西寺郷太 洋楽解説 あまちゃん『ゴーストバスターズ』の本当の意味

西寺郷太 洋楽解説 あまちゃん『ゴーストバスターズ』の本当の意味 西寺郷太TAMAGO RADIO

TBSラジオ『西寺郷太のたまごレディオ』でNONA REEVES西寺郷太さんが楽曲解説。ヒューイ・ルイス・アンド・ザ・ニュースを扱った特集の中で、NHK朝ドラ あまちゃんで杉本哲太さんが『ゴーストバスターズ』を度々熱唱していることの意味を語っていました。

(西寺郷太)まず、ヒューイ・ルイス・アンド・ザ・ニュースでこの曲を聞いてもらうかなと思っております。『I Want A New Drug』。

Huey Lewis And The News『I Want A New Drug』

(西寺)ゴースト・バスターズ!ということでですね、これ、『I Want A New Drug』という曲で、ヒューイ・ルイスの曲なんですけど。いまちょっと『ゴーストバスターズ』って言いましたけど。実はこれ、結構悲しいエピソードがあると言いますか。結構有名な話なんですけど、僕これ、わざわざ今ね、ヒューイ・ルイスを取り上げたのはこのリンクもあると思って取り上げたんですけど。

これ、まあ僕ら世代、40代前後の人だったら、『そんな話知ってるがな。何がポップ先生や?アホか!』っていう話なんですけど。でもまあ一応、改めて、いまだからこそ語り継がなければいけない、ゴーストバスターズの悲劇。これ、さっきの『I Want A New Drug』。ヒューイ・ルイス、いま聞いてもらってますけども。実はですね、それこそ『あまちゃん』でも杉本哲太さん歌ってました。『ゴーストバスターズ』、これはね、レイ・パーカー・ジュニアという人の大ヒット曲だったんで。映画の主題歌だったんですけども。僕、両方とも好きだったんですけども。

で、このレイ・パーカー・ジュニアという人が、めちゃくちゃ才能のあるギタリスト、ミュージシャンでして。先ほど僕、何気なくかけたニューエディションの『Mr.Telephone Man』も、レイ・パーカー・ジュニアの曲でありプロデュースなんですよね。じゃあ一回聞いてみましょうか。そのレイ・パーカー・ジュニアの一大ヒット曲です。これ。『ゴーストバスターズ』、聞いて下さい。

Ray Parker Jr.『Ghostbusters』

(西寺)はい、レイ・パーカー・ジュニアで『ゴーストバスターズ』。もう今ね、この曲好きだっていう人も多いと思うんですが。この曲はですね、1984年、映画『ゴーストバスターズ』の主題歌として全米1位の大ヒットとなりました。映画の世界的なヒットとともに、これはもう、すごいキャッチーな曲なので、それこそド田舎のスナックでも歌うような、杉本哲太さんにこだわりますけども。

これね、でもこのレイ・パーカー・ジュニアという人はこのヒット曲の前までは、非常になんというかポップで軽いところはあったんですけど、ミュージシャンズ・ミュージシャンと言っていいぐらいみんなに尊敬されてたわけです。10代のころからギタリストとして、カッティングの名手として名を馳せて。スティービー・ワンダーに誘われ、スティービー・ワンダーから電話がかかってきたんですけど、レイ・パーカー・ジュニアに。信じないから一生懸命スティービー・ワンダーが『Superstition(迷信)』という歌を一生懸命歌って、『俺、スティービーやで!』っていうことでね、言うたというぐらいの天才少年だったわけですよ。

それがまあ、自分でもレイ・パーカー・ジュニア&レイディオというグループでいい曲、いっぱいあります。で、『Mr.Telephone Man』、さっきのニューエディションの曲もプロデュースをしながらですよ、このゴーストバスターズでバコーン!といったんですけども。大ヒットしたんですが、この曲が盗作で訴えられる。パクリちゃうか?と。さっきのヒューイ・ルイス・アンド・ザ・ニュースの『I Want A New Drug』と似ていると訴えられるんです。最初は知らん!って言っていたんですけども、実はそのゴーストバスターズの映画のディレクターが元々『I Want A New Drug』を使いたかったのに、ヒューイ・ルイスがアカンし。まあ、ああいう感じの曲を作ってくれとたのまれたのを、ヒューイ・ルイスが断っていたということが判明しまして。

