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松尾潔 R&B定番曲解説 Bobby Womack『If You Think You’re Lonely Now』

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松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でR&Bの定番曲、ボビー・ウーマックの『If You Think You’re Lonely Now』を紹介。様々なカバーバージョンを聞き比べながら解説していました。

(松尾潔)続いては、いまなら間に合うスタンダードのコーナーです。2010年3月31日に始まった『松尾潔のメロウな夜』。この番組は、メロウをキーワードにして、僕の大好きなR&Bを中心に大人のための音楽をお届けしています。さて、R&Bの世界でも、ジャズやロックと同じように、スタンダードと呼びうる、時代を越えて歌い継がれてきた名曲は少なくありません。そこでこのコーナーでは、R&Bがソウル・ミュージックと呼ばれていた時代から現在に至るまでのタイムレスな名曲を厳選し、様々なバージョンを聞き比べながら、スタンダードナンバーが形成された過程を僕がわかりやすくご説明します。

第25回目となる今回は、ボビー・ウーマックが1981年に発表した名曲『If You Think You’re Lonely Now』について探ってみます。ボビー・ウーマックという名前を聞いただけで、ソウルフルな思い、ソウルフルな熱に突き動かされるような、そんなリスナーの方も少なくないと思いますね。ボビー・ウーマックっていうのは一般的な認知度はともかく、ソウル・ミュージック、R&B、こういった音楽を10年以上聞いていれば避けて通ることができない名前ですし、本当に特別な名前だと思いますよ。

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ウーマック・ファミリー

ボビー・ウーマックについてお話をするのは、この番組でもう何度もやってきたことなんですが、まあかいつまんで話しますと、もともとウーマック・ブラザーズという兄弟でゴスペルを歌っておりまして。それがまあ、ソウル・ミュージックの世界に入ってきて。ウーマック・ブラザーズ、あるいはヴァレンティノスという2つの名称で知られますけれども。まあ、様々な名曲、名唱を残してきた人です。その中でも、中心人物だったボビー・ウーマック。歌とソングライティングとギターの天才でございまして。で、そのボビー・ウーマックの才能をいち早く見抜いて弟のようにかわいがっていたのがサム・クックですね。サム・クックと言えば、ソウルの父でございますが。

サム・クックが若くして不慮の死をとげた後に残された妻と再婚をするのですが、そこで引き取った娘がリンダ・ウーマックですね。リンダ・クック・ウーマック。サム・クックの娘であり、ボビー・ウーマックの娘でもあるという、そのリンダが恋に落ちたのがボビー・ウーマックの実の弟、セシル・ウーマックでございまして。この血の繋がらぬ叔父と姪はやがて夫婦になります。そして結成した夫婦デュオといいますのが、ウーマック&ウーマックでして。いま、その娘たちがウーマック・シスターズという名前で歌っていますね。もう、こうなってくると「ウーマック」という名字は「林家」とか「柳屋」とかに近いんじゃないかなと。それぐらいの大きな名前であるということを、私は申し上げたいのでございますが(笑)。では、その、今日はボビー・ウーマックの『If You Think You’re Lonely Now』をご紹介したいのですが。

いま、バックで流れております50セントの『Wait Until Tonight』という曲なんか、これなんかはもう、50セントもやっぱりボビー・ウーマックの歌を下手なりに歌いたかったんだなっていうことがよくわかる、ヘタウマフックカバーを含む曲なんですが。



まあこの曲がね、いろんな子供ですとか孫がいる曲です。今日まずお聞きいただきますのはこの『If You Think You’re Lonely Now』という81年の名曲の数ある子供、孫たちの
中でも最も生まれたての、今年の1月にリリースされたばかりのオーガスト・アルシーナの『Lonely』という曲。そして、その本家となりますボビー・ウーマックの『If You Think You’re Lonely Now』。2曲続けて聞き比べです。

