松尾潔・宇多丸が語る 日本にブラックミュージックを定着させる方法

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音楽プロデューサーの松尾潔さんがTBSラジオ『タマフル』に出演。大学時代からの知り合いである宇多丸さんと、日本にブラックミュージックを定着させる方法について語り合っていました。


(宇多丸)それでは、今夜のゲストをご紹介いたしましょう。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、松尾”KC”潔さんです!どうも、いらっしゃいませー。

(松尾潔)こんばんは。

(宇多丸)こんばんは。よろしくお願いします。TBSラジオはね、ご出演はされていると思うんですけど。

(松尾潔)ずーっと昔からTBSはね、ストリームの頃から出させてもらって。1回もレギュラーとかの話はないんだよね(笑)。

(宇多丸)なんでですかね?

(松尾潔)それぐらいがちょうどいいんだろうね(笑)。けど、こんなにコンスタントにゲストに呼んでくださって、ありがたいなと思うんだけど。

(宇多丸)ゲストではちょいちょい来るってことで。

(松尾潔)1年に何回か。

(宇多丸)まあ、他局でのさ、番組がずっとあるじゃないですか。そっちの意識なんじゃないですか?

(松尾潔)いや、そうじゃないと思うんだよねー。でもね、俺TBSラジオにこうして出させてもらっても、他のAM局に本当波及しないよね。

(宇多丸)それはね、AM局とかAMの体質もあるんじゃないですか?旧態依然としたところ、ありますから。これは。やっぱりTBSが勝ち続けてるのには理由があるなっていうの、あると思いますよ。・・・いきなりこのテンションの会話を聞いて、リスナーがどう思うか、わかんないですよね。

(松尾潔)っていうか俺、今日最初に言っておくけど、『宇多丸さん』なんて僕、あなたのことを呼んだこと、ないから。

(宇多丸)『佐々木さん』ですもんね。

宇多丸ではなく『佐々木さん』

(松尾潔)そうそう。『佐々木さん』って呼ばせてもらいますよ。

(宇多丸)(笑)。私の本名ね。佐々木士郎。

(松尾潔)20何年間、佐々木って苗字でしか呼んだことないから。

(宇多丸)僕も違和感、ありますね。松尾さんにそう呼ばれると。

(松尾潔)俺さ、『さっき携帯に電話したんだけど』って。で、『僕、番号変わってないよ』って言ったじゃん?で、『佐々木士郎』って書いてあるじゃん。これ、070って入っているけど・・・

(宇多丸)僕の電話番号、大声で言わないで!いや、それ。それ。070。僕、PHSで。

(松尾潔)ピッチだよね(笑)。

(宇多丸)僕、ピッチ使い。いまだに。変わってない。僕も同じ。相変わらず。お互い、そういう意味で変わってないところは変わってないんですけど。

(松尾潔)でさ、今日は本、出すってタイミングで呼んでいただいたけど、それきっかけなんで。だからあなたとね、考えてみると『会おう』と思って会ってないのよ。ずっと。

(宇多丸)なんかの仕事の流れでたまたまどっかで会って、そのまま飲みに行くとかは、たまに。5年か6年か・・・

(松尾潔)だって2人とも20代の頃さ、まだ学校に籍がある頃はさ・・・

(宇多丸)学校、同じですからね。一応。

(松尾潔)ウチに来たりしてたじゃん。

(宇多丸)ありましたね。大久保のお住まいに。

(松尾潔)あなたとかさ、坂間さんとか。よく来てましたよ。

(宇多丸)坂間さんって、Mummy-Dですよ。これ。

(松尾潔)ウチからデニース・ウィリアムスの『Free』ってアルバム、あの人、万引きしたんだよ。俺、いまだに根に持ってるからさ。

松尾潔 R&B定番曲解説 Deniece Williams『Free』
松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でR&Bの定番曲、Deniece Williams『Free』を紹介。様々なカバーバージョンを聞き比べながら解説していました。 ...

(宇多丸)(笑)。そうなの!?それ、言っときますよ。

(松尾潔)俺ね、その話よくやるんだけども。この間ね、いや、これ人に盗まれたことはずっと覚えてるけどね。自分がね・・・

(宇多丸)パクッてるの、あるんじゃないんですか?ひとんちから。鈴木ひろしさん家からパクッたりとか。

(松尾潔)いや、鈴木さんとかだったらまだいいんだけど。これね・・・こう、会おうと思って会う時じゃないとさ・・・

(宇多丸)あっ!俺が貸してたやつかな!?

(松尾潔)そうなんだよ。

(宇多丸)あーっ!すげーCD!わかった!日本語ラップ、いっぱい貸したんだ!

(松尾潔)さっきさ、スタジオにさ、3・40分前に入ってさ。誰にもこのこと、気付かれないでいるって大変だったの。

(宇多丸)よくなくさずに取ってますね!

(松尾潔)これね、お見せするのができないの、本当残念なんだけど。かなり大量です(笑)。

(宇多丸)ですね。しかも・・・あー、結構ね、『Real Time Compact』ってMICROPHONE PAGERとか入っているやつだ。

(松尾潔)『あれ、どこいっただろう?』って思ってなかった?この20年。

(宇多丸)あのね、PAGERは探してました。これ。松尾さんだったか!『スチャダラ大作戦』とかあるよ!

(松尾潔)この間にさ、6・7回引っ越ししてるからね。

(宇多丸)よく、これ一緒に旅してくれましたね。JAPANESE PSYCHOとかA.K.I.とかありますよ。

(松尾潔)だからずーっと。それこそ夜の街とかで会ったりとか、するじゃない?『うわー、これ昨日わかっていれば、渡すのに!』って20年間思い続けてたの(笑)。

(宇多丸)あ、そうですか。でも律儀ですね。ありがとうございます。すごい。俺だったら絶対なくしている。

(松尾潔)けどさ、これなんで借りたか、覚えてる?

(宇多丸)なんで借りたんでしたっけ?わかんない。日本語ラップ。

(松尾潔)あなたたちが、1枚目のアルバムを出してから、『EGOTOPIA』までちょっと時間、あったじゃん?

(宇多丸)93から95まで、2年あきました。

(松尾潔)で、そん時にもう忘れているかもしれないけど、俺も忘れかけてたんだけど。P-VINEで2枚目、出すか?っていう話があったんだよ。

(宇多丸)あ、そうでしたっけ?

