久米宏と町山智浩 ドナルド・トランプ大統領誕生を語る

久米宏と町山智浩 ドナルド・トランプ大統領誕生を語る TBSラジオ

町山智浩さんがTBSラジオ『久米宏ラジオなんですけど』に電話出演。2016年アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプさんが勝利したことについて話し合っていました。

(久米宏)今週のテーマは「好きな大統領」。お電話がつながっていまして。まず、アメリカ カリフォルニア州バークレー在住の映画評論家、町山智浩さんです。最近は政治評論家になっちゃったみたいでね。あちこちでテレビに出てアメリカ大統領選について語っているんですが。彼、この番組にこの間に出た時に「もうヒラリーに決まっていますよ」って言ってたの、覚えてます?

(堀井美香)(笑)

(久米宏)「決まっていますよ。ヒラリーですよ、次の大統領は」とそうおっしゃっていた町山智浩さんと電話がつながっております。もしもし?

(町山智浩)はい、どうも町山です。

(久米宏)ちょっと声が枯れているようですが、大丈夫ですか?

(町山智浩)ああ、ちょっと喉が枯れています。すいません(笑)。

(久米宏)この間、ニューヨークの街角でテレビに出ていたのを拝見していたんですけども。

(町山智浩)ああ、そうですか。ありがとうございいます(笑)。

(久米宏)風邪ひいたんじゃないですか? 声の具合は大丈夫ですか?

(町山智浩)ああ、喉ガラガラです。はい。すいません(笑)。

事前予想を覆したトランプの勝利

(久米宏)そんなことよりも、町山さんは「間違いなくヒラリーだ」とおっしゃっていたんですが。まあ、大方のマスコミの予想を覆してドナルド・トランプが圧勝に近い形で勝ったんですが。これはどうしてこうなっちゃった?っていうことなんですけども。

(町山智浩)まず、「圧勝」っていうか一般投票と言うんですけども、得票数はヒラリーさんの方が20万票多いんですよ。

(久米宏)で、選挙人で勝ったと。

(町山智浩)はい。選挙人数というので大統領選は決まるんですけども。それで着実なところ……いわゆる「ラストベルト」と言われる五大湖地方の、かつての工業地帯の票だけを徹底的にトランプは抑えることで、得票数が少ないのに勝利するという形になりましたね。

(久米宏)それはわかっているんですが、問題はヒラリーがもっと……得票数では上回ったとおっしゃっていましたけども、「とりあえず女性票はほとんどヒラリーに行くだろう」みたいな予想とか、ガラスの天井をぶち破るのを応援する女性がいっぱいいるんじゃないか。若手のヒスパニックだとかそういった人たちがもっとヒラリーに投票するんじゃないかと思われていたのが、ヒラリーへの投票は数では勝ったんですけども、思ったよりもはるかに伸びなかった。この原因はなんですか?

(町山智浩)そうですね。今回、アメリカで事前の調査データをもとに予測されたものは全部外れたんですね。その選挙の投票日の当日の朝までほとんどが、事前データからだいたいヒラリーの勝利は80%と予測していたんですが、それよりも前に、データを一切使わないで……要するに聞き込み調査のデータを一切使わないでトランプの勝利を言い当てていた人がいるんですね。

(久米宏)うん。

(町山智浩)大学教授なんですけども、アラン・リクトマンという人です。その人はね、一切データを使わないで、13のポイントにその候補が当てはまるかどうかだけを見て、この人が大統領になるかどうかを決めるんですよね。それは、いろんな要素があって、「スキャンダル」とか「現政権の人気」とか、そういったものが要素に入っているんですけども、今回のトランプの勝利に関しては13のポイントのうちの2つに当てはまる「カリスマ性の有無」っていうのがあるんですよ。で、それがトランプの方がカリスマ性がはるかにあった。それが勝利を決定したんだという風にそのリクトマン氏は分析していますね。

(久米宏)カリスマ性?

(町山智浩)カリスマ性だと言っているんですよ。まあ、「この人でしかない感じ」。一種の教祖的な魅力を……

(久米宏)つまり、言い方を変えるとヒラリー・クリントンは見飽きたということにもなりますよね?

(町山智浩)そう……ですね。

(久米宏)もうさんざん見てきた。ずっと前からずっとあったんだけど、ドナルド・トランプは見たことがない。なにするかわからないっていうことですか? このカリスマ性っていうのは?

