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松尾潔 The Isley Brothers『Tears』とJAY-Z『Song Cry』を語る

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松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でThe Isley Brothers『Tears』とJAY-Z『Song Cry』について話していました。



(松尾潔)メロウな風まかせといいますのは改めてご紹介しますと僕、松尾潔が無作為に選んだ曲。そこから思い出した曲、聞きたい曲。そういったものをずっと数珠つなぎでご紹介していくというプログラムなんですが……いま、バックで流れております久保田利伸さんの『Between The Sheets』。アイズレー・ブラザーズのカバーで久保田さんの『KUBOSSA』という企画アルバムに収められていた曲なんですが。そのオリジナル『Between The Sheets』。アイズレー・ブラザーズ。これはもう、R&Bファンであれば聞いたことがないという人は存在しないでしょう。そのぐらいの基本中の「基」の曲ですが。

このアイズレー・ブラザーズの看板でございます、リードボーカルのロナルド・アイズレーさんがこの5月21日に76才になると聞いております。いまだに変わらぬ世界観の作品を届けてくれるロナルド・アイズレーなんですが。まあちょっと健康状態ですとか、あと彼、私生活で騒がしい人ですから、いろんなニュースが入ってきますが。それでもひと度マイクに向かうと、とろけるようなあの世界がいつでも描けるというまあ本当に選ばれし楽器としての素晴らしいボーカリストかと思うんですが。そんなロナルド・アイズレーをフィーチャーしたジ・アイズレー・ブラザーズ。名曲が数多ございますが、『メロウな夜』的にはこちらかと思います。1996年のアルバム『Mission to Please』に収められておりました。聞いてください。ジ・アイズレー・ブラザーズ『Tears』。

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The Isley Brothers『Tears』



お届けしましたのはジ・アイズレー・ブラザーズ『Tears』。1996年のアルバム『Mission to Please』に収められておりました。この『Mission to Please』というアルバムはアイズレー・ブラザーズの長い歴史。もう半世紀の歴史の中でもいくつかあった分岐点のひとつですね。当時のロナルド・アイズレーの公私ともにパートナーでありましたアンジェラ・ウィンブッシュという女傑がいます。僕も大変に彼女のファンですけども。そのアンジェラが、ある意味ではボーカルのロナルド・アイズレー以上に大活躍したアルバムでした。『Tears』はベイビーフェイスことケネス・エドモンズが提供した曲なんですがね。まあ、ベイビーフェイスをアイズレーが歌うとこんな感じになるのかな? と想像しながら聞くとその通りだったという当時の記憶がいま蘇ってきました。

そしてそれは悪くないものでしたね。よく「化学反応」という言葉がこういう時に使われます。「ケミストリー」なんて言葉が使われますけども、僕はね、このコラボレーション流行りの昨今、化学反応というのが大きいからいいか? というとそういうことじゃないと思っていまして。予想通りの、掛け算にならずに足し算になる。足し算として成立することを目的として、それをキチッとやり遂げる作品の素晴らしさというのは、これはこれでプロの仕事として評価すべきじゃないかと思うんですが。この『Tears』はそういう印象ですね。ある意味で歌い込みすぎない、化けさせすぎないという抑制のきいた、そんなコラボレーションでした。

さて、そのアイズレー・ブラザーズの『Tears』ですが、この曲……まあもちろん、アイズレー・ブラザーズはたくさん名曲がありますよ。僕はいまの気分で言いますと、アイズレー・ブラザーズ『Tears』。特にこの春から初夏にかけてぐらいに聞きたいという感じなわけですよ。そのアイズレーの『Tears』を引用した曲っていうのは、オーガスト・アルシーナの『Song Cry』ですね。この『Song Cry』、番組でもご紹介したことがございますが。うーん。『Tears』の中の一節を歌い込んでおりまして。



