映画評論家 町山智浩 『あまちゃん』を語る

映画評論家 町山智浩 『あまちゃん』を語る あまちゃん

TBSラジオ『赤江珠緒たまむすび』で映画評論家の町山智浩さんがNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』について語っていました。

(赤江珠緒)それでは毎週火曜日の『たいしたたま』、アメリカ在住の映画評論家 町山智浩さんのコーナーです。今週もカリフォルニア州バークレーのご自宅からお電話でのご出演です。もしもし、町山さん。

(町山智浩)じぇじぇじぇー。

(赤江珠緒・山里亮太)(笑)

(赤江珠緒)来ましたね、町山さん。

(山里亮太)驚きのあの言葉が。

(町山智浩)もう、じぇじぇじぇでしょう。これからは。じぇじぇじぇの鬼太郎ですよ。

(赤江珠緒)もうだってね、『スタートレック』やるってね、聞いてたから私、3作借りて見たんですよ!

(町山智浩)『スタートレック』ね、今回のやつね、ネタバレしないで話すことがほとんど不可能な内容だったんで、やめます!

(赤江珠緒)なるほど、やめますか!

(山里亮太)潔し!

(赤江珠緒)それで急遽、変更になって町山さんがお話したいというのがその、じぇじぇじぇでございます。

町山智浩 NHK朝ドラを語る

(町山智浩)すいません。TBSなんですけど、このラジオは。NHKの朝ドラの『あまちゃん』についてお話させていただきます!

(赤江珠緒)そうなんです、町山さん。ワルでしょ、町山さん。ほら、私裏で『モーニングバード』やっておりますし、山ちゃんは・・・

(町山智浩)赤江さん裏番組で、山ちゃんも裏番組ですよね?

(山里亮太)いや、僕は友人がやってるんで、僕は大丈夫です。

(町山智浩)あ、声がよく似た。

(山里亮太)そうそう、似た人が。「おはよう」なんて言ってますけど。

(赤江珠緒)そうですよ。

(町山智浩)山ちゃん、珠ちゃん、あまちゃんっていう感じなんですけど。

(赤江珠緒)そうそう。そんな感じでね。

(山里亮太)僕らは昼の再放送見てますからね。

(赤江珠緒)そうですよね。

(町山智浩)関係ないですけど、赤江さんって玉袋筋太郎さんが出てる曜日って出てないんですよね?

(赤江珠緒)はい。金曜日は出てないです。

(町山智浩)あ、金曜日は出てない。やっぱりそれは「タマ」が2つになっちゃうからですか?

(赤江珠緒)そうですよ。さすが2つ並ぶとブラブラするというか・・・

(山里亮太)で、さらに『金』曜日ですしね。

(町山智浩)それはちょっとマズいって感じですよね。はい、すいませんでした。

(赤江珠緒)何を言うんですか!?

(山里亮太)町山さん、何言ってんの?もう。

(町山智浩)すいません(笑)。あの、NHKね、僕実は朝ドラをずっと見てるんですよ。アメリカ来てから。やっぱりね、日本のテレビでどこ行っても必ず見れるのが朝ドラだったんですよ。

(赤江珠緒)たしかに海外でも配信してるんですってね。

(町山智浩)そうなんですよ。で、必ず日本のテレビが見れるチャンネルがあって。まあ、24時間やってなかったりするんですけど。朝だけとか夜だけとかだったりするんですが、それでも朝ドラやってたんで、ずーっと見てたんですよ。で、ずーっと見てるうちにいろいろ考えたんですけど、これは傑作の内の1つですね。

(赤江珠緒)『1つ』っていうことは?他には?

