町山智浩 ジョージ・A・ロメロ監督と『新感染ファイナル・エクスプレス』を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でゾンビ映画を発明したジョージ・A・ロメロ監督を追悼。その功績について話しつつ、最新ゾンビ映画の傑作、韓国映画の『新感染ファイナル・エキスプレス(釜山行き)』を紹介していました。


(町山智浩)今日はさっそくこの曲から聞いてください!

(山里亮太)はい。

Goblin『Zombi main title theme』



(町山智浩)はい。この曲は僕の心の歌のひとつですね。これは『ゾンビ』という映画の主題曲です。

(海保知里)ええーっ、なんかポップで面白いですね。

(町山智浩)1978年の映画『ゾンビ』の主題曲でゴブリンというイタリアのロックバンドが演奏しているんですけども。いい曲でしょう?

(山里亮太)なんかかっこいいです。プロレスラーが出てきそうな。

(町山智浩)かっこいいでしょう? これはね、「ゾンビ ゴブリン」でダウンロードしてもらって。で、みんなのスマホとかに入れておいて。で、いろんな嫌なことがあるじゃないですか。人間。

(山里亮太)ありますよ。

(町山智浩)ねえ。嫌な先輩に説教されたりね、あと「このハゲ! 違うだろ!」とか言われた時にね。そういう時には落ち着いて、イヤホンでこの曲を大音量で聞くんですよ。

(山里亮太)あの秘書の方とかね。

(町山智浩)そしたらね、もう、やり返すしかないですよ、もう!(笑)。

(山里亮太)「立ち上がれ!」と。

(町山智浩)そう。これね、音源を入れて持ち歩かなきゃいけない人もいると思うんですけど。僕はね、脳の中に入っていますから。常に。そういうことがあったらこれが大音量で鳴り響くようになっているんですけど。まあ、それは置いておいて……。

(山里亮太)あ、置いておいて(笑)。

(町山智浩)この『ゾンビ』という映画のジョージ・A・ロメロ監督が昨日、亡くなりまして。今回はその『ゾンビ』についてお話したいと思うんですけども。77才でしたね。山里さん、『ゾンビ』という映画はご覧になっていますか?

(山里亮太)いや、僕は見ていないです。

(町山智浩)ああ、そうですか。『ゾンビ』という映画はいわゆるゾンビが地球を支配してしまって、人間が少数しか生き残っていない世界です。で、噛まれるとみんなゾンビになることはご存知ですね。

(山里亮太)はい、わかります。

(町山智浩)それでゾンビはゆっくりと、人を食いに襲ってくるわけですけども。ということは、彼らがほしがらないものっていうのがあるわけですよね。彼ら、人肉しか食べないですから。だから高級食材とかは高級スーパーに残っているわけですよ。お酒も飲まないから、お酒もどんな高いブランデーでも飲み放題ですよ。ゾンビは車に乗らないから、ベンツだろうとBMWだろうと、なんでも乗り放題ですよ。そういうことをして、生き残った人たちが高級ショッピングモールを占拠して、ブロックして、中でパラダイスのように遊ぶっていう話ですよ。『ゾンビ』って。

(山里亮太)えっ、面白い!

(町山智浩)すごいですよ。夢、叶うでしょう? やりたい放題ですよ。で、しかもゾンビは人間ではなくなった死人ですから、いくらでも殺し放題なんですよ。っていう、人間のいちばん恐ろしい欲望を開放するような、恐ろしい映画なんですよ。『ゾンビ』というのは。

(山里亮太)へー。単純に「ゾンビ、怖い!」じゃないんだ。

(町山智浩)「怖い」って言われているんですけど、もっと怖い……「人間が怖い」っていう話なんですよ。

(山里亮太)はー!

