春日太一がピエール瀧に語る 時代劇が衰退した理由

時代劇研究家の春日太一さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。著書『なぜ時代劇は滅びるのか』の話から、日本の時代劇が衰退していった理由について語っていました。


(ピエール瀧)僕まだその本を読めてないんで。まったくの素人状態から聞くとすると、なんなんです?その時代劇がなくなった理由は。

(春日太一)大きな理由としては、ある時期に高齢者向けにシフトしすぎちゃったんですね。それ自体が悪いんじゃなくて、全部それになっちゃって。で、結果的にそこから若者も離れていって、それで時代劇を知らない人たちができちゃうわけですね。次の若い人に。で、その人たちにとって時代劇=高齢者向けだという固定観念を持って、時代劇は見なくなってくる。っていうことで、世代の断絶が起きて、それでもうどんどん時代劇は作られなくっていう。で、若い人たちはテレビ局の幹部とかになったらもう、『高齢者向けでしょ?』ってことになってくるっていう。

(ピエール瀧)そうか。

(赤江珠緒)しかも割とこう、パターン化するみたいな。

(春日太一)そうですね。その水戸黄門的な、ああいう最後土下座して終わるみたいな。こうなるんでしょ?っていう。だから勧善懲悪というよりは、パターン化された勧善懲悪ですよね。それをすごく、みんなそれを作っちゃったっていう。それが大きな、で、それが当たっちゃったわけです。視聴率的には。それが1つ、大きな問題で。でもだんだん結局それって縮小再生産。若い人たちが入ってきませんから、そこには。っていう問題が起きたのが、それが10年ぐらいかけてどんどん地盤沈下していったっていうのが1つ、大きな、産業的には問題ですね。

(赤江珠緒)あと、瀧さんとね、我々この勝新さんのマンガも読ませていただいたんですけども。そこに春日さんも出てますけど、この時の俳優さんの役にかけるね、取り組み方とかやっぱりなんかこう、鬼気迫るものがありますよね。

(春日太一)すごいですよね。やっぱりみなさん、この間松方弘樹さんにも伺ったんですけど、やっぱりいまの現場と最大の違いは準備にかける時間があったっていうことですよね。さっきも実は中村嘉葎雄さんっていう(萬屋)錦之介さんのね、役者さんにインタビューしてきたんですけど。たとえば琵琶法師の役、耳なし芳一やるとしたら、もう2ヶ月前から琵琶を練習していたっていうんですよね。で、現場に入っているからそういう所作も完璧にできるとか。そういう時間をすごい作ったからみんなできたけど、いまはみんなすぐに現場に入って『さあ動け!』だと思うんですよね。

(赤江・瀧)うん。

(春日太一)立ち回りにしろ何にしろ。だからそういう状況っていうのはやっぱり1つ、大きな問題で。昔の人たちは役にのめり込むっていう。のめり込めさせてくれる時間を与えてくれてたんですよね。いま、すごくそこがスケジュールと予算の関係で、なかなかそれができないっていう。で、また事務所もたくさんスケジュール、バンバン空いていたら入れちゃいますから。役者が1つの作品にかける時間がやっぱりないっていうのが大きいですよね。

(ピエール瀧)そうか。なりきっている時間が少ないっていうこともありますよね。

(春日太一)そうですよね。一作品、本当は完全集中っていうのがいちばんいいんでしょうけど。あれやってこれやってっていう中での1つっていう風になっちゃうと、特に時代劇の場合は異世界ですから。現代劇だったらまだ日常の延長線上でやれるのがあるんですけど、時代劇はそうもいかないので、入り込まないとたぶんできないと思うので。そうするとやっぱり集中力が必要ですから。そのためにはやっぱり技術を学ぶとか、準備も必要だしっていう・・・

(赤江珠緒)そうですね。春日さんが特にいろんな時代劇をご覧になって、この人の演技が好きなんだ!っていうのはあるんですか?

