町山智浩 『シェイプ・オブ・ウォーター』を語る

町山智浩 『シェイプ・オブ・ウォーター』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でアカデミー賞の最有力候補、ギレルモ・デル・トロ監督の映画『シェイプ・オブ・ウォーター』を紹介していました。

シェイプ・オブ・ウォーター(オリジナル・サウンドトラック)

(町山智浩)本日、アメリカではゴールデングローブ賞のノミネート作品。候補作が発表になったんですよ。ゴールデングローブというのはアメリカにいる外国人の特派員の人たち。映画関係のジャーナリストが投票をして決める賞なんですけども。これはアカデミー賞に続く、アカデミー賞を占う前哨戦と言われています。それで、最も多い部門、7部門にノミネートされた『シェイプ・オブ・ウォーター』という映画を今日は紹介します。

(海保知里)はい。

(町山智浩)この『シェイプ・オブ・ウォーター』は作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、作曲賞にノミネートですね。

(海保知里)おおっ、すごい。いっぱいノミネートされていますね。

(町山智浩)はい。いま後ろでかかっている音楽はその作曲賞にノミネートされた音楽なんですけども。

(海保知里)なんか神秘的な感じで。

(町山智浩)そうですね。口笛ですね。ちょっとメルヘンチックな感じがすると思うんですよ。で、この『シェイプ・オブ・ウォーター』っていうタイトルは「水の形」っていう意味ですけども。水の形って、ないですよね?

(海保知里)うん、そうですね。

(町山智浩)だから、いろいろと考えさせられるんですけども。これはまあ、早い話がアンデルセンの『人魚姫』のような物語です。

(海保知里)ああ、そうなんですか。

(町山智浩)はい。『人魚姫』は人魚の女の子が王子様に恋をするんだけど、足をもらうかわりに声が出なくなってしまって……っていう悲しい話だったんですけど、この話『シェイプ・オブ・ウォーター』は人魚の方が王子様です。で、人間の方が女の人で、声を失っているという話です。

(山里亮太)ああ、逆なんですね。

(町山智浩)はい。で、これはただ、人魚の王子様っていうのはアマゾンで捕獲された半魚人です。

(山里亮太)そうか。「人魚のオス」っていう言い方が合っているかわからないけど。そうか。男の人魚は半魚人か。

(町山智浩)写真があると思うんですけど、半魚人ですね。

半魚人

(山里亮太)あ、半魚人ですね! 魚感が強いですね!

(町山智浩)そう。体中に鱗が生えていて。ヒレもついているという半魚人が王子様で。で、お姫さまにあたるのがサリー・ホーキンスっていう女優さんなんですけども写真があるかな?

(海保知里)はい。

(町山智浩)まあ、この人は40才のお掃除のおばさんなんですよ。「えっ?」っていう感じですよね。

(山里亮太)めちゃくちゃきれいなヒロインっていう感じではないですよね。

(海保知里)じゃないですよね。

(町山智浩)そうです、そうです。それで、彼女は声が不自由で、しゃべれないんですね。この2人のラブロマンスなんですよ。この映画は。すごく不思議な感じだと思うんですけども。これ、監督はギレルモ・デル・トロ監督という方で。それも写真があると思うんですけども。

(山里亮太)『パシフィック・リム』の?

(町山智浩)そうです。『パシフィック・リム』の監督です。『ヘルボーイ』とか。ふっくらと豊満な、ねえ。彼と並ぶと僕、痩せて見えますよね?

(海保知里)アハハハハッ!

(山里亮太)いま、ちょうど町山さんとツーショットの写真が手元にあるんですよ。兄弟みたい(笑)。

町山智浩×ギレルモ・デル・トロ

(町山智浩)あ、そうですか! なんだよ!(笑)。「町山さん、痩せて見えますね」って言ってくれないのかよ(笑)。

(海保知里)アハハハハッ!

(山里亮太)いや、痩せて見えますよ、町山さん(笑)。

(町山智浩)まあまあ、兄弟みたいなもんですよ。歳も近いし。

(山里亮太)だって、仲がいいんですよね?

(町山智浩)そうそう。歳も近いし、怪獣とかアニメが大好きなんで。2人ともどうしようもないオタクなんですけども。彼はメキシコで育ったんですけど、子供の頃に見ているものは全く同じでした。

(海保知里)そうですか(笑)。

(山里亮太)日本のああいう特撮とか、すごい愛してくれているんですよね?