(松尾潔)それでP-VINEから、『けどね、ライムスターはあの人たち、予算管理とかそういう意識とかなさそうだから、松尾くんがA&Rプロデュースをやるんだったら・・・』って言って。

(宇多丸)ええーっ!?

(松尾潔)けど、『俺もよくわかんない』って言って。そんな話、あるんだよ。

(宇多丸)ありましたっけ?

(松尾潔)もしかしたらね、坂間くんとやったのかもしれない。

(宇多丸)そう。たぶん僕とはそのやりとり・・・さすがにしていたら覚えてますよ。

(松尾潔)けどね、なんにせよ、俺日本語ラップ、よくわかってないかもしれないって思ったら、こういう風にいろいろ貸してくれたんだよね。

(宇多丸)なんか、そうですね。貸したことはちょっと覚えてましたけど。松尾さん、ぜんぜん松尾さんの説明、いままでしてないですから!

(松尾潔)本当に?いいじゃんいいじゃん・・・

(宇多丸)本当ですか?一応、しましょうよ(笑)。ということで、ざっくり言えば、スーパー売れっ子音楽プロデューサーです!

スーパー売れっ子音楽プロデューサー

(松尾潔)けど、こんな紹介の仕方をするなんて、20年前、思ってないよね(笑)。

(宇多丸)考えられない!そうなんですよ。

(松尾潔)俺はずっと『ラジオやったらいい』って言ってたんだよね。坂間さんには、『あんた、役者やったらいい』って言ったんだよ。『役者なんか、Zeebraがやればいいんですよ』とか言ってたけど。最近、ちょっと真似事みたいなことやってるんだよね、あの人?

(宇多丸)最近あれですよ。役者志望って言ってますよ。本人。

(松尾潔)マジで?本当?

(宇多丸)僕、この間あれですよ。松井寛さんのレコーディングが終わって、下でちょうど。川口大輔さんとご一緒の時に。大雪の時にお会いしたじゃないですか。そん時に、もう松尾さんは僕以上に立て板に水でしゃべられるから。僕はなんにも言ってないのに、『あなた、最近テレビ出てますね。僕は昔から、テレビ出たほうがいいと思ってたんですよ。いや、でもいまがいいのか・・・じゃあ、行きます!』ってうね(笑)。

(松尾潔)(笑)

(宇多丸)なんだよ!って。一言もしゃべってないの。あ、紹介戻ります。1968年生まれ。福岡県出身。だから僕の1個上ですね。

(松尾潔)寝かせ時っていうね。

(宇多丸)寝かせ時。私、寝かせていただきました(笑)。早稲田大学在学中にR&BやHIPHOPを中心にライター活動をスタート。今回の『メロウな日々』を・・・

(松尾潔)いま、NHKにGAKUくんが出てる。

(宇多丸)酔っ払ってます!?大丈夫ですか?

(松尾潔)びっくり。この間、J-WAVEで会ったの。レコード渡したんだけど、ぜんぜんどこでもつぶやいてくんないのね。GAKUくんね。そのこと。

(宇多丸)GAKUっていうのは・・・?

(松尾潔)EAST ENDのGAKUくんですよ。

(宇多丸)あ、ミスチルの櫻井さんと。

(松尾潔)まあ、生感出してみたんだけどね。

(宇多丸)あれですよ。テレビに知り合いが出てきても、驚かないっていう素敵なね。素敵な人生じゃないですか(笑)。

(松尾潔)いまだに驚くね。僕。

(宇多丸)音楽ライターとして非常に活躍されていたと。R&B、HIPHOP中心に。そしてジェイムズ・ブラウン、クインシー・ジョーンズなどをはじめ、数々の伝説的アーティストの取材に成功。そして90年代から音楽制作に関わるようになり、宇多田ヒカルやMISIAのデビューに関わる。そして、いちばん大きいのはやっぱり平井堅さん。そしてCHEMISTRY。ブレイクに導く。そして、先ほどかかっていましたけど2002年には日韓共同開催FIFAワールドカップ公式テーマソング『Let’s Get Together Now』をプロデュース。



(宇多丸)そして、みなさんご存知EXILEの『Ti Amo』。2008年で第50回日本レコード大賞。プロデュース作詞作曲ですからね。

(松尾潔)TBSさまさまですよ。本当に。レコード大賞ね。

(宇多丸)ラジオとテレビはね、むしろ敵対関係と言われてますけど。現在に至るまで、数多くのアーティストに関わり・・・

(松尾潔)日本レコード大賞はラジオの中継もやってるんです。

(宇多丸)あ、そうですか(笑)。もう、いい加減黙ってくださいね。累計セールス枚数はなんと3000万枚を超す!これ、びっくりですね。だから、もう。

(松尾潔)ねえ。ひと事ですよね。自分が売っているわけじゃないんで、よくわかんない感じですけどね。正直。

(宇多丸)まあ、今回の本は音楽ライターとして。要するにプロデューサーとなる素地の部分というか。アメリカのブラックミュージックの研究者というか。

(松尾潔)これ、340ページぜんぶ読んでくれました?

(宇多丸)読みました。読みました。

(松尾潔)結構早いところにライムスターの名前、出てきたでしょ?

(宇多丸)出ました。出ました。ブラックミュージックディスクガイドの話ですよね。佐々木士郎と坂間大介ってね。

(松尾潔)みんな学生だったんだよね。びっくりだよね。

(宇多丸)そうなんです。つまり、いまでは超スーパー売れっ子プロデューサーとして知られる松尾潔さんですけど、僕らは本当にもう、ライムスター組んで直後ぐらいの頃からの知り合いというかね。ことでございます。ということで、もう雰囲気はわかったと思いますけど。

(松尾潔)それこそ、飛鳥さんの家でさ・・・

(宇多丸)飛鳥さんってわかんないから(笑)。Dr.LOOPER(ドクター・ルーパー)っていう、ライムスターのメンバー、いるんですよ。

(松尾潔)の家のさ。リップスライム・・・その頃、もうリップスライム出してたのか?メローイエローとかさ。それこそ、(桜井)理子ちゃんとかもいてさ。みんなで朝まで騒いだりした夜があったね。

(宇多丸)夜(笑)。あったかもしれないですね。松尾さん、そうか。そんなとこ、出入りとかしてましたっけ?

