小林雅明さんがTOKYO FM『TOKYO FM WORLD』に出演。ローランドのリズムマシーンTR-808が音楽シーンに与えた影響や変化について、ケリー隆介さん、アンジー・リーさんと話していました。
(ケリー隆介)『TOKYO FM WORLD』、ケリー隆介です。
(アンジー・リー)アンジー・リーです。
(ケリー隆介)世界の最新情報をリスナーのみなさんとシェアするこの番組。4月に世界的な電子楽器メーカーのローランドの創業者である梯郁太郎さんが亡くなられたんですけども。その時に、SNSでは日本だけじゃなく、世界中のミュージシャンから哀悼のコメントが寄せられていたんですね。で、この梯さんといえばローランドの創業者だけではなくて、世界的名機と言われているリズムマシーンのTR-808の生みの親なんていう風にも言われているんですね。なので、今夜のShare The Worldではその世界のミュージシャンがリスペクトするというTR-808がいったいどんなものだったのか? そしてそこから見えてくる世界の音楽シーンに与えた影響を紐解いていきたいと思います。
(アンジー・リー)ゲストにお迎えしてお話をうかがうのは『808 Music Handbook – ザ・808読本』の著者、小林雅明さんです。
(ケリー隆介)小林さん、ようこそ。今夜はよろしくお願いします。
(小林雅明)よろしくお願いします。
(ケリー隆介)はい。ということで最初にざっと梯郁太郎さんについて説明させて頂いたんですが。梯さんといえばTR-808を生み出した方ということで。このTR-808がそもそも何なのか? まず、これ自体は楽器なんですか?
ローランドTR-808とは?
(小林雅明)楽器というか、なんと言えばいいんでしょうかね(笑)。まあ、自分でビート、リズムパターンを作るためのマシーンということになります。TR-808が出る前までは、要するに自分でビートというのを作れなかったわけなんですね。それまではリズムボックスといって、予め決められたリズムパターンのもの……入っているもので、それしかなかったわけなんですね。
(ケリー隆介)じゃあそれを再生すると、そのパターンは流れるけど……。
(小林雅明)メトロノームみたいに何拍とか、テンポですね。それを見るためのものではあったんですけど。それはね、一方的に出てくるもので、それを加工したりとか、新しく作るっていうことはできなかったんですね。
(ケリー隆介)はい。
(小林雅明)このTR-808の場合は、そのドラムに構成されている音を自分で勝手に組み合わせて、勝手に自分の好きなリズムパターンを作れる。音楽的な知識とか訓練とかがない人でも、勝手に打ち込めば一応できるものなんですね。
(ケリー隆介)ああ、そういうことですね。
(小林雅明)ベースドラムとかキック(の音)がもちろん入っていて。スネアももちろん入っていますし、ハイハットも入っているし、タムとコンガ。あとリムショットも入っていて、シンバルも入っていて、マラカスも入っていて。クラベスも入っていて。あと、ハンドクラップも入って、最後の1個がカウベルというのが入っていて。で、そのカウベルを使ったのがピコ太郎の曲ですよね。
(ケリー・アンジー)おおーっ!
(ケリー隆介)えっ、『PPAP』?
(小林雅明)そうです。
ピコ太郎『PPAP』
(アンジー・リー)へー!
(小林雅明)金属音みたいなのが入ってますよね?
(ケリー隆介)「パーン、パーン、パーン……♪」ってやつですね。へー! これ、そうなんですね。でもたしかに言われてみたら、どっかでも聞いたことがあるような音色なんですよね。これ。これはじゃあTR-808にすでに入っているカウベルの音の種類なんですね。
(小林雅明)そうですね。ただまあ、全然音がこれ、実際に違いますよね? そこがこれのポイントでもあるんですけど。
(アンジー・リー)でもこれって、実際の生音じゃなくて、ちょっと機械っぽいなというのはわかります。
(ケリー隆介)うんうん。このTR-808自体が世界的名機と言われる所以って何なんですかね?