(町山智浩)そうなんですよ。『ウルトラマン』とか『マジンガーZ』を見て育ったんで。まあ国は離れていても同じような心の持ち主なんですけども(笑)。

(山里亮太)同志っていう感じですね。

(町山智浩)で、彼が作った話がこのすごく不思議な半魚人と人間の女の人のラブロマンス、『シェイプ・オブ・ウォーター』なんですけど。この半魚人とお掃除のおばさんということで、ちょっと普通の感じじゃないし。いきなりこの主人公、ヒロインの女性が朝、起きるところから映画は始まりますけど。この人、お掃除に行くんで、朝じゃなくて夜になってから起きて出勤をするんですよ。

(海保知里)はいはい。

(町山智浩)そこから始まるんですが……いきなり朝の日課としてオナニーをされます。

(山里亮太)あら? いきなり?

(海保知里)どうしました? そうなんですか。あらあら……。

(町山智浩)だから、みんなが考えているような映画じゃないんですよ。

(山里亮太)そうですね。わかりやすかったです。いま。

(町山智浩)いきなり最初の1分でオナニーしますから。

(山里亮太)出会って1分で……?

(町山智浩)40代女性が。出会って1分でナントカっていうやつ、ありましたけども(笑)。

(山里亮太)いやいや、合体シリーズじゃないですよ!

(町山智浩)はい。そういうのじゃないですからね(笑)。

(山里亮太)それとは違いますよね(笑)。

(町山智浩)で、この話は舞台が1962年のアメリカなんですよ。で、ボルチモアっていうワシントンDC。首都に近いところの街なんですけども。そこに政府の秘密研究施設がありまして。そこの研究所で、アマゾンで捕獲した半魚人の研究をしているんですよ。で、エラ呼吸ができるので、戦争に使えるかもしれないということで。その頃は、アメリカとソ連がものすごい科学競争をしているんですね。冷戦状態で、ベトナム戦争とかをやっている最中なので、どっちが勝つか?っていう科学技術、軍事技術の競争をしている時代なんですよ。で、半魚人の技術があれば戦争に勝てるかもしれないという。

(海保知里)そういう発送なんですね。

(山里亮太)半魚人を兵器として?

(町山智浩)半魚人を兵器として使うという。まあこれ、『サイボーグ009』とかにも出てくる話で、もともとはソ連のSF小説でベリャーエフという人が書いた『両棲人間』っていう話があるんですけど。それも人間にエラを移植して水陸両用にするっていう話なんですね。

(海保知里)へー!

(町山智浩)その当時はよく言われていたことなんですよ。そういう研究をしているんですけど、その研究をしている男が、マイケル・シャノンという俳優が演じている政府の役人なんですが、すごい顔をしているんですが。この人の写真、ありますか?

(山里亮太)あります。結構な悪人な顔の感じ……。

(町山智浩)この人、獅子舞のお獅子みたいな顔ですね。

(海保知里)ああー、いい表現。

(町山智浩)鬼瓦というかね。で、この人が半魚人を徹底的に拷問しているわけですよ。言うことを聞かせようとして。ものすごく怖いんですけど。で、そこでお掃除のサリー・ホーキンスがイライザっていう役名なんですけども。半魚人と出会って、恋をしてしまうんですね。

(海保知里)うん。

(町山智浩)でも、拷問をされているわけだから、なんとかしなきゃっていう話になってくるんですよ。で、この映画ね、まずこのマイケル・シャノンが演じる軍人がものすごいんですよ。強烈で。まず、最初に出てくるところで、トイレの掃除をしているところに彼が来るんですね。で、おしっこをするわけですけど……彼は手を洗わないんですよ。

(海保知里)あれ? あら、汚い。

(町山智浩)で、「うわっ!」っていう感じでこのヒロインのイライザが見ていると、「あのな、手を洗うということは女々しいやつのやることだ!」って言うんですよ(笑)。

(海保知里)そんな……(笑)。

(町山智浩)「そうか?」って思うんですけど。この人はとにかく冷戦状態でソ連と戦っているんで、徹底的に強くなければいけないと思い込んでいる男で。いつも鏡を見ながら、「俺は強い! 俺は勝つ! 俺は強い!」って言い聞かせているんですよ。

(海保知里)鼓舞させているんですね。

(町山智浩)そうなんです。で、その当時ベストセラーだった『The Power of Positive Thinking』っていう本を読んでいるんですね。

(海保知里)ああー、それはなんか聞いたことがありますよ。

(町山智浩)それは、マクドナルドの創業者が愛読していた本なんですよ。『ファウンダー』っていう映画の中で。

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(海保知里)はい、そうだ!