(町山智浩)他には、一番最高傑作だなと思ったのはね、『カーネーション』なんですよ。

(赤江珠緒)あー!ですよねー!あれは良かった。本当に。町山さんね。小林薫さんのお父さんもお母さんも。

(町山智浩)そうそう。小林薫のお父さんがさ、家だと娘をバンバン殴ったりしてるんだけど、他所行くと娘のために土下座して回るようなお父さんなんですよね。

(赤江珠緒)良かったですよ、あれ。もう泣きました。何回も。

(町山智浩)人間の二重性がすごく良く描けてて、1人の人が必ずそのいくつもの面があって。そういうところがね、すごく立体的でうまかったんですけど。あと、セリフもナレーションも使わないで表現していくところとかね。恋愛をね。

(赤江珠緒)そうそうそう。アドリブに見えるようなね。

(町山智浩)そう。あの一夜だけ契りを交わすね、あのドラマとかすごかったですね。ただあれは文芸作品ですよ。ほとんど。『カーネーション』は。で、こっちの、もうタイトル言わないですけど、岩手県で若い海女さんががんばるドラマはですね、こっちは楽しいんですよ。

(山里亮太)そう!楽しい!

(赤江珠緒)たしかにね。

(町山智浩)ものすごい楽しいんですよ。で、子供の頃ってすごく楽しみでそのことばっかり、その番組のことばっかり考えることってなかったですか?1つの番組の。

(山里亮太)ありました。

(町山智浩)何でした?

(山里亮太)僕ね、『Dr.スランプアラレちゃん』とか。

(赤江珠緒)あー。ドリフ。

(町山智浩)あ、そうだったんだ(笑)。僕は子供の頃、すごく楽しかったのは『ムー一族』とかね。『寺内貫太郎一家』とか。TBSのドラマだったんですよ。あれ、ドラマなんだけど、バラエティになっていて、突然ミュージカルになったりとかコントが入ったりっていうやつだったんですよ。あと、カメラに向かって、要するに視聴者に向かって出演者が話しかけたりとか。ものすごいアバンギャルドなことやって、毎回何が起こるか分からなかったんですよ。

(赤江珠緒)あ、それで言うと私は『プロゴルファー祈子』とかかな。

(山里亮太)どれで言うと?

(赤江珠緒)御存知ですか?

(町山智浩)(笑)違う意味ですよ、それ。

(赤江珠緒)次、何が来るか分からないっていう。

(町山智浩)デタラメな展開だからですね(笑)。

(赤江珠緒)そうそう。

(町山智浩)よくそんなの見てましたね。

(赤江珠緒)あのへんは見てましたね。

(町山智浩)マニアですね(笑)。はい。でもそういうね、子供の頃の『今日はあのテレビがあるから家に帰ろう!』みたいなね。で、翌日学校に行くとみんなそのテレビの話をするっていうの、あるじゃないですか。『昨日見た?』みたいな。あれがね、久々にこの岩手県を舞台にしたNHKの海女さんを主人公にしたドラマではね、そういう興奮が蘇ってくるんですけど。

(山里亮太)そうだなー。

(町山智浩)で、本当に何もかも結構泣けるんですけど。とにかくこのドラマがいいのは今までのNHKの朝ドラっていうと、必ずあったNHKの朝ドラの『ヒロインはすごく明るくて、彼女が微笑むとまるでお日様のようだ』みたいなセリフが出てきたりするじゃないですか。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)『どんなに辛い時も、愛だけは忘れないでね』とか言ったりするじゃないですか。そういうセリフが一切無いんですよ。今回。

(赤江珠緒)たしかにね。

(町山智浩)これはね、宮藤官九郎さんがものすごく、『これやっちゃダメだ』と思ってやってないんですね。

(赤江珠緒・山里亮太)ふんふん。

(町山智浩)ああいうセリフを言うじゃないですか。現実離れしたね。『家族っていうのはな・・・』とかいう、菅原文太さんが言いそうな感じのね。そういうセリフを言うところで、ドラマって完全に崩壊しちゃうんですよ。現実感がなくなって。心がスッと離れていくんですね。『こんなこと言わねーよ』みたいなね。それがないんですよね。

(山里亮太)ない。たしかにない。

(赤江珠緒)たしかにそうだ。この間も、あの琥珀をね、勉さんが大事にしてたのを渡したのに、いいセリフ言ったのに、置いていくっていうね。

(山里亮太)あ、そういうボケのシーン。

(町山智浩)そうそうそう。いいセリフを言ってドラマっぽくなったなと思ったら、それすぐ壊すんですよ。そこはうまいなーと思ってるんですけどね。あとね、結構うまいのはナレーションがうまいんですよ。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)あの、NHKの朝ドラってナレーション、すごいクドいんですよ。

(山里亮太)あ、そうなんですか?

