プチ鹿島 選挙期間中の放送局の中立・公平な報道の意味を語る

プチ鹿島 選挙期間中の放送局の中立・公平な報道の意味を語る YBSキックス

プチ鹿島さんがYBS『キックス』の中で選挙期間中の放送局の中立・公正な報道姿勢についてトーク。なぜそのような報道姿勢が求められるのか? 本当にその必要はあるのか? などについて話していました。

(プチ鹿島)昨日もですね、夜12時までラジオでゴキゲンにしゃべっていまして。で、帰ってきて、ちょっと休んで、電車に乗って。で、また午後1時からね。いいですね。

(塩澤未佳子)ラジオで、また(笑)。

(プチ鹿島)まあ、昨日出させてもらったのはTBSラジオの荻上チキさんの『Session-22』っていう番組なんですけども。そこで、まあマニュフェストの読み比べというので。木村草太さんとか麻木久仁子さんとかに混じってやらせていただいたんですけども。それも、よかったら聞いてください。radikoとかで。

(塩澤未佳子)そうですね。

(プチ鹿島)で、さらにね、僕がおすすめしたいのが、その『Session-22』の金曜日に放送された特集がすごくよかったんですよ。それが、「放送局には選挙に関する報道と評論の自由がある」という、BPO(放送倫理・番組向上機構)っていう、放送をチェックする役目みたいな感じなんですが、そこの委員長代行を務める是枝裕和監督が番組に出て、「選挙期間中であろうが臆することなく、どんどん報道・放送してください」っていう内容なんです。

(塩澤未佳子)うん。

(プチ鹿島)で、僕も実は大学生の時、放送を勉強していたんですけども、ついつい忘れてしまうことがあるんですよ。それを思い出させてくれて。たとえば、放送法で、「不偏不党」とか言うじゃないですか。あれって、どういう風に思います? 「どこの党にもバランスよく偏らない」っていう風に捉えられるじゃないですか。

(塩澤未佳子)と、思いました。

(プチ鹿島)それ、普通に感じるじゃないですか。だけど、違うんですよ。あれって、むしろ権力から自由であるために、権力に利用されないために、不偏不党だよっていう意味なんですよ。全く実は逆の意味なんですよ。

(塩澤未佳子)そうだったんだ(笑)。

(プチ鹿島)そうそうそう。これ、放送法の第四条っていうのを見ると、「政治的に公平であること」ってあるんですよね。で、四条の四項に「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」って書いてあって。そうするとやっぱり、「全部にバランスを取って、何分何秒までしっかりやって、公平にやらなくちゃいけない」って思うでしょう? でも、実はこの「政治的に公平であること」っていうのはつまり、権力に利用されて権力の思うがままの放送ではなくするため、政治的に公平であることっていう意味なんですよ。だから、発信側の自由を守っているんですよ。

(塩澤未佳子)そうでしたか!

(プチ鹿島)はい。だから僕も迂闊すぎてたまにこれを忘れちゃうんですけど(笑)。それをBPOの側が、「そういう意味ですから。不偏不党ってそういう意味ですよ。だからどんどんやってください」と。もちろん、特定の議員とか政党を一生懸命応援するとか、落選させるとか、そういう、あまりにも偏ったものはダメですけど、事実を報道して論評するというのはいいんですよ。

(塩澤未佳子)はー! なんかちょっと、守りに入っちゃっている感じが……。

(プチ鹿島)守りっていうか、まあもちろんその不偏不党っていうのを巧みに利用して、「バランス良く放送してください」って言う側もいると思います。それはやっぱり、いろいろとね。だから僕、この『キックス』でも実は2年前に紹介していると思うんですけども。なるほどなと思って、『芸人式新聞の読み方』でも引用させてもらった本、『NHKと政治支配(ジャーナリズムは誰のものか)』っていう。これ、面白かったんですよ。もともとは中日新聞社に勤めていた飯室勝彦さんという方が書いた本なんですけども。

