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宇多丸 東日本大震災から6年後の3.11メッセージ

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RHYMESTER宇多丸さんがFM NORTH WAVEの3.11特別番組『3.11 SPECIAL Light For Tomorrow』に出演。東日本大震災発生当時の模様や、発生翌日の『タマフル』特別番組の話、そして発生から6年がたった現在の話など、様々な話をされていました。



(タック・ハーシー)FM NORTH WAVE『3.11 SPECIAL Light For Tomorrow』。タック・ハーシーがお送りしています。今年は東日本大震災と音楽に焦点を絞って、ミュージシャンの表現に震災は何を残していったのか? を探っています。続いては、ヒップホップグループRHYMESTERの宇多丸さんにお話を聞いていきましょう。このRHYMESTERといいますと、日本のヒップホップシーンを切り開いてきたグループのひとつです。2009年に活動を再開した後も、その時々の世相を鋭く描いて、時代に必要なメッセージを発信し続けています。そのキーパーソンの1人、宇多丸さん。震災からの6年間をどう見ているのでしょうか? まずは、あの日の出来事から聞いていきましょう。

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東日本大震災発生当日

(宇多丸)その瞬間のことはすごい鮮烈に覚えていると思いますけど。僕もその週の、まさに翌日のラジオで『英国王のスピーチ』っていうのの映画評をちょうど翌日にやる予定で。で、その同じ監督が前に撮ったサッカー映画で『くたばれ!ユナイテッド』っていう日本タイトルがついているのがあって。それを見ていて。それの途中。もう『くたばれ!ユナイテッド』は一生忘れられないっていう。自宅がマンションのいちばん上の階で。そんな大きいマンションじゃなくて、細長いマンションなので。要は体感のめっちゃ揺れが強くて。体感だと、もう45度ぐらい行っているぐらいだったんだけど。生きた心地が本当にしないというか。うん。そんな感じではいました。

(タック・ハーシー)次の日に放送するラジオ番組の準備をしていたところに、あの大きな揺れが襲ったんですね。宇多丸さんはTBSラジオのレギュラー番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』。通称『タマフル』の放送を翌日に控えていたんです。

(宇多丸)まず当然、やらないと思ったんですよ。翌日だし。で、もうどの番組も報道番組で。当たり前だけど。当然中止だろうなと思っていたら、編成から「やります」「マジか!?」っつって。ただ、いつも通りやるのはスタッフと話し合って止めて。合間合間に速報が入れば入れていくのは当然として、いつもの番組と構成を変えて。まあ、音楽……それもラジオだけはテレビとかと違って電気とか使えなくても、東北の人もラジオだけは電波をキャッチできて聞けているらしいと。なので、一応そういう人たちもいるということを意識した内容で全国からメールを募集しつつ、被災地を、まさに聞いている人もいるんだからという感じで応援するような曲を選んでっていう感じで行こうと決めて。

俺としては重圧が強すぎて。やっぱり本当は逃げたかったんですけど。まあ当時、まだ比較的入ったばっかりだった江藤愛さんというTBSのアナウンサーの方に手伝って頂いて。他にそういうバラエティー……(他の番組は)音楽は流しているんだけど、もっと匿名的なというかスタンダードというか。そういうのばっかり流していたんで。「音楽をこういう意思で流しますよ」なんていう番組、たぶん全民放でバラエティー的なことをやったのは初めてだと思うんで。もう、ビビリましたし。ただ同時にちょっと、「こんなことをやっていていいのかな?」っていうのも……あんまりこの言葉は時分の口からは出したくないけれども、「不謹慎かな?」とか。いろいろ考えたんですけど。まあ、終わった後の反響とかも含めて概ね、本当にやってよかったっていう。「つながれた!」っていうか。

報道はやっぱり恐ろしい事実ばっかり伝えているから。で、しかも当時はまだ怖い映像もいっぱい流していたし。だから、すごいね、お礼を言われることが多かった。「あの時にやってくれてありがとう」っていう。なんで、そのたびに「ああ、やってよかったな」って。俺みたいなヘタレが、たまたまその順番が回ってきてやった仕事だけど、やってよかったっていう。

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル 東日本大地震翌日の特別放送
東日本に大規模な被害を与えた大地震。発生から1日半しかたっていない中、放送されたTBSラジオ ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル。辛いニュースが沢山入ってくる中、いつも...

