春風亭昇太と安住紳一郎 今川義元を語る

春風亭昇太と安住紳一郎 今川義元を語る 安住紳一郎の日曜天国

春風亭昇太さんと安住紳一郎さんがTBSラジオ『日曜天国』の中で戦国大名の今川義元についてトーク。一般的に誤解されている今川義元のイメージと、本来の姿について話していました。

(安住紳一郎)さて、ひとつめですが「今川義元のイメージアップ」。これは、大河ドラマの話ですね?

(春風亭昇太)そうですね。まあ、大河(『おんな城主直虎』)でこの間、今川義元公をやらせていただきまして。で、連絡が来た時に僕もすごく出たかったんですよ。で、生意気なようだけど、僕、歴史の公演とかがよくあるんですね。お城のパネラーとか。そういうところでね、「今川義元ってね、ああいう人じゃないんですよ」と。いままでのイメージの、軟弱でダメ大名みたいなこと、ずーっと言われているでしょう?

(安住紳一郎)ちょっと貴族かぶれして。

(中澤有美子)そうそう。ちょっと麿みたいな。

世間一般のイメージとは全く違う今川義元

(春風亭昇太)あれは、完全にドラマとか映像のイメージであって。まともな中世の勉強をしたことがある人で、あんなことを言う人は誰もいないんですよ。だけど、織田信長をヒーローにするために今川義元公はずーっと格好の材料として使われていたわけですよね。

(安住紳一郎)はい。

(春風亭昇太)だってあんな格好をしていたかどうか、そんなのないんだから。別に。で、なんか「馬に乗れなかった」とかそんなことを言われているんですけど、そんな人じゃないんですよ。で、領国経営もすごくちゃんとした人なんですね。だって、あれですよ。結構な人生経験を踏んで、今川家の当主の立場になっている人ですからね。

(安住紳一郎)昇太さんが今川贔屓なのは地元が一緒だからっていうことですか?

(春風亭昇太)そうです。で、中高生ぐらいから郷土史研究とかが好きだったんで、そういうのをやる中で今川家の本とかを読むと、「全然違うじゃないか!」っていう。だけど、ドラマに出てくるのはなんか貴族かぶれした人みたいな感じで。

(安住紳一郎)白塗りして、眉毛が短くて、口紅塗って……。

(春風亭昇太)みたいな。で、なんか織田家が来ると「あれぇ~!」とか言ってやられて。あんなんじゃないんですよ。

(安住・中澤)(笑)

(春風亭昇太)で、死に方も壮絶だったんですよ。桶狭間の戦いの時に。

(安住紳一郎)どうだったんですか?

(春風亭昇太)だから自分で抜刀して、切りかかってくる相手の膝頭を1回切って。で、他の人に組み付かれて、その指を食いちぎっているんですよ。

(安住紳一郎)あ、抱きついてきた敵兵の指を食いちぎって?

(春風亭昇太)そう。だからものすごい、言ったら大変な……要するに侍としてね、武家の死に方をしているわけです。

(中澤有美子)へー! イメージ違いました。

(春風亭昇太)俺、だからいつも言うんですよ。あのね、「戦場で戦って死んだ今川義元と、お寺で家来にだまし討ちにあった織田信長とどっちが死に方として武家らしいんだ?」と。そんなのにね、織田信長はかっこいいんですよ。ドラマで扱うと。死に方が。もう堂々と出てきて。あんな堂々と出てきたか、わかんないですよ。

(安住紳一郎)そうですよね。わかんないですよね。

(春風亭昇太)ビクビクしていたかもしれないじゃないですか。「うわぁ~……来ちゃった」とか言っているかもしれないのに、なんか堂々と出てきて、弓をキュンキュンやって、相手をバッツバツやっつけて。「もうこのあたりだ」みたいな感じで奥に引っ込んで腹を切っているでしょう? あんなの、誰が見たんですか?

