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町山智浩と藤谷文子 『ヒドゥン・フィギュアズ』を語る

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町山智浩さんと藤谷文子さんがBS朝日『町山智浩のアメリカの”いま”を知るTV』の中で、1960年代にアメリカの宇宙開発競争の計算者として雇われた黒人女性を描く映画『ヒドゥン・フィギュアズ』について話していました。

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(町山智浩)アカデミー賞で今回ノミネートされたけど引っかからなかった作品で何本か面白いのがあって。僕、いちばん面白くて、なにか賞をとればいいなと思ったのは、『ヒドゥン・フィギュアズ』っていう映画なんですよ。

(藤谷文子)ああ、はい。見ました。

(ナレーション)全米で『ラ・ラ・ランド』を超える大ヒット。1960年代にアメリカ初の有人宇宙ロケット計画を実現させたのは、なんと当時まだあらゆる面で差別を受けていたアフリカ系女性たちだったという実話。

(町山智浩)その、数学がたまたますごくよくできたために、アメリカの宇宙開発競争の計算者として雇われるという話なんですね。アメリカ中から数学ができる人をトップからもうずーっと100人ぐらい集めて、ロケットの軌道を計算させるんですよ。まあ、NASAの計画の推進者のひとり、ケビン・コスナーが「私のコンピューターはどこだ?」って言うと、「あなたの後ろにいる女性ですよ」って言われるんだけど。

(藤谷文子)(笑)

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コンピューターの本来の意味

(町山智浩)コンピューターは人間なんですよ。この時代。「Computer」っていう言葉自体が、実は本来、機械のことを指していないんですよ。

(藤谷文子)そうか!

(町山智浩)「Compute(計算)する人」なんですよ。「計算する人」っていう意味なんですよ。

(藤谷文子)「Compute」。そうか。あまりにもいまコンピューターっていう単語が機械を指しすぎていて、もともとの意味を忘れてました。

(町山智浩)そう。本当は人間なんですよ。計算する人は。その中に、実は黒人女性がたくさんいたというのは、ずーっとみんな知らなくて。だから『ヒドゥン・フィギュアズ(Hidden Figures)」っていう原題はそういう意味で「知られざる人たち」っていう意味なんですよね。だから最初、NASAに彼女たちが入ってきた時に、もうNASAの職員自体も彼女たちが数学者とか技術者、エンジニアとして来たと思わないから。

(藤谷文子)ああ、そうか。ありましたね。

(町山智浩)ゴミかなんか渡されちゃって。片付けのおばさんだと思われたり。

(藤谷文子)「違う!」みたいな(笑)。

(町山智浩)そう。あと宇宙飛行士から「こんなに黒人女性いっぱいいるということは、大きいレストランでもあるのか?」って言われるシーンがあって。ウェイトレスだと思っているという。で、「私たちは違う。私たちはエンジニアとして来たんだ。コンピューターとして来たんだ」っていう風にいちいち説明するんだけど、その1960年ぐらいは南部では人種隔離政策がまだ続いていて。トイレもレストランもバスも、ありとあらゆるものが白人用・黒人用に分けられていたんですけども。いちばん困ったのは、トイレがないのね。

(藤谷文子)彼女が使っていいトイレがない。

(町山智浩)そうなんですよ。黒人女性が入れるトイレがすごく遠くにしかなくて。

(藤谷文子)遠くで、ビルディングも違うから。雨が降っていると外に一旦出て、40分ぐらいかかるところで(笑)。

(町山智浩)そうそう(笑)。ひどいなと思ったのは、コーヒーを入れる時にコーヒーのポットから普通にコーヒーを入れたら、白人の男たちがそれを見てすっげー顔をしていて。なんだろう? と思ったら、ポットも白人用のポットを使っちゃいけないのね。その当時、黒人は。

(藤谷文子)と、言われていましたね。

(町山智浩)そこまで差別するのか!っていうね。でも、能力で。彼女がいないとロケットが打ち上げられないという状況で。

(藤谷文子)いろんな人の信頼を勝ち得ていくんですよね。その能力で。そこは本当に見ていて気持ちがいいというか。現実を叩きつけていく感じですよね。

(町山智浩)ねえ。

(藤谷文子)こういう政治色が割りと出た年だったじゃないですか。そういうのって、いままでアカデミー賞でこういう風に政治に対して、政治色が出た年とかって他にもあるんですかね?