で、やっぱりその直前に出したアルバムが『POP LIFE』っていって、それの1曲目が『そしてまた歌い出す』っていう曲なんですけど。なんかそういう大きな災害とか、まあ戦争とかでもいいんですけど。なんかそういうことが起きた時に「音楽は無力だ」って黙っていていいのか? みたいな。まあ、そういうことを歌っている曲だったから。これを、震災があるなんてもちろん予想はしていなかったけど、これでたしかに逃げたら曲が嘘になっちゃうと思って。1曲目はあの曲で。

RHYMESTER『そしてまた歌い出す』



音楽、曲って自分で作っている側で言うのもなんだけど、やっぱりその作った時に意図したものを超えて機能するなっていうか。たとえば、流した曲は結構ラブソングのはずなのに、いま聞くとものすごくこの状況に対する応援歌に聞こえるとか。なんかいろいろ、この状況のことは歌っていないはずなのに……たとえば、最後に流した曲で、いまでも覚えているのはサンボマスターさんの『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』のbirdさんのカバーバージョンを流したのね。□□□がプロデュースした。もともと好きで、DJでかけていて。「かっけー!」って思っていて。サンボマスターさんも好きだけど、そのバージョンがすごい好きでかけていて。

そうするとやっぱりあの歌詞が「うわーっ!」っていうか。この状況で、しかもこの番組をやった後に最後に余韻を残してかけるのになんてぴったりな歌詞なんだ! とか。そういうようなことをすごく……この言葉も安っぽいからあまり使いたくないけど、音楽の力っていうか。曲の力っていうか。あるじゃん!っていう。

bird『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』



(タック・ハーシー)bird with □□□『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』。強いメッセージがこもった1曲です。音楽というのは、作り手の意図を超えて機能していきます。そんな音楽の力を自分のラジオ番組でかけた曲で宇多丸さんは実感するんですね。もう少し、ラジオのお話を続けましょう。

(宇多丸)あと、その番組全体で共通メッセージで「人間ナメんな!」って。それはRHYMESTERの『K.U.F.U』っていう曲があるんだけど。やっぱり「人間ナメんな!」って、もちろん僕は一応僕なりに真面目なメッセージとして言ってはいるけど。ただちょっと、曲の中でギャグ的に響かせている曲でもあったので。「ああ、こういう風に響くんだ」っていうのもあったし。



と、同時にやっぱりなんか報道じゃなくて、音楽をかけて鼓舞するっていう時に、最初はもちろん僕ら自身すごくこわばった調子でやっていたと思うんだけど、2時間たって、あちこちでいろんな震災の体験の仕方がある人っていうのをやっていくうちに、だんだんだんだんみんな気持ちがほぐれてきて。最後の方、ちょっとだけ笑いというか、ユーモアというか。が、交えられるようになってきて。それこそこの間の映画『この世界の片隅に』じゃないけど、やっぱりこんな日にも笑っちゃうことは起こるし。っていうか、笑わないとやっていけないっていうことかなっていうのも、本当に身をもって……頭ではわかっていたつもりだけど、身をもって本当に味わったし学んだっていう。

でも本当はそういう悲惨な状況の時ほど、そうやって状況を相対化してっていうのって……まさに笑いとかユーモアとかってそのためにある。音楽もそうだけど。こういう時のためにあるんじゃないの?っていうのはすごい……で、実際に効果があるじゃん!っていうのもすごい体感したので。

(タック・ハーシー)恐る恐る放送したラジオ番組。その中にあったユーモアに救われたリスナーが間違いなくいました。もちろん、あの時全ての人が笑いを求めていたわけではないでしょう。しかし、こんな日にも笑いは起きるし、それを必要としている人もいる。タマフルはそんな人々の助けになったんです。音楽の力。ユーモアの力。そして、「人間ナメんな!」という言葉通りの人の底力。あの大きな大きな震災は、人間のそんな面をあぶり出していったんでしょうか。あれから6年がたちました。宇多丸さんは2017年のこの世の中をどう見ているのでしょうか?