ゾンビよりも人間そのものが怖い

(町山智浩)で、この『ゾンビ』という映画は1978年に日本で公開されて大ヒットしているんですけど、このロメロ監督はその10年ぐらい前にそれの第一作の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』という映画を作ったんですね。それがいわゆる「ゾンビ物」と言われている全てのジャンルのいちばん最初の映画なんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)で、ゾンビのルールってあるじゃないですか。ゾンビ物のルール。まず、ゾンビは人間の肉を食う。ゾンビにはほとんど知能がない。ゾンビを動かなくするには脳を破壊するしかない。頭を撃つとかね。そういう決まりがあるじゃないですか。あと、ゾンビは基本的にはあまり早く動けないとかね。

(山里亮太)ゆっくりと、はい。

(町山智浩)そういうゾンビ物の基本的なルールをこのロメロ監督が1968年に『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』っていう映画で作ったんですよ。だからこの人は「ゾンビの父」と言われているんですよ。で、その後もずっとゾンビ物を作り続けていった人なんですけども。だからこの人がいなければ、たとえば多くのゲーム……『バイオハザード』とかね。あと、映画だと『ワールド・ウォーZ』とかみんなゾンビ物ですけどもね。

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(山里亮太)はい。

(町山智浩)あと、『ウォーキング・デッド』っていうテレビシリーズがありますね。いま大人気の。ああいうものも全て、このロメロ監督がいなければ存在しなかったんですよ。しかもこの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』っていう映画をロメロ監督はピッツバーグというアメリカの工業都市というか……まあ田舎なんですけどね。そこで自主制作したんですよ。ほとんど予算のない状態で。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)で、そこから全世界にゾンビブームが始まったということで、本当に偉大な人なんですよ。で、この人が最も偉大だったのは、ゾンビというジャンル自体が他のモンスター物と違ってものすごくテーマを非常に鋭く出すことができる道具だったんですね。

(山里亮太)はあ。

(町山智浩)というのは、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』っていうのは公開された時は1968年だったんですけど、その時にいったい何があったか? というと、全くそれと同じような状況が世界で進行していたんですよ。

(山里亮太)えっ、それと同じというと?

(町山智浩)ゾンビっていうのは基本的に普通の人たちじゃないですか。死人ですけど。で、どんどんどんどん襲ってくるんですけど、一人ひとりは遅いんですよね。そんなに強くないんですよ。武器も持ってこないし。だからもう、バンバンバンバン殺せちゃうんですけども、数が多いから結局人間の方が負けちゃうんですよね。で、敵がどんどん増えていく。それと同じ状況がベトナム戦争で実際にその当時、あったんですね。

(山里亮太)なるほど……。

(町山智浩)アメリカはベトナムに行って、どのベトナム人がアメリカに対して敵対しているゲリラになっているのか、わからないから片っ端から、そこらへんの農民とかを虐殺していたんですけど。そしたら、殺せば殺すほど、どんどん反米の農民が増えていったんですよ。それで、どこにいるかわからない。ものすごい数でもって襲われて、アメリカ軍は負けましたね。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)それと同時に、アメリカ国内では黒人と白人が対立して、もうアメリカ中の都市で本当に銃撃戦になっていたんですよ。それを映画の中に持ち込んで、もう隣人とか自分の愛する人とか、誰も彼もが敵になって自分を襲いに来るという映画として、彼が作ったんですね。

(山里亮太)はー、そういうメッセージが。

(町山智浩)それまではそういうアイデアはなかったんですよ。それまではフランケンシュタインとか、ゴジラとかが襲ってくるという。ドラキュラとか。そうじゃなくて、自分の愛する人とか隣人が襲ってくるんですよ。ゾンビ映画っていうのは。

(山里亮太)はー、なるほど。

(町山智浩)そこの恐怖なんですよね。で、これはすごく現実に近いものですよね。で、そのベトナム戦争の後もカンボジアとかで実際にありましたからね。一斉に国中の人が自分たちを殺しに来るわけですよ。「お前は反革命だ!」とか言って。それで処刑されたりするわけですけど。そういうことがもう世界中で……ルワンダでもありましたしね。そういうことが常に起こり続けていることなんで。虐殺とか内戦とか革命っていうのはそういうものですからね。まあ、ISISとかもそうですよね。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)しかも、敵が敵としてはっきりとわからなくて、自分の兄弟だったり自分の奥さんだったりするわけですよ。突然。で、それと戦わなければならないとか。あと逆にそういう状況になると、それを利用して好き勝手にやるやつらというのも出てくるんですよ。つまり、殺し放題だから。そういう怖さみたいなものがいくらでも詰め込める、なんて言うか「枠」みたいなものなんですね。ゾンビ映画っていうのは。「なにが怖いって、人間がいちばん怖いんだよ」っていう話なんですよ。