(春日太一)演技ですか?もうね、演技だと最近やっぱり改めて見直すと三船さんとかですかね。三船敏郎さんはやっぱり・・・実際ね、そんなに背も高くないし、あれなんですけど、それを大きく見せる芝居であったりとかっていうのはやっぱり身体能力だけではなくて、それをさらに大きく見せる芝居っていうのはやっぱりすごいなっていうのはありますよね。あの人のを見ていると。だからダースベイダーの役にあの人、オファーされたことがあったっていいますけど、それぐらい国際的に評価されるだけの身体能力が時代劇に見せられる。本当はそういう場なわけですよね。

(赤江珠緒)ええ。

(春日太一)世界の人が見ても面白い!って思ってもらえるぐらい、日本固有のものっていうよりは、世界で喜んでもらえるエンターテイメントだと思うので。

(ピエール瀧)そうですよね。でもその、侍ですとか刀だったりとか、武士道みたいなところとか。結構フックはいっぱいありますもんね。

(春日太一)で、スタイルとしてかっこいいと思うんですよ。そもそもスタイリッシュ。で、それはやっぱり最初にやったというか、いちばんそれを実現したのは三船さんだったと思うんですよね。だからやっぱり『世界の三船』って言われるだけの理由はあるし。いま、見返すべきスターは三船さんなのかな?っていう気はしてますね。

(赤江珠緒)春日さんのね、このご著書では映画会社、脚本家、監督、俳優さん、それぞれの立場から時代劇に対して、どういうところがちょっとずつ変わってきちゃったのか?みたいなのをいろいろ、いろんな角度から書かれているじゃないですか。その中でね、これ面白いなと思ったのが、『見ている人が時代劇に対して、やけに時代考証とかをしたがりすぎてないか?』みたいなのが。

(ピエール瀧)あー!ありますね。

(赤江珠緒)それも、ああ!って思ったんですよね。

(春日太一)そうですね。それはやっぱり、1つはインターネットの問題もあると思うんですね。みんなやっぱり、なんか意見発信をしたいってなってきた時にそういうことって言いやすいじゃないですか。そういうある種の揚げ足取りじゃないですけど。で、詳しい人からすると、俺はここ詳しいよっていうアピールの場にもなってくるので。それがどんどんやっぱり窮屈に。で、鬼平犯科帳っていう番組が1つ、90年代に大ヒットしましたけど。あれがあまりにも、ディテールまで完全に江戸の空間で作っちゃったものだから、みんなああいう風に作らなきゃいけないんじゃないか?って作り手側も思ったしっていう。そういうのもあると思うんですよね。

(赤江珠緒)なるほど。

(ピエール瀧)たしかに大河とかやっていると、そこの時代考証。そのタイミングでこいつとこいつが出会っているのがおかしい!とか。あと、その刀を持っているわけがねえ!みたいなやつとか。好きな人が言いたいんですよね。それは不正解!っていう。

(赤江珠緒)たしかにちょっとね、突飛すぎる!っていうところもあるんですよね。大河とかでね。

(春日太一)うん。ただ突飛すぎるって思わせないリアリティーを劇として作り上げれば、それで僕はいいと思うんですよ。で、昔の大河はじゃあそんなにちゃんとやっていたか?って言ったら、昔から実は大河ドラマってそこんところフィクションをちゃんと入れてきながらやっていってきましたから。それはちゃんと説得力持って見せればいいし。だから見る側があまりにも、でもそれを・・・歴史の教科書を再現するためにドラマってあるわけじゃないですから。それだったらね、再現劇を見ればいいわけですよ。そうじゃなくて、みんなが見たいのはエンターテイメント。ロマンが、歴史ってロマンだと思うんでね。劇としては。それを見たいと思うんで、あんまりそこんところを細かく見る必要はないし、そこは演じ手側も作り手側も僕は気にしないでほしいなって思うんですよね。あんまり。

(赤江・瀧)ああ。

(春日太一)どんどん窮屈に。まず、どんなどらま描きたいか?とか、どういう表現をしたいか?っていうのを1にやってほしい。

(赤江珠緒)そうですね。おすすめ時代劇作品はなんですかね?

(春日太一)作品ですか?いまの僕、いちばんおすすめっていう時の対象としては、時代劇知らないビギナーの人に入ってきてもらいたいなっていうのがあるんで。そういう人たちに見てもらいたいのは黒澤映画ですね。初期の。七人の侍、用心棒、椿三十郎、隠し砦の三悪人っていうこの4本は是非見てほしいっていう。まさにさっき言ったインターナショナルなエンターテイメントの時代劇っていうのを実現しているのはこの4本だと思うので。黒澤映画っていうのをまず見てほしいなっていうのはすごくありますね。

(赤江珠緒)なるほど。やっぱりそこから入っていけば。

(春日太一)そうです。僕もやっぱり黒澤映画から時代劇好きになって入っていった人間で。うちの父親がとにかく枕元で子どもの頃、寝物語に七人の侍の話を聞かせてくれたんですよ。

(赤江・瀧)(笑)