(松尾潔)いや、僕ね、そんなにしょっちゅうはないからこそ、よく覚えてるんだと思う。

(宇多丸)なるほど。松尾さんはそれで、そん時から・・・

(松尾潔)あなた、水際立ってましたよ。宇多丸さんはね。いま、はじめて言いましたけど。あなたの存在感は。

(宇多丸)あー、いやいや。僕はね、松尾さん今日呼ぶの、緊張してたんですよ。あまりに過去から知りすぎてるし。お互い。

(松尾潔)意外に知り合いって知られてないよね。

(宇多丸)だから接点がないように思われているかもしんない。あと、松尾さんのその後の、あまりにもメガ成功ぶりが凄まじすぎて。

(松尾潔)そんなことないよ。だってSoweluの曲とか2人で一緒にやったじゃん。

(宇多丸)一緒に曲(笑)。ゲラゲラ笑いながらね。

(松尾潔)デビューシングル。一緒にやったじゃん。

(宇多丸)ねー。やりましたよ。でも、それだって2001年とかですよ。だからやっぱりレコード大賞級までいくと、もうね、ちょっとね。僕の、もう劣等感とかでもないよね。もう。すごいところ行っちゃったなっていう感じですよ。

(松尾潔)いや、だけど、まあ褒め褒め合戦もどうかと思うけど。ライムスター。ラップということで考えると、よく長いこと、メジャーでやってるよね。まあ、カラオケ印税とかは少ないだろうけどね。

(宇多丸)そうです。そうです。

(松尾潔)いや、これ本当大変なことだろうなって。

(宇多丸)だから生き残っているだけでも大したもんだっていうのはね、当然ありますけどね。

(松尾潔)世代的にはJAY-Zとかと一緒だもんね。

(宇多丸)ぜんぜんそうですよ。ねえ。

(松尾潔)世界的にそんなさ、メジャーで20年ぐらいやっているラップグループって、そんないないもんね。

(宇多丸)いないいない。しかも俺たち、いまの方が売れてますからね。これはすごい話ですよ。

(松尾潔)すごいよね(笑)。どんな時代でしょうね。

(宇多丸)まあ、そんな感じで日本語ラップの、僕らは歴史を歩んできた。で、松尾さんは音楽ライターとして主に歌モノ。新時代のR&Bみたいなものを紹介してたんだけど、あるところで実制作に移られたと。で、僕がすごく興味があるのは、日本のHIPHOP。要するにブラックミュージック、アメリカのものをこっちに翻訳というかですね、日本に移してくる作業っていう意味では、ある種同じ。背中合わせの作業でありながら、そのパラレルな存在感というか。

(松尾潔)佐々木さんは、けどどうなの?ラップやる時に・・・だって英語のラップ聞いて。よくレコ評書いてたじゃん。で、坂間さんとかも、Cold Chillin’とか詳しかったじゃん。

(宇多丸)もちろんもちろん。マニアですよ。あれは。

(松尾潔)けどやっぱり、自分たちが実作者になってさ。あなたたちの場合、演者さんでもあるんだけど。そしたらほら、日本語の音韻との格闘になっていくわけじゃない?

(宇多丸)そうですそうです。

(松尾潔)仰ぎ見ていたものと、ちょっと違う。そのあたりは、けど同じじゃないの?

(宇多丸)ありますか?やっぱり歌モノでも。

(松尾潔)あるでしょう。ほとんどが日本語との格闘だな。

(宇多丸)歌い手の力量じゃなくて、日本語ですか?

(松尾潔)うーんとね、その傾向が最近強くなってきてるかな?と思うな。

(宇多丸)歌い手はもう、みなさん。

(松尾潔)いまのリリックビデオの盛り上がりとかにすごく象徴的だと思うんですけど。日本でなぜ、DJが年収十億とか二十億とかにいかないのか?っていう話をよく、アメリカ人とかから聞かれるんですけど。日本人はそもそも、商業音楽っていうものに対して、言葉の部分で期待しているところが大きいんじゃないか?っていうのが僕のひとつの答えで。

(宇多丸)ほうほうほう。言葉がわかんないと、まったく受け付けないってことですか?言葉がなかったり。インストとか。

(松尾潔)まったく受け付けないというか、うん。そうですね。そっから入ってくる人が多いっていうか。だって、世の中にあふれている、普通の素人の方のブログで、ただ歌詞をコピペして貼っているのがいかに多いか。

(宇多丸)歌っていうと、まず歌詞から入る。映画で言えば、あらすじから入るみたいなもんで。やっぱりじゃあ松尾さんも・・・

(松尾潔)スパイク・リーにインタビューした時にさ、スパイク・リーが『俺の不幸は、どんなきれいな画を作ることにこだわっても政治の話しか聞かれないことだ』って言っていたの。あれ、90何年かな?ブルックリンのところでインタビュー行った時に。

(宇多丸)ぜんぜんそうじゃないもの、作っているのにね。

(松尾潔)僕の不幸は、スパイク・リーにインタビューしたりした過去が、いま無かったことになっているっていうことなんですよ(笑)。

(宇多丸)その、ね。だからまさに今回のメロウな日々で、そういう面っていうのがね。だからそういう人が実はこういうEXILEとかの音楽を作っているんだっていうことを今日ね。だいぶ時間もたちましたけど。ちょっと、わかりやすくね、みなさんにわかってもらうために。ちょっと質問を事前にお送りしておきました。『松尾さんがいままで携わった作品の中で、ベースに参考にした洋楽というか、向こうのR&B、ブラックミュージックの歌モノみたいなのがあるんじゃないですか?差し支えがなければ教えて下さい』みたいな中で、ちょっと非常にわかりやすいところで、やはりレコード大賞をとった『Ti Amo』。

(松尾潔)大ネタの種明かしですよ。

(宇多丸)これ、いいんですか?大丈夫ですか?

