディアンは「笑い」が一番ほしい

(Saku Yanagawa)それで言うと、おそらくもう1個、僕に批判が向けられる可能性があるなと思うねんけど。「いやいや、Saku。お前、偉そうに言うてるけど、そもそもお前も中国いじりネタをやってるやんか?」って言われるわけよ。まあ、たしかにしてるねん。でもこれ、何回も言うけど。そのネタは僕がアメリカでやってるやつやねん。こっちに来たら、否が応でも日本人も中国人も「アジア人」とみなされるやんか。で、その中でたとえばコロナの時期にアジアンヘイトとかが起きて。それに対しても「ああ、しんどいな」っていう思いをした人もたくさんいるし。そこで「これをジョークにせな」っていう風に思ってネタを作ったし。

アジア人同士の微妙な温度感とかもそれをジョークにしてきたつもりやねんな。でもそれって、アメリカでやるから意味があんねん。僕はもちろんそのネタ、日本ではやらへんし。そもそも日本の中で、日本人というマジョリティーとして、日本のお客さんの前で中国をいじるっていう文脈とそれは大きく異なるでしょう?っていうことを今、さんざん言ってきましたけど。実はこれね、全部ね、『スタンダップコメディ入門』という本に書いてます!

(SAEKO)そこにつなげたかったんや……。

(Saku Yanagawa)だからまだの方はこれ、ぜひご一読いただけるともう全てがわかるということで。そしてそしてその上で、今ね、「紀伊國屋じんぶん大賞」の方にもね、ノミネートされていますから。ぜひ投票してくださると嬉しいということで。今回、オープニングを全て使った壮大な宣伝やったんですよね。これをやりたかったっていうことでね、今週も行ってみましょう(笑)。

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<書き起こしおわり>

Saku Yanagawa ティモシー・シャラメSNLコント「ハマス」発言の米国内の反応を語る
アメリカ・シカゴ在住のコメディアンSaku Yanagawaさんが2023年11月15日配信の『Saku’s Radio from Chicago』の中で『サタデー・ナイト・ライブ』内のコントでティモシー・シャラメが「ハマス」と発言したことに対して「批判が殺到し、炎上している」という日本国内の報道についてトーク。アメリカ国内でのこのコントに対する反応を話していました。

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