(町山智浩)あれはね、要するに洗い物とか片付け物をしててもストーリーが分かるようにしてるらしいんですよ。

(山里亮太)耳に入ってきただけで。

(町山智浩)そう。だから『梅ちゃんは思った』とか言って、心を全部語っちゃうんですよね(笑)。ヒロインのね。で、とにかく見てなくても分かるようにするためにナレーションをクドくしてるんですけども。で、『カーネーション』はそのナレーションをかなり減らしちゃったんで難しかったかもしれないんですけどね。で、このクドカンの、海女を主人公にしたドラマのナレーションは宮本信子さんが、主人公のアキちゃんっていう海女を目指している高校生の女の子のおばあちゃんを演じてて。宮本信子さんがナレーションやってるんですね。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)ただ、宮本信子さんがそのグズグズしている自分の孫を海に突き飛ばして、それで海女になる決心をさせるシーンがあるんですけど。これはまあ、ドラマ上かならずどこか突き落とすっていうのは、あるんですよ。人を決心させる時。

(赤江珠緒)そうですか。

(山里亮太)あれ、あるあるなんだ。

(町山智浩)これはね、ドラマのテクニックで。ありますよ。これ、キルケゴールが言っていた『Leap of Faith』っていう言葉ですね。キルケゴールっていうのは哲学者ですけども。『何かに飛び込む』っていうことなんですよ。これもう、ドラマの基本なんですけど、このシーンのところで、宮本信子さんのナレーションで、『アキは思った。なんてことしやがるんだ、このクソババア!』って言うんですよ。

(山里亮太)言ってた!

(町山智浩)そう。それを宮本信子さん自身が読んでるっていうね。

(山里亮太)自分に対してですね。あれ。

(町山智浩)そういうところがうまいですねー。だって、NHKで『このクソババア、なんてことしやがるんだ!』なんて普通出てこないですよ。ヒロインの言葉ですからね。

(赤江珠緒)いや、今回そういう意味ではたしかになんか盛りだくさんというか。結構NHKじゃない局のパロディー、ありますよね。

(町山智浩)パロディーあって。NHKね、結構朝ドラでは何とか冒険しようとして来て、今までずっと失敗してるんですよ。これね、朝ドラで前『つばさ』っていうのがあって、それはね、『寺内貫太郎一家』とかのTBSのバラエティドラマをやろうとしたんですよ。で、西城秀樹さんが出てきて。『寺内貫太郎一家』に出てきたね。で、全然意味なくブーメランを持ってるっていうシーンがあって、それは西城さんの『ブーメランストリート』のパロディーなんですけど(笑)。

(赤江珠緒)あー。そっかそっか。

(町山智浩)そういうこと、やってたんですけど、あまりうまく行かなかったんですよ。で、逆にさっきのNHK的な朝ドラの感動的なものをひっくり返そうとして作られたのが、この前にやっていた『純と愛』ってやつだったんですよ。

(山里亮太)はいはいはい。

(町山智浩)『純と愛』っていうのはそれをやろうとしすぎてですね、どんどん見てられないものになっていったんですよ。NHKの絶対やらない朝ドラのタブーばっかりをやっていったんですよ。まず主人公たちが全員嫌なヤツっていうね。で、お父さんとお母さんはみんな不倫してるとかね。主人公の相手役の風間俊介くんは人の心が読めて、しかも死んだ自分の双子の弟の心が中に入ってる二重人格者っていうSFみたいなことやってるんですよ。

(赤江珠緒)たしかにそうでした。

(町山智浩)で、すごい能力を持った人が次々と出てきて。『人のニオイが嗅げる』とか。あと、(速水)もこみちさんは『10メートルの高さからオリーブオイルをかけられる』とか、そういういろんな技を持っている人が出てくるんですね。

(山里亮太)それ、いろんな番組、混ざっちゃってない?町山さん。

(町山智浩)で、またね、ひどいのが『絶対にお母さんが良い人』っていうのをひっくり返そうとして、若村麻由美さん演じるお母さんがひどいんですよ。

(赤江珠緒)そうでした。

(町山智浩)そう。息子のガールフレンドである純が部屋に来た時に、「アンタ、ゴキブリみたいな女ね」って言うんですよ。そんなこと言いません。『一体どんな宗教に入ったんだ、お前は?』って思いましたけど。

(山里亮太)賛否両論だったんです。

(赤江珠緒)ちょっとちょっと、町山さん。いろいろ混ざってるんじゃないですか!?