(松尾潔)種明かしって言ってるけど、結局こういう曲を作るのは僕しかいないっていう自負もあるので。

(宇多丸)あの、元々ミュージシャンとして出発されたわけじゃないじゃないですか。つまりその、批評性というか、ここでこういう感じの曲をこういう人に歌わせたらいいんじゃないか?というあたりがプロデューサーの・・・

(松尾潔)まったくそうですね。もっと言えば、こんな曲を作りたい!ってことさえ思ってないですね。聞き手の方々をこんな気持ちにさせたい。そのためにはどういう曲を作ればいいのか?っていう。で、逆算していくっていう。まあ、発注とか納期がなければ、曲作らないから。常にストックゼロだし。曲、作りたいと思ったことないですよ。そういう意味じゃね。

(宇多丸)ほー。もうそれってすごいヒットメーカーっぽい発言だな(笑)。

(松尾潔)アウトプットがあれば、インプット自然に出来ると思うんですよ。だって好きではじめたことだから。そうでしょう?

(宇多丸)うんうん。じゃあちょっと、具体的にそのEXILE『Ti Amo』をちょっと聞いてみましょう。



(松尾潔)頭の『タンタンタン♪』は10年前にこの曲を作っているんだったら、たぶんヴァイナルのスクラッチの音だったと思うんですよ。

(宇多丸)あ、『ズビズビズビズビ♪』って入ったかもしれない。

(松尾潔)だけどね、これ2008年っていうその時の時代が、もうCD-Jの時代になっていたし。まだあれですよね、PCの時代じゃない。CD-Jくらいかな。これのちょっと前に、僕仲良くさせてもらっているミュージシャンの1人に菊地成孔さんっていう方がいるんだけど。

(宇多丸)TBSでお馴染みですよ。

(松尾潔)そうですよね。昔、酔っ払ってあの人の番組に出て、大変ご迷惑をかけたことがございますが(笑)。彼のライブ、ダブ・セクステットとかを見ていたら、CD-Jの針飛びっていうのがあったんですよね。

(宇多丸)『トトトトト・・・』みたいな。痙攣っぽい音になりますよね。

(松尾潔)そうそう。その事件性っていうのが面白いなと思って。で、CD-Jの針飛びっていうのはヴァイナルのスクラッチのベロシティーが変わっていく『キューワン、キューワン』っていうんじゃなくて、同じレベルで『トントントン』ってなる感じの。かっこいいなと思って。で、Ti Amoをなんか作りながら、メロウなスパニッシュギターで始まる曲だったんだけど、なんか画竜点睛を欠いている気がして。頭にあれをつけてみたら、まあスタッフの間で賛否両論だったんですけど、まあスイッチになるなと思って。っていうことで。

(宇多丸)そうですよね。こういう曲調だから、別についてなくてもいいっちゃいいのに。

(松尾潔)けど、だからそういうこと。事件性を与えたいとかっていう発想ありきでそういう風に作るっていうひとつの例をお話したんですけど。イントロからこうやって話していくと、終わんないよね(笑)。話しね。

(宇多丸)いや、いいですよ。すごい面白いです。で、一応いただいた質問に対して。要するにTi Amo、参考にした曲があるということで、挙げていただいた曲がございます。1981年。Hi Gloss。俺、知らないですよ。『You’ll Never Know』。



(松尾潔)これ、結構ね、50才ぐらいのね、ディスコでお姉ちゃんナンパしていたような人はお世話になったような曲だと思いますよ。僕らからすると、ちょっと古いよね。僕、けどまあ、割と早熟な中学生・高校生だったんで(笑)。高校生ぐらいの時から、こういうの好きでしたけど。

(宇多丸)これは、このギターのカッティングとかっていうことですかね?

(松尾潔)リズムの溜めですかね。

(宇多丸)リズムの溜め。それがその、なんて言うんですかね?受けるって言っちゃあ、あれですけど。

(松尾潔)Ti Amoって、イタリア語のタイトル。元々、デモ作っている時は『Te Amo』ってスペイン語で作っていて。まあ、スパニッシュギターとか入ってるんだけど。まあ、スパニッシュギターが入っているのに、イタリア語のタイトルに最後変えたのは、HIROさんたちの意向もあったんですけど。

(宇多丸)語感的なものもあったんですかね?

(松尾潔)そうそう。語感的なものね。あと、あれじゃない?やっぱパッションの国っていうイメージじゃないですか?

(宇多丸)あ、そっち?UOMOとか、そういうこと?

(松尾潔)やっぱZARAよりもアルマーニとか強いってことじゃないの?わかんないけど。まあまあ、ローマとか行ってもね、ギター弾き、いるからいいか!みたいな。そのあたりは結構、僕もそんなにこだわるポイントではなかったんだけども。あの、ラテンなタッチっていうのを考えていたんだけども。とは言え、やっぱりリズムはR&Bっていうことを考えた時に、ピュアなR&Bよりもちょっと・・・ピュアなって僕が言ったのは、R&Bっていうのは元々アフリカンアメリカンの民族音楽だっていう前提だと、アメリカにいる黒人だけに受ければいいっていうリズムではない、ちょっとそれ以外の、ヨーロッパであるとか南米であるとか、そういうところのリズムが加わっていたりする方がより日本では・・・(聞き取れず)であろうと。

(宇多丸)おおー。

(松尾潔)この『You’ll Never Know』も、リズムパターンはR&Bのそれなんですが、ちょっとやっぱりラテン的な。

(宇多丸)ラテン的な、ちょっと哀愁を帯びた。

(松尾潔)歌謡曲的と言ってもいいかもしれないけど。

(宇多丸)でも、これまさに、後でも伺おうと思っていたんですけど。日本人に受けやすいタイプのR&B曲と、そうじゃないタイプの曲っていうのがあるじゃないですか。HIPHOPも当然ありますけど。まあ、ひとつ受けやすい・・・

(松尾潔)僕はね、宇多丸さんなんかと違ってラジオ番組、たくさん。あなたがラジオやるずいぶん前からやってきたの。知り合った頃からやってたよね?

(宇多丸)だって、九州でもやってたんですか?

(松尾潔)やってないよ。そんな・・・高校生からやってないよ(笑)。

(宇多丸)スーパー高校生じゃない。そんなイメージだったけど(笑)。まあ、やっていた。

(松尾潔)そう思ってたんだ(笑)。いやいや、子役上がりだからね。俺も(笑)。あの、ラジオやっていつもね、選曲ぜったい譲らないところがあって。だいたい1年半ぐらいで番組終わらせてきたんですよ。なんで自分の好きな音楽が、アメリカの黒人の人たちは普通に聞いているものなのに日本の人たちに受けないんだろう?って。

(宇多丸)あ、受けなくて終わっちゃうと。

(松尾潔)そう。あ、俺が好きなものは受けないものなんだっていうのを体験的によくわかっているから。だけどやっぱり悪食を経験しているから。世で美食と言われているものもわかるっていうか。だからそこんところを避けていけばいいんだなっていうような感じで(笑)。

(宇多丸)あー。ある程度、受けない感じって形式化できていたりします?