(小林雅明)そうですね。これは……もともとでも、当時は名機でもなんでもないというか。そんなにすぐ、これ、ドラムの音の要素でどの音を聞いてもドラムっぽくないわけですよね。実際はね。
(ケリー隆介)それは生のドラムの音にはまるで……。
(小林雅明)聞こえないということですね。
(ケリー隆介)で、これができたのはいつの話なんですか?
(小林雅明)これは1980年から売り出されたものなんですけども。やっぱりこの時期ってそういう新しいマシーンっていうのに日本の会社とかは特に力を入れてましたから。
(ケリー隆介)ではですね、ここからはTR-808の歴史を小林さんに選んでいただいた曲とともに紐解いていきたいと思います。小林さん、TR-808が印象的な楽曲ということですけど。じゃあまずは、どの曲から行きましょうか?
(小林雅明)じゃあこのプラスチックスの『Delicious』という、これは『WELCOME PLASTICS』という81年のアルバムの1曲目なんですけども。これを聞いてみます。
The Plastics『Delicious』
(ケリー隆介)さあ、まず聞いていただいているのは1981年。日本のアーティスト、プラスチックスの『Delicious』という曲ですね。
(小林雅明)そうなんですね。これがいちばん最初にTR-808を使ったアルバムというか。バハマでアルバムをレコーディングした時に佐久間正英さんという方がメンバーでいたんですけども。その方が808のシリアルナンバー1番の、最初の機材を持ってバハマまで行ったわけですね。
(ケリー隆介)へー。本当に第一号のやつを。
(小林雅明)これはもう本当の最初の段階で。やっぱりまだ、頭の中ではバンドっていうのが、どうしても時代的にあるわけで。ただでもそこで、人間のドラムをどかして、そこにこれを入れたらどうなりますか?っていう発想らしいですね。
(アンジー・リー)ドラムのセットではなくて、このマシーンで。
(小林雅明)そうです。面白い話がそこでいろいろとあるみたいなんですけども。要するに、日本人はプラスチックス佐久間さんを含め、現物をそこで見たわけなんですけども。外人ではじめて見たのは、なんとそのコンパスポイントスタジオにいたエリック・クラプトンだったという話なんですよ。
(ケリー隆介)へー!
(小林雅明)第一号機を見た日本人以外……外人ですよね。それがエリック・クラプトンが一号で。『Another Ticket』っていうアルバムがあるんですけど、それのレコーディングをあそこでやっていたので。その頃かとは思いますけども。
(ケリー隆介)おおーっ! じゃあそうやって、日本で作られた808が行って……。
(小林雅明)バハマまで持って行って、そこでエリック・クラプトンが見ていてっていう、まずそういうのがあって。それで、81年がそのプラスチックスで、さらにYMOとかもさっきのハンドクラップと言いましたけど、それを入れた曲とかもこの時期にあって。
(ケリー隆介)はい。
(小林雅明)それでニューヨークのアフリカ・バンバータというアーティストがいたんですけども。この人は、クラフトワークとかYMOとかがもう大好きだったんですよ。で、もともとレコード会社から言われたのは「自分の好きな既存の曲を使って、それをつなげたような曲でやってみたら?」って言われたらしいんですけど、それだと二番煎じですから面白くないというので。それでも、クラフトワークが大好きなので、それを再現というか、自分なりにやってみたいということで。そこにちょうどこの機材が現れたわけなんですね。
(ケリー隆介)ふーん。じゃあそれで、日本人のアーティストの手によってアメリカに渡って。それを見た人たちが「なんだ、これは?」っていうことで人気に火が付いていったと。で、ニューヨークまで渡っていったということですね。
(小林雅明)そうですね。
Africa Baambataa『Planet Rock』
(ケリー隆介)お聞きいただいているのはアフリカ・バンバータ&ソウル・ソニック・フォースの『Planet Rock』。こちらは1982年リリース。アンジー、どう? これ、聞いてみて。こういうの、わかってきた?
(アンジー・リー)あの、80年代っぽいのはわかります。
(小林雅明)80年代っぽい(笑)。
(ケリー隆介)アンジー、わかったの? すごいね! そして?
(アンジー・リー)で、この中の、ちょっと低くて鈍い「ドンッ、ドドンッ……♪」っていうような音。これって、808の音ですよね?