(海保知里)そうですね。

(町山智浩)で、その1978年にロメロ監督が作った『ゾンビ』っていう続編では、そのゾンビがショッピングモールに集まってくるんですよ。ショッピングモールに集まってきて、人間を食べるんですけども、このゾンビたちは……アメリカの人たちって行くところがないんで、いっつもショッピングモールに来ているもんだから、死んだ後もショッピングモールに群がってくるっていう話なんですよ(笑)。

(山里亮太)記憶の片隅の(笑)。

(町山智浩)それでもう、本当に消費者として完全に奴隷のようになっているんだという。いまのアメリカの消費者は物を買う理由がないのに買っていて、ショッピングモールに何の理由もなく……「やることがないから買い物に行くか」っていう風に。もうゾンビなんだよということを描いたのが『ゾンビ』だったんですね。

(海保知里)ふーん!

(町山智浩)で、いつも……ゾンビ映画をこの人は何本も作っているんですけど、作るたびにテーマが違うんですよ。だから、その時にいちばん問題のことを映画にできるのがゾンビというジャンルなんで、この人がイラク戦争の時に作った『ランド・オブ・ザ・デッド』っていう映画は、ブッシュ政権の時のアメリカで貧しい人たちが戦争に行かされて、金持ちがニューヨークとかのビルで美味いものを食っているという状況をゾンビ映画に変えて描いていましたね。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)だからすごく……『桐島、部活やめるってよ』っていう映画、覚えています?

(山里亮太)はい。覚えています。

(町山智浩)あの中で、神木(隆之介)くんが『映画秘宝』の読者なんで天才的な素晴らしい少年なんですけども。

(山里・海保)(笑)

『桐島、部活やめるってよ』の神木くんとゾンビ映画

(町山智浩)神木くん演じる映画オタクの少年が先生に「ゾンビとか、やってんじゃねえよ!」って言われるんですよ。映画部なんでね。「もっと青春映画とか作れ!」って言われるんですけど、「ゾンビっていうのはそんなただのホラー映画じゃないんですよ!」って神木くんが一生懸命説明をするシーンがあるんですよ。で、「ジョージ・A・ロメロっていうのは……」って説明するんですけど、先生がバカタレ先生だから、話をちゃんと聞かないんですけど、神木くんが言おうとしたことは、いま僕が言ったことなんですよ。

(山里亮太)そうなんだ! はー!

(町山智浩)神木くんは僕の心を代弁してくれたんですよ。あの時に。

(山里亮太)神木くんは町山さんだったんですね!

(町山智浩)そうだったんですよ!って、勝手に言ってますけど(笑)。そういうことなんですよ。でね、ただ僕ね、本当にロメロ監督を尊敬しているんで、ご自宅にもお邪魔したんですよ。

(山里亮太)ええっ?

(海保知里)すごくないですか?

(町山智浩)これだけすごいゾンビ・ジャンルを作った偉大な、神のような人だから豪邸に住んでいると思うじゃないですか。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)違うんですよ。いまもまだピッツバーグに住んでいて……「いまも」というか、もうお亡くなりになりましたが。そのお伺いした時ね。で、あまり大きな家じゃなかったんですよ。どうしてか?っていうと、彼はゾンビ映画というジャンルを確立してルールを作ったけども、それには著作権がないからなんですよ。

(山里亮太)そういうの、取っていなかったんだ。

(町山智浩)はい。だから『バイオハザード』っていうゲームがいくら当たったところで、彼には一銭もお金は入らないんですよ。

(山里亮太)はー! そういうことじゃなかったんだろうな。でも。

(町山智浩)「ゾンビ」っていう言葉自体も……まあ彼は使っていないんですけども。「リビングデッド」という言葉にも商標登録とかはないんで。で、「ゾンビは頭を撃つと死ぬ」とか、そういうルールにも著作権はないですからね。

(山里亮太)そうかー……。

(町山智浩)彼には一銭も入らなかったんですよ。でもね、本当にいい人でしたよ。奥さんがご飯を食べさせてくれてね。

(山里亮太)ええっ、そんなに?

(町山智浩)そう。僕、本当にね、感動しましたけどね。「すごい! 俺、ロメロ監督の奥さんの手料理を食べてるぜ!」みたいな。

(山里亮太)そうなりますよね。

(町山智浩)でも最後までね、すごく彼は庶民の味方だったんで。決してハリウッドの大金持ちになって、セレブになったりしなかったのがまたロメロ監督らしいなと思いましたね。


(山里亮太)うんうん。

(町山智浩)で、本当に亡くなっていま、アメリカというか世界中のホラー映画ファンが悲しんでいるんですが……今日はそういう日本のゾンビ映画ファンの方にですね、新作ゾンビ映画。最新ゾンビ映画の傑作を推薦します!