まあ、ヒューイ・ルイスの『I Want A New Drug』みたいな歌、作って!ということで作ったのが『ゴーストバスターズ』。それによって、レイ・パーカー・ジュニアは一時的にドカーン!とヒットしたけど、さっきまで、この曲まではスーパースター、むちゃくちゃすごい天才ミュージシャンと呼ばれていたのに、もうパクった奴や!ってことで、ものすごい落ちぶれるというか、みんなにアカン奴や!ってなるわけですよ。その上、さっきこのね、ポップミュージックのね、『M』という曲をテーマにこの『POP先生SHOW』をはじめましたけども、その曲にも似てるっていうことで。もうダブルで訴えられまして。

M『Pop Muzik 1979 』

(西寺)ってことは、ヒューイ・ルイスの『I Want A New Drug』も、ポップミュージックの『M』の方が古い曲だったので、それもパクリちゃうか?っていう話なんですけど。そこはまあ、問題起こらず。このレイ・パーカー・ジュニアだけがめっちゃ言われるという状況になりまして。その後、どうなったか?というと、このこと黙っておいてくれということで、ヒューイ・ルイスと話がつき、レイ・パーカー・ジュニアがお金を払ったのにも関わらず。映画会社がそういうオファーをしていたということもはっきりしたので、業界内でまあまあまあ・・・ということで。こっちも悪かったということで手打ちにしようみたいなことになったんですが・・・

あの、ヒューイ・ルイスが2001年にテレビ番組で『実はあれ、レイ・パーカー・ジュニアから金もらいまして・・・』ってことを『Behind the Music』っていう人気番組で言うてしもうたんですね。そしたらレイ・パーカー・ジュニアが『お前、そんなこと言うなよ!』っていうことで、『言うたやろ!』ということで、訴えまして。またヒューイ・ルイスを。約束を破ったということでね。ほいでこの盗作疑惑っていうのが、逆にヒューイ・ルイスも訴えられるという訳のわからん状態になり・・・

だから僕、これね、あまちゃんの中で杉本哲太さんがこの曲、しつこく歌ってたじゃないですか?これってだから、もしかしたら他にも言ってる人いるかもしれないですけど、僕あまり調べてないんで。なんかあれ、裏テーマとしてゴーストシンガーみたいなことがテーマになってたアレですよね?その鈴鹿ひろ美さん・薬師丸ひろ子さんのかわりに、むちゃくちゃ歌も上手いし才能があった小泉今日子さんが、ちょっと魔が差してというか時の流れで歌を歌ってしまったばっかりに、自分の実力をちゃんと見せることなく落ちぶれてといいますか、アイドルとしては上手くいかなかったということを、積極的にゴーストバスターズを推すことによってアピールしてるのかな?なんて思ったので、かけてみました。

どっちにしてもね、レイ・パーカー・ジュニアさんは素晴らしいですし。ゴーストバスターズ自体も僕、実はいいと思うんですよね。やっぱり『I Want A New Drug』よりも全然派手ですしね。はい。

<書き起こしおわり>

[参考]あまちゃんのゴーストバスターズについては、映画評論家の町山智浩さんもこのように語っていました。

(町山)グルグル回っていくところがあるんですね。その頃の話として。ただね、宮藤さんはものすごく考えてて。ゴーストバスターズを震災の時、トンネルの中で歌いながら歩いていくじゃないですか。大吉っつぁんが。でも、ゴーストバスターズって『ゴーストバスターズ』の合間に入る歌詞っていうのは、『こわくなんかないさ!』って言ってるんです。

(荻上)うんうん。

(町山)『I’m afraid no ghosts!』って言ってるんですね。レイ・パーカー・ジュニアが。だから、そういうところもちゃんと考えて、『こわくなんかないさ!』って言いながらトンネルの中を歩いていくっていうことになってるんですね。実際は。歌ってないですけど。その部分は。だからそういう歌の意味の裏の裏までちゃんとわかってやっていて。ちょっと拾ってきたのと全然違いますよね。

町山智浩 最終回前日にあまちゃんを語る 荻上チキSESSION22書き起こしより

タイトルとURLをコピーしました