(ナレーション)アカデミー賞と政治。

アカデミー賞と政治

(町山智浩)いちばん有名なのは、『市民ケーン』事件。『市民ケーン』というあの素晴らしい映画がアカデミー賞をとらなかったのは、『市民ケーン』の中で茶化されているケーンのモデルである、ランドルフ・ハーストっていう当時のメディア王が怒って、ハリウッドの俳優たちに直接圧力をかけて、「作品賞、監督賞に絶対に『市民ケーン』を選ぶな!」と。

(藤谷文子)なんで?

(町山智浩)「それは俺を茶化している映画だからだ」と。

(藤谷文子)あ、そうか。でも、それは政治色というわけでは……?

(町山智浩)政治家になろうとしたんですよ。ランドルフ・ハーストは大統領を目指していたんですよ。お金持ちだったんで。だから、トランプの先駆けなんですよ。

(藤谷文子)そうか。そうやってじゃあ、権力とか政治と割りと戦うとか、そういうのが色濃く見えることっていうのは、割りと要所要所においてはある?

(町山智浩)あるんだけど、権力側に負けることが多くて。昔、赤狩りの時代に『真昼の決闘』っていう映画があって。それは赤狩りの被害にあった人がシナリオを書いていて。西部劇の話にしているんですけども。悪いやつが町にくるんだけども、町の人が誰も助けてくれない。保安官を孤立無援にして、「お前がいるせいであいつらが来るんだ!」みたいな感じで、保安官自身が1人で戦わなければならなくなるっていう話なんですね。で、それは脚本を書いたフォアマンっていう人が、自分が赤狩りでハリウッドで攻撃された時にハリウッドの人たちは助けなかったという恨みで書いたシナリオだったの。

(藤谷文子)うんうんうん。

(町山智浩)そしたらそれを見たジョン・ウェインが怒っちゃって。ジョン・ウェインは赤狩りに協力した人なんですよ。で、「これは俺に対する挑戦状だ! これに絶対にアカデミー賞はとらせない!」って言って、作品賞候補にあがっていた『地上最大のショウ』っていうサーカスの映画があるんですよ。いま見ると、ただ単にサーカスをやっているだけなんですよ(笑)。

(藤谷文子)マジかー(笑)。

(町山智浩)ただ、昔だから機関車同士の大激突っていうすごいシーンがあるんですけど。

(藤谷文子)ああ、それはすごそうだけど(笑)。

(町山智浩)本当に激突させるんで、すごいことになっているけど。ただ単に転覆させているんですけど。ただ、アカデミー賞をとるような映画じゃないんですよ。見世物映画なんで。ただ、それに対してジョン・ウェインが票を集めさせたんですよ。

(藤谷文子)じゃあ、昔はそうやって権力に負けることの方が多かったけど、徐々に徐々にいろんなアプローチができるようになっていったという?

(町山智浩)そうそう。やっぱり1回、負けたからだと思います。赤狩りでハリウッドはかなり徹底的に負けたんで。まあ、その屈辱から二度と権力に負けないんだということはあるし。あと、やっぱり外国人に対する規制が厳しくなると、ハリウッド自体が業務を続けていけなくなっちゃうしね。

(藤谷文子)いろんな役者さんも外国の方ですし。それだけじゃなくて裏方さんも。トップの方も人もいっぱいいますしね。

(町山智浩)トップの方の人も多いし。そういったものに対する圧力だから。ただ、逆に言うとこのへん(中西部)の人たちは、「だからこそ、やる必要があるんだ!」っていう。「なぜ、そういう外国人にいい仕事を取られちゃうんだよ?」っていう考え方だから。

(藤谷文子)優秀な人を雇っているだけなんだからっていうことですよね。

(町山智浩)そう。だから優秀な人を雇う時に、人種や民族の垣根を超えて選んでいくと、我々が選ばれないから。垣根をちゃんと作って、垣根の中からだけ選んでくださいっていうことなんですよ。

(藤谷文子)優秀じゃなくなっちゃうよ?(笑)。

(町山智浩)そう!

<書き起こしおわり>

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