飯室勝彦『NHKと政治支配』

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)そこにもやっぱり「客観報道とはなにか?」っていうのを書いて有るわけですよね。つまり、だいたい情報っていうのはわかりやすく言うと、お上から発表されるものが多いじゃないですか。だからそれを客観的にただ伝えているだけだと、つまり客観報道という名の権力追随になってしまうんですよ。それを防ぐためにはなにをするか? と言ったら、「客観報道とは主観を排除することではない。どんなニュースも伝え手の正しい視点、問題意識があってこそ、命を吹き込まれる」って書いてあるんですよね。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)で、この次の言葉がすごいんですよ。「強者より弱者、支配者より被支配者の側に軸足を置きながらも、その弱者すら疑う自由な精神を維持し、あふれる情報の中から自分の問題意識に基づいて情報を選び出し、掘り下げて伝えるのがすぐれたジャーナリストである」っていう。つまり、もちろん強者を疑うっていうのはそれは当然だと思いますよね。でも、その被支配者側に軸足を置きながらも、その弱者さえも疑うという。これ、公平じゃないですか。やっぱり。

(塩澤未佳子)はー!

(プチ鹿島)っていうことなんですよ。これ、たぶん2年前もこのラジオでご紹介したんですよ。なるほどなって。だから、「あったことをそのまま伝えるだけっていうのがバランスがいい報道っていうことじゃないよ」っていうね。これもひとつ、紹介しましょうか。127ページに載っているんですけども。「あえて言えば、怠惰な客観報道主義を捨てることである。客観をあえて捨てることが公正につながることもある。それはつまり、主観をバラまけということではない。想像力、懐疑心、警戒心、好奇心、ありとあらゆる感覚、知恵、力を動員する」っていうんですよね。「つまり、論理の先立つ事実の積み重ねは『!』や『?』などの主観からスタートする。課題の整理は知的作業そのものだ。つまり、客観報道は主観から始まるわけである」と。つまり、主観だけ、思ったことを垂れ流したらいけないんですよ。「あれっ? おかしいな?」って思ったことを、事実の裏付けを取るために取材したり、裏を取ったりして。ああ、これはこういうことなんだなっていう。それって全然公平じゃないですか。

(塩澤未佳子)ですね。

(プチ鹿島)だから、面白いですね。これ、ドキュメンタリーの話にもつながるんですよ。これ、たまたま真逆のニュースの話ですけども。ドキュメンタリーもね、じゃあ公平な目で、事実だけを淡々と並べているか?っていったら、それはまず撮っている人の主観じゃないですか。でも、主観を垂れ流すっていうんじゃなくて、この主観が正しい、こう思うっていう事実の裏付けをそこに並べるじゃないですか。で、それが作品じゃないですか。だから、そこなんですよね。「客観」っていうと「何もしないで真ん中にいる」っていう風にどうしても、思っちゃうんだけど……チキさんのラジオとかで、「そういえば俺、2年前にも『キックス』でこの本の客観のことを紹介しているわ」って改めて思い出してね

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)ちょうどこの時期だからこそね、思ってみたんですよ。ましてや、なにもしない、なにも言わない。見て見ぬふりっていうのは、たぶん送り手側としてはそれはマズいんじゃないかな?って思いましたけどね。

(塩澤未佳子)うん、そうね。ただ、怠けているということになってしまうんですかね? そうすると。

(プチ鹿島)そんなことを感じました。面白かったですね。っていう放送をすること自体、なんかすげー賞賛されているっていうのも不思議ですけどね。

(塩澤未佳子)そうね。だからなんか、そういう聞き方になっちゃいましたね。うん。

(プチ鹿島)だから僕、「攻めてる」っていう言葉が結構苦手なんですよ。「攻めてねえだろ?」っていう案件がほとんどでしょう? だからそういうのをね、改めて。だからいい番組ださせてもらったなって。まあ、もちろん金曜日のそれもまだタイムフリーでも聞けますし。TBSラジオのホームページからも、たしか音声で聞けます。

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TBSラジオ ときめくときを。
ラジオ放送局「TBSラジオ」のサイト。TBSラジオの周波数は。PCやスマートフォンではradiko(ラジコ)でもお聴きになれます。全国のラジオ34局ネットワークJRN(JapanRadioNetwork)のキーステーション。記事や番組内容、...

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)で、それを聞いていただいて、さらに昨日のマニュフェストの読み比べ。やっぱりね、マニュフェストを僕、土日ずーっと読んでいたんですよ。

(塩澤未佳子)マニュフェスト、どのぐらいあるもんですか?