(町山智浩)いやいや、いろいろ混ざってるんですけど(笑)。

(山里亮太)町山さん、あまちゃんに帰って来てもらっていいですか?

(町山智浩)はい!あまちゃんに帰るとですね、とにかく何もかもいいんですよ。僕はね、このドラマを見ててね、生まれて初めてっていうかね、まさか小池徹平くんに感情移入するとは思わなかったですよ。

(山里亮太)わかる!

(赤江珠緒)ああー、そうですか。小池徹平くんに。

(町山智浩)小池徹平っていったらジュノン・スーパーボーイですよ。スーパーモデルですよ。それがね、アキちゃんにフラれちゃうんですよ。ヒロインに。アキちゃんは仮面ライダーが好きになっちゃうんですよ。

(山里亮太)あの高校の先輩ですね。種市さん。

(町山智浩)仮面ライダーフォーゼの人で、名前が・・・

(山里亮太)福士くん。福士蒼汰くん。

(町山智浩)福士蒼汰くん。そう、背が全然違うんですよ。小池徹平くんだと。並ぶと。で、小池徹平の妹は橋本愛ちゃんなんです。橋本愛から「兄貴は全然見込みないし」って言われちゃうんですよ。

(山里亮太)そう。モテないんですよ。

(町山智浩)モテないんですよ。小池徹平くん。顔はいいんだけども、オタクだからモテないの。まさか俺、人生の中で小池徹平に感情移入するとは思わなかったですよ。本当に。

(山里亮太)結構、モテない代表ですからね。ウジウジして。

(町山智浩)モテない代表。しかも小池徹平、アキちゃんダメだったから諦めて、職場の同僚の安藤玉恵さんとデキちゃうんですよ。あの『あきらめの夏』の感じ。

(赤江珠緒・山里亮太)(笑)

(町山智浩)あのやるせなさ。切なさ。

(山里亮太)その時の感情に身を任せて。近くにいる女の人に。

(町山智浩)で、ちょっとしたらずっと安藤玉恵、女房気取りでおっぱい押し付けてるんですよ。小池徹平に。

(山里亮太)あの事務員の方がずっとね、イチャイチャするの。

(町山智浩)そう。あの描写。NHKでは無い生々しさですね。まあ、本当にね、僕は『純と愛』は森下愛子様目当てでずっと見てたんですけど、ずっと心にトラウマをいっぱい負ったんでね。本当に今回、癒されてますけど。海女さんを主人公にしたドラマに。

(赤江珠緒)いやいや、もうそのね、裏のテレ朝にもストーブ徹平さんに似た人、いますよ。

(町山智浩)ストーブ徹平(笑)。

(赤江珠緒)羽鳥慎一さんはですね、いろいろあってしばらくずっとコンロを見つける日々をしてましたからね。コンロ慎一さんもいますから。

(町山智浩)コンロさん?小池徹平、かわいそうですね。これからずっと『ストーブさん』って言われるんですよね。いろんなところでね。

(山里亮太)それは言われますよ。ストーブさん。

(町山智浩)かわいそうだなってね。あとやっぱり、小泉今日子ですよね。小泉今日子さんですよ。

(山里亮太)そう!最っ高ですよね。

(町山智浩)ね。今まで、NHKの朝ドラってずっと昔のアイドルをお母さん役で出してるんですよ。ずーっとずっと。薬師丸ひろ子さんも出てたし、原田知世さんも出てたんですね。で、今までみんなね、いいお母さんなんですよ。ずっと。和久井映見さんとか。ところが小泉今日子、めっちゃくちゃタチの悪い、元ヤンのお母さんなんですよ。

(山里亮太)乱暴なんですよね。いろいろ言い方とか。

(町山智浩)乱暴でいきなり娘に「ブス!」だの「バカ!」だの言いながら、いつも酒飲んでるんですよ。アルコールを手放さないの。あれ、リアルですよー。僕ね、小泉今日子さんに昔、1987年ぐらいに彼女がアイドルだった時にインタビューしてるんですよ。

(赤江珠緒・山里亮太)ええー!?