(松尾潔)受けるものよりも、受けないところの方がよくわかりますね。

(宇多丸)たとえば?

(松尾潔)恋愛と一緒ですよ。『これ言えば落ちるぞ』っていうの、当てにならないでしょ?だけど、『これを言っちゃあダメでしょ』っていうのは、割と普遍性のある法則、あるでしょ?

(宇多丸)たとえば?ひとつ言えば?BPMの傾向とか、なんかないですか?

(松尾潔)あー。そういうヒット出そうと思ってるの?

(宇多丸)違う(笑)。出すかい、それ!いまさらやるかい!でも、参考になるかな?と思って。あと、これを聞いているいまの実制作者志望の方とか、参考に。

(松尾潔)なるほど。ええとね、受けないものは、アドリブ性の高いフレージングですかね。リズム感とタイム感っていうのは違うものなんですが。リズムっていうのではなく、僕がいま話しているのはタイムの方なんですが。『タンタンタンタン』っていう拍の後ろで、たとえばジェラルド・リバートとかだったら、『thinking about♪thinking about♪thinking about♪』みたいな。こう、なんていうの?

(宇多丸)まあ、引っ掛けたり、ちょっと溜めたり、引っ掛けたりという、このね・・・

(松尾潔)まあ、あれはもちろん性愛を表しているわけですよね。

(宇多丸)ああ、なるほど。ストロークの浅い。はいはいはい。

(松尾潔)そうそう。まさに『Stroke You Up』っていう曲をR.Kelly作っていたりしますけど。なんだが、そういう性愛のツールとして成り立つようなものっていうのは、だいたい翻訳難しいですね。J-POPに。そう思いません?古川さん。

(宇多丸)まあ、横にいる古川耕さんに(笑)。古川さんに子作り環境、聞かないでくださいよ!なに言おうとしたんだっけ?歌だったら、割とメロディーラインみたいなのがわかりやすく、定形としてある。それを歌えばみんな一緒になれるみたいなところっていうことですかね?

(松尾潔)そうですね。

(宇多丸)まあ、フェイクで成り立っているようなのは論外として。『ママー、ママー♪』みたいな。

(松尾潔)まあ、曲の終わりぐらいにそういう遊びを入れるっていうのは、アーティスト性をエクスパンドする意味ではいいと思うんだけども。やっぱり一聴して口ずさんでほしいって思った時に、どうしても障害になるでしょ?だけど、ある程度の、いわゆる『黒っぽさ』と言われているのは、歌い方が担保になったりするので。そこの塩梅なんですよ。

(宇多丸)これ、歌い手さんによっては、『いや、僕は向こうのR&B歌手、リアルタイムでこういうのやりたいから。そんな・・・』

(松尾潔)たとえば、Skoop On Somebody。僕が言わなくてもそういう歌い方をする人たちだから、『それ以上黒く歌っちゃダメだ』と。今日、アレクサンダー・オニール、さっき流れていたけど。アレクサンダー・オニールをプロデュースした時の話をね。ジミー・ジャムとか聞くと、『Alex, don’t sing too black』っていうね。

(宇多丸)おおー、黒人に対して、『黒人っぽく歌いすぎるな』って。ああ、そう。ジャム&ルイスが。

(松尾潔)そういう。けど、彼は言うことを聞かなかったでしょうね。ジャネットは、言うまでもなくそれをわかっていただろうし。まあ、そういう・・・

(宇多丸)せめぎあいは向こうでも当然あると。

(松尾潔)そういうことですよ。で、たとえば日本でね、後にその資質がまったくなかったことが明らかになっていく堂珍くんとかは、R&Bとかはもちろん、僕ら制作サイドが彼に口伝えするような形でやったんだけども。その塩梅がちょうど愛されたんでしょうね。

(宇多丸)ああー、元々ブラックミュージックばっかり聞いてイエーイ!っていう人じゃないからこそ、ちょうどいい塩梅に。

(松尾潔)まあ、だから僕は海外で・・・よく使うたとえ話なんだけれども。食の世界で言えば、いわゆる本場に行って、そこのフレンチとかを食べてきた人間が、日本に帰ってきて、お箸で食べられる洋食はなにか?って考えてやったのが、CHEMISTRYだったりするわけなんだけども。Skoop On Somebodyとかはまた、ちょっと違いますよね。

(宇多丸)なるほど。僕がよく昔、たとえていたカレーのたとえかもしれないね。本格インドカレー。いまでこそね、だいぶ定着したけど。それこそ、R&Bの普及の塩梅にも近いかもしれないけど。

(松尾潔)いや、本当そうですよ。

(宇多丸)タンドールチキンとかってさ、当時はまだあれだったけど。そういうのをそのまま持ってくる手もあるが・・・で、日本で完全にガラパゴス進化したライスカレーもあるが・・・なんか、もっとちょうどいい。デリーのカレーみたいな、ちょうどいい塩梅が、あるんじゃないか?みたいな話はね、してましたけど。あ、ちょっと最高ですよ。松尾さん。もう第二回ぐらい、やんないといけない。これ。

(松尾潔)こういう話って、この番組でやって大丈夫なんですか?