(プチ鹿島)やっぱりホームページから直接ネットでも当然、読めます。読めますけど……ある程度それをプリントアウトした方がいいですね。やっぱり、束になって、物語になりますから。そうすると、「この党とこの党は対立しあっているように見えて、いちばんつながっている政策は後の方で言っているぞ」とか、いろいろと見えてくるんですよ。専門家のように、「これがこういう意味を持つ」っていう見方ももちろんなんですけど、僕はやっぱり野次馬として、「あれっ? これ、こんな後ろに書いてあるぞ?」とか。

(塩澤未佳子)ほう(笑)。

(プチ鹿島)「なるほど。こっちを優先して書いているんだ」とかね。その配置ですよね。それだけでも見ていると、面白いです。

(塩澤未佳子)配置関係が。ああ、そうですか。

(プチ鹿島)うん。だから、まあいま新聞でもね、折り込みが入ってきたり、政策がまとめられているんで。それは見て、確認した方がいいと思うんです。僕、何度も言うけど、白けちゃダメなんですよね。白けるよりは、先週山梨日日新聞さんにも取り上げていただいたし、東京スポーツと朝日新聞で火曜日、水曜日と今回の選挙について……東スポと朝日新聞ですよ?

(塩澤未佳子)すごいですよね(笑)。

(プチ鹿島)なんでしょう? 芝とダートを二冠制覇みたいな感じの。まあ僕、東スポの方がうれしいですけどね。で、僕そこで同じことは言っているわけですよ。政策ももちろん見た上で、政局も見た方がいい。政局っていうのは人間のドラマだとすると、そこではじめて本性をあらわす人もいるわけじゃないですか。「あれ? 普段と全然言っていることが違うぞ?」とか、「自分の当選・落選がかかったら、こんなにも行動を変えるのか」とか。それがむしろ本性だから、政策からは見えないことだから、僕は見た方がいいですよって言っているわけです。そこで提唱したのが、『キックス』でも3週間ぐらい前に言いましたけど、いわゆる床屋政談っていうやつですよね。

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(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)床屋政談って、結構バカにされる言葉なんですよ。ネガティブなイメージしかないじゃないですか。つまり、イメージだけで会ったことない人物をね、論評している。そこには政策談義はないじゃないですか。まあ、結局居酒屋談義と同じで、意味がないという象徴の言葉になるんですけど、僕はいまこそ、むしろ床屋政談が大事じゃないかと思うんですよ。だって、そうでしょう? SNSを駆使して情報を取るっていうのはすごく有効な手段だと思うんですけど、そこで政治の論議とかをしても、だんだん人によっては罵倒に近い罵倒合戦で感情をぶつけ合うだけになっているじゃないですか。それって、顔が見えないからだと思うんですよね。その人のバックボーンがわからないからだと思うんですよ。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)それよりは、やっぱり床屋政談とかね、居酒屋でもなんでもいいですけど。気心の知れた、この人はこういう表情でしゃべって、こういうバックボーンで、こういう考え方を持っている人がこういうことを言っているんだっていう……意見の違う人でもですよ。やっぱりその方が僕は有効だと思うんですよね。少なくとも、こいつが言っているから正しいなとか、こいつが言っているから怪しいなっていうことも判断できるじゃないですか。

(塩澤未佳子)そうですね。

(プチ鹿島)身近な空間だと。昔はそれこそ、井戸端会議っていうのがあったから。だけどいまはなかなかコミュニティーっていうのがね。

(塩澤未佳子)ないからね。

(プチ鹿島)だから僕は、いまこそ身近な人とそういう話をした方がいいんじゃないかな?って言ったんです。

(塩澤未佳子)うんうん。

(プチ鹿島)そう。だからまだまだ、せっかく日曜日に投票ができますからね。

(塩澤未佳子)はい。チャンスがありますからね。

(プチ鹿島)だから僕は、やっぱりある程度大人になったらですよ、そういうちょっとしたコミュニティーというか、気心の知れた人が集まるバーとか酒場なんかを一軒作っていおいて。そこでいろんなことを。ゲスなことでもいいと思うんですよ。「あの芸能人、どう思う?」とか。でも、それってたぶん、話している人たちのバックボーンがわかっている以上、すごく有効だと思うんですよね。

(塩澤未佳子)うんうん。いまこそ、話した方がいいですね。

(プチ鹿島)身近な人とね。ということで、まあね、いろいろラジオでおしゃべりさせていただいておりますけども。本日もスタートでございます。

<書き起こしおわり>

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