(小林雅明)そうですね。
(アンジー・リー)あと、「キュン、キュキューン♪」っていう音も?(笑)。
(ケリー隆介)それもそうですよね。おう、わかってきたね!
(アンジー・リー)少しずつ(笑)。
(ケリー隆介)でもそうやって、説明を受けた上で聞いてみると、「ああ、こういう構造でできているんだな」っていうのが見えてくるよね。これ、実際に製造というか販売されていたのはいつまでですか?
(小林雅明)80年から83年までなので、4年間ですね。
(ケリー隆介)たったの4年間ですか。
(アンジー・リー)短いですね。
(ケリー隆介)で、まあこのように世界中に広まっていったわけですけども。かなり短い間でということですけど。それで何か、音楽シーンに与えた影響、変化っていうのはあったんですかね?
(小林雅明)これが出るまでは、どっちかっていうとメロディー中心でドラムはちょっと下がったところにいるものを、これはだってドラムの音しかないんですから。これを使って作れば、もうドラムが前に来るのは当たり前。
(アンジー・リー)メインですよね。
(小林雅明)それに何かを足すという考え方になりますから。「ドラムがメロディーのためになにか後ろでやっています」じゃなくなってしまうので。そうすると、このキックとかスネアとか、そっちを前面に出す音楽みたいなのがどんどん増えてくるわけです。だからだんだん感覚が変わってくるし、あと1回打ち込めば延々と続くというところから言えば、ハウスミュージックとかの元とかにもなるわけですね。
(ケリー隆介)うんうん。なるほど。やっぱりループをずっとしてくれるということですね。人間業だと、もう疲れてきちゃうから、変わっちゃいますもんね。人がドラムを叩いていたら。
(小林雅明)そうですね。疲れたりとか、あとフィル・コリンズとかの話では、要するにすごい叩ける人はいつまでも同じペースで叩いても、特にミュージャンだと面白くなくなって、いろんなことをやりたくなっちゃうけれども、これに任せておけば延々と同じことをやってくれるので面白いという。
(アンジー・リー)もう常に安定してっていうことですね。
(ケリー隆介)うん。なんか不思議ですよね。それって。ミュージシャンとしてはグルーヴが大事とかそういうことを言うから、ある意味人間味がある音楽に対しての価値観がすごい膨らむんだけど……。
(アンジー・リー)その時の気分とかによっても変わってきますよね。
(ケリー隆介)そう。あるじゃない? けど、結局リズムマシーンっていうのは変わらないことの美学みたいな。そこをすごいミュージシャンが注目したっていうのが俺はすごい、逆説的な感じがして、不思議ですね。
Usher『Yeah! ft. Lil Jon, Ludacris』
(ケリー隆介)さあ、お聞きいただいているのはアッシャーの2004年の楽曲『Yeah!』。これね、結構知っているという人もリスナーの中に多いと思いますが。この曲も実はTR-808の音が使われていると。
(アンジー・リー)そうだったんだね!
(ケリー隆介)このように、80年代に生まれたこのマシーンの音自体が2000年代に入ってもこうやって音楽シーンの中で健在しているというのは何か理由があるんですかね?