(宇多丸)してないし、したかった。ちょっと、いったんCM行きましょう。

(CM明け)

(宇多丸)あの、もうね、松尾さんしゃべる人だから。俺どころじゃなく、しゃべる人だから。こんなのには入るわけない予感はしてたんですけど。もうだいぶ・・・

(松尾潔)(笑)

(宇多丸)みなさん、もうお忘れかもしれないですけど、EXILEのTi Amoの下敷きにした曲はありますか?っていうシリーズ。Hi Glossとか聞いてたんですけど。ここでちょっと、意外なところで。曲から聞こうかな?こんなのも参考にされていたということで。



(宇多丸)敏いとうとハッピー&ブルー『星降る街角』。これはどのへんが入ってるんですか?Ti Amo。

(松尾潔)『ドン、パッ♪』とかね。いわゆるラテンの音楽的行為ですよ。

(宇多丸)あと、『タタッタッ♪』って。決めっていうか、留めみたいな。

(松尾潔)『Want you』とかね。だから、Ti Amoっていうのは、Ti Amoで女性にささやくパートをいちばん盛り上がるところにしようと思って。まあ、Ti Amoっていうのは僕、珍しく作曲もしたんですが。曲の盛り上がりのところで、タイトルコールで。そこにラテンを感じさせる言葉。さっきも話したように、最初Te Amoだったんだけども。で、そういうことをやっているのは別に僕が初めてやったわけじゃなくて。いわゆるね、ラテン音楽に出自を見出すことができるような、こういうムードコーラスのグループとかって、たくさんやってるんですよね。すでにね。

(宇多丸)はいはい。

(松尾潔)で、僕はいつも思うんですけど。僕が作っているのはポップミュージックであって。ポップっていうのはいろんな解釈があると思うんだけど、僕はポピュラーでありたいと思っているので。自分が好きなものがそういうものだったという風に思っていたんだよね。まあ、後に自分が好きなものはあまり日本では受けないものなんだっていうことがわかってきたんだけど。まあ、にしても、あんまり小難しいものとか、取説が必要なものはほしいと思っていないし。わかりやすく言うと、最新のものを作るんじゃなくて、最良のものを作りたいと思っているから。

(宇多丸)尖ったものじゃなくてね。

(松尾潔)そうそうそう。その時、これ、もうアメリカのバリバリの時差のない最高の音ですよっていうので競うような、そういうレースに乗っかるつもりはないんですよ。まあ、僕最初、97・8年ぐらい。こういう制作の仕事をはじめた頃は、『松尾さんっていつもアメリカとかイギリスとか行ってる人ですよね?』って、そういうものを求められていたから。あちらと時差のない音作りっていうのをがんばってみたりもしたんですけど。つまんねーなって。

(宇多丸)元々資質がなかったと。そっちに燃えるタイプじゃなかった。

(松尾潔)あとなんか、文化としてそれ、どうなんだろう?って考えましたね。だったらそれ、聞けばいいじゃん。BMW買ってバラして、それよりちょっと安い値段で作って、右ハンドルに付け替えるぐらいだったら、BMW買うじゃないですか。

(宇多丸)ああー、BMWっぽい車なんかね。

(松尾潔)さすがにどこの車なのかは言いませんが。

(宇多丸)まあでも、それはまさにそうですよね。きっとね。だからさっき言った日本のね、カレーのたとえじゃないですけど。なんでそこで工夫をはじめちゃうか?って、そういうことでしょ?

(松尾潔)あと、両立することだしね。BMWも買って、日本車も買ってもいいじゃないですか。音楽の場合、それできるでしょ?僕がやるのはそれだなって思って。

(宇多丸)まあ、敏いとうとハッピー&ブルー。こういうムード歌謡の世界でも、そういう試みはぜんぜんありましたよと。

(松尾潔)そう。だから本当にね、すべての曲が先生ですよね。過去に出たものって。

(宇多丸)すごい、いいフレーズ。

(松尾潔)だって、そう思わない?

(宇多丸)もちろん、もちろん。それはそうですよ。音楽に限らずですよね。さっき、映画評なんかやってると、それは過去のもの全部が。積み重ねがあって、いまの最新作があるっていう感じがしますから。

(松尾潔)なんだってそうだよね。

(宇多丸)単独で生まれたものなんて、絶対にあり得ないわけだから。

(松尾潔)あの、これまたよく僕が使うたとえなんだけど、本当に新規なものがほしければ、無人島で生まれ育った人の雄叫びを聞けばいいじゃん。

(宇多丸)ただ、本当に僕らが見て。それはでも、『ああ、無人島の人の雄叫びだな』っていうとこに還元できちゃうじゃないですか。本当に新規なものを生もうと思ったら、やっぱりちゃんとマップを知っている人が、ここ!ってやんないと、俺は難しいと思いますけどね。

(松尾潔)やっぱりね、懐かしさっていう成分が1%も含まれていない新譜っていうのは、新譜として魅力がないんです。

(宇多丸)おおー!なんか今日、金言が。なるほど。

(松尾潔)そう思わない?さっき僕が『無人島で育った人の雄叫びを聞いてればいいじゃん』って言ったら、『ああ、なるほど!』っていう人もいるけど。『それ自体、ありえねーだろ、バーカ!』って僕、言ってるんです。だって、ないじゃん。無人島で1人で育つっていうか。

(宇多丸)それ、フィクションですね。

(松尾潔)だから本当、その通り。幻想を。みんなの共同幻想をなぞってあげることはできるかもしれないけど。そのことに意味はないと僕は思うんだ。

(宇多丸)なるほどなるほど。完全に新規なものであるという幻想を再現することはできるけど。なるほどなるほど。

(松尾潔)だから、本物そっくりに今回、CGやってますよ!ジュラシックパーク、みたいなそういうことですよ。見てねえじゃんっていう。

(宇多丸)面白いわー、松尾さん。

(松尾潔)あ、これ面白いの?

(宇多丸)面白い、面白い。松尾さんが面白いですから。大丈夫です。なにやっても。酔っ払って来ても大丈夫です。

(松尾潔)(笑)

(宇多丸)Ti Amo流れでちょっと・・・実は松尾さんご自身が携わっていた過去の曲もTi Amoに生かされているということで。1998年リリース。DOUBLEで『BED』。これ、私も間接的に関係深い曲です。



(松尾潔)これ、リミックスに坂間兄弟に参加してもらって。Mummy-DさんとKOHEI JAPAN。当時は、JAPANって言ってなかったかな?

(宇多丸)言ってなかった。この間、KOHEI JAPANの何周年ライブみたいなので、これやってました。久しぶりに聞きましたけどね。これはTi Amoに生かされている要素っていうのは?

(松尾潔)これ、まったくこの歌詞の世界観ですよ。『ベッドの真ん中はいちばん寂しい』って歌ってますね。これ、歌い出しでね。で、Ti Amoの歌い出しは、『日曜日の夜はベッドが広い』っていう。

(宇多丸)おおー、同じことだ。

(松尾潔)同じことを言っているだけ。僕はDOUBLEのBED、この時はもうDOUBLEが引退するかどうか。シングル3枚めだったんだけど、はじめの2枚が本当にセールス芳しくないところで、もう本人たち『好きなことやりなさい』って言われて、『じゃあ、松尾さんとやりたい』って言ってくれて。西麻布のYELLOWっていうクラブで僕、ナンパした子たちですよ。この子たち。

(宇多丸)ナンパしたんすか!?(笑)。

(松尾潔)それも、けど本当にね、美人局みたいな話で。

(宇多丸)(笑)。なんてことを言う!