まあオーガスト・アルシーナという人が存在として大変活きのいい人、フレッシュな人ですから。この人が歌う20年前の曲っていうのはまたね、ロナルド・アイズレー自身が20年前の曲を歌うのとは当然違った効果が生まれて、聞きものになっておりました。まあこうやって名曲の魅力というのはいろんな形で歌い継がれていくんだななんて思ったんですが。オーガスト・アルシーナの『Song Cry』という曲のタイトル。このタイトルもまた引用であることは20年ぐらいR&Bですとかヒップホップとかを聞いている人からするともう、すぐにわかる話ですね。2001年にリリースされたジェイ・Zの『Song Cry』。このタイトルからの引用であることはまず間違いありません。じゃあ、そのジェイ・Zの『Song Cry』。もう僕、この番組で何度か言っています。公言しております。ジェイ・Zのあらゆる曲の中で僕、ダントツで好きな曲です。聞いてください。アルバム『The Blueprint』の中からジェイ・Zで『Song Cry』。

JAY-Z『Song Cry』


Bobby Glenn『Sounds Like A Love Song』



お届けしましたのはジェイ・Z『Song Cry』。そしてその『Song Cry』の下敷きになっていた曲です。ボビー・グレンで『Sounds Like A Love Song』。ボビー・グレンの方は1976年にリリースされました『Shout It Out!』というアルバムに収められていた曲です。まあ、この『Shout It Out!』……「ああ、昔から好きだよね。この曲、よかったよね」なんていう人はだいたい知ったかぶりしている人でございまして(笑)。なぜならこのアルバム、そんなに容易に手に入るアルバムではございませんでした。むしろ、このジェイ・Zの『Song Cry』がボビー・グレンの曲を引用して『Song Cry』をこのジェイ・Zの名ラップありきでクラシックにしたもんですから、そのクラシックの元ネタの曲もさらにその先駆ける古典として光が当たったということです。

まあ、どっちかって言うと「カルトなアルバム」と言ってもいいんじゃないでしょうかね。まあ僕はこの世界にいて長いものですから、このボビー・グレンのアルバムのジャケットぐらいは目にしていましたけども。僕も実際の所、アルバムを手にしたのはジェイ・Z以降ですからね。で、この76年にリリースされた『Shout It Out!』。じゃあ、そんなにマニアックなアルバム、無名の人なのかという話でもありませんで。これはね、当時最盛期と言っても差し支えないアース・ウィンド・アンド・ファイアーのメンバーたちが参加したアルバムだったんですよね。まあ、どちらかと言うとその文脈で語られてきたボビー・グレンの『Shout It Out!』でございます。

文脈が変わったのがジェイ・Z以降というのが正しい言い方かもしれませんね。この歴史の見立てがある時から変わるっていう、司馬遼太郎っていう作家が大河小説にしたから坂本龍馬という人の認知が日本の中で変わったんだと思いますよ。そういうことと同じような構図じゃないかなと思いますね。「ジェイ・Z=司馬遼太郎説」でございますが(笑)。まあ、そんなことはともかく、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのラルフ・ジョンソンというドラマーがいますよね。そのラルフ・ジョンソンがボビー・グレンのプロデューサーを務めておりました。そして、アースのギタリスト、アル・マッケイですとか、キーボーディストのラリー・ダン。そして、ファルセットシンガーのフィリップ・ベイリーも……彼は優れたパーカッション奏者でもありますが、こういった面々もボビー・グレンのアルバムをバックアップしておりました。

で、アルバム全体もアースサウンドで楽しいか? というと、まあ、うん……アースのアルバムほどには充実しているとは思えませんけども。いまだからこそ、聞いて楽しいというアルバムですね。で、やっぱりけど聞きものはアルバムの中でも『Sounds Like A Love Song』でございまして。これ、やっぱりイントロのね、ハープがいいんですよね。ジェイ・Zの『Song Cry』でもそのハープの部分が、ここが聞きどころと言わんばかりに繰り返し引用されていましたが。プロデューサーのジャスト・ブレイズもやっぱりそこの部分に注目をするのは自然なことだと思います。ドロシー・アシュビーというR&B、ジャズのレコードを10年以上買っている人だったらどこかで触れる名前のドロシー・アシュビーが奏でるハープの響きがたまりませんね。

そこにジェイ・Zのね、強面の男が「人前で泣くところを見せたくないから、自分のこのやるせない気持ちを自分の代わりに曲に泣いてもらっているんだ」という。もう本当に、こういう男の美学みたいなのが好きな人にはたまらないリリックですけどね。まあジェイ・Zがボビー・グレンを掘り起こしてくれたということをお話したいのですよ。

<書き起こしおわり>

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