(町山智浩)ドナルド・トランプが唯一信奉している本がその本なんですよ。彼は宗教とかまるでないんですけど、その『The Power of Positive Thinking(積極的考え方の力)』だけは信じているんですよ。

(海保知里)うーん……。

(町山智浩)そこに書かれていることは「強いことが正しいんだ。勝つしかないんだ。『俺はできる』と思い込め!」っていうことばかり書いてあるんですけど。そういう時代なんですよ。力が全てと思って、力でその半魚人を押さえつけようとしてるのがそのマイケル・シャノンさんなんですね。で、この人はゾッド将軍とかそういう役ばっかりやっている人なんですけども(笑)。スーパーマンの的のね。で、なぜそんな話を今回作ったのか?って、ギレルモ・デル・トロにインタビューをしたところ、「これは1962年の話じゃないんですよ。これは、いまなんだ」って言うんですよ。

(海保知里)ふーん。

1962年ではなく、現代を描く話

(町山智浩)これはいま、アメリカで何が起こっているのか? というと、まずドナルド・トランプが大統領になって、「移民を追い出せ」とか「イスラム教徒は入れるな」とか。あと、「俺はセクハラをしても自由なんだ!」とか言って、トランプは誰にも責められないわけですね。「そういう状況っていうものを描きたかったんだけども、それをいまの状況で描くとたぶんものすごい炎上するだろう。論争になるだろう。でも、『昔々、こういう時がありました』っていうおとぎ話にすれば、大丈夫なんだよね」って言っていましたね。

(海保知里)へー! そういう狙いだったんだ。

(町山智浩)はい。で、彼はこの前に作っている映画で『デビルズ・バックボーン』っていう映画と『パンズ・ラビリンス』っていう映画があるんですけど。それはスペインがフランコ将軍の政権で軍事独裁国家だった時の話なんですよ。で、ものすごいファシズムで政府が民衆を押しつぶしている時に、女の子の想像力がそれと戦っていくという話だったんですね。いままでは。ただ、今回はそれをアメリカに持ってきて、よりかなり直接的にはなっているんですよ。ただ、さっき言ったように『パンズ・ラビリンス』っていうのはフランコ将軍のところで独裁国家なんだけども、女の子がメルヘンな世界を想像していくわけですよ。

(海保知里)うんうん。

(町山智浩)で、今回の主人公のイライザは孤独な女性ということになっているんですけど、50年代のミュージカル映画が大好きで。フレッド・アステアとか。さっきかかっていた曲みたいなのなんですけども、いつも恋に恋しているんですね。

(海保知里)ふーん!

(町山智浩)で、自分がヒロインになって歌って踊っている姿を想像するんですよ。口はきけないんですけども。で、そういう想像力とかメルヘンの力と、その強烈な力による政治みたいなものが戦っていく話になっていますね。

(山里亮太)なるほど。

(町山智浩)だから、後半の方で、この半魚人のプリンスを助けなきゃならないわけですよ。すごい拷問をされて、殺されちゃうから。で、最終的には「解剖してエラを研究しよう」っていう話になっちゃうじゃないですか。どうしても。だから、なんとか助けなきゃならない時に、イライザの隣人で。この人はゴールデングローブ賞の助演男優賞候補になっているんですけど、リチャード・ジェンキンスさんという名優。おじいちゃんが演じているイラストレーターが隣に住んでいるんですね。この人が助けてくれるんですけど。この人は、まあゲイなんですよ。

(海保知里)おお。

(町山智浩)っていうのは、この1962年当時はゲイであることはバレたらどうしようもなかったんですよ。

(海保知里)そういう時代ですね。

(町山智浩)それこそゲイバーに警官が踏み込んでいって、そこにいる客をボコボコに殴っても全然許されていた時代なんですよ。ゲイであることに人権がまるでなかったから、それを絶対に言えない時代だったんですね。彼もだから、声が出ないイライザと同じで、声を発することができない。本当の自分をしゃべることができない。言うことができない。声を奪われた人なんですよ。

(山里亮太)うんうんうん。

(町山智浩)で、またお掃除の人たちもみんな、ほとんどが黒人かラテン系の人たちなんですね。で、この頃、これは舞台がメリーランド州なんですよ。メリーランド州っていうのはワシントンDCのすぐ下なんですけど、一応南部なんですよ。

(海保知里)ああ、そうか。南部になるんですか?