(松尾潔)後ろでね、いま、ユニバーサルに行った今成さんっていたじゃない。『松尾さんが今日、この時間に来てるから、行け!』って後ろからやっていたらしいの。

(宇多丸)なんだよ!ハメられてるんじゃないですか。完全に。

(松尾潔)本当、そうなんだよ。簡単に引っかかっちゃって。後でね、笑い話になっちゃってるのよ。

(宇多丸)でも、いいじゃないですか。いい成果が生まれましたよ。

(松尾潔)妙にプロっぽいね、2人のかわいい子が踊ってるなと思って。

(宇多丸)あんな素人、いないだろ!本当に。

(松尾潔)いま考えるとね。『なにやってんの?』なんて話しかけたもん。

(宇多丸)しかも、姉妹で。おかしいでしょ、そんなの!

(松尾潔)まあ、嘘みたいな本当の話なんですが。けどこれ、自信作だった。それこそ、FILEの岡田さんとかにお願いして・・・

(宇多丸)僕らのね、元のマネージャーだった。

(松尾潔)そうそう。お願いして参加もしてもらったし。DOUBLEにとってはじめてのアナログをFILEから出してもらったりとかね。いろんな、当時僕ができることをいろいろやったつもりだったんだけど。80何位とかだったんじゃないかな?チャート的に。これが収められたアルバムは、オリコン2位とかになったけど。

(宇多丸)あー、そうなんだ。やっぱり98から99、2000、2001あたりの、急カーブじゃないですか。MISIA出てきて、宇多田ヒカル出てきてっていう。まさにそれを描いてるんじゃないですか。85から2位っていうのは。

(松尾潔)そうですよね。まあまあ、お姉ちゃんが亡くなったからとかそういう、悲しい意味での事件性っていうのもありましたけど。そう、それでだけど、ずーっとね、僕はあのR&Bというフォーマットにあの世界観ってぜったいに合うはずだと思っていて。それでDOUBLEのBEDっていうのをもういっぺん、本歌取りみたいな形で、自分たちで『残り火』っていう曲をやったんですよ。これの続編を。それもびっくりするぐらい売れなかったの。



(宇多丸)ああー。そうですか。

(松尾潔)これもびっくりするぐらい売れなくて。それもね、またリミックス。Mummy-Dにお願いしたんだけど。本当に。

(宇多丸)Mummy-Dのせいかもしんないですけどね。

(松尾潔)いやいやいや・・・

(宇多丸)でも、それをもう1回。Ti Amoでちょっとやってみたと。

(松尾潔)これはぜったいイケる!と思ったら、ぜったい僕ね、しつこくやり続けるよ。みんなが気づいていないだけだと思うから。

(宇多丸)いつかはゲージが合ってくるだろう、みたいな。

(松尾潔)止まった時計ね。

(宇多丸)いわゆる、『止まった時計は2回、時間が合う』。秋元康さんだ。はいはい。で、合ったわけですね。Ti Amoの時はね。しかも、メロウな日々、今回の本読んでいて、Ti Amoを最後の制作曲にするつもりだったって・・・

(松尾潔)だから僕、本当にあなたとよく付き合っていた頃もほら、プロデューサーになりたいなんて言ったことないでしょ?

(宇多丸)でもね、『文筆はそろそろ止めようと思う』とは仰ってました。

(松尾潔)ああ、そうですか。なにやろうと思ってたんだろうね?まあ、書いてあるけど、ソウルバーのオヤジになろうと思ってたんだよね。

(宇多丸)でも、その制作も40才で引退しようかな?って前から仰ってて。最後に・・・

(松尾潔)もう、モチベーション不足で。

(宇多丸)まさか、それはぜんぜん僕は。その頃お会いしてなかったから、知らなかったけど。でも、Ti Amoやったら、3度目の正直で。やったら、レコード大賞ですよ。どうなってんの?(笑)。そう考えると。と、いうことで。松尾さん、時間、あっという間に終わりに来てしまいました。ちょっと1個、どうしても聞きたいことがあるので。一旦、時報を過ぎて。もう1個だけ、質問。お付き合いいただいていいですか?

(松尾潔)あなたが前から聞きたがっていたこの話ね。

(宇多丸)昔からこの話を。僕、あちこちでこの話、しちゃってて。しかも。

(松尾潔)その話、間接的に聞きましたよ。この番組でも話、したの?

(宇多丸)したと思うし。文章にも書いちゃったりしてて。ちょっとその話をね、時報明けに伺って。あと、メロウな日々のね、お話もちょっとしなきゃいけないのでね(笑)。

(松尾潔)なに?その急にまとめに入った感じ?

(宇多丸)だって松尾さん・・・なんか緊張してるんですよ。こう見えて。

(松尾潔)(笑)。見てるよ、MXとか。よく。

(宇多丸)やめてくださいよ!

(時報明け)

(宇多丸)はい。ということで、時報明けて、松尾潔さん。お付き合いいただいております。この間にもずーっと、僕がなんで松尾さんを前にすると緊張するか?という話をね、ずっとしてたんですけど。

(松尾潔)僕もその時、話したんですけど。リスナーのみなさんに言いたいんだけど、みなさんより昔から知っている人間として言わせてもらうと、この人、昔から饒舌なんだけど。昔から、照れながら饒舌なんだよね。その照れているところが、佐々木士郎という男の人間性の担保になっていて。そこがないとね、嫌味ぐらいのね。まあ、いいとこの子だしね、高学歴だしね。

(宇多丸)同じ学校じゃないですか!これが困るんだよ!