(小林雅明)音楽ができない人が音楽をやりたい時の瞬間の、そこから生まれるDNAみたいなのがここに、この808の音にもしかして憑依というか、していて。それで、デスクトップミュージック(DTM)とかでもそこに組み込まれた音があって。要するに、やっぱりそこで、これはもしかして80年代のTR-808が出たことは実際にはよくわからなくても、デジタル・オーディオ・ワークステーションとかそういうものの中で、この音のサンプルを見つけて「これは面白い」と思ったかもしれないんですよ。
(ケリー隆介)うんうん。
(小林雅明)だから、それはどこかでやっぱり、この音色が自然にそこに惹かれる何かがあるんでしょうね。「何か」っていうのはおそらく、マシーンが作っている音なんですけども、アナログなので。要するに、いまのテクノロジーだったらどの楽器を買っても同じ音が鳴るようになっていますけど、この場合は部品もアナログですから、変わってくるっていうので。まあ「味がある」って言ったらあれなんですけども。あまり機械的じゃない魅力みたいなのはあると思うんですよ。だからそこに気がつく人は気づいて、「面白い音だな」と思う人もいるかもしれないですよね。
(ケリー隆介)ふーん。機械なのに、機械的じゃないっていう魅力ですか。
(アンジー・リー)なんか矛盾してますね。
(小林雅明)もうひとつ、考えられるのは、これがそういうヒップホップとかストリートの音なのかな?っていうよくわからない認識みたいなのがずっと伝えられてきているかもしれないですね。まあ、この後の紹介したい曲につながることにもなるんですけども、この2004年ぐらいから「トラップ(TRAP)」っていう、いまは結構知られるようなジャンルの言葉の言葉になりましたけども。やっぱり、TR-808の音が好んで使われるようになるんですよね。具体的にはもうちょっと後になるんですけど。やっぱりストリート的なものをそこに求めているのかなっていうのはあるかもしれないですね。
FUTURE『MASK OFF』
(ケリー隆介)お聞きいただいているのは今年リリースですね。フューチャーの『Mask Off』。こちらは最新のビルボードのチャートでは7位にランクインしているかなりいま売れている曲でもありますね。このフューチャーというアーティストも新しいアーティストですけども、この曲にも808の音が使われていると。
(小林雅明)そうですね。ブンブンいってますもんね。
(ケリー隆介)「ブーン、ブーン……♪」っていうやつですね。はい。これも808からできてきた音ですね。
(小林雅明)これがだから、さかのぼると『Planet Rock』ですけども。どんどんだからつながっているというか、そういうのがあるのと、トラップのビートを作る場合にはもう完全にこのTR-808の――実際の機材じゃなくてソフトなんですけども――を、使って。それの組み合わせで作っているんですよ。ほとんどっていうか、みんなそうです。
(ケリー隆介)ふーん!
(小林雅明)で、フューチャーの曲を作っているプロデューサーとかでも「808 Mafia」とか、そういうのがいたりするんですよ。自分たちのプロデューサーチーム名もそういうのを名乗るぐらいという感じで。
(ケリー隆介)じゃあもう、ある意味シグネチャーサウンドっていうことなんですね。
(小林雅明)そうですね。もう完全に、これがいまのアメリカの主流のヒップホップのビート。この808の音が本当にシグネチャーですね。
(ケリー隆介)すっごいな!
(小林雅明)ストリートの話がここでつながってくるわけですね。きれいに。
(ケリー隆介)さて、『TOKYO FM WORLD』、Share The Worldのコーナー。この後、CMを挟んで引き続き小林さんにお話をうかがっていきます。小林さん、よろしくお願いします。
(小林雅明)はい。よろしくお願いします。
(中略)
(ケリー隆介)映画『808』というものも出ておりますけども。そういう風にドキュメンタリーにまでなってしまうというぐらいの影響力、存在感だったということですよね。この808は。
(小林雅明)そうですね。だからいまのこの……映画はこれ、2015年の映画で2016年の12月ぐらいからたぶん見られるようになったと思うんですけども。むしろだからいま、ここまでお話してきたように、さっきのストリートとかのつながりの話もあれなんですけども。いま、ここで振り返ると、全部いろいろきれいにつながったりとか、ユニークな面とかっていうのが改めて、これは本当に面白いものだったなということで。いまだからこそ、これを取り上げて説得力を持つということで、たぶん映画もできたと思うんですよ。
(ケリー隆介)うん。はい。
(小林雅明)要するに、昔を振り返るんですけど、それがいまにきれいにつながっているっていうところを見せたい映画だと思うんですよ。映画はこのトラップのところまでは来ていないんですけど。ハウスとかテクノとか、そっちの方にも話を振っているので。映画としてはかなり、本当によく、どういう風にこのTR-808が使われ、新たな音楽が生まれてきて……っていうのが本当によくわかる映画ではありますよ。
(ケリー隆介)うんうん。4月にお亡くなりになりました梯さんも映像が出てくるというか。インタビューの模様が出てくる?