(町山智浩)そう。南北戦争の時は南部だったんですよ。だから、黒人の人権がないんですよ。だから、すごく政府の極秘施設なんだけども、そこで掃除をしている人たちはかなりいろんなものを見てしまうわけじゃないですか。でも、それで許されているのは彼らを人間だと思っていないからなんですよ。

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(海保知里)うん。

(町山智浩)なにも発言権がないだろうということで。で、身体障害者であるヒロインと、その黒人のお掃除のおばさんたちが、実は非常に抑圧された……その当時は人間としてみなされていないんですよね。でも、彼らは……これ、監督が言ったんですけども。「彼らは『The Others』なんだ」っていう風に言っているんですよ。

(海保知里)「The Others」?

(町山智浩)そう。「The Other」っていうのは「他の」っていう意味ですけども。その頃、1962年ぐらいのアメリカはまだ、黒人の公民権運動が始まったばかりの頃なんで、人権がなかったんですね。だから、「アメリカ人」というと白人だけだったんですね。

(海保知里)ああ、そうなってくるんだ。

(町山智浩)そう。映画を見ても、その当時の映画では白人だけしかヒーローやヒロインにはなっていないんですよね。それ以外の人たちはなかった人たち。いないことにされている人たちなんですよ。

(海保知里)うーん、ひどいな。

(町山智浩)だから、「The Others」って監督は言っているんですけど。「『シェイプ・オブ・ウォーター』はこの『The Others』たちの逆襲の話なんだ」って言っているんですね。で、彼らが逆襲をしていくんですけども。で、とにかくギレルモ・デル・トロ監督がなぜ、この映画を作ろうと思ったかというと、実は子供の頃から……彼はいま54才だけど、6才の頃からずっとこれを作ろうと思っていたんですって。

(海保知里)そんなに長く思っていたお話なんですか。

ギレルモ・デル・トロ監督が6才の頃から作りたかった物語

(町山智浩)そう。でね、6才の時にテレビで『大アマゾンの半魚人』っていうユニバーサル映画を見たんですね。1954年の映画なんですけど、それが有名な半魚人の第一作なんですよ。

(海保知里)ふーん!

(町山智浩)で、アマゾンにアメリカ人の探検隊が行って、そこに半魚人が住んでいるんですけど。たった1人、生き残った半魚人がいて。で、それが探検隊が連れてきた女性に恋をしちゃうんですよ。ところが、その探検隊は最後、その半魚人を殺して話が終わっちゃうんですね。

(山里亮太)ほう。

(町山智浩)で、もちろんその当時だから、半魚人はとにかく怖いやつで、探検に行ったらこんなのがいたんで殺しましたっていう話になっているんですけど、どう考えても、いまの視点から考えるとおかしな話じゃないですか。勝手にアメリカ人が行って、アマゾンでそこに住んでいる原住民を殺している話なんですよ。それを正義として描いているんですよ。でも、ギレルモ・デル・トロ監督はメキシコ人なんで、だから見る時に南米側の人の気持ちですよね。

(海保知里)うん。

(町山智浩)その時にどう思ったかというと、その探検隊の女の人。ジュリー・アダムスさんっていう女優さんが演じているんですけど、そのジュリー・アダムスさんと半魚人が駆け落ちする漫画を書き始めたんですって。6才の時に。

(海保知里)ええーっ?

(町山智浩)映画の中では殺されてしまうから、2人で駆け落ちして、自転車でピクニックに行って、アイスクリームを食べたりするっていう漫画をずっと書いていたんですって。で、いつかこの2人が結ばれてほしいなっていうことで、ずっと子供の頃から思っていて。で、とうとう本当に実現したという話なんですよ。

(海保知里)へー! すごい。じゃあ、ものすごい強い思いが込もっている作品なんですね。

(町山智浩)すごく思いが込もっているんですよ。それで、この映画は実はお金を彼、かなり出しているんですよ。自分で。自腹を切っているんですよ。

(山里亮太)えっ、自腹で?

(町山智浩)彼は自腹をかなり切っているんです。どうしてか?っていうと、まず映画会社がお金を出したがらなくて。「もしお金を出すんだったら、口を出す」っていう状況になったんですね。で、どういう風に口を出すか?っていうと、「ヒロインをもっと美女にしろ」って来るわけですよ。

(海保知里)そうかー。

(町山智浩)「人気のある美人女優にすれば客が入るから、それだったらお金を出すよ」って言ってくるんですよね。で、もうひとつ来るとしたら、「この半魚人が実はハンサムな王子様でした」っていう風に持ってくるかもしれないですよね。

(海保知里)ああー。

(町山智浩)「でも、それだけは絶対にやりたくなかった」って監督は言うんです。

(山里亮太)『美女と野獣』のパターン。

(町山智浩)そう。『美女と野獣』ですよ。でも、「『美女と野獣』っておかしいよ」ってデル・トロ監督は言うんですよ。『美女と野獣』は「野獣でも、心がよければ好きよ」っていう話でしょう?