(春日太一)それで頭の中で七人の侍の映像が浮かんでいたりして。それでそういう時代劇、なんかそういう世界に子どもの頃から馴染んでいたっていうのがあったので。なんかそういう情操教育されて。僕としては入り口は七人の侍で。その後、はじめて名画座に行って見たのが隠し砦の三悪人だったんですよ。これを見て、『うわー!かっこいいな、三船敏郎。すげー映像だな!』っていって興奮したのがスタートだったのもあるんで。だからまずは、黒澤明っていうのに、時代劇を知らない人は見てもらってほしい。最近時代劇を離れている人とか確認したい人も、やっぱり黒澤を見ることで時代劇の魅力を再確認できるんじゃないかな?っていう気がしますね。

(赤江珠緒)椿の色がそこだけ、色があってね。

(春日太一)あのへんのセリフのやり取りもすごく落語チックでユーモアがあるので。結構笑えるんですよね。芝居もみんな上手い。アクションも脚本も本当に三船さん・・・で、受けるのが仲代達矢さんで。お互い素晴らしい立ち回りから演技からやってますから。もうそれだけで時間を忘れちゃうと思うんでね。あれはいいと思いますね。

(赤江珠緒)そうなんですよね。

(ピエール瀧)まあね、そう。たしかに江戸文化好きな人とかも結構いるじゃないですか。チャンバラっていうことじゃなくて、やっぱりあの頃、すごい楽しそうだなって。

(赤江珠緒)あ、私もそう。

(ピエール瀧)でしょ?だから、1回も剣を抜かない時代劇があってもいいわけですよね。1クール。

(春日太一)そうですよね。だから時代劇ってもっと自由なんですよ。だからいろんな時代劇って本当はあっていいので。こうじゃなきゃいけないとか、最後結局なんか知らないけどテレビだと40分ぐらいからどんなのでもチャンバラシーン入れるじゃないですか。

(ピエール瀧)入れますよね(笑)。

(春日太一)でも、必ずしもそうじゃなくてもいいし。だからちゃんとドラマとして45分作ればいいわけで。そこで必要だったらチャンバラシーンも入れればいいし。逆に全編アクションでやるやつがあってもいいし。いろんな本当はものがあり得るのが時代劇なので。必ずしもそのフォーマットでやる必要はないわけだから。そこは作り手の人たちは、もっと自由に考えてほしい。

(ピエール瀧)昔、あんなにバンバン抜刀してたか?っていうと・・・

(春日太一)それはないですよ。

(赤江珠緒)違うんですよね、そもそもね。

(春日太一)ただ時代劇、日本でやっぱりアクション映画をやるとしたら、拳銃ってどうしてもリアルじゃないじゃないですか。やっぱり日本でアクションをリアルにやるとしたら、剣を抜いたほうがリアルに通じるのでね。だからどんどんそれで斬りまくっていいと思うし。

(ピエール瀧)まあね。ぜったいに槍の方が強いはずですもん(笑)。

(赤江珠緒)でもやっぱりちっちゃい時からね、なんとなくこの時間になったら時代劇があるっていうのが生活のリズムだったんでね。それがあった方がいいですよね。

(春日太一)いやー、あと特にやっぱり子どもとか若い人たちも含めて、テレビでふと見ないと入り口ってないと思うんですよね。わざわざ名画座まで行かないじゃないですか。あるいは専門チャンネルがたくさんあったりとか、DVDもいまは出ていて、昔よりは見やすい状況でそこはあるんですけど。一生懸命がんばらないと見れないと。でも、テレビでフラーッとやっていたらフラーッと見て、フラーッと好きになるっていう。やっぱりそれがいちばんいいですよね。気楽に好きになるのがいちばんいいと思うんで。無理に勉強しようとしちゃったら、いけないと思うんですよね。

(ピエール瀧)そうですよね。再放送とかやってると、やっぱりフラーッと見ちゃう時ありますもんね。

(春日太一)そう。で、結果的にそうすると、『あ、この役者いいな』とか。時代劇、僕なんかは再放送でずーっと。特に登校拒否していた時代もあるんで。ちょうど電気グルーヴのオールナイト聞いていた頃なんかは。

(赤江珠緒)(笑)。サラッといろんなことを告白されてますけど。

(春日太一)そうすると、テレビ東京の昼間の再放送とかやっているわけです。あれなんかをずーっと見てて、『ああ、影の軍団すごい!必殺すごい!』とか、見ててまた時代劇にどんどんハマっていったっていう。現実逃避としてね。そういうのがあったんで。

(ピエール瀧)(笑)。よくそこからここまで帰ってこれましたね。

(赤江・春日)(笑)

(春日太一)いやー、親をどれだけ泣かせたかっていう話ですよ(笑)。

(赤江・瀧)(笑)