(小林雅明)そうですね。映画の最初に、もちろんそういう功績があるので。「このローランドを設立した方です」という話は触れるんですけど。で、さて、この映画にいろんなアーティストとかプロデューサーとかが出てくるんですけど、いつ出てくるのかな?って思ったら、いちばん最後に(梯郁太郎さんが)出てくるんですけど。で、最後でどういうお話をしてくれるか?っていうと、「実はこれ、TR-808っていうのは不良品のトランジスタを使って、それで作っていた」っていうことを打ち明けて。
(ケリー隆介)へー!
(アンジー・リー)不良品なんですか?
(小林雅明)そうですね。新しい部品で、不良のものを使ったわけです。要するに、部品を検査しますよね? で、(品質的に)はじかれた部品を集めて、それで作っていったという。
(ケリー隆介)ああー、なるほど。
(小林雅明)で、それが、日本人は律儀で真面目ですから、(トランジスタの)不良品を出さないようにどんどん改良をしたりしますからね。
(アンジー・リー)時代に沿って、どんどんどんどん。
(小林雅明)少しでも無駄を減らして……というのが。だから、それを極端に推し進めるわけですから。そしたら、どんどん不良品がなくなると、材料がなくなるわけですからね。
(アンジー・リー)そうすると、もう作れなくなっちゃって……。
(小林雅明)それで、「製造ができなくなった」って映画が終わってるんですね。
(ケリー隆介)へー!
(アンジー・リー)なるほど。面白い理由ですね(笑)。まあちょっと訳ありのパーツをこう……。
(小林雅明)そういうことです。いまで言う「訳あり」(笑)。
(ケリー隆介)そんな作り方をしていいんですね(笑)。
(アンジー・リー)じゃあ逆に新品(良品)で作っていたら、もしかしたらまあ全然、違っていたかも。
(ケリー隆介)評価が分かれていたかもしれないね。実際、この808の生みの親となった梯さんはこの4月に亡くなられましたけども。小林さんはこの梯さんが亡くなられたことについては、なにか思われることはありますか?
(小林雅明)そうですね。ここに梯さんが書かれた『ライフワークは音楽 電子楽器の開発にかけた夢』っていう本があるんですけども。この本を読んでみると、やっぱり「どういう音を鳴らしたい」というのを何も考えずに、まずやってみるっていう。挑戦し続ける人っていうイメージはありますよね。最後の最後まで。っていうかだって、このTR-808が「もうこれ、マズいんじゃないか?」っていう時にすぐ、後継機。次の機材の開発がもう始まっていますから。結果とかを見ないでどんどん次に進んでいくところもすごいですよね。
(ケリー隆介)へー! そういった、これは80年代当時の話ですけど。日本の企業ってかなりそこに対してすごいチャレンジングな企業が多かったんじゃないかな?っていう気がするんですけども。これって世界的にスタンダードになっている話なわけじゃないですか。日本から生まれたものが。それって、なんでその当時はそういうことがなし得たのかな?ってすごい不思議に思うんですけども。
(小林雅明)そうですよね。でもこれ、考えてできることじゃなくて、まあ偶然といえば偶然なんですけども。どんどんどんどん勝手に……要するに、この『電子楽器の開発にかけた夢』っていうのがこの本の副題ですけど。まあ、梯さん自身は機材の開発をシンセを中心にそこでがんばったわけなんですけども。そっちの夢だけじゃなくて、それを使う人にもどんどん夢を与えて、そっちで全く違う展開も……だから、梯さん自体としては、機材ができればそこでたぶんもう、満足で。それがどう使われようがって、たぶんそこまでは細かく考えなかったはずなんですね。自分のアイデアとかが形になれば、もうそれでOKっていうことだと思うんです。
(ケリー隆介)うんうん。
(小林雅明)まあ、実際にはスタッフとかが開発したりしているんですけど。だから、そこから派生したものの方がどんどん大きくなっているし、どんどん、何十年もたっても続いているというところが面白いと思いますよね。
(ケリー隆介)はい。ということで様々なお話をおうかがいしてまいりましたが、そろそろお別れのお時間となってまいりました……。
<書き起こしおわり>