(町山智浩)(笑)。そうですね。だから変革を求めていたんで。とにかく50年間ずっと……衰退してきた工業地帯にいる人たちは50年間ずっと変わらなかったわけですから、決定的に変わるものだったらどんなものにでも賭けてみるっていう状況ではあったんですよね。

(久米宏)なるほど。

(町山智浩)で、特に彼らは共和党にも失望していたので。途中から、トランプと共和党の仲がどんどん悪くなっていって。共和党がいままでなにもしてこなかったことをすごくトランプが責めたんですが、そのたびに、共和党を叩けば叩くほど、支持率が上がるという状況になりましたからね。

(久米宏)うん。

(町山智浩)だからそれは民主でも共和でもない、まったくわけのわからないものであったことが最大の勝因だったと思いますね。

(久米宏)で、今後なんですけども。まだ就任式もやっていないんですけど。こんだけ、特にカリフォルニアあたりに住んでいる人たちは、「カリフォルニアは独立した方がいい」なんて言っていることも聞こえてきますけども……

(町山智浩)(笑)。そうですね。

(久米宏)これだけイメージが……たとえばカリフォルニアに住んでいるような人たちから見てイメージが悪い大統領だったら、超マイナスのところからスタートするわけですから、ちょっとまともなことを言っただけで評価が上がるみたいなことがこれから起きる可能性はあるのかな? と思うんですけども。どう思います?

(町山智浩)はい。でもうちの奥さんとか娘とか、娘の友達とかの間では、やはり「女性のアソコを触っても俺はOKだ」という人が大統領になって、それで女性が大統領になれなかったというのは女性たちにとっては非常な屈辱なので。これをまあ、女性たちがその後支持するかどうかは非常にわからないところはあるんですけども。

(久米宏)はい。

(町山智浩)で、カリフォルニアが独立したりね。僕なんか、だから「オランダかカナダに行った方がいいんじゃないの?」っていう話をしたんですけども。まあ、カミさんと娘はそうじゃなくて、「4年後のためにいまから戦いを始める」って言ってますよ。

(久米宏)二期はやらせないっていうことですね。

(町山智浩)そうですね。そういう、マイケル・ムーアみたいにもう、「4年後を目指していまから戦おう!」って言っている人もいますね。「だから、カナダには行くな!」って言っている人もいます。

(久米宏)町山さんご自身の勘とか本能では、どうなると思いますか? これから4年。

(町山智浩)わからないですけど、僕、国税を払うのがすごく嫌ですね。税金を払っていなかった大統領のためにね。18年間、税金を払っていなかったわけですから。トランプは。なぜ、そのために僕が税金を払わなきゃいけないんだ?っていう気持ちはありますよね。

(久米宏)うーん。彼はある程度の大統領にはなれますかね?

(町山智浩)もういまからすでに、オバマケアに関してもトランプと共和党との対立が始まりそうですね。トランプは「オバマケアを完全撤廃する」とは最初からずっと言っていないんですよ。で、共和党は「完全撤廃する」と言っているんですが。まあ、トランプを支持するような人たちは、医療保険が完全になくなったら非常に困る人たちが多いですよね。だからそれに関してはすでに共和党との間で妥協しているんじゃないか? みたいなことで、もう対立が始まりつつあるんですけども。

(久米宏)うん。

(町山智浩)トランプは共和党ともすごく、国内の経済政策とかだいぶ違うんですよ。「公共事業をする」って言ったりね。「支出を増やす」って言っているわけですけども。

(久米宏)言ってみれば大きな政府だっていう話ですもんね。

(町山智浩)そうなんです。左翼的なんですよ。はっきり言って、国内に対しては。ポピュリズムですから。福祉が増えるわけですよ。だからその段階で共和党とも対立するし。すごく、共和党とも民主党とも対立するような独自路線なので。トランプは。どうなっていくか、わからないですよね。その点は。

(久米宏)そういう意味じゃ、面白いですね。

(町山智浩)でも、減税して公共事業するって一体どうやるのか? と思いますよ。それは。

(久米宏)自分のお金を出したって、たかが知れているしね(笑)。どうするんでしょうね?

(町山智浩)トランプ自身はずっと赤字申告していて税金を払っていませんから、あんまりお金がないっていうことですよね(笑)。どうするんだろう?って思いますが。ただ僕、すごく興味があるのは、トランプがインドとのつながりがすごく強いことです。

(久米宏)えっ?

(町山智浩)僕ね、ニューヨークの道端でめちゃくちゃ取材している時に、途中で「トランプに最大の支援をしている」っていうインド系の大富豪と出会ったんですよ。道端で。で、「これからはインドとのつながりを強くする」という風に彼が言っていましたんで。トランプはロシアとインドとのつながりが強くなっていくと思います。

トランプを支援したインド系大富豪

(久米宏)ほー! 中国の立場が見ものですね。

(町山智浩)アメリカ・インド・ロシアという、いまだ歴史上かつてないような新世界秩序が生まれる可能性があるかなと思います。

(久米宏)ほー! そうするとロシアはインド洋につながる道ができるし、すごいですよね。

(町山智浩)そうなんですよ。それで、中国を包囲するという形で。もう全く予測がつかない世界秩序になっていくんじゃないかな? という風に思いますね。

(久米宏)あの、喉を大切にしてください。ありがとうございました。

(町山智浩)すいません(笑)。

(久米宏)お大事に。

(町山智浩)どうも、ありがとうございます。

(久米宏)ありがとうございました。

(堀井美香)ありがとうございました。カリフォルニアから町山智浩さんでした。

<書き起こしおわり>

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