2017年現在の世の中

(宇多丸)本当、なんかやっぱり結局、震災を経て残ったのは……震災の直後はみんな助け合ったりとか、人間の美徳みたいなのをいっぱい見たけど、やっぱり結局残ったのはものすごいナーバスなピリピリした空気とヘイトっていう。なんか、あの震災から学んだのがこれなのか?っていうのが。ねえ。震災がすごく日本人が成熟するいい機会だったはずなんですけどね。いろんな問題、山積していた問題を再構築する機会と捉えるならば、あの悲惨な出来事も無駄ではなかったというか、無駄にしないでできたっていう。それこそ、被災されたりしたいろんな方に対しても申し訳が立つものだと思うんだけど。

実際のところはやっぱり、なんて言うのかな? たとえば、もう被災地の扱い方とかを見ればもう明らかだけど。全然復興とか言っていたのって直後だけで。ねえ。あっちの方にライブとかで行くと、愕然とするよね。「えっ? 更地……ええっ!?」っていう感じだし。いまだに全然、だから復興なんて全然進んでなくて。で、地元の運転手さんとかに「ええっ、こんな状態なの、びっくりしました」っつって。「そう。これは来ないとわからないでしょ? でもね、なのに東京オリンピックだっつって、重機とか人とか全部そっちに持っていくんですよ」「……本当ですよね。何を考えているんだ、この国!?」っていう。だから、冷たい国だなってやっぱり思っちゃう。

ただやっぱりそこに対して「ふざけんじゃねえよ!」って声をいまはまだ上げられる。それこそ、さっきおっしゃっていただいた『ゆめのしま』っていう曲で。しかもその『ゆめのしま』で言っていることの元ネタはイジリー岡田さんのやっている舞台を見に行って。イジリー岡田さんの舞台で言っていたテーマなんですけど。イジリー岡田さんにもそれを言って。「今日、すごいインスパイアを受けて。それで曲を作った」って。「過去とかいまは変えられないけど、未来だけはいますぐ行動すれば変えられる」という。本当にその通りですねっていう。素晴らしいメッセージだと思って。だから、まあ未来は変えられるんで。いまからなら。で、それを変えるっていうのは、どうやればいいの? 

たとえば復興がちゃんと進んでいない。けしからん! どうやればいいの? 少子化、ちゃんとしてくれない。けしからん! どうやればいいの? まあ、まずは選挙ですっていうことですよね。「我々が望んでいるのはこっちだ!」って圧力をかけることはできる。そのためには日々、じゃあTwitterでもなんでもいいですけど。せっかくそういうツールがあるんだから、声を上げていくとか。そういう1個1個からしか変えられないんで。とにかく、文句を言って、「大きいところが変わらない」って言っているだけじゃ何も変わらないんで。

すごい卑近な話をすれば、「ヒップホップ、日本に根付かねえな。じゃあ、根付くにはどうしよう?」って一応20数年やってきて、ここまで来ておりますんで。俺ごときでも……俺ごとき、ヒップホップごときでもできることなので。まして、もっと大事な件だったら。そしてみなさん、僕よりはるかに優秀なみなさんだったら、まあできないはずがないっていう。

RHYMESTER『ゆめのしま』



(タック・ハーシー)未来は変えられる。いまからなら。RHYMESTERの『ゆめのしま』です。震災から2年後に発信された曲なんですが、「このままでいいのか?」と世間に強く訴えているように感じます。そして、世間を変えるのは、その世間を生きる1人1人なんだとリスナーを鼓舞します。

(宇多丸)いや、でもやっぱりラップってすごい基本的には鼓舞する方向の音楽ジャンルだと思うので。鼓舞する力がやっぱり相当強いと思うので。良くも悪くも日本にラップはすごい似合うようになってきたというか。ようやく機能するようになってきたという。僕らが始めたころはバブル真っ盛りだったので、鼓舞される必要がある人っていうのはいたはずなんだけど、見えづらかったので。残念ながら、ヒップホップが似合う国になってしまいましたっていう。でも、ヒップホップってもともとそういう、クソみたいな現実に対して自分はこうだっていうところで。自分の意見とか自分の立ち位置で戦うことで、その清濁併せ呑む世界観みたいな。その中で自分を肯定するっていうか。そういうものだと思うので。