(松尾潔)人に愛される理由って、あるね。宇多丸さんはね。いま、『宇多丸さん』言いましたよ。

(宇多丸)(笑)。松尾さん、最後にどうしても。この話題をね、がっつり聞きたかったんですけど。

(松尾潔)本当だよ。この話題だけでよかったぐらい。あ、こっちのね。OK、OK。

(宇多丸)松尾さん、プロデュース業をはじめられて、結構順調にやられて。ちょうどSoweluの曲を一緒に。歌詞を共同で。共同でっていうか、実際には松尾さんが書いていて、僕らがアイデア出ししたような曲があるんですが。そん時に、松尾さんが会話で。ちょうどCHEMISTRYもブレイクした時で。僕、CHEMISTRYすごい曲もいいし、好きなんですけど、アメリカの同ジャンルの歌を歌うような人だったら、当然、あのテンポ感のこの曲なら踊るでしょう?と。で、松尾さんはそういうようなフォーマットはね、知らないでってわけはないわけで。なぜ、彼らは直立不動で歌うのですか?と。

(松尾潔)あのね、CHEMISTRYのレコーディングをしている時に、中目黒のあるスタジオでやっていたんですけど。隣のスタジオで、同じデュオで、踊りながら歌うLL BROTHERSがレコーディングをしてたんですよ。

(宇多丸)おおー!素晴らしいですよ。

(松尾潔)本当、対照的ですよ。

(宇多丸)で、そん時の松尾さんの答えが、『日本人は、仮にまったく同じスキルを持って、まったく同じルックスの人がいて、かたや歌だけ。片方は歌いながら踊ると、歌を歌うだけの方を偉いと思うんだ』っていうことをおっしゃってて。これは、大変腑に落ちると同時に、なんなんだろう?と思って。ずーっとこれ、ひっかかってたんですよ。

(松尾潔)あのね、大前提として、僕はそうは思わないけれども・・・っていうのはありますけどね。

(宇多丸)僕がそっちの方が偉いとは思わないけど。

(松尾潔)そう。思ってないんだけど。少なくとも、佐々木さんにその話をした10何年前の時点では、もう事実として、そういう例が多すぎて。たとえば、ジャネット・ジャクソンよりもローリン・ヒルの方が当時、やっぱりアーティストっぽく見られていたし。安室ちゃんに対してのMISIA。相対としてのジャニーズに対してのゴスペラーズ。だから、LL BROTHERSに対してのCHEMISTRYって見えたかもしれないし。もっと踏み込んで言うと、久保田利伸さんに対しての山下達郎さん。

(宇多丸)おおー!

(松尾潔)だって、DJの元ネタで使われるのは達郎さんの方ですよ。

(宇多丸)はいはい。そうですね。それはまた、たしかに僕も、日本の音楽を見る時の感じ方に一部、それはないとは言えないと思って。すごく腑に落ちると同時に、これはやっぱり難しいなというか。

(松尾潔)それね、踊りながら歌うと、やっぱり芸能っていうか。芸事。もっと言えば。と、見なされちゃっていて。それはなんか自発的な何かの発露と見なされない。

(宇多丸)アーティストと、芸をやる人の差になっちゃう。だから、ちょっと芸事蔑視感もあるのかな?アーティスト信仰・・・

(松尾潔)あの、ユーミンさんがね、ライブ。何年前かな?田島さんとやられたりしていた頃のライブが終わった後に、『松尾さんさ、私、踊ったりするじゃん?なんで踊るかな?って思ったりしてるでしょ?』って言われて。『いや、けどお上手ですね。どんだけリハーサルされるんですか?』って話をしたら、『私、芸事好きなのよ。歌が上手い世界で勝負している山下(達郎)くんは踊ったりする必要ないと思うんだけど、なんでか?って聞かれたら、好きとしか言いようがない』って言うんだけど。たしかに、直立不動でギターカッティングしながら歌っている達郎さんの方が、アーティスティックに見えますわなと。

(宇多丸)うんうん。

(松尾潔)だけど、本質的には2人ともシンガーソングライターですよ。

(宇多丸)うんうん。なんかそれ、ユーミンさんご本人にも僕も聞いたこと、あります。『マイケル・ジャクソンとジョニ・ミッチェル、全部同時にやっているから私は正当に評価されないところがある』って言っていて。仰る通りみたいな。

(松尾潔)でも、好きだからおやりになるんだよね。

(宇多丸)でも、その傾向もだいぶ。もう10何年もたって、松尾さんから見てもちょっと変わってきた傾向にある?

(松尾潔)そうなんですよね。もちろん、分業制を徹底したEXILEっていう人たちがいて。だってはじめから、ヴォーカル・パフォーマーっていうね、役割分担を明確に線を引いて、はじめから打ち出しているわけでしょ?で、彼らが総体として、キャラクターとしての全人ですね。硬い、社会学的な言葉で言うと。要するに、全員で安室奈美恵、みたいな。

(宇多丸)全員でEXILEという人格。はいはい。たしかにその通り。

(松尾潔)圧倒的な消費者になっているので、やっぱり踊る音楽をやる時に、踊っている人を自分のところに抱えていないっていうのはちょっと不利な時代になってきたのかな?っていう気がしますね。

(宇多丸)なんとなく、空気が変えてきたのかもしれない。その意味では。

(松尾潔)もっと言えばね、音楽っていうものに対しての幻想って減ってきて。イマジネーションを働かせるっていうのが減ってきて。もういま、目の前で全て見せないといけないっていう、切羽詰まった状況にあるのかな?って。あまり僕、いいことだと思ってないんですよね。そういう意味じゃ。レコード芸術っていうのが本来、あってもいいはずなんだけど。

(宇多丸)割りとこう、わかりやすくその場で消費していくエンターテイメントになっている。

(松尾潔)僕の出した本ね、序文書いてくださった山下達郎さんとかは、やっぱりダンスミュージックの作り手がダンスしなきゃいけないっていうのを、それはおかしいじゃん?って仰ってて。僕、その通りだと思うんです。

(宇多丸)たしかに。それはそうか。

(松尾潔)そうなの。うん。だけど、実際にはもういま、踊っている画がないと、一緒に踊れないっていう人が増えちゃっているのかな?っていう。

(宇多丸)あ、そういう方向。サジェッションになっているってことですか。なるほど。・・・松尾さん、あのね、この話、あと2時間必要なんで。よかったですね!この後、呼ばざるを得ない感じに・・・

(松尾潔)(笑)

(宇多丸)っていうか、出てくれるんですか?呼んだら。ウチの番組、呼んだら出てくれるんですか?

(松尾潔)いや、なんでいままで声かけてくれなかったの?

(宇多丸)松尾さんに会ったら、緊張するから。僕が。

(松尾潔)(笑)

<書き起こしおわり>

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