(町山智浩)その時に何の話したかっていうと、紅白歌合戦が終わった後、彼女は自分が住んでいた厚木の友達の暴走族の車に乗って江ノ島に初日の出を見に行ったって話だったんですよ。

(山里亮太)ええっ!?そんなのして、よかったんですか?

(町山智浩)で、暴走族の一斉検挙に捕まったって。一緒に(笑)。検問にひっかかって。

(赤江珠緒)そんな話を、その当時に!?

(町山智浩)そうです。小泉今日子さん、してくれましたよ。インタビューした時。

(山里亮太)もう役作り、バッチリじゃないですか。これもう。

(町山智浩)だから本当にヤンキーだから、無茶苦茶おかしい。うまいんですよ。もう絶妙ですよね。本当に。

(赤江珠緒)へえー。だから本当そういう、ユイちゃんのお母さんも、元アナウンサーの八木亜希子さんっていうね。そういう元々持ってらっしゃるものをね、役に活かしてるっていうところありますね。

(町山智浩)そうそう。元局アナでね。元局アナっていう話になってるんですよね。あとほら、美保純さんが出てて、惚れっぽい海女さんで、昔アイドルだったっていう話も本当ですよね。美保純さん、本当にアイドルでしたよ。昔。

(山里亮太)あ、そうなんですか。

(町山智浩)『制服処女のいたみ』っていう日活映画があって、それですごかったですよ。もう大人気で。ディスコクイーンで。あのへんも全部、本当の話なんですよ。だから。あのへんがすごいうまいなって思いますね。だから裏の裏の裏みたいなものまで描けてるんですね。

(赤江珠緒・山里亮太)うんうんうん。

(町山智浩)あとやっぱりね、演技が無茶苦茶うまいのはね、杉本哲太さんね。

(山里亮太)あー!大吉っつぁん。

(町山智浩)もうすごいいいですよ!あの人ね、駅員さんなんですよ。三陸の三陸鉄道北リアス線っていうのがモデルになってるんですけど。単線の、二両編成ぐらいの三陸を走ってる電車なんですけども。そこの駅長さんで、何とか潰れそうだから盛り上げようとして海女さんと地元アイドルってことで盛り立てて、何とか経済的に救われようとしてるんですね。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)で、一生懸命がんばってるのが杉本哲太さんなんですけども、この人が昔小泉今日子さんに惚れてたって設定なんですけどね。うまいんですよ、芝居が。本当に。昔、『紅麗威甦(グリース)』ですよ、この人。

(赤江珠緒)えっ?紅麗威甦?

(町山智浩)横浜銀蠅の弟分だったんですよ!杉本哲太さん。知らないですか?

(山里亮太)知らないです。もう役者さんとしての杉本哲太しか。

(町山智浩)『つっぱることが男のたった一つの勲章』だって信じてた人なんですよ!あ、あれは違うか。あれは嶋・・・

(山里亮太)それ、嶋大輔さんでしょ。

(町山智浩)それは違う人でしたけど(笑)。そういう人だったんですけど、全然違う。演技派ですよ、もう抜群のね。で、歌がね、『ゴーストバスターズ』歌うんですけどね。

(赤江珠緒)そうそうそう。

(町山智浩)『ゴーストバスターズ』しか歌えないんですけど。

(山里亮太)サビの部分しか歌えないんですよね。『ゴーストバスターズ!』しか言えないんですよね。

(町山智浩)『ゴーストバスターズ』しか歌えない(笑)。あれもよくてね、あの『潮騒』っていう昔、山口百恵さんが出てたアイドル映画で海女さんの映画があるんですよね。三島由紀夫原作の。