やっぱりすごいこういう暗い世相の時にヒップホップっていう方法論はとても有効だなという風に思うし。はっきり言って僕は、『フリースタイルダンジョン』とかがいまこのタイミングでブレイクしたのは意味があるのかなっていう。要するに、ヘイトがあふれてピリピリしている空気をエンターテイメントに転化するヒップホップの力っていうか。ケンカさえ、エンターテイメントっていう。で、そういうのをみんな、このピリピリした空気をなんとか昇華する何かっていうのにすごいピタッとフリースタイルバトルっていうのはハマったんじゃないかなと思って。だとしたら、それはヒップホップの機能の仕方としては結構正しいぞっていう。

で、やっぱりヒップホップってそういう人の中のネガティブな感情を吐き出すことでカタルシスを得るっていう。英語だったら言っちゃいけないカースワードというものを言うことで、「うわっ、そんなことを言っていいの?」っていうのを……言っちゃダメなことを言うからスカッとする。だからさっき言ったように、「不謹慎、不謹慎!」って抑ええていくと人の中にストレスがどんどん溜まっていって、たぶん世の中全体としては良くないことになると思うんで。まあ、悪い言い方をすればガス抜きだけど、ガス抜きが必要っていうことだよね。

これがいま、勘違いしている人が多いんだけど。表現っていうのは正しいことを言うためのツールじゃない。表現っていうのは間違ったことを言う可能性を含んでいるのがフィクションとか表現のやることであって。これは佐々木中くんっていう物書きの人に「君が書いた小説と評論集みたいなのがあるけど、この2つは同じなのか? 違うのか?」と聞いたら、「違う。小説は、間違ったことを書ける。今回書いた小説の主人公が最後にとった行動は、僕は現実にこういう人がいたら非難するし、良くないと思う。でも、小説ではこういう行動をとってしまう人の姿を通して、なにかそれでしか表現できないことが表現できる」と。なんて上手い表現をするんだろう。それだ! 歌もそれだと思う。

僕も曲を作った時に、やっぱり言っていることの中の正しくなさを非難されることがたまにあるんだけど。「いや、正しくないことも歌えるのが歌だと思うんで」っていうことですね。なので、「そういうことも言葉にしてやんないとわかんねえのか?」って思ったから、「正しさだけじゃ生きていけない」っていうことをちゃんと言葉にしてラップに入れたりとか。今後もそれはずっと入れていこうと思っているけど。言わねえとわかんねえみてえだからっていう。これは別に日本だけの問題じゃなくて、「Social Justice Warrior」なんて言葉があるぐらいで。もう反論しようもない正しさを振りかざして、あっちこっちで人を叩きまくるっていう。それはそれでどうなんだ?っていう。まあでも、そこにやっぱり震災後の「迂闊なことは言えません」っていうのと一致しているのかもしれないですね。

(タック・ハーシー)ネガティブな感情を出していいフォーマットとしてのヒップホップ。正しさ以外の感情や言い分を表現する場としてのヒップホップ。それはいま現在、ガス抜きとして機能していて、だからこそ、世の中に受け入れられているというのが宇多丸さんの見方なんですね。これってガス抜きが必要なほど、世の中に不満が溜まっていると見ることもできるでしょう。見えない圧。それから生まれる息苦しい空気。そんな圧に抗って、この空気を打ち破る方法は果たしてあるんでしょうか?

(宇多丸)それこそ、『Beautiful』っていう曲で伝えたかったことで。やっぱり俺たちが楽しく暮らしていくことが最高のプロテストっていうか。やっぱり。そんな暮らしを邪魔させないし、良くしていくことの戦いは止めないっていう。たとえば、北海道をどげんかせんといかんって言うことでも全然いいし。北海道、ねえ。景気の悪さは半端ないって聞いてますんで。そのためにはどうするか?っていうのをちゃんと。自分たちの地域を守れなくて、良くできなくて、なぜ国が良くできる?っていう問題もありますから。まあコミュニティーとかそういうことでもいいですし。それがいちばんの戦いだと思うから。まあ、『この世界の片隅に』というあの素晴らしい作品もそうですけど。

そういうことだと思うんで。ぜひですね、みなさんも、愚痴るのもいいですが、愚痴りはやっぱりヒップホップに任せていただいて。日々の暮らしを本当に良くしていくよう、それぞれがやっていただければいいんじゃないでしょうか。

RHYMESTER『Beautiful』



(タック・ハーシー)美しく生きることが唯一のプロテスト。RHYMESTERが放つ最新のメッセージです。『Beautiful』。お送りしました。

<書き起こしおわり>

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