<書き起こしおわり>


なぜ時代劇は滅びるのか (新潮新書)

スポンサーリンク

宇多丸が語る TOKYO TRIBE 練マザファッカーD.Oの存在感と魅力

宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の映画評論コーナー・ムービーウォッチメンの『TOKYO TRIBE』評の中で、 練マザファッカーD.Oの存在感について語っていました。


(宇多丸)で、まあ次々と東京のトライブの勢力図を説明していくと。で、ここでですね、次々と現役の日本人ラッパー。イケイケな、現役第一線にいるラッパーたちが次々と出てくる。まあ、日本語ラップファンにはお馴染みのメンツが次々と出てくると。で、ラッパーっていうのはそもそもキャラ立ちがすごく大事なわけです。言ってみれば、プロレスラーとかにも近いんですけど。で、やっぱりそれぞれにキャラが立っている人が成功していくんだけど。その特性がすごく存分に活かされてるなという風に思います。

言ってみれば、それぞれのクルーのミュージックビデオ的な作りになっているんだけど。特にこのトライブ、いろいろね、実際のラッパーたち出演してますけど。今回やっぱりいちばん得したな!と思うのはね、やっぱり原作にはないというか、唯一本当に実在するクルーであり、なおかつ、いちばんたしかにTOKYO TRIBE感があるクルーである練マザファッカーというね、練馬をベースにした。練マザファッカー。ちなみに、練マザファッカーと言えば僕ね、この番組で以前、『リンカーン』というね、バラエティー番組で中川家のお兄さんが練マザファッカーのみんなと一緒に暮らしてラップを覚えていって。で、B-BOY PARKで披露するという。これに号泣してしまったという話をね。素晴らしい、あれはラップ・HIPHOP映画でしたよね、あれね。映画でした。あれは。

[関連リンク]リンカーン中川家剛 練マザファッカー ウルリン滞在記動画まとめ

(宇多丸)の、練マザファッカー。特にやっぱり、あのD.Oのね、声といい、キャラ立ちといい・・・あれはラップを知らない人の目と耳にも、『こいつはやっぱり他のラッパーとはまた違う、ちょっと立ってるな!』っていうのは明らかにわかるはずじゃないですかね。あのバルト9の場内注意のあれをね、D.Oがやっていたりしますからね。で、その一連のあれで、やっぱりラッパーっていうのはキャラ立っていていいなと。で、それぞれスタイルも違いますし。MC漢とかは、ああいう畳み掛けるスタイルだったりとかね。

<書き起こしおわり>








スポンサーリンク

菊地成孔 OMSB・MOEにビブラストーンを説明する

菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』 HIPHOP特集の中で、ビブラストーンを知らないSIMI LABのOMSBさん、MOE AND GHOSTSのMOEさんに概要を説明していました。リスナーからの『菊地さんはビブラストーンに絡んだり、ハマったりしましたか?』というメールに回答しながら話しています。


(菊地成孔)菊地さんはビブラには絡みませんでしたが、まあちょっとハマりましたね。普通にね。MOEさん、ビブラストーンとか知ってますか?

(MOE)いや、初めて聞きました。

(菊地成孔)近田春夫さんです。

(MOE)ああ!そうなんですね。はいはい、それはわかりました。

(OMSB)あー。

(菊地成孔)近田春夫さんがやっていた、生演奏の、ホーンもいる大所帯のバンドでラップする。

(MOE)へー。

(OMSB)シブいですね。

(菊地成孔)MCが2トップで、近田春夫さんとDr.TOMMYくんっていう人。オムス、知ってる?

(OMSB)俺もわかんなかった(笑)。

(菊地成孔)まあまあ、そういう世代的な断層もはさみつつ進んでいく番組(笑)。

(MOE)すいません・・・はい。

(菊地成孔)いや、ぜんぜん大丈夫ですよ。もう近田さん、とっくにラップやめてますからね。『ラップ、あんなもんは飽きた』っつってますからね。

(OMSB)困ったな(笑)。

(菊地成孔)オールドスクーラーは結構、飽きて転向・・・元々が転向者だから。

(MOE)ああ、そうか。

(菊地成孔)うん。だからまた転向することに抵抗がないっていうかね。ミドルスクーラーからは、最初からボーン・トゥ・ビー・ラッパーなんで。やめないですよね。

(OMSB)『俺がこうだ!』みたいな。

(菊地成孔)うん。ずーっとラッパーだよね。活動してなくても。そんな感じですね。

<書き起こしおわり>



スポンサーリンク