(山里亮太)お願いします!

『新感染ファイナル・エクスプレス』

(町山智浩)タイトルはね、『新感染ファイナル・エクスプレス』というタイトルです。これね、「しんかんせん」って言っても、漢字が違うんですよ。「新感染」なんですね。これ、韓国映画なんで、去年韓国で大ヒットして、世界中で……例のごとく日本以外でも大ヒットして。

(海保知里)日本以外で(笑)。

(町山智浩)ハリウッドでもうリメイクも決定している映画なんですけども。これ、「新感染」っていうのは韓国にある高速鉄道……KTXっていうやつのことなんですが。これ、原題は『釜山行き』っていうんですよ。で、ソウル発釜山行きの高速鉄道KTXが舞台で。まあ、ゾンビにどんどんどんどん韓国が北の方から侵略されていって。で、ソウルは北の方にありますよね? 北朝鮮の国境近くにソウルはあるんですけど、そこから南の、日本に非常に近いいちばん南の端の釜山に向かって走る高速鉄道に乗った主人公たちが、北から押し寄せるゾンビの群れから釜山まで逃げ切れるかどうか?っていうタイムリミット・アクション映画なんですよ。


(山里亮太)ほー!

(町山智浩)で、この映画は高速鉄道が舞台になっているんで、疾走感がものすごいんですよ。しかもこの映画のゾンビ、走りますからね。

(山里亮太)ええっ!

(海保知里)ちょっと待って。早いタイプですか?

(町山智浩)早いんですよ。「ゾンビ、早いタイプはよくない」ってロメロ監督は言っていたんですけども。これは早いんですね。すごく。

(山里亮太)早いのか。怖いなー。

(町山智浩)でね、これ主人公はすごくいけ好かないやつなんですけども。いわゆるファンドマネージャーっていう証券屋さんなんですけど。金のことばっかり考えているんですね。で、奥さんと別居しちゃって、奥さんは釜山に住んでいるんですよ。で、娘を引き取っているんですけど、娘を放ったらかしにしちゃっているんで。8才ぐらいの娘さんなんですけど、娘が「もうパパ、この家は嫌だ。ママのところに行きたい!」って言うんで、しょうがないから釜山まで高速鉄道に乗って娘を届けに行くんですね。主人公のお父さんが。

(海保知里)ええ。

(町山智浩)ところが、もうその段階でソウルがかなりやられているんですよ。あちこちで爆発が聞こえるんですよ。それで何かが起っている。ヘリコプターが飛んでいるし。でも、気がつかないで。ニュースを見ないで朝一番の釜山行き特急に乗っちゃうんですね。ところがもう、その特急に1人、感染者が乗っているんですよ。

(山里亮太)おおー……。

(町山智浩)で、どんどんどんどん感染者が、ものすごいスピードで走るその特急列車の中で増えていくんですよ。っていう話なんですよ。

(山里亮太)うわー、怖い。

(町山智浩)これね、トム・クルーズ主演の『宇宙戦争』って見ています?

(海保知里)ああ、ありましたね。『宇宙戦争』ね。

(町山智浩)あれ、トム・クルーズが本当にダメなダメな父親で。俺と同い年なんですけど。お父さんになっているのに、全然父親としてダメで、子供から尊敬されない父親が宇宙から来た侵略者から娘を守るために、もう一生懸命がんばることで父親として成長していく話でしたね。あれのゾンビ版ですよ。要するに。

(山里・海保)(笑)

(町山智浩)あれのゾンビ版ですよ。あと、『コクソン』っていう映画があったじゃないですか。

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(山里亮太)はいはい。見ました。

(町山智浩)韓国映画。あれもダメ父ちゃんの話でしたね。あれも娘のためにダメ父ちゃんが一生懸命がんばる話でしたね。あれは宇宙からの侵略者じゃなくて、襲ってくるのはふんどし姿の國村隼さんでしたけど。どっちが怖いか?っていうと、ちょっと國村隼の方が怖いんですけど(笑)。

(山里・海保)(笑)

(町山智浩)でも、こういうね、ダメ父さんが娘を守るために必死でがんばる映画っていうのはめっちゃくちゃ弱いんですよ。

(山里亮太)ああー、町山さんも。ダブらせちゃうんですね。

(町山智浩)もうこれ、ボロ泣きですよ。この『新感染』は。これね、お父さん役の人の写真、そこにありませんかね?

(山里亮太)あります。

(町山智浩)この人、日本だとイノッチさんとか、あと大沢たかおさん。


(山里亮太)ああ、似てます。ちょうどその足した感じ。

(海保知里)ねえ。なんか頬の感じとかね。

(町山智浩)そう。だからすごく強そうじゃないでしょう? すごく、まあそこらへんにいそうな。この人がね、最初はもうダメな親父なんですよ。金のことばっかり考えていて。で、娘のことも何も知らないんですよ。一緒に住んでいるのに。これがね、ゾンビとの戦いの中で、どんどんいい父親に教育されていく話なんですよ。

(山里亮太)ほー!

ダメな父親がゾンビとの戦いの中で成長する

(町山智浩)で、やっぱりこういうゾンビ映画っていうのがすごいのは、人間が試されるんですよね。極限状態で。で、本当にダメな人は自分のことしか考えないし、そういう状況でも、他の人のことを考える人もいるし……っていうところで、どんどんどんどん試されていくことでね、非常に宗教的な部分もあるんですよ。

(山里亮太)ふーん!

(町山智浩)で、この映画ね、新幹線の列車の端っこからどんどんどんどん感染者が増えていくんですね。で、その中で生き残るという話なんで、これは『ポセイドン・アドベンチャー』っていう映画がありまして。昔。豪華客船が転覆しまして、転覆したんで船底めがけて生存者たちが上っていくっていう話があるんですよ。それの列車版みたいになっているんですよ。

(海保知里)ふーん!

(町山智浩)この鉄道の中を移動しなければならないわけですよ。ゾンビのいないところに向かって。でも、間にゾンビがいるんですよ。どうやって突破していくか?っていう話になっていますね。

(山里亮太)ああー。

(海保知里)逃げ場がない。まあ、ある意味密室ですもんね。

(町山智浩)密室なんですよ。でね、これはすごいんでね。後半の方の追い込みのかけ方。その主人公を徹底的に追い詰めていくやり方がね、いやらしいぐらいでね。すごいんですよ。「そこまで追い詰めるかよ!」みたいな話になってくるんですよ。で、しかもさっき言ったみたいに、「ゾンビ物だからちょっと怖がればいいや」みたいな感じで見に来た人は、それを超える感動が待っているんですよね。やっぱり人間が心を試される物語なんで。ゾンビ物っていうのは、いつも。「あなたはこういう時、どうしますか?」っていうことなんですよね。

(海保知里)そうですよね。ゾンビ物は考えちゃいますよね。

(町山智浩)実はすごい深いものなんですよ。ゾンビ物は。だから、『桐島、部活やめるってよ』の先生は先生失格と僕は思いますね。

(山里亮太)わかっていないと。

(町山智浩)わかっていないです。

(海保知里)そこはね、強く言っておかないとね(笑)。

(町山智浩)言っておかないと。ということで、『新感染』はこれ、日本公開は9月かな?

(海保知里)9月1日公開ということで。

(町山智浩)9月1日に日本公開で。これ、幼い娘さんを持っているお父さんはもうドラえもんとか、そういうのよりも、親子でこれを見に行くといいと思いますよ(笑)。

(山里亮太)娘さん、ゾンビ映画に誘うのは難しいと思いますけどね。

(町山智浩)大変なトラウマを与えてしまうかもしれませんが(笑)。はい。「親子で見よう、『新感染』!」ということで。

(山里亮太)(笑)

(海保知里)両方のね、意味を考えながら。

(町山智浩)はい。「新幹線、乗せてあげるよ」とか嘘をついてね(笑)。子供を連れて行って。「お父さん、これ違うじゃん。映画館じゃん!」とかって。そして地獄のようなことが待っているという(笑)。

(山里亮太)もう口をきいてくれないでしょうね(笑)。

(町山智浩)大変なことになると思います。

(海保知里)ありがとうございました。町山さん、今日はジョージ・A・ロメロ監督の追悼、最新ゾンビ映画『新感染ファイナル・エキスプレス』についてうかがいました。町山さん、どうもありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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