August Alsina『Lonely』


Bobby Womack『If You Think You’re Lonely Now』



今夜のいまなら間に合うスタンダード。ボビー・ウーマックが1981年に発表した名曲『If You Think You’re Lonely Now』をご紹介しております。まずはこの曲を換骨奪胎した……何回言っているんでしょうか? そういった曲の中で最も新しい曲のひとつ。今年1月にリリースされたばかりのオーガスト・アルシーナのシングル『Lonely』をお聞きいただきました。これはボビー・ウーマックのオリジナルバージョンのギターフレーズを上手くループしていますね。特に目新しいことをやっているわけじゃないんですけども、オーガスト・アルシーナはこういうのが似合いますよ。

かつてこの番組でオーガスト・アルシーナがね、アイズレー・ブラザーズの『Tears』という曲を上手く歌い込んだ、そんな実例をお話しましたけども。これもまたその系譜に位置する曲ですね。最近、オーガスト・アルシーナはもう恐ろしいペースで新曲をバンバン出していますけども。その中ではこれがいちばん僕はしっくり来ました。

そして、そのオリジナルとなります1981年のボビー・ウーマックの名作アルバム『The Poet』の中から、『If You Think You’re Lonely Now』をお聞きいただきました。これはね、まあボビー・ウーマックがギターを持ってジャケット写真に収まっております。ノーマン・シーフというロックの歴史ではこれもビッグネームと言える写真家が撮ったポートレートは非常に有名な……日本中のソウルバーの半分以上でこのジャケットが飾られているんじゃないか? というぐらい、みんなが大好きなジャケットですが。



そこでギターを手にしているがゆえに、ボビー・ウーマックがこのアルバムの中でも全てのギターを弾いているような印象があるのですが、結構ね、デイヴィッド・T・ウォーカーさんがね、この『If You Think You’re Lonely Now』でもおいしいフレーズを弾いておりますね。で、このボビー・ウーマックの1981年のアルバム『The Poet』。これはもう、とにかくいま新譜で何を買っていいのかわからなかったら、旧譜のこれを買ってくださいっていう時の1枚だったりしますね。この『The Poet』。そして『The Poet 2』。そして『The Poet 3』と呼ばれることも多い『Someday We’ll All Be Free』というアルバム。この3枚のアルバム、81年から85年にかけてリリースされた3枚のアルバムを通称「Poet 三部作」と言います。そしてよくこの3枚がセットになって販売されていることもありますね。「Poet Trilogy」なんて書かれていますけどもね。



ただ、このボビー・ウーマックは三部作の中の3枚目と言われている『Someday We’ll All Be Free』。ダニー・ハサウェイの代表曲のひとつをそのままタイトルにしたアルバムですが。これはボビー・ウーマック本人が認めていないアルバムとされて降りまして。当時ビバリー・グレンというレーベルにいたんですが、そこのスタッフがボビー・ウーマックのその『The Poet』と『The Poet 2』のヒットに気を良くして、ボビー・ウーマックがそのレーベルを離れた後にも、残っていた音源で勝手に作ったアルバムであるということで。ボビー・ウーマックと大ゲンカになったことも80年代ソウルヒストリーの裏ヒストリーとしてもね、覚えておいて損はないかもしれませんね。

ですがまあ、曲に罪はありませんで。ボビー・ウーマックのそんなお怒りとは関係なく、『The Poet 3』もなかなかの聞き物ですね。『The Poet 1, 2, 3』。もう本当に駄曲なしでございますね。で、その中でも極めつけの名曲と言われますのが、この『1』に収められていた『If You Think You’re Lonely Now』。この、いまビバリー・グレンっていうレコード会社の名前を出しましたけども。まあ本当に、小さなインディーズレーベルだったので、ボビー・ウーマックってその前に本当メジャーでずーっと出していた人なんで。またなんで?っていう感じがあったのですが、ボビー・ウーマックの超人的なV字回復のきっかけになったのがこのアルバムだったんですね。