(山里亮太)キーワードになってくるんですよ、これが。

(町山智浩)そうそう。それをベースにして、要するに海女さんが浜辺で火を焚いて、焚き火をして、自分のボーイフレンドに「あたしのことが好きなら、この炎飛び越えて来い」って言うんですよ。山口百恵が。三浦友和さんにね。

(赤江珠緒)そう。それで結婚されたっていうような出会いですかね。お二人は。

(町山智浩)そうそう。それでエッチするんですけどね。その映画の中ではね。で、それを再現するシーンがあって、火を焚いて「この炎を飛び越えて来い」って言ったところでヴァン・ヘイレンの『JUMP』がかかるんですよ。このドラマ(笑)。

(山里亮太)そうそう!

(町山智浩)『JUMP!』って。杉本哲太さんがデイヴ・リー・ロスの真似して『JUMP!』って言ってるんですよ。こんなバカげた話はないですよ。これ。

(赤江珠緒)結構盛りだくさん。いろいろ・・・

(山里亮太)いや、小ボケめっちゃ面白いの多いですよね。

(町山智浩)メチャクチャおかしいですよ。しかもそのアイドルになろうっていってアキちゃんと橋本愛ちゃん、ユイちゃんが2人で『潮騒のメモリー』っていう歌を歌いますよね?あれがまた、『潮騒』っていうのはその『潮騒』にひっかけて、しかも『潮騒のメロディ』っていう高田みづえの歌にもひっかけてるんですよね。

(山里亮太)あ、そうなんだ。何か元があったんですね。

(町山智浩)そうなんですよ。でも歌詞が突然ペドロ&カプリシャスの『ジョニィへの伝言』が途中で入っていて、『ジョニィに伝えて 1000円返して』ってデタラメなんですよね。

(山里亮太)あ、そうなんだ。ああいう歌があったんじゃないんですね。

(町山智浩)デタラメなんですよ。あれ全部。いろんな歌あつめてるんです。

(赤江珠緒)でもね、これだけいろんなものを組み込んでいくと、とっ散らかりそうですけどね。そうなってない。

(町山智浩)とっ散らからないのがすごいなって思いますね。やっぱりね、俳優たちがもう・・・やっぱり宮藤官九郎さんは劇団の人たちをすごく詳しく知ってるから、誰がどういうことが出来るって分かってて、それでもう絶妙に配置してるんですよね。だからこれもオーケストレーションみたいな感じですよね。抜群の演奏者を集めて、オーケストレーションしてるって感じでこれはすごいなって思いますね。

(山里亮太)これまた、個性的なキャラクターも多くて、これが本当随所に笑いを取ってくんですよ。また。

(赤江珠緒)秋元康さん役のね。

(山里亮太)古田新太さんね。

(町山智浩)もう、ポンポンポンポンギャグが出てくるんですけど、やっぱりすごかったのは皆川猿時さんですね。

(山里亮太)そう!あ、三陸高校の潜水土木課の先生。

(町山智浩)あのモミアゲはすごいんだけど、オネエの人。首をかしげてるうちにビートたけしになってコマネチをするっていうね。あれ、すごいですよねー。あの人、なんか昔の浅草芸人みたいなんですね。財津一郎さんとかね、あのへんの感じなんですね。あとは、伊勢志摩っていう人が出てるでしょ?あの、ブスーッ!っとした感じでいつも機嫌の悪そうな・・・

(山里亮太)はい、舌打ちすぐする、新しく来た事務の。

(町山智浩)漁協の職員さん。あの人、時々ヘンなこと言うんですよ。あれがすごくて、この間すごかったのはフラれちゃったアキちゃんが海に飛び込んで。で、風邪ひいて、風邪ひいても、ドテラを上からかけてあげても「イヤだ!」っつって取っちゃうっていうね。また「風邪ひくからドテラ着なよ」っていうとまた取っちゃうっていうの繰り返してて。で、それについてですね、「それ、ジェームズ・ブラウンかよ!」って言うんですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)あ、「ガウンショーか?」って言うのかな?伊勢志摩さんが。これはジェームズ・ブラウンっていうソウルシンガーが、昔コンサートの終わりの方でフラフラになりながら歌い続けて、それに対してみんながガウンをかけてあげて『もういいよ』ってステージの横に引っ込ませようとするんだけど、そのガウンを振りほどいて、またステージの真ん中に来てマイクつかんで歌うっていうのを繰り返すっていうパフォーマンスをしてたんですよ。