(山里亮太)「見た目じゃないよ」っていう。

(町山智浩)「見た目じゃないよ」っていう話なのに、最後は見た目のいい王子様に戻るっていうのはおかしいじゃないですか? だって、「あなたはそのままでいいのよ」って言ったんだから、もしハンサムな王子様になったら、「元の野獣に戻してよ!」って言うべきなんですよね。

(山里亮太)本来、そうか(笑)。それを好きになったんですもんね。だって

(町山智浩)そう。「おかしいだろ?って。しかも、『見た目じゃないのよ』って言っているのに、なぜヒロインが美女なんだ? それはおかしいだろ?」って言っているんです。で、お姫さまがカエルを好きになって、カエルにキスをすると王子様になったりする話があるじゃないですか。「それもおかしいだろ? カエルのままでいいんじゃないの? 見た目じゃないんだろ? 『美女と野獣』はテーマが歪んでいるんだ。だから、ちゃんとテーマ通りに作りました」っていう話なんですよ。

(海保知里)アハハハハッ!

(山里亮太)ああ、面白そう!

(町山智浩)「見た目じゃねえんだったら、見た目じゃねえで貫き通すぜ! それだったら俺、自腹払うぜ! 映画会社に文句言われないで済んだ」って言っていましたね。

(海保知里)へー!

(山里亮太)じゃあ価格的には結構抑えたんですか?

(町山智浩)金額はかなり抑えて。この人、『パシフィック・リム』とかはものすごい金額で撮っているんですけども。『パシフィック・リム』って製作費が1億5千万ドルなんですよ。で、今回は2千万ドルで抑えたって言っていますね。だからギャラとか全然取らないでやっているんですけど。やっぱりそれは、ハリウッド的な美男美女の話にされるのだけは彼は絶対に嫌だったんですよ。

(海保知里)ふーん!

(町山智浩)で、まあ『シェイプ・オブ・ウォーター』っていうのは「水の形」っていう意味ですけども、たとえば「形のないものっていうものが実は大事なんじゃないか? 目に見えないものが大事なんじゃないか?」って言いたいんですね。たとえば、愛には形がないわけですよね。で、この半魚人と主人公のイライザは目に見えない美しさがあるわけですよね。そういうことを言いたい、ものすごく彼自身の6才の頃から、デル・トロ監督が言いたかったことをもうブチまけた映画なんで。今回、ゴールデングローブ賞で最多部門ノミネートっていうのはこれはすごいなと思いましたね。

(海保知里)そうですね。

(町山智浩)負けなかったというね。

(山里亮太)初志貫徹。

(海保知里)初志貫徹。そして虐げられた人たちを主人公にして。いやー。目に見えないもの……なんかグッと来ますね。

(町山智浩)ただちょっとグロくて。オナニーもありますし(笑)。

(山里亮太)町山さん、冒頭でしたっけ?

(町山智浩)いや、もっとすごいシーンもありますね。そのへんがね、大人のメルヘンっていう感じですね。ちなみに、半魚人はずっと裸です。

(山里亮太)出ました。裸情報。リスナー、心配してましたよ。ないんじゃないかな?って。

(海保知里)よかった、よかった。

(町山智浩)そう。裸なのに、あそこはどうなっているの?っていう部分もちゃんと説明があります。

(海保知里)あ、そういった疑問にも答えてくれるのかな?(笑)。

(町山智浩)という、大人の映画でした。

(海保知里)ちなみに日本公開は3月1日だそうです。

(町山智浩)アカデミー賞最有力候補ですね。

(海保知里)はい。これも忘れずにということで。今日は『シェイプ・オブ・ウォーター』を紹介いただきました。町山さん、どうもありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした。

<書き起こしおわり>

ギレルモ・デル・トロのシェイプ・オブ・ウォーター 混沌の時代に贈るおとぎ話
Posted with Amakuri at 2018.3.20
ジーナ・マッキンタイヤー, ギレルモ・デル・トロ(序文)
DU BOOKS

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