そしてその後、またメジャーに復帰するわけなんですが、メジャーに復帰してからはボビー・ウーマックの名声が衰えることはなかったと言ってもよいです。本国アメリカはもちろんですし、日本でも大層人気があった人で、何度も来日しました。私もご本人に何回か会っていますけども。で、中でも大変人気があったのがイギリスなんですね。で、ボビー・ウーマックの大ファンだったのがローリング・ストーンズのミック・ジャガーでございまして。ローリング・ストーンズの1985年の『Dirty Work』というアルバムにはボビー・ウーマックとトム・ウェイツをフィーチャーした『Harlem Shuffle』っていう曲が収められております。

この『Harlem Shuffle』っていうのはね、ボブ&アールっていうソウルデュオのカバーなんですが。まあ、ボビー・ウーマックありきの曲になっていますし、1985年発表という時期が何より証拠なんですがこの『Poet』シリーズの世界的な成功を受けてのものであると。ボビーの人気が復活して、そのタイミングで声をかけたというのがローリング・ストーンズ。かつてはボビー・ウーマックの兄弟グループ、ヴァレンティノスのカバーもしていた人たちですからね。長年に渡るボビーへのリスペクトが85年に実を結んだという美しい逸話として語ることができます。

で、そのボビー・ウーマック。ボビー本人は残念なことに3年前。2014年にまだ70才の若さで亡くなってしまったのですが、いまだに……オーガスト・アルシーナもそうですが、いまだにいろんな人たちにカバーされております。で、実際のところ、ボビー・ウーマックの歌声ももちろん有名ですし、この『If You Think You’re Lonely Now』という曲はボビーのさっき聞いていただいたバージョンというのは当時のR&Bチャート。その頃の言い方ですとソウルチャートですけども。第3位。もう文句なしの大ヒットですよ。まで、行っているのですが、いまの現役アーティストたちに限って言いますとボビー・ウーマックと同じか、少なくとも同等レベルに支配力をもったカバーバージョンがありまして。それが、これからご紹介するケイシー・ヘイリーのカバーですね。

ケイシー・ヘイリー。Jodeciのあのケイシーですよ。そのケイシーがまだJodeciが分裂騒ぎを起こす前に、特例として『ジェイソンズ・リリック』という映画のサントラでフィーチャーしたソロナンバーでございます。1994年に発表したカバーバージョンなんですが、これは当時のR&Bチャートで11位。もう一息でトップテンでしたね。11位だったんですが、ボビー・ウーマックのオリジナルバージョンでは果たすことができなかったホット100で堂々の17位ということで、この曲の知名度向上に大きく貢献した、そんなカバーのお手本のような1曲でございます。プロデュースを手がけますのは名匠ジェイムズ・エムトゥーメイ。それでは聞いてください。ケイシー・ヘイリーのストレートカバー、『If You Think You’re Lonely Now』。

K-Ci Hailey『If You Think You’re Lonely Now』



お届けしたのはJodeciのケイシー・ヘイリーによるソロナンバーで『If You Think You’re Lonely Now』。1994年のヒットでした。ボビー・ウーマックのオリジナルが81年。これ、ヒットしたのは82年のことでしたけども。それから12年たってのカバーだったわけですね。そしてそれからさらに20年以上の月日がたってしまいました。もうケイシー・ヘイリーのカバーとはいえ、このバージョンも古典と言って差し支えがないかと思います。ちなみにこのボビー・ウーマックの『If You Think You’re Lonely Now』。マライア・キャリーもあの特大ヒット『We Belong Together』の中で織り込んで歌っております。



(中略)

(松尾潔)さて、楽しい時間ほど早く過ぎてしまうもの。今週もそろそろお別れの時が迫ってきました。ということで、今週のザ・ナイトキャップ(寝酒ソング)。今夜はボビー・ウーマックの『If You Think You’re Lonely Now』が生み出した子孫たちをもう1曲。ジャヒームの『Lonely』。こちらを聞きながらのお別れです。これからお休みになるあなた。どうか、メロウな夢をみてくださいね。まだまだお仕事が続くという方。この番組が応援しているのは、あなたです。次回は来週、3月13日(月)、夜11時にお会いしましょう。お相手は僕、松尾潔でした。それでは、おやすみなさい。

Jaheim『Lonely』



<書き起こしおわり>
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