(赤江珠緒)あ、1個1個そういうエピソード、パロディーだったりするんだ。

(町山智浩)そうそう。あれはガウンショーっていって、忌野清志郎さんが真似してましたけど。で、そのガウンショーっていうのをNHKでやったっていうのがすごくて。で、その後、伊勢志摩さんがこう言うんですよ。「まあ、分かるやつだけ分かればいい」って言うんですよ。これ、NHKでよく言ったなって思いましたよ。「分かるやつだけ分かればいい」って。

(山里亮太)説明的に映像入りますよね、あれ。

(町山智浩)ちょっと入りますけどね。これ、そこらへんNHKで「分かるやつだけ分かればいい」ので一番すごかったのは、サンドイッチマンっていう芸人さんがいるじゃないですか?あの人たちが一回NHK出た時に「お前は本当にのんきだなー。みやすのんき?」っていうギャグをカマしたことがあって。『みやすのんき』っていうのは80年代の『やるっきゃ騎士(ナイト)』っていうのを書いていたエロ漫画家の名前なんですよ。

(山里亮太)セクシー漫画の。

(町山智浩)そう。そんなことを言っても誰も分からない(笑)。それってとんでもないギャグだったですけどね。

(赤江珠緒)へえー!

(山里亮太)そんなの、いっぱいありますよね。中にね。

(町山智浩)もう、山ほどあるんですけど、とにかく何もかも最高なんですけどね。でもね、これ、僕本当に笑いながら見てるんですけど、これ舞台が三陸なんですよね。で、三陸でですね、かならず毎日日付が出るんですよ。今、ドラマが2008年か9年。で、◯月◯日って出てきて。これ、ずーっと日付が正確に出て行くと、最終的には2011年の3月11日になるような気がするんですよね。

(赤江珠緒)あー。

(山里亮太)あの日ですよね。震災の・・・

(赤江珠緒)三陸ですしね。

(町山智浩)大震災があったんですけど。三陸鉄道っていうのは、かなり震災で被害を受けるんですよ。この杉本哲太さんとか荒川良々さんが働いてるね。ところがその後ですね、震災でかなり被害を受けたわずか5日後に、三陸鉄道の人たち、『三鉄』っていうんですけど、ものすごい必死で働いて部分的になんですけど、運転を再開させたんですよ。奇跡の再開だったんですよ。で、地元の人たちにもちろん足を与えたのと、やっぱり勇気を与えたんですね。だからこのドラマを見てると、みんな本当に杉本哲太さんとかはっきり言ってボンクラばっかりに見えるんですけど、彼らは震災の後、英雄になったんだと思いますよ。

(山里亮太)うーん。そこらへんまで描いてくのかなー!?

(町山智浩)分からないですけどね。本当にね、もうどうなるのか分からないけども、これはすごいことになって。今、秋元康そっくりのが出てきて、何かAKBみたいになってますけどね。

(山里亮太)そうそう。『GMT47』ね。

(町山智浩)そうそうそう(笑)。これから東京編で一体どうなるんだろう?って思いますけど。本当にもう、毎日これだけは楽しみですよ。

(山里亮太)いや、僕もです。

(赤江珠緒)ハマってるなー。

(町山智浩)すいませんでした。裏番組を。他局の。

(赤江珠緒)いや、たまむすびの前にやってますからね。

(山里亮太)昼ですよ。僕らが見てるのは昼です!昼と、土曜の再放送。

(赤江珠緒)『あまちゃん』見て、たまむすびに来ていただくのがちょうどいい。

(町山智浩)そうですね。両方見てもらおうっていうね。すいませんでした。掟破りで。

(山里亮太)掟破りはいつものことですよ。町山さん。

(赤江珠緒)町山さんはワルだよ。町山さんは(笑)。

(町山智浩)すいません、本当に。ごめんなさい。

(赤江珠緒)ありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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