(安住紳一郎)ですよね。多分あれですよね。寝ていて、もしかしたらね、そのまま一酸化炭素がウワッてなって、「あっ!」ってなっているかもしれない。

(春風亭昇太)死んじゃったかもしれないじゃないですか。

(安住紳一郎)あんな踊ったかどうか、わからない。

(春風亭昇太)わからないですよ。あんな火の中で。

(中澤有美子)踊っている時、ありますよね(笑)。

(安住紳一郎)ですよね。

(春風亭昇太)「下天の内をくらぶれば……♪」とか、そんなの。

(安住紳一郎)そうですか(笑)。ちょっとやっぱり織田信長、愛知を持ち上げるために?

(春風亭昇太)そうですね。信長は日本史史上で有名なヒーローだから。そのために、今川義元が使われていたんですよ。

(安住紳一郎)はー。やっぱり相当優秀な大名だったんですか?

相当優秀な大名だった

(春風亭昇太)いや、もうそれはだって、まあ法律(今川仮名目録)とかを定めるんですけど。まあお父さんがやっていた後を継ぐんですけど、相当優秀な……それを各大名とかが結構参考にしている節があるんですね。

(安住紳一郎)はー!

(春風亭昇太)で、もうなんでしょうかね。五男坊なのに家督を継いでいるんですよ。

(安住紳一郎)あ、今川義元は。そうですか。

(春風亭昇太)お兄ちゃんが家督を継いでいるんですけど、お兄ちゃんがちょっと体があまり丈夫じゃなかった。で、今川義元は京都で僧侶になって勉強しているんですね。で、駿河に呼び戻されて。で、お兄ちゃんが亡くなるんですが、実はおんなじ日にもう1人のお兄ちゃんも死んでいるんですよ。

(安住紳一郎)あらら。じゃあ……。

(春風亭昇太)なにかある感じでしょう?

(安住紳一郎)あまりにも五男坊が優秀だったんで、たぶん「こいつに継がせた方がいい」っていう風に周りが取り計らったか、義元自身が手を回したか。

(春風亭昇太)で、もう1人のお兄ちゃんは、ちょっと義元と戦うんですよ。で、そのもう1人のお兄ちゃんを義元はやっつけて、五男坊なのに家督を継いでいるんです。

(安住紳一郎)もうやり手中のやり手。震え上がるぐらい。

(春風亭昇太)相当なやり手なんですよ。ただ桶狭間一戦で、なんかああいう風に思われているだけなんですよ。この今川家復権。これに私の今後の半生の人生をかけていきたいと。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)で、話が途中になっているんですが、NHKから電話があって。

(春風亭昇太)ああ、そうだ。ちょっと興奮しちゃった。電話があって、「今川義元、どうですか?」って言われた時に、「公演等々でいましゃべったようなことをずっとしゃべっているので、今回、軟弱なイメージだったら僕、しゃべっていることが嘘になってしまうので。そういうのだったらできません」って言ったんですよ。そしたら、NHKさんが「いや、今回の今川義元は実力のある、そしてクールでダークな感じでやります」って言うから、「あっ、じゃあお願いします!」って言って。

(安住紳一郎)(笑)。じゃあ、もし今回ドラマの今川義元公の演出が白塗りでいつも通り信長にやられちゃう感じのあれですっていうんだったら、断っていたんですね。

(春風亭昇太)断っていました。

(安住紳一郎)はー! じゃあ、見事今川義元の復権が。

(春風亭昇太)はい。

(安住紳一郎)反響はいかがでしたか? 駿河・静岡の地元のみなさん方は。

(春風亭昇太)もうね、あれをやる前から静岡に帰ると、もうおじさんたちが寄ってきて「今川義元をお願いします!」って手を取られて。静岡の人もみんなモヤモヤしていたんですよ。ずーっと。

(安住紳一郎)「違う!」と。

(春風亭昇太)ちょっと静岡の人もちょっとそう思っていた節もあり。

(安住紳一郎)ああ、誤解も既に。教育っていうのは恐ろしいですね。

(春風亭昇太)恐ろしいです。視覚から入るイメージは恐ろしいですね。

(安住紳一郎)いやー、それであの怪演につながったということですね。怖いぐらいでしたもんね。

(春風亭昇太)まあ、怪演っていうかしゃべってませんからね。

(安住紳一郎)(笑)。怖い顔をして。

(春風亭昇太)そうそう。